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第2部 呪いの館 救出編
34話
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ーキスされる。
華は身を強張らせた。
咄嗟に身をよじって逃れようする華を、勇輝が両肩を掴んで、乱暴に自分の方に向かせた。
「…何で逃げんだよ」
勇輝が泣きそうに華を見つめてくる。その距離感が今の華には怖い。
「怜の事が好きになった?もう今さら遅い?」
「ち…違うの」
微かに華が震えてるのを見て、勇輝が怪訝そうな表情をする。
「…男の人に…襲われそうに…なって」
「!?」
勇輝が驚愕の表情で、華の肩から手を離した。
ごめん!と謝って、華から少し距離をとった。そのまま、両手で顔を押さえて項垂れた。
「俺…最低だ、ホントごめん、余裕なくて」
「大丈夫。何ともなかったから」
「怜が助けたのか?」
「ううん、スタンガンとか催涙スプレーとか準備してたから。自分で撃退できたの」
一瞬勇輝はぽかんとした表情を浮かべた後、泣きそうな顔で笑った。
「良かった、何ともなくて。華強くなったな」
強くなった。
華から見て、精神的に強い人だと思っていた勇輝に褒められ、嬉しくなった。
「ありがとう。あと、勇ちゃんと怜ちゃんの事。ちゃんと考えるって言ったの忘れてないよ。今まで帰るのに必死で、それどころじゃなかったから」
だからもう少し待って、と言った華に、勇輝が複雑そうな表情を浮かべる。
「……」
「…勇ちゃん?」
「……帰ったらきっとすごく怒られるぞ」
「え?誰に?」
「親に決まってんだろ」
勇輝が言うには、桃の祖母は最初から。そして華と勇輝の親は入院した次の日に病院に駆けつけたらしい。
そろそろ怜の親も帰国して、病院に着いてるかもしれないそうだ。
しかも。せっかく目覚めた怜は、華の元に行く為、華の病室でそのまま再び昏睡状態へ。
華の両親も病院も大パニックだったらしい。その上、今回は勇輝も怜と同じ事をしてこちらにやって来た。
向こうでは、桃以外の3人が眠りから目覚めない状態らしい…。
「な、なにそれ!怖い!」
「だろ!?まだいっその事、2人同時だったらマシだったのに…」
勇輝がぶつぶつ文句を言っている。もしかして先程あんなに怜に怒ってたのは、これのせい?
ガチャ
離れた所からドアが開く音がした。
怜かもしれない。
勇輝が食堂へ出て行った。何やら話し声がして、勇輝だけ戻ってくる。
「華、少し怜と話してくるから。もう風呂入って休んでてもいいから」
「わかった。怜ちゃんにも何か食事取るように伝えてね」
「わかった」
そのまま勇輝は食堂から出て行く。
静かになった食堂で、華は残っていたスープを飲みほした。
◇◇◇
少年の部屋で華はシャワーを浴びた。あの少女の部屋には、どうしても入りたいと思わなかった。
あれから少女は華の中で大人しくしている。寝ているか起きてるかも、わからない。
だからシャワー後も新しい黒ジャージを着た。これを着ていると、怜とお揃いのせいか安心感があった。
青年からかけてもらった指輪の首飾りはそのままだ。
部屋の窓から庭園と村を眺めた。
毎日見ていたこの景色も今日で見納めだ。
満月の光が明るく庭に降り注いでいる。
その中、のしのしと怒っている様に力強く歩く人影を見つけた。
勇輝だ。
え!?庭園て自由に歩き回れたの!?
ビックリして勇輝を見つめる。よく見ると1つ腕輪をつけていて、目も碧かった。あれは…闘う者の青年だ!
険しい怒ったような顔をしている。
何かあった?
嫌な予感がして、華は部屋を飛び出した。
華は身を強張らせた。
咄嗟に身をよじって逃れようする華を、勇輝が両肩を掴んで、乱暴に自分の方に向かせた。
「…何で逃げんだよ」
勇輝が泣きそうに華を見つめてくる。その距離感が今の華には怖い。
「怜の事が好きになった?もう今さら遅い?」
「ち…違うの」
微かに華が震えてるのを見て、勇輝が怪訝そうな表情をする。
「…男の人に…襲われそうに…なって」
「!?」
勇輝が驚愕の表情で、華の肩から手を離した。
ごめん!と謝って、華から少し距離をとった。そのまま、両手で顔を押さえて項垂れた。
「俺…最低だ、ホントごめん、余裕なくて」
「大丈夫。何ともなかったから」
「怜が助けたのか?」
「ううん、スタンガンとか催涙スプレーとか準備してたから。自分で撃退できたの」
一瞬勇輝はぽかんとした表情を浮かべた後、泣きそうな顔で笑った。
「良かった、何ともなくて。華強くなったな」
強くなった。
華から見て、精神的に強い人だと思っていた勇輝に褒められ、嬉しくなった。
「ありがとう。あと、勇ちゃんと怜ちゃんの事。ちゃんと考えるって言ったの忘れてないよ。今まで帰るのに必死で、それどころじゃなかったから」
だからもう少し待って、と言った華に、勇輝が複雑そうな表情を浮かべる。
「……」
「…勇ちゃん?」
「……帰ったらきっとすごく怒られるぞ」
「え?誰に?」
「親に決まってんだろ」
勇輝が言うには、桃の祖母は最初から。そして華と勇輝の親は入院した次の日に病院に駆けつけたらしい。
そろそろ怜の親も帰国して、病院に着いてるかもしれないそうだ。
しかも。せっかく目覚めた怜は、華の元に行く為、華の病室でそのまま再び昏睡状態へ。
華の両親も病院も大パニックだったらしい。その上、今回は勇輝も怜と同じ事をしてこちらにやって来た。
向こうでは、桃以外の3人が眠りから目覚めない状態らしい…。
「な、なにそれ!怖い!」
「だろ!?まだいっその事、2人同時だったらマシだったのに…」
勇輝がぶつぶつ文句を言っている。もしかして先程あんなに怜に怒ってたのは、これのせい?
ガチャ
離れた所からドアが開く音がした。
怜かもしれない。
勇輝が食堂へ出て行った。何やら話し声がして、勇輝だけ戻ってくる。
「華、少し怜と話してくるから。もう風呂入って休んでてもいいから」
「わかった。怜ちゃんにも何か食事取るように伝えてね」
「わかった」
そのまま勇輝は食堂から出て行く。
静かになった食堂で、華は残っていたスープを飲みほした。
◇◇◇
少年の部屋で華はシャワーを浴びた。あの少女の部屋には、どうしても入りたいと思わなかった。
あれから少女は華の中で大人しくしている。寝ているか起きてるかも、わからない。
だからシャワー後も新しい黒ジャージを着た。これを着ていると、怜とお揃いのせいか安心感があった。
青年からかけてもらった指輪の首飾りはそのままだ。
部屋の窓から庭園と村を眺めた。
毎日見ていたこの景色も今日で見納めだ。
満月の光が明るく庭に降り注いでいる。
その中、のしのしと怒っている様に力強く歩く人影を見つけた。
勇輝だ。
え!?庭園て自由に歩き回れたの!?
ビックリして勇輝を見つめる。よく見ると1つ腕輪をつけていて、目も碧かった。あれは…闘う者の青年だ!
険しい怒ったような顔をしている。
何かあった?
嫌な予感がして、華は部屋を飛び出した。
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