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第2話-②:友人と友情を育む莉緒奈
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「ここの学食の天ぷらうどんがすごく美味しいんだよっ!」
恵里に連れられたのは、姫宮高校の食堂。
どの料理も美味しいと評判で、昼時には大勢の学生が集っている人気スポットだ。
莉緒奈も興味はあったが、一人で行くのは抵抗があり、行ったことがない。恵里の誘いがなければ卒業まで行けないままだったろう。
(こんなに人がいるなんて…うぅ…恥ずかしいです…)
「莉緒奈さんは何頼むー?」
「え?な、なんでも、いいです…」
「分かった!じゃあ一緒に行こっ!」
「あ、あぅ…」
莉緒奈の心情を知ってか知らずか、恵里は手をぐいぐいと引っ張っていく。
(変身したら…もう少し大胆になれるのでしょうか。でも、あんなドレスをみんなに見られたら、恥ずかしくてそれどころじゃないかも… )
「ほら、莉緒奈さんも注文して!」
「は、はい…じゃあ、天ぷらうどんで…」
大胆な変身姿を思い出して顔を赤くしながら、莉緒奈は初の注文を終えるのであった。
****
「う~~~~~ん、おいし~~~~!」
数分後。
天ぷらうどんは無事2人の元に届き、恵里は早速堪能し始めた。
「い、いただきます」
莉緒奈も箸を上品に割り、麺をつまんで口に運んだ。麺類、特にうどんは屋敷で出されないため、人生はじめての経験である。
恐る恐る味を確かめるがー、
「あ…おいしい!」
「でしょでしょ~?」
「これが、みなさんが食べてるものなんですね」
「莉緒奈さん、いつもお昼ご飯何も食べてないから心配だったけどよかった!これからは一緒にご飯しない?」
「恵里さん…」
莉緒奈の胸に熱いものが込み上げる。だが、同時に疑問を浮かんだ。
「その…1つお聞きして良いでしょうか」
「?どうしたの?」
「なぜ、恵里さんは私に声をかけてくれるのですか?私はいつも引っ込み思案で、なんの魅力もなくて、ウジウジしてるのに…」
「…そんなことないよ」
「え?」
「あたし、見ちゃったんだ」
「見た…まさか!」
(変身を見られた!?恵里さんを戦いに巻き込むのは…)
身構える莉緒奈だったがー、
「莉緒奈さんが子猫助けるところ!」
答えは予想外のものだった。
「…え?」
「1週間前、道で子猫が倒れてるところを必死に助けてたでしょー!あたし見ちゃったんだ!」
「は、はい…確かに」
莉緒奈は思い出した。
《ドミネイト》の怪人を倒した帰り、白い子猫が親猫を呼んで鳴いていたことを。
ーよしよ~し。もう、鳴かないでください。あんっ…胸に抱きついちゃ、だめです…♡
そのまま一時期保護し、信頼できる方に引き取ってもらったのだ。
「でも、それがどうして…?」
「あたし思ったの。莉緒奈さんはいつも成績もトップで、どんな学校行事もひたむきに頑張ってて、猫も助けるなんてかっこいい人だなって!」
「わたしが、かっこいい…?」
「そんな理由で声をかけたら、迷惑かな?」
「…」
莉緒奈は、今胸の中にある気持ちを正直に答える。
「嬉しいです…!恵里さん、私と…」
「うん!友達になろー!」
「あっ!まだ言ってません!」
「莉緒奈さんは感情がすぐ顔に出るからね~」
「あうう…」
「よかったら遊びに行かない?チケットが1枚余っててね…」
ささやからながらも確かな友情を感じ、莉緒奈の友情は和らぐのであった。
****
「ここが、そうなのですか?」
「うん!他の人に薦められるとちょっと驚かれるんだけど…どうかな?」
放課後。
恵里に連れられ、莉緒奈はある場所にいた。
市民体育館にパイプ椅子が並べ、中央には四角形のリングが置かれた異様な空間。
「がんばれー!」
「今日の試合どうなるかな。楽しみ!」
女性客が多く詰めかけており、黄色い声援を上げている。
「もしかして、プロレスですか?」
「そうなの!昔人気が低迷していたけど最近は復活しててね。女性ファンも多いんだー!」
「なるほど…怪人と戦う時の参考になるやもしれませんね」
「?」
莉緒奈も多少興味のある分野だったため、恵里と共に試合開始を待つことにした。
だが、現れない。
開始時間が過ぎても、選手も司会も誰一人現れなかった。
観客が不審の声をあげ始めた時ー、
「聞きな!人間どもぉ!」
荒々しい声と共に、リングに何者かが勢いよく飛び込んでくる。
見た目は下級怪人であるゴブリンに類似していた。
だが、ほぼ半裸である彼らとは違い、黒いレザーでできたボンテージに身を包んでいる。
胸には膨らみがあり、一応女性であることを示していた。
「あたしゃヒールってんだ!今からこのプロレスリングは《ドミネイト》さまが乗っ取った!大人しくしやがれ!」
手にもった鞭をヒールが振り下ろすと、下級怪人であるゴブリンが数体現れる。
「「「ブヒィィィィイイ!!!」」」
どうやら女性客を拉致するつもりらしい。
****
「きゃああああああ!」
「助けてえええええええ!」
たちまち観客はパニックに陥り、入り口に目掛けて殺到してくる。
だが、そこにもゴブリンが先回りしており、女性客を次々と捕らえていた
「た、大変!莉緒奈さん!あたしたちも逃げよう!」
「…右側奥の入り口はゴブリンがいないようです。そこから逃げてください」
「何言ってるの?莉緒奈ちゃんも…」
「私は大丈夫です」
「莉緒奈ちゃん…?」
動揺する恵里に、莉緒奈は微笑む。
「心配ありません。だから、先に行っててください」
「…わかった。無理だけはしないでね!すぐに警察呼んでくるから!」
恵里は唯一残された入り口から去っていく。
それを確認してから、莉緒奈はポケットからブルージュエルを取り出した。
「…変身!」
周囲は光に包まれ、莉緒奈は怪人と戦う準備を始めた。
****
「舞曲!」
「ブヒィィィィイイイイイッ!」
退魔剣姫リオナはゴブリンの1体を切り裂き、消滅させた。
他のゴブリンやヒールは動揺し、こちらを振り返る。
ヒールは怒りの表情を浮かべ叫んだ。
「なんだぁ!うちの可愛いゴブリンに手ェ出しやがって!」
「…あなた方に怒る権利はありません」
リオナは怯まない。
今の彼女は勇気、そして怒りが満ちていた。
「多くの人が楽しむためのイベントを台無しにし、多くの女性を…そして、私の友人を危機に晒しました。絶対に許しません」
自らプロレスリングに飛び込み、ヒールにサーベルを突きつける。
「退魔剣姫リオナ!か弱い人々を守るため、あなた方を倒します!」
「てめえ、うちの活動を邪魔してる退魔剣姫ってやつか!面白い、受けて立とうじゃない!」
ヒールも鞭を構え、臨戦態勢を整える。
こうして、再び戦いが幕を開けた。
恵里に連れられたのは、姫宮高校の食堂。
どの料理も美味しいと評判で、昼時には大勢の学生が集っている人気スポットだ。
莉緒奈も興味はあったが、一人で行くのは抵抗があり、行ったことがない。恵里の誘いがなければ卒業まで行けないままだったろう。
(こんなに人がいるなんて…うぅ…恥ずかしいです…)
「莉緒奈さんは何頼むー?」
「え?な、なんでも、いいです…」
「分かった!じゃあ一緒に行こっ!」
「あ、あぅ…」
莉緒奈の心情を知ってか知らずか、恵里は手をぐいぐいと引っ張っていく。
(変身したら…もう少し大胆になれるのでしょうか。でも、あんなドレスをみんなに見られたら、恥ずかしくてそれどころじゃないかも… )
「ほら、莉緒奈さんも注文して!」
「は、はい…じゃあ、天ぷらうどんで…」
大胆な変身姿を思い出して顔を赤くしながら、莉緒奈は初の注文を終えるのであった。
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「う~~~~~ん、おいし~~~~!」
数分後。
天ぷらうどんは無事2人の元に届き、恵里は早速堪能し始めた。
「い、いただきます」
莉緒奈も箸を上品に割り、麺をつまんで口に運んだ。麺類、特にうどんは屋敷で出されないため、人生はじめての経験である。
恐る恐る味を確かめるがー、
「あ…おいしい!」
「でしょでしょ~?」
「これが、みなさんが食べてるものなんですね」
「莉緒奈さん、いつもお昼ご飯何も食べてないから心配だったけどよかった!これからは一緒にご飯しない?」
「恵里さん…」
莉緒奈の胸に熱いものが込み上げる。だが、同時に疑問を浮かんだ。
「その…1つお聞きして良いでしょうか」
「?どうしたの?」
「なぜ、恵里さんは私に声をかけてくれるのですか?私はいつも引っ込み思案で、なんの魅力もなくて、ウジウジしてるのに…」
「…そんなことないよ」
「え?」
「あたし、見ちゃったんだ」
「見た…まさか!」
(変身を見られた!?恵里さんを戦いに巻き込むのは…)
身構える莉緒奈だったがー、
「莉緒奈さんが子猫助けるところ!」
答えは予想外のものだった。
「…え?」
「1週間前、道で子猫が倒れてるところを必死に助けてたでしょー!あたし見ちゃったんだ!」
「は、はい…確かに」
莉緒奈は思い出した。
《ドミネイト》の怪人を倒した帰り、白い子猫が親猫を呼んで鳴いていたことを。
ーよしよ~し。もう、鳴かないでください。あんっ…胸に抱きついちゃ、だめです…♡
そのまま一時期保護し、信頼できる方に引き取ってもらったのだ。
「でも、それがどうして…?」
「あたし思ったの。莉緒奈さんはいつも成績もトップで、どんな学校行事もひたむきに頑張ってて、猫も助けるなんてかっこいい人だなって!」
「わたしが、かっこいい…?」
「そんな理由で声をかけたら、迷惑かな?」
「…」
莉緒奈は、今胸の中にある気持ちを正直に答える。
「嬉しいです…!恵里さん、私と…」
「うん!友達になろー!」
「あっ!まだ言ってません!」
「莉緒奈さんは感情がすぐ顔に出るからね~」
「あうう…」
「よかったら遊びに行かない?チケットが1枚余っててね…」
ささやからながらも確かな友情を感じ、莉緒奈の友情は和らぐのであった。
****
「ここが、そうなのですか?」
「うん!他の人に薦められるとちょっと驚かれるんだけど…どうかな?」
放課後。
恵里に連れられ、莉緒奈はある場所にいた。
市民体育館にパイプ椅子が並べ、中央には四角形のリングが置かれた異様な空間。
「がんばれー!」
「今日の試合どうなるかな。楽しみ!」
女性客が多く詰めかけており、黄色い声援を上げている。
「もしかして、プロレスですか?」
「そうなの!昔人気が低迷していたけど最近は復活しててね。女性ファンも多いんだー!」
「なるほど…怪人と戦う時の参考になるやもしれませんね」
「?」
莉緒奈も多少興味のある分野だったため、恵里と共に試合開始を待つことにした。
だが、現れない。
開始時間が過ぎても、選手も司会も誰一人現れなかった。
観客が不審の声をあげ始めた時ー、
「聞きな!人間どもぉ!」
荒々しい声と共に、リングに何者かが勢いよく飛び込んでくる。
見た目は下級怪人であるゴブリンに類似していた。
だが、ほぼ半裸である彼らとは違い、黒いレザーでできたボンテージに身を包んでいる。
胸には膨らみがあり、一応女性であることを示していた。
「あたしゃヒールってんだ!今からこのプロレスリングは《ドミネイト》さまが乗っ取った!大人しくしやがれ!」
手にもった鞭をヒールが振り下ろすと、下級怪人であるゴブリンが数体現れる。
「「「ブヒィィィィイイ!!!」」」
どうやら女性客を拉致するつもりらしい。
****
「きゃああああああ!」
「助けてえええええええ!」
たちまち観客はパニックに陥り、入り口に目掛けて殺到してくる。
だが、そこにもゴブリンが先回りしており、女性客を次々と捕らえていた
「た、大変!莉緒奈さん!あたしたちも逃げよう!」
「…右側奥の入り口はゴブリンがいないようです。そこから逃げてください」
「何言ってるの?莉緒奈ちゃんも…」
「私は大丈夫です」
「莉緒奈ちゃん…?」
動揺する恵里に、莉緒奈は微笑む。
「心配ありません。だから、先に行っててください」
「…わかった。無理だけはしないでね!すぐに警察呼んでくるから!」
恵里は唯一残された入り口から去っていく。
それを確認してから、莉緒奈はポケットからブルージュエルを取り出した。
「…変身!」
周囲は光に包まれ、莉緒奈は怪人と戦う準備を始めた。
****
「舞曲!」
「ブヒィィィィイイイイイッ!」
退魔剣姫リオナはゴブリンの1体を切り裂き、消滅させた。
他のゴブリンやヒールは動揺し、こちらを振り返る。
ヒールは怒りの表情を浮かべ叫んだ。
「なんだぁ!うちの可愛いゴブリンに手ェ出しやがって!」
「…あなた方に怒る権利はありません」
リオナは怯まない。
今の彼女は勇気、そして怒りが満ちていた。
「多くの人が楽しむためのイベントを台無しにし、多くの女性を…そして、私の友人を危機に晒しました。絶対に許しません」
自らプロレスリングに飛び込み、ヒールにサーベルを突きつける。
「退魔剣姫リオナ!か弱い人々を守るため、あなた方を倒します!」
「てめえ、うちの活動を邪魔してる退魔剣姫ってやつか!面白い、受けて立とうじゃない!」
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