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第二章 闇に囚われし緑よ、いずれ

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 翌日。

 ルースの魔法によって、3人の見た目を変化させた。

 太陽は焦茶の髪と瞳。
 同じ様にルースと空は少し明るめの茶色を纏った。

 空はそのままだと大きすぎるので、小さな子犬のサイズに変化した。

 あまりの可愛いさに太陽が興奮して抱き上げると、空は得意げにフンッと鼻を鳴らした。

 普段の大人の時は生意気に感じるその仕草さも、子犬だと許せるから不思議だ。

 そうして2人と一匹は、東大陸の南側にある村の1つに辿り着いた。

 森の外は森神の聖気が届かないから魔物が出る可能性があると聞いていたが、訪れた村はとても長閑のどかで平和だった。

 小さな宿と道具屋がある位で、後は普通の村民の家が立ち並ぶ小さな村だった。

 村の周りには多くの野菜畑が並んでいた。どうやら村民のほとんどが畑で生活を立てている様だった。

 チラホラと見かける村人は皆、茶系の髪と目をしていた。ルースが自分達の髪と目の色は目立つという意味を理解した。

 太陽が物珍しさに村を見回しながらルースについていくと、ルースは宿屋に入った。

 カウンターには焦茶の髪と瞳の中年男性が座っていた。若干顔がお疲れ気味だ。

 ルースを見つけると、よぉ、ルース久しぶりだな!と声をかけて来た。

「久しぶり。南の街に行きたいんだけど次の馬車はいつかな?」
「明日の昼前だな。今日は泊まっていくか?」
「あぁ。2部屋頼みたい」

 ルースの言葉に2部屋?と怪訝な顔をした店主に、ルースが太陽を紹介した。

 訳あって一緒に南の街まで行くことになったと説明してくれた。

「そうか、そうか。ルースが一緒なら道中の魔物も心配ないからな。今日はウチでゆっくりしていけ」
「ありがとうございます。こいつも一緒で良いですか?」

 太陽が子犬の空を抱き上げてマスターに見せた。

「悪さしないならいいぞ」
「ちゃんという事聞くので大丈夫です」

 空が太陽に返事する様に軽くワンと鳴いた。それを見たマスターが賢い犬だな!と笑った。

 ルースがチェックインの手続きを終えると、太陽を振り返る。

 ルースは今から村を見て回るけど太陽も一緒に行くかと尋ねられた。

 太陽も情報収集はしないといけないので、同行させてもらう事にした。

 村を散策して気づいた事。

 何だか皆、疲れた顔をしている。それに何となく村全体の空気が重い気がした。
 
「何だか空気が重いですね」

 何気なく呟いた太陽の言葉に、ルースと空が太陽を振り返った。

「俺何か変な事言いました?」
「違う。逆だよ。鋭くて驚いたんだ」

 ルースが肩を竦めて畑に向かって歩いて行く。

 どういう意味だろ?不思議に思う太陽に空が小声で話しかけた。

「ここは瘴気で澱んでいる」
「瘴気?澱む?どういう事?」
「オレの森神の能力は森と獣にしか効かない。だから同じ東の土地でも、ここは瘴気が祓えない。だから今もこの地は瘴気が人や土地を蝕んでいる」

 ゾッとした。
 少しずつ毒を与えられてる様な物だ。

「何かこの土地の人を救う方法は無いの?」
「ない。人の土地は金の者にしか守れない」

 光の女神を怒らせたこの世界の人間は少しずつ滅びに向かっている。

 その現実を初めて目の当たりにして太陽は憂鬱な気分になった。
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