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5 旅は道連れ世は情け 2
しおりを挟むアークを見たら、何故か呆然としていた。
が、今の俺にはそれに拘っている時間はない。
「アーク、悪い。ちょっと訳ありで今から一週間くらい籠もるから、荷物をマジックバッグに片付けてしまうよ?」
そう声をかけたが返事がない。
とりあえず竈の火を落としてから竈ごと鍋をしまう。
皿やカトラリーは浄化魔法で綺麗にしてからしまう。
荷物が片付いたタイミングでアークが我に返った。
「ええっと、ノア、それは一人で籠もるのか?」
「そう。今までも一人だったし「なら俺も一緒に!」・・・はぁ・・・?!」
名案とばかりに俺の腰を抱いてぐいぐいテントまで押してきた。
だがしかし、アークはテントには入れない。
このテントは俺特製の魔導具だからだ。
「ちょっと、タンマ。コレにアークは入れないよ」
「どうやったら入れる?」
被せるように聞いてきた。
勢いについ敬語になってしまう。
「・・・あ、はい。魔力登録すれば・・・」
「じゃあすぐやっちゃって」
「はい、この魔石に、魔力流して、コレで・・・登録完了、デス」
さわやかなのに有無を言わせない笑顔で頼んで?くるアーク。
なんか俺、流されてる気がするんだけど、コレってマズくないか?
それに、アークが何を思ってこんな行動をしてるのか分からないのがちょっと怖い。
でも確実にアークは発情期の事を知っている。
だから一緒に籠もるって言ってるんだ。
理性では『ヤバい、逃げろ』と言ってるのに、本能が『このままヤっちまえ』と訴える。
---何を迷ってる?
いつも独りで辛い思いをしていたじゃないか。
最初の数日は何をしても体が疼いて、俺は独りベッドで己の欲を自分の手で何度も吐き出す。
出しても出しても中々おさまらない熱を、どうしようもなくて、時たま扱いて吐き出すだけで、後はひたすらシーツや枕を掴んで抱き込んで耐えるしかなかった。
後ろが疼いても、どうすれば良いかなんて知らないから。
でも、そういう相手がいなかっただけで、今はアークに好意を抱いてる。
・・・・・・あれ?
---好意を・・・?
---俺は、アークが・・・好き?
---ついさっき知り合ったばかりなのに?
だけど発情期で徐々に靄がかった頭が考える事を放棄し出した。
気付けばアークは俺とテント内に入っていて、興味深そうに室内を見渡している。
室内の配置を確認しているようだ。
「こっちはトイレで、ここがバスルームと。キッチンにリビング、奥は寝室だな。・・・凄いな、コレ全部ノアがやったのか? まさか、錬金術?」
「・・・・・・ん、俺が・・・錬成した。・・・ね、もういい?」
---ベッド、行きたい。
予定外に来た発情期のせいで、いつもは徐々に疼く体が今回は急激に昂っていた。
腰が砕けてきて立っていられない。
早くベッドで横になりたかった。
だんだん荒い息になってアークに寄りかかってしまう俺をどう思ったか、急に横抱きにして寝室へ向かうアーク。
---良い匂い。
こんなこと初めてだ。
人見知りな俺が、今日知り合ったばかりの男と、発情期を一緒に過ごす・・・なんて。
ベッドで初めての口づけを受けた俺に、理性はもはや残っていなかった。
分かっているのは、アークがSランク冒険者だっていうことと。
俺が今から抱かれるって事だけ・・・。
その先になにが待っているかなんて、今の俺にはどうでも良いことだった。
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