【完結】壊された女神の箱庭ー姫と呼ばれていきなり異世界に連れ去られましたー

秋空花林

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第五章 果てなき旅路より戻りし者

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 その後、改めてベイティ主導で話し合いが行われた。

 真剣な話し合いの筈だったが、甘ったるい雰囲気の太陽とルース。感動で涙が止まらないユナと鳥族の長。そして甥の生還と婚約に感激ひとしおのベイティのお陰で、何と無く場は和んだまま開かれた。

「とりあえず…婚約おめでとうございます」
「ありがとうございますぅ…うぅ」

 アキエスの言葉に、太陽が泣き、ユナと鳥の長と、とうとう悪男もつられた。ベイティまで目元を押さえて堪えている。

「お祝いでは無いですが、一刻も早く北の瘴気を解決しましょう。中央は勇者が仰られた上の土地を差し出します」
「南も海沿いにある土地を出そう。まだ開拓されてない土地だから被害も最小限に出来る」

 アキエスとベイティがあっさり瘴気の受入を表明した。

 それを見て、比較的冷静な空が呆れた声を出す。

「お前達いくら何でも軽すぎないか?浄化するのにはこれから何百年もかかるんだぞ?」
「私達は勇者様の仰る通りにするだけです」

 長い物に巻かれるタイプのアキエスはニッコリ微笑んだ。初めから、金の者に楯突くなど微塵も考えていない。

「ルースの幸せの為も勿論だが、我々が生き抜くにはこれしかないだろう」

 意外にもベイティはちゃんと考えての結論だった。なら空だって文句などあろう筈も無い。

 こうして魔王が抱えている瘴気の受入先が決まった。



◇◇◇



 受入先が決まれば、後は実際に魔王を呼んで瘴気を移し、そこへ光の封印をかけるだけだ。

 だがその前に各地での瘴気の受入を表明をする必要があった。

 前回は西で瘴気の正体を発表した。
 その時に太陽は金の者として、これからどうすべきか北へ行き見定めてくると宣言していたからだ。

 今回は北へ行って瘴気についてどう対応していくかをこの南の地で発表する予定だった。



 エルフの館の大広間に大勢の者達が集められた。エルフ以外にも、各地の長の護衛でついて来た数人の銀狼、鳥族、人間達がいる。

 壇上には再び金の髪と目に変化させた太陽とルース、空や悪男、長達とユナが並んでいた。

 まず、太陽から魔王に会いこの世界の歪みを修復する為各地で瘴気の浄化を受け入れる事になった経緯、各地のその場所、そして今後起こるであろう災害に対処する為、新しい組織を立ち上げる事が発表された。

 勿論、太陽は目立ちたくないので嫌々だったがこれもルースと幸せになる為だと腹を括って頑張った。

 次にベイティから、300年前の対戦に関しての発表があった。それは主にエルフと人間達に対しての物だったが、特にエルフに対しては残酷な事実だった。

 魔王と称して対峙したのは、本物の魔王では無く、人々に魔王を憎ませる様に仕向けた存在であったと。

 魔王自身は金の勇者がずっと抑えていた為、正気を保ち勇者と共に瘴気を浄化しつづけていたと。

 重苦しい空気の中、エルフ族の奥から叫び声が上がった。

「嘘だ!みんな騙されるな!その者は元は黒を纏っていたでは無いか!」
「そうだ!我らが女神様がそんな事する訳ない!」

 叫んだのはほんの数人だった。太陽は知らないが、エルフ族の中でも有名な過激な女神崇拝者達だった。

「そうだ、みんな目を覚ませ!ワシの娘はその者を見破って投獄された!そやつは偽物だ!」

 少し離れた場所からも太陽を糾弾する声が上がった。

 ザワザワと声が広がっていく。太陽を怪しむというよりは、声を上げた者達に白けている様にも見えた。

「あの愚か者ども…!」

 ベイティが怒りに目を剥く。その目が好戦的に光を帯び始めた。

 ベイティが歯向かう者達へ制裁を加える前に太陽が動いた。

 数歩前に歩くと、太陽を糾弾した者達へ右腕を上げ、手の平を向けた。その目は爛々と金に光っていた。



ーーー

 次話、第五章の最終話です。
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