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2 名前

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 オレ達の名前の話をしよう。

 コウちゃんと一緒の小学校に通う様になって暫くして。コウちゃんが言ったんだ。

「ぼく、本当はひかりって名前好きじゃないんだ」

 コウちゃんはいまだに、うらかわを、うりゃかわって言ってしまう。だからクラスのみんなに「うりゃちゃん」て呼ばれてる。

 それを嫌がってるのを知ってたから、オレは「ひかりくん」って呼んでた。

「何で嫌なの?綺麗な名前なのに」
「だって、女の子みたいだから」

 もじもじとするコウちゃんは、ほんのり頬を赤くして可愛かった。コウちゃんは小さいし、確かに女の子みたいだ。言ったら多分怒るから言わないけど。

 でも名前を変えるの難しいし。そこで、あ!と閃めく。

「じゃあ、コウは?」
「コウ?」
「光て書いてコウて読めるって先生が言ってた」
「コウ…なんかカッコいいかも!」

 それからオレとコウちゃんだけの2人だけの呼び名を一緒に考えた。

 オレはスグルをタクって呼んでたっくん。
 ひかりはコウちゃんて呼ぶ。

 2人だけの呼び名。なんか2人だけの秘密の暗号みたいで、ワクワクした。



◆◆◆



 ぼくらの名前の話をしよう。

 みんなはぼくを「うりゃちゃん」と呼ぶ。ぼくは自分の名前が言えないのが恥ずかしい。だから本当はうりゃちゃんて呼ばないでって言いたいのに、気が小さいぼくは言えなかった。

「ひかりくん」

 たっくんは、ぼくがうりゃちゃんと呼ばれるのを嫌がってるのを知っていて、名前で呼んでくれる。

 でも本当は、ひかり、も女の子みたいで恥ずかしいんだ。

 ぼくの様子がおかしいのを見て、たっくんにどうしたの?て聞かれた。たっくんなら、本当の事を話しても平気かな?

 ぼくは恐る恐る、自分の名前のコンプレックスを話した。

 そしたら、たっくんはうんうん考えて、コウって素敵な呼び名を考えてくれた!

 ならぼくも!

 それまで、すぐるくんって呼んでたのを、たっくんて呼ぶのはどう?て提案してみた。

「なんか、暗号みたいでカッコいい!」

 なんか違うと思ったけど、たっくんがとっても喜んでくれたから、まあいいか。

 2人だけの呼び名。そう考えたら、ワクワクして、なんだかちょっとドキドキした。
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