50 / 87
第2部 呪いの館 救出編
20話
しおりを挟む
子供の様に泣きじゃくる彼を抱きしめたまま、彼女が話しかけた。彼女はまだまだ、彼に愛を伝え切れてない。
「そのまま聞いていて」
彼女はポツリポツリ、自分の想いを告白した。
子供の頃から父と弟の間に入れなくて淋しかった事。黒髪の青年に告白してフラれ絶望した時に、寄り添ってくれたカレに徐々に惹かれていった事。
最終的に「一生側にいる。淋しい想いをさせない」とプロポーズしてくれた事が嬉しかった事。
「だからワタシもアナタの側にいるって決めたの。愛してるわ」
もう彼は彼女の愛を疑ってなかった。彼が思っていた以上に、彼女は自分を愛してくれていたのだ。
彼女の言葉に、彼は塞いでいた両手から顔を上げた。彼女が優しく溢れ落ちる涙を拭いてくれる。
ソッと彼女が青年の目元にキスを落とした。そして、見つめ合いお互いの顔が近づくー。
「ストーップ!ここまで!」
いきなり少年の霊に変わった怜が、彼女の唇を手の平で押さえた。
「ぷはっ!何するの?」
「それはこっちのセリフ!姉さん吐いた口でキスとか勘弁してよ!」
全くその通り。青年と彼女が良い雰囲気の中、少年と怜と華は、やめてーっ!と悲鳴を上げていた。
見かねた少年が青年の首根っこを掴んで、交代したのだ。
「…それは、そうね」
彼女も反省したようだ。青年だけが彼女に触れさせろと暴れている…のを怜が抑えていた。
「姉さん、落ち着いたなら真面目な話をしよう」
少年が彼女を見つめる。怜の雰囲気は先程とガラリと変わっていた。凛々しい顔立ちから、優しそうな雰囲気に切り替わっている。
目の前の彼を弟だと認識して、彼女も頷いた。
「今回は復讐でなく、何故あんな事が起きたか解明する。それでいい?」
「ええ。もう…ここから解放されたいわ。それに…早く彼の名前を思い出して…呼びたいわ」
照れたように微笑んだ。それは、あの日神社で彼が見た美しい笑顔と酷似していた。暴れていた青年もそれを見て大人しくなった。
「じゃあ姉さんが思い出した事で、何かヒントになる事があれば教えて」
彼女は頷いた。あくまで必要な事だけでいいと気遣ってくれる弟の優しさに安堵した。
「ワタシが死ぬ前に村人が言ってたの。恨むなら、はな様を恨めって」
「はな様?」
それは神社でよく会っていた黒髪の女の子。黒髪の青年の妹で、村長の娘の名前だった。
彼女はお転婆で元気な女の子だった。どちらといえば表裏がない性格で、人を陥れるとは思えない。
それにー。
「名前…何で憶えてるんだ?」
少年は愕然とした。殺された3人と多くの村人。黒髪の青年。恐らく事件に関わった可能性のある全員が、名前を無くし縛りつけられているのに。
だが考えられる答えは1つしか無かった。
「少なくとも…父さんは彼女は事件に関わっていないと判断したんだ。だから呪わなかった」
「どうして…」
「わからない。でも、あの子はボク達と仲が良かったし。いつかボクらの国に遊び行くからって言ってた。自ら進んでボク達を殺そうとするとは思えない…」
それは彼女も同感だった。少なくとも彼女は、はなを妹の様に可愛がっていたし、はなも姉弟に懐いていた。
少年が、ちょっと待って、と言って目を瞑り頭を押さえた。
次に目を開けた時、黒眼に戻っていた。本来の身体の持ち主である怜に交代したようだ。
怜の発した言葉に全員が驚愕した。
「村長の娘はな。僕その人物を知ってる」
「そのまま聞いていて」
彼女はポツリポツリ、自分の想いを告白した。
子供の頃から父と弟の間に入れなくて淋しかった事。黒髪の青年に告白してフラれ絶望した時に、寄り添ってくれたカレに徐々に惹かれていった事。
最終的に「一生側にいる。淋しい想いをさせない」とプロポーズしてくれた事が嬉しかった事。
「だからワタシもアナタの側にいるって決めたの。愛してるわ」
もう彼は彼女の愛を疑ってなかった。彼が思っていた以上に、彼女は自分を愛してくれていたのだ。
彼女の言葉に、彼は塞いでいた両手から顔を上げた。彼女が優しく溢れ落ちる涙を拭いてくれる。
ソッと彼女が青年の目元にキスを落とした。そして、見つめ合いお互いの顔が近づくー。
「ストーップ!ここまで!」
いきなり少年の霊に変わった怜が、彼女の唇を手の平で押さえた。
「ぷはっ!何するの?」
「それはこっちのセリフ!姉さん吐いた口でキスとか勘弁してよ!」
全くその通り。青年と彼女が良い雰囲気の中、少年と怜と華は、やめてーっ!と悲鳴を上げていた。
見かねた少年が青年の首根っこを掴んで、交代したのだ。
「…それは、そうね」
彼女も反省したようだ。青年だけが彼女に触れさせろと暴れている…のを怜が抑えていた。
「姉さん、落ち着いたなら真面目な話をしよう」
少年が彼女を見つめる。怜の雰囲気は先程とガラリと変わっていた。凛々しい顔立ちから、優しそうな雰囲気に切り替わっている。
目の前の彼を弟だと認識して、彼女も頷いた。
「今回は復讐でなく、何故あんな事が起きたか解明する。それでいい?」
「ええ。もう…ここから解放されたいわ。それに…早く彼の名前を思い出して…呼びたいわ」
照れたように微笑んだ。それは、あの日神社で彼が見た美しい笑顔と酷似していた。暴れていた青年もそれを見て大人しくなった。
「じゃあ姉さんが思い出した事で、何かヒントになる事があれば教えて」
彼女は頷いた。あくまで必要な事だけでいいと気遣ってくれる弟の優しさに安堵した。
「ワタシが死ぬ前に村人が言ってたの。恨むなら、はな様を恨めって」
「はな様?」
それは神社でよく会っていた黒髪の女の子。黒髪の青年の妹で、村長の娘の名前だった。
彼女はお転婆で元気な女の子だった。どちらといえば表裏がない性格で、人を陥れるとは思えない。
それにー。
「名前…何で憶えてるんだ?」
少年は愕然とした。殺された3人と多くの村人。黒髪の青年。恐らく事件に関わった可能性のある全員が、名前を無くし縛りつけられているのに。
だが考えられる答えは1つしか無かった。
「少なくとも…父さんは彼女は事件に関わっていないと判断したんだ。だから呪わなかった」
「どうして…」
「わからない。でも、あの子はボク達と仲が良かったし。いつかボクらの国に遊び行くからって言ってた。自ら進んでボク達を殺そうとするとは思えない…」
それは彼女も同感だった。少なくとも彼女は、はなを妹の様に可愛がっていたし、はなも姉弟に懐いていた。
少年が、ちょっと待って、と言って目を瞑り頭を押さえた。
次に目を開けた時、黒眼に戻っていた。本来の身体の持ち主である怜に交代したようだ。
怜の発した言葉に全員が驚愕した。
「村長の娘はな。僕その人物を知ってる」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
花の檻
蒼琉璃
ホラー
東京で連続して起きる、通称『連続種死殺人事件』は人々を恐怖のどん底に落としていた。
それが明るみになったのは、桜井鳴海の死が白昼堂々渋谷のスクランブル交差点で公開処刑されたからだ。
唯一の身内を、心身とも殺された高階葵(たかしなあおい)による、異能復讐物語。
刑事鬼頭と犯罪心理学者佐伯との攻防の末にある、葵の未来とは………。
Illustrator がんそん様 Suico様
※ホラーミステリー大賞作品。
※グロテスク・スプラッター要素あり。
※シリアス。
※ホラーミステリー。
※犯罪描写などがありますが、それらは悪として書いています。
JOLENEジョリーン・鬼屋は人を許さない 『こわい』です。気を緩めると巻き込まれます。
尾駮アスマ(オブチアスマ おぶちあすま)
ホラー
ホラー・ミステリー+ファンタジー作品です。残酷描写ありです。苦手な方は御注意ください。
完全フィクション作品です。
実在する個人・団体等とは一切関係ありません。
あらすじ
趣味で怪談を集めていた主人公は、ある取材で怪しい物件での出来事を知る。
そして、その建物について探り始める。
あぁそうさ下らねぇ文章で何が小説だ的なダラダラした展開が
要所要所の事件の連続で主人公は性格が変わって行くわ
だんだーん強くうぅううー・・・大変なことになりすすぅーあうあうっうー
めちゃくちゃなラストに向かって、是非よんでくだせぇ・・・・え、あうあう
読みやすいように、わざと行間を開けて執筆しています。
もしよければお気に入り登録・イイネ・感想など、よろしくお願いいたします。
大変励みになります。
ありがとうございます。
感染
saijya
ホラー
福岡県北九州市の観光スポットである皿倉山に航空機が墜落した事件から全てが始まった。
生者を狙い動き回る死者、隔離され狭まった脱出ルート、絡みあう人間関係
そして、事件の裏にある悲しき真実とは……
ゾンビものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる