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第二部 乙女ゲーム?中等部編
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上の配慮か知らないが、漏れなくオレ、ジェード、スペッサ、トンガリ君、それにシレネ、王子もメガネ君までも同じクラスだった。
嫌な予感しかしないよ~。
朝からの出来事でオレがグッタリしてる間に、オリエンテーションは終わり、授業が始まった。
貴族学校は、貴族の子供が立派な貴族になる為に通う学校だ。
最低限な知識やマナーは各家で行うが、更に高度な知識やマナー。社交性の勉強や同年代の交流はここで学ぶ。
卒業後、能力に合わせて騎士や魔術士、城内勤めとして働く。もちろん家督の跡取りとして各領地に戻ったり、令嬢はそのまま結婚するケースも多いそうだ。
だからか令嬢は、剣や魔法に関しては手を抜く奴らが多いらしい。
まさしく今も。
「私こんなの出来ませんわ」
「野蛮ですもの」
渡された剣を次々と令嬢達が放り出していく。
オレ達のクラスは全員がどの程度、体力や実力があるかチェックの為に、剣の練習場所に集められていた。
男女、ズボンに着替えて運動できる状態だ。そして、これから剣の実力を先生に見せるぞという時に令嬢達のボイコットが始まったのだ。
その様子をトンガリ君が汚い物を見る様に冷たい視線を向けている。多分、女のこういう所が嫌いなんだろうな。
複雑な表情のオレに、何を勘違いしたのかジェードが声をかけて来た。
「ヴィラトリア嬢も、もしキツければ無理はしないで」
「いえ、大丈夫ですの」
そういえば、ジェードと会ってから剣の練習が取りやめられたから。オレが剣を習ってたのをジェードは知らないんだ。
「ちょっとだけ習ってましたの。それより、シレネをフォローしてあげて欲しいですの」
「シレネ?あぁ、そうだね」
本当はオレがフォローしてあげたかったけど。王子に目をつけられたっほいからね。シレネのフォローはジェードにお願いした。
ジェードがシレネの側に行き、話しかけるのが見えた。クラスで浮き気味のシレネも、優しい雰囲氣のジェードに話しかけられて、安心した表情を浮かべている。良かった。
「ふん、自分の婚約者が他の女の元に行って悔しいんじゃないのか?」
嫌味な声がした。振り向けばメガネ君だった。何だ?こいつ。
「いいえ、別に」
「ふん、お前はいつも男を侍らせてるんだろ?なのに自ら戦う必要があるのかな?銀髪の小悪魔嬢」
くっくっ、とメガネ君が馬鹿にする様に笑った。
銀髪の小悪魔嬢。その言葉で分かった。前にオレが誕生日でやらかした醜態を知ってるんだと。
オレの側にいたスペッサとトンガリ君も、殺気だつ。あの頃は本当にガキだったコイツらも、今は自分達がやった行動がどれだけオレに迷惑をかけたか自覚している。
だから人前では、以前ほどベタベタはしてこなくなった。なのに、その噂はいつまでもオレについて回る。
オレより先にブチギレたのはトンガリ君だった。
「ヴィラ嬢はそんな軟弱じゃない!」
「ふん、騎士の名家コーラル家も腑抜けとはな」
「何だと!?」
「トンガリ君、やめてくださいの」
オレが止めた事でトンガリ君は押し黙った。オレや家を侮辱されて悔しそうだ。
メガネ君が、トンガリクンとは誰だ?と聞いてきたが無視した。
「そんなに言うなら、ワタクシの相手を貴方がしてくださいの」
「はぁ?何故この俺が令嬢の相手を?」
メガネ君は明らかに馬鹿した表情を浮かべる。
「怖いんですの?ワタクシも多少は剣を習いましたの。ワタクシが本当に守られてるだけか貴方自ら確かめたらいいですの」
「…………言ったな?後悔するなよ」
メガネ君が殺気だって、剣を抜いた。反射する光の加減で上等な剣だと分かる。
オレも本気で相手をする為に、腰に刺していた2本の短剣を抜いて両手で構えた。
「おい!ブラウ!何をしている!」
邪魔して来たのは王子だった。その登場にメガネ君がホッと安堵の息を吐いたのが見えた。
「ネフリティス様。そこの令嬢が自ら自分の強さを確かめろと言って来たのです」
「そうですの。だから邪魔はしないで下さいの」
「な、お前、本気か?」
メガネ君が狼狽える。剣で侯爵令嬢を怪我させたら一大事。でも話の流れで引くに引けない。たがら王子からの仲裁は望むところというとこだろう。
でも、そうは問屋が下さないよ。
「ピカリンコメガネ!貴方の言った言葉は全令嬢、全女性に対する侮辱行為ですの!」
「な、なんだと?」
「令嬢は男に守られてるのが当たり前。貴方はワタクシにそう言いましたの!」
「そ、それは、お前が」
「本当にワタクシが、女性が守られてばかりの弱い存在か。逃げずにワタクシの剣を受けなさい!」
ぶちっと何かが切れた音がした。多分メガネ君の堪忍袋だね。
「言ったな!かかってこい!」
「あ、おい、ブラウ!」
「第三者は引っ込んでなさいの!トンガリ君!」
「任せろ!」
トンガリ君が王子を羽交いにして、後ろに引きずる。スペッサも正面から押して王子をオレ達から引き離した。
「生意気な令嬢め!かかってこい!」
メガネ君が全部言い切る前に、オレは全速力で駆け出した。
実際の実践では相手は獣や魔物。こっちのタイミングは待ってくれないんだよ。
いきなりのオレの短剣にピカリメガネは焦りながらも反応した。左から来た短剣を剣で受け止め、右からの短剣は身を引いて避けた。
なかなかいい反応だけど、まだまだだ。
相手が反撃で横に振った剣をオレはしゃがんで避けると、今度は思い切りジャンプして高く跳んだ。そしてはらったままだったメガネ君の腕を足蹴にして、更に高く跳んだ。デカいリボンもふよふよと揺れた。
「なっ!」
「遅いですの!」
空を舞ったオレを、驚愕の表情で見上げてくる。その顔をオレは思い切り踏んづけた!
「ぐあっ」
そのままメガネ君は後ろに倒れる。オレは回転しながら華麗に着地した。
そしてー。
「これが実践なら死んでますの」
「…まいった」
首筋に当て短剣に観念したのか。仰向けに倒れ、頭側からオレに覗き込まれた状態で、メガネ君は降参を口にした。
周囲で様子を見ていたクラスメイトはポカーンとしてる。ジェードやシレネさえもだ。
見た目がド派手なちびっ子令嬢が、短剣両手に同級生の男子と戦って顔を踏んづけたんだ…無理もないか。
そんな中、トンガリ君とスペッサが嬉しそうに駆け寄って来てくれた。
「さっすがヴィラ嬢だ!やはり稽古は続けていたんだな!」
「ヴィラ!すごいね~!かっこ良かったよ!」
「トンガリ君、スペッサ…」
いたたまれない空気の中、真っ先き駆け寄ってきた2人に胸があったかくなった。
気持ちに余裕が出来たオレは倒れたままだったメガネ君の手を引っ張り起こした。シレネの時みたいに埃もはらってやる。
「ヴィラトリア嬢は…本気で剣を学んだんだな」
「はい。やっぱり最後に自分の身を守るのは、自分自身ですの」
「そうか。すまなかった」
メガネ君が頭を下げてきた。先ほどと違って誠意を感じる。オレの中の怒りもおさまっていた。
「もういいですの。女だってやる時はやるんだって分かってくれたらいいですの」
「あぁ、悪かった。ところで…」
言い淀みながら、こちらを伺う様に見てくる。
「ピカリンコメガネとは…誰の事だ?」
「……………」
オレは誤魔化す為にとびっきりの笑顔を浮かべた。
「ワタクシ、メガネをしている方が好きなんですの。知的で素敵で。特に貴方の様な素敵なメガネ姿にうっとりしてしまって。もし迷惑なら次から気をつけますの」
「……いや構わない」
顔を真っ赤にしたメガネ君は、ひび割れたメガネを中指で直しながら、照れたように言った。
「そうか。メガネが好きなら仕方ない。俺の事は好きな様に呼んでくれて構わない」
「え?」
そうして、彼のあだ名は公認でメガネ君になった。
嫌な予感しかしないよ~。
朝からの出来事でオレがグッタリしてる間に、オリエンテーションは終わり、授業が始まった。
貴族学校は、貴族の子供が立派な貴族になる為に通う学校だ。
最低限な知識やマナーは各家で行うが、更に高度な知識やマナー。社交性の勉強や同年代の交流はここで学ぶ。
卒業後、能力に合わせて騎士や魔術士、城内勤めとして働く。もちろん家督の跡取りとして各領地に戻ったり、令嬢はそのまま結婚するケースも多いそうだ。
だからか令嬢は、剣や魔法に関しては手を抜く奴らが多いらしい。
まさしく今も。
「私こんなの出来ませんわ」
「野蛮ですもの」
渡された剣を次々と令嬢達が放り出していく。
オレ達のクラスは全員がどの程度、体力や実力があるかチェックの為に、剣の練習場所に集められていた。
男女、ズボンに着替えて運動できる状態だ。そして、これから剣の実力を先生に見せるぞという時に令嬢達のボイコットが始まったのだ。
その様子をトンガリ君が汚い物を見る様に冷たい視線を向けている。多分、女のこういう所が嫌いなんだろうな。
複雑な表情のオレに、何を勘違いしたのかジェードが声をかけて来た。
「ヴィラトリア嬢も、もしキツければ無理はしないで」
「いえ、大丈夫ですの」
そういえば、ジェードと会ってから剣の練習が取りやめられたから。オレが剣を習ってたのをジェードは知らないんだ。
「ちょっとだけ習ってましたの。それより、シレネをフォローしてあげて欲しいですの」
「シレネ?あぁ、そうだね」
本当はオレがフォローしてあげたかったけど。王子に目をつけられたっほいからね。シレネのフォローはジェードにお願いした。
ジェードがシレネの側に行き、話しかけるのが見えた。クラスで浮き気味のシレネも、優しい雰囲氣のジェードに話しかけられて、安心した表情を浮かべている。良かった。
「ふん、自分の婚約者が他の女の元に行って悔しいんじゃないのか?」
嫌味な声がした。振り向けばメガネ君だった。何だ?こいつ。
「いいえ、別に」
「ふん、お前はいつも男を侍らせてるんだろ?なのに自ら戦う必要があるのかな?銀髪の小悪魔嬢」
くっくっ、とメガネ君が馬鹿にする様に笑った。
銀髪の小悪魔嬢。その言葉で分かった。前にオレが誕生日でやらかした醜態を知ってるんだと。
オレの側にいたスペッサとトンガリ君も、殺気だつ。あの頃は本当にガキだったコイツらも、今は自分達がやった行動がどれだけオレに迷惑をかけたか自覚している。
だから人前では、以前ほどベタベタはしてこなくなった。なのに、その噂はいつまでもオレについて回る。
オレより先にブチギレたのはトンガリ君だった。
「ヴィラ嬢はそんな軟弱じゃない!」
「ふん、騎士の名家コーラル家も腑抜けとはな」
「何だと!?」
「トンガリ君、やめてくださいの」
オレが止めた事でトンガリ君は押し黙った。オレや家を侮辱されて悔しそうだ。
メガネ君が、トンガリクンとは誰だ?と聞いてきたが無視した。
「そんなに言うなら、ワタクシの相手を貴方がしてくださいの」
「はぁ?何故この俺が令嬢の相手を?」
メガネ君は明らかに馬鹿した表情を浮かべる。
「怖いんですの?ワタクシも多少は剣を習いましたの。ワタクシが本当に守られてるだけか貴方自ら確かめたらいいですの」
「…………言ったな?後悔するなよ」
メガネ君が殺気だって、剣を抜いた。反射する光の加減で上等な剣だと分かる。
オレも本気で相手をする為に、腰に刺していた2本の短剣を抜いて両手で構えた。
「おい!ブラウ!何をしている!」
邪魔して来たのは王子だった。その登場にメガネ君がホッと安堵の息を吐いたのが見えた。
「ネフリティス様。そこの令嬢が自ら自分の強さを確かめろと言って来たのです」
「そうですの。だから邪魔はしないで下さいの」
「な、お前、本気か?」
メガネ君が狼狽える。剣で侯爵令嬢を怪我させたら一大事。でも話の流れで引くに引けない。たがら王子からの仲裁は望むところというとこだろう。
でも、そうは問屋が下さないよ。
「ピカリンコメガネ!貴方の言った言葉は全令嬢、全女性に対する侮辱行為ですの!」
「な、なんだと?」
「令嬢は男に守られてるのが当たり前。貴方はワタクシにそう言いましたの!」
「そ、それは、お前が」
「本当にワタクシが、女性が守られてばかりの弱い存在か。逃げずにワタクシの剣を受けなさい!」
ぶちっと何かが切れた音がした。多分メガネ君の堪忍袋だね。
「言ったな!かかってこい!」
「あ、おい、ブラウ!」
「第三者は引っ込んでなさいの!トンガリ君!」
「任せろ!」
トンガリ君が王子を羽交いにして、後ろに引きずる。スペッサも正面から押して王子をオレ達から引き離した。
「生意気な令嬢め!かかってこい!」
メガネ君が全部言い切る前に、オレは全速力で駆け出した。
実際の実践では相手は獣や魔物。こっちのタイミングは待ってくれないんだよ。
いきなりのオレの短剣にピカリメガネは焦りながらも反応した。左から来た短剣を剣で受け止め、右からの短剣は身を引いて避けた。
なかなかいい反応だけど、まだまだだ。
相手が反撃で横に振った剣をオレはしゃがんで避けると、今度は思い切りジャンプして高く跳んだ。そしてはらったままだったメガネ君の腕を足蹴にして、更に高く跳んだ。デカいリボンもふよふよと揺れた。
「なっ!」
「遅いですの!」
空を舞ったオレを、驚愕の表情で見上げてくる。その顔をオレは思い切り踏んづけた!
「ぐあっ」
そのままメガネ君は後ろに倒れる。オレは回転しながら華麗に着地した。
そしてー。
「これが実践なら死んでますの」
「…まいった」
首筋に当て短剣に観念したのか。仰向けに倒れ、頭側からオレに覗き込まれた状態で、メガネ君は降参を口にした。
周囲で様子を見ていたクラスメイトはポカーンとしてる。ジェードやシレネさえもだ。
見た目がド派手なちびっ子令嬢が、短剣両手に同級生の男子と戦って顔を踏んづけたんだ…無理もないか。
そんな中、トンガリ君とスペッサが嬉しそうに駆け寄って来てくれた。
「さっすがヴィラ嬢だ!やはり稽古は続けていたんだな!」
「ヴィラ!すごいね~!かっこ良かったよ!」
「トンガリ君、スペッサ…」
いたたまれない空気の中、真っ先き駆け寄ってきた2人に胸があったかくなった。
気持ちに余裕が出来たオレは倒れたままだったメガネ君の手を引っ張り起こした。シレネの時みたいに埃もはらってやる。
「ヴィラトリア嬢は…本気で剣を学んだんだな」
「はい。やっぱり最後に自分の身を守るのは、自分自身ですの」
「そうか。すまなかった」
メガネ君が頭を下げてきた。先ほどと違って誠意を感じる。オレの中の怒りもおさまっていた。
「もういいですの。女だってやる時はやるんだって分かってくれたらいいですの」
「あぁ、悪かった。ところで…」
言い淀みながら、こちらを伺う様に見てくる。
「ピカリンコメガネとは…誰の事だ?」
「……………」
オレは誤魔化す為にとびっきりの笑顔を浮かべた。
「ワタクシ、メガネをしている方が好きなんですの。知的で素敵で。特に貴方の様な素敵なメガネ姿にうっとりしてしまって。もし迷惑なら次から気をつけますの」
「……いや構わない」
顔を真っ赤にしたメガネ君は、ひび割れたメガネを中指で直しながら、照れたように言った。
「そうか。メガネが好きなら仕方ない。俺の事は好きな様に呼んでくれて構わない」
「え?」
そうして、彼のあだ名は公認でメガネ君になった。
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