迷い子の月下美人

エウラ

文字の大きさ
上 下
16 / 533

12 ノアとアークの事情 1

しおりを挟む
*前半アーク、後半ノア視点*




番ってから3日。ほぼ毎日、食事と風呂以外はずっとベッドにいた。
え? それ以外はって?
排泄は浄化魔法で中から綺麗になるし、睡眠は結構な頻度でノアは気絶するんで・・・・・・うん。

想像に任せるぜ。

まあ、浄化魔法で精液も綺麗に消しちまってるから、孕ませられねえが。
それはまあ、ノアが欲しいって言ったらおいおいな・・・。


それにしても・・・・・・。

疲れ果てて昏々と眠るノアの首にかけられているネックレスのプレート。

一枚はギルドタグ。
Aランクを表す魔導銀ミスリルのプレートだ。
名前とランクのみ表示されている。
これは任意で表示をオンオフ出来て、本人以外の魔力は受け付けない。
名前とランクは最低限の表示だ。
これは俺も同じ。

問題はもう一枚のプレート。

ノアの魔力でガチガチに隠蔽されているは、余程の鑑定の腕を持つ者でもかろうじて読み取れるかどうかの代物。

---それはおそらくノアの名前の元となった言葉・・・。

《ノアズアーク》

古代語で刻まれたソレは、普通の者には読めないもの。
古代語なんて通常触れる機会などなく、余程の研究オタクか高位貴族・・・例えば王族やそれに準ずる者が家庭教師や学園などで専攻していて学ぶものだ。
・・・・・・かく言う俺もから読めるんだがな・・・。

亡くなった爺さんとやらが問題なく古代語を読めたとしか思えない。
そしてたぶん、ノアもしっかりと教わっているのだろう。

《ノア》は『自由』という意味がある。
だが《ノアズアーク》という単語だとちょっと意味合いが違ってくる。

---『箱舟』。
---希望を乗せる唯一の舟。

誰が何を思ってこのプレートをノアに贈ったのか。
本当の家族はどこにいるのか、それともすでにいないのか・・・。
捨てられたのか、事件に巻き込まれたのか・・・。

そもそも、そのお爺さんが拾った事自体が仕組まれたモノなのか・・・。


---一体、何者なんだ?


・・・だがまあ、俺にとっては何者でも構わない。
例え死神だったとしても、俺はノアに一生を捧げるつもりで番ったんだから。

・・・とりあえずはノアを抱きしめて俺も少し眠るかな。




---唐突に意識がハッキリして目が覚めた。

と同時に、記憶を巡らす。
・・・俺、何してたっけ?

ここは見覚えがある。俺のテント内のベッドだ。
でも何で寝てるんだろう・・・?
・・・・・・裸で。

---は だ か ?!

「裸---っ?!」

ガバッと起きようとして失敗した。
お腹に何か巻き付いてて引っかかったから。

んん?
何、なに、ナニ---?!

「ぉおおおお、えええっ? はあぁ?」

何でアークと寝てるの?!
何してた俺、思い出せ。思いだ・・・・・・し・・・。

---ぅあっ、あああ、ナニしてました!!?

「---ぷっくっく・・・・・・ははっ!」
「あっ、アーク、なっ何・・・・・・っあう・・・あああっ!」

憶えてる。ぼんやりだけど記憶があるぅ。
テントの中にはアークが強引に入ったようなものだけど、その後は発情期で蕩けた俺に引き摺られるようにせっ、せっ・・・・・・性交しまくってたような---?!

駄目じゃん俺、迷惑かけっぱなし!!

「あっあの、ごめっごめんなさ・・・っ!」
「---謝らなくて良いよ。たぶんだけど俺のフェロモン薫りにあてられて発情したんだと思う」
「・・・・・・え?」
「まだ発情期じゃなかったんだろ? ・・・俺達、番いだったんだよ。好一対の」
「・・・・・・番い・・・好一対・・・?」

夢うつつで聞いた気がする言葉だ。
何だっけ・・・?
伴侶とか結婚とか・・・ずっと一緒とか・・・。

それを思いだして、ハッとした。

思わずガバッと首の後ろに手をやる。
そろっと触った肌には咬まれた歯形の後がかさぶたになってくっきり残っていた。

「あぁ、強く咬みすぎた、ごめん。でも咬んだ事は謝らないよ。ちゃんとノアに確認を取ってから咬んだし、合意だからね。何なら証拠もあるけど、見る?」

そういってアークが触れた耳のピアスに見覚えがあった。
記録媒体の魔導具だ。
改ざんが出来ない仕様の魔導具。

それに記録してあるならそうなんだろう。
確かに自分も咬んでくれと言った記憶がある。あるが!

ソレって情事中の出来事だよね?!
ちょっと待って?!
ずっと撮ってたの---?!

思い至った事実にアークを見れば、否とも是とも言わずににっこり笑うだけ。

たぶん俺の顔は真っ赤になっていたと思う。
いや、真っ青かも。


ぅわあ---!
怖い、怖いよぉ---!!







*ノアズアークは作者の解釈です。フィクションでファンタジー設定です。悪しからず*


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

孕ませねばならん ~イケメン執事の監禁セックス~

あさとよる
恋愛
傷モノになれば、この婚約は無くなるはずだ。 最愛のお嬢様が嫁ぐのを阻止? 過保護イケメン執事の執着H♡

(完)妹の子供を養女にしたら・・・・・・

青空一夏
恋愛
私はダーシー・オークリー女伯爵。愛する夫との間に子供はいない。なんとかできるように努力はしてきたがどうやら私の身体に原因があるようだった。 「養女を迎えようと思うわ・・・・・・」 私の言葉に夫は私の妹のアイリスのお腹の子どもがいいと言う。私達はその産まれてきた子供を養女に迎えたが・・・・・・ 異世界中世ヨーロッパ風のゆるふわ設定。ざまぁ。魔獣がいる世界。

義妹の嫌がらせで、子持ち男性と結婚する羽目になりました。義理の娘に嫌われることも覚悟していましたが、本当の家族を手に入れることができました。

石河 翠
ファンタジー
義母と義妹の嫌がらせにより、子持ち男性の元に嫁ぐことになった主人公。夫になる男性は、前妻が残した一人娘を可愛がっており、新しい子どもはいらないのだという。 実家を出ても、自分は家族を持つことなどできない。そう思っていた主人公だが、娘思いの男性と素直になれないわがままな義理の娘に好感を持ち、少しずつ距離を縮めていく。 そんなある日、死んだはずの前妻が屋敷に現れ、主人公を追い出そうとしてきた。前妻いわく、血の繋がった母親の方が、継母よりも価値があるのだという。主人公が言葉に詰まったその時……。 血の繋がらない母と娘が家族になるまでのお話。 この作品は、小説家になろうおよびエブリスタにも投稿しております。 扉絵は、管澤捻さまに描いていただきました。

処理中です...