15 / 51
15.罪
しおりを挟む
夜会から戻ってから体調を崩し部屋に篭って過ごした
ステラとダンの結婚式の招待状も体調不良を理由に父と母だけに出席してもらった
レイからも手紙も訪ねて来たという知らせも届かない
それが却ってあの時見つけたハンカチが全てを語っていると理解せざるを得なかった
部屋からほとんど出ない生活をしていたステラの身体に異変が起きたのは夜会から4ヶ月が過ぎた頃だった
誰にも相談出来ず、このまま死んでしまいたいと思っていた頃、母ヘイリンが部屋に訪れた
「体調はどう?今日は何か食べられそう?」
「…いえ、まだ…」
「それでも何か口にしなくては駄目よ」
そう言って野菜を煮込んだスープの上澄みをステラに渡そうとした
その匂いに胃の中の物が込み上げてきたステラを見て、ヘイリンは優しく言った
「ステラ、私は貴女の味方よ。何を聞いても貴方の味方で居るわ。何が有ったのかそろそろ教えて頂戴」
ステラはもう耐え切れなくなってきていた
ポロポロと涙が溢れ、嗚咽混じりに少しずつ夜会でのことを話した
どのぐらい母に抱きしめられ背を撫でられていたのだろう
母はずっと黙ったままだったが、ステラが落ち着いた頃口を開いた
「ステラ、母様と実家のキャベロン領に療養に行きましょう。貴女はそこで療養し、私はそこで出産するわ」
「お母様…何を…」
「ラミアは半年近く離れるから淋しがるかもしれないけど、バークスに頼んでおくから心配は要らないわ。あの子バークスにべったりですもの」
「…そんなに離れて、お父様はお許し下さるでしょうか?」
「貴女達の2度共、同じようにキャベロン領で出産したのよ。大丈夫」
キャベロン領に向かう日、玄関ホールでラミアがバークスと共に見送りに出て居た
「姉様、早く元気になってね。母様、出来れば妹が良いです。バークス兄様と待ってるから、早く戻って下さいね」
少し涙目になりながら、ラミアは笑顔で2人を見送った
春を迎え暖かな日が少しずつ増えた頃、母ヘイリンは弟ロットを抱きながら帰ってきた
姉ステラも領に行く頃に比べ幾分体調も整ったようで髪の艶も戻っていた
「母様、姉様、ロット、お帰りなさい!」
ラミアは3人に駆け寄った
「母様、ロットをもっと見せて下さい!ずっと待ってたんです!」
「ラミア、ただいま。取り敢えずは屋敷に入らせてくれないかしら?外にずっと居たらロットは風邪を引いてしまうわ」
ラミアは嬉しさを隠し切れない様子で飛び込むように屋敷に入って行った
ロットの部屋にはベビーベッドが置かれ、それを覗き込むようにしながらラミアは見ていた
「可愛い~!」
ほっぺたをツンツンされたことで目が覚めたのかロットがぐずり始めた
「あらあら、お腹が空く時間ね。乳母を呼んで頂戴。乳母がお乳を与えている間、ラミアにお土産を渡すわ。さあ、行きましょう」
母ヘイリンに連れられ、ロットの部屋を出た
「ああ、ステラ、乳母にロットのお気に入りのあの音の鳴る玩具を教えてあげて」
「…はい、お母様」
ステラは乳母と共にロットの部屋へ戻った…
ステラとダンの結婚式の招待状も体調不良を理由に父と母だけに出席してもらった
レイからも手紙も訪ねて来たという知らせも届かない
それが却ってあの時見つけたハンカチが全てを語っていると理解せざるを得なかった
部屋からほとんど出ない生活をしていたステラの身体に異変が起きたのは夜会から4ヶ月が過ぎた頃だった
誰にも相談出来ず、このまま死んでしまいたいと思っていた頃、母ヘイリンが部屋に訪れた
「体調はどう?今日は何か食べられそう?」
「…いえ、まだ…」
「それでも何か口にしなくては駄目よ」
そう言って野菜を煮込んだスープの上澄みをステラに渡そうとした
その匂いに胃の中の物が込み上げてきたステラを見て、ヘイリンは優しく言った
「ステラ、私は貴女の味方よ。何を聞いても貴方の味方で居るわ。何が有ったのかそろそろ教えて頂戴」
ステラはもう耐え切れなくなってきていた
ポロポロと涙が溢れ、嗚咽混じりに少しずつ夜会でのことを話した
どのぐらい母に抱きしめられ背を撫でられていたのだろう
母はずっと黙ったままだったが、ステラが落ち着いた頃口を開いた
「ステラ、母様と実家のキャベロン領に療養に行きましょう。貴女はそこで療養し、私はそこで出産するわ」
「お母様…何を…」
「ラミアは半年近く離れるから淋しがるかもしれないけど、バークスに頼んでおくから心配は要らないわ。あの子バークスにべったりですもの」
「…そんなに離れて、お父様はお許し下さるでしょうか?」
「貴女達の2度共、同じようにキャベロン領で出産したのよ。大丈夫」
キャベロン領に向かう日、玄関ホールでラミアがバークスと共に見送りに出て居た
「姉様、早く元気になってね。母様、出来れば妹が良いです。バークス兄様と待ってるから、早く戻って下さいね」
少し涙目になりながら、ラミアは笑顔で2人を見送った
春を迎え暖かな日が少しずつ増えた頃、母ヘイリンは弟ロットを抱きながら帰ってきた
姉ステラも領に行く頃に比べ幾分体調も整ったようで髪の艶も戻っていた
「母様、姉様、ロット、お帰りなさい!」
ラミアは3人に駆け寄った
「母様、ロットをもっと見せて下さい!ずっと待ってたんです!」
「ラミア、ただいま。取り敢えずは屋敷に入らせてくれないかしら?外にずっと居たらロットは風邪を引いてしまうわ」
ラミアは嬉しさを隠し切れない様子で飛び込むように屋敷に入って行った
ロットの部屋にはベビーベッドが置かれ、それを覗き込むようにしながらラミアは見ていた
「可愛い~!」
ほっぺたをツンツンされたことで目が覚めたのかロットがぐずり始めた
「あらあら、お腹が空く時間ね。乳母を呼んで頂戴。乳母がお乳を与えている間、ラミアにお土産を渡すわ。さあ、行きましょう」
母ヘイリンに連れられ、ロットの部屋を出た
「ああ、ステラ、乳母にロットのお気に入りのあの音の鳴る玩具を教えてあげて」
「…はい、お母様」
ステラは乳母と共にロットの部屋へ戻った…
0
お気に入りに追加
134
あなたにおすすめの小説
ずっと君のこと ──妻の不倫
家紋武範
大衆娯楽
鷹也は妻の彩を愛していた。彼女と一人娘を守るために休日すら出勤して働いた。
余りにも働き過ぎたために会社より長期休暇をもらえることになり、久しぶりの家族団らんを味わおうとするが、そこは非常に味気ないものとなっていた。
しかし、奮起して彩や娘の鈴の歓心を買い、ようやくもとの居場所を確保したと思った束の間。
医師からの検査の結果が「性感染症」。
鷹也には全く身に覚えがなかった。
※1話は約1000文字と少なめです。
※111話、約10万文字で完結します。
後宮の棘
香月みまり
キャラ文芸
蔑ろにされ婚期をのがした25歳皇女がついに輿入り!相手は敵国の禁軍将軍。冷めた姫vs堅物男のチグハグな夫婦は帝国内の騒乱に巻き込まれていく。
☆完結しました☆
スピンオフ「孤児が皇后陛下と呼ばれるまで」の進捗と合わせて番外編を不定期に公開していきます。
第13回ファンタジー大賞特別賞受賞!
ありがとうございました!!
【R18】今夜、私は義父に抱かれる
umi
恋愛
封じられた初恋が、時を経て三人の男女の運命を狂わせる。メリバ好きさんにおくる、禁断のエロスファンタジー。
一章 初夜:幸せな若妻に迫る義父の魔手。夫が留守のある夜、とうとう義父が牙を剥き──。悲劇の始まりの、ある夜のお話。
二章 接吻:悪夢の一夜が明け、義父は嫁を手元に囲った。が、事の最中に戻ったかに思われた娘の幼少時代の記憶は、夜が明けるとまた元通りに封じられていた。若妻の心が夫に戻ってしまったことを知って絶望した義父は、再び力づくで娘を手に入れようと──。
【共通】
*中世欧州風ファンタジー。
*立派なお屋敷に使用人が何人もいるようなおうちです。旦那様、奥様、若旦那様、若奥様、みたいな。国、服装、髪や目の色などは、お好きな設定で読んでください。
*女性向け。女の子至上主義の切ないエロスを目指してます。
*一章、二章とも、途中で無理矢理→溺愛→に豹変します。二章はその後闇落ち展開。思ってたのとちがう(スン)…な場合はそっ閉じでスルーいただけると幸いです。
*ムーンライトノベルズ様にも旧バージョンで投稿しています。
※同タイトルの過去作『今夜、私は義父に抱かれる』を改編しました。2021/12/25
君と僕の一周年記念日に君がラブホテルで寝取らていた件について~ドロドロの日々~
ねんごろ
恋愛
一周年記念は地獄へと変わった。
僕はどうしていけばいいんだろう。
どうやってこの日々を生きていけばいいんだろう。
死ぬはずだった令嬢が乙女ゲームの舞台に突然参加するお話
みっしー
恋愛
病弱な公爵令嬢のフィリアはある日今までにないほどの高熱にうなされて自分の前世を思い出す。そして今自分がいるのは大好きだった乙女ゲームの世界だと気づく。しかし…「藍色の髪、空色の瞳、真っ白な肌……まさかっ……!」なんと彼女が転生したのはヒロインでも悪役令嬢でもない、ゲーム開始前に死んでしまう攻略対象の王子の婚約者だったのだ。でも前世で長生きできなかった分今世では長生きしたい!そんな彼女が長生きを目指して乙女ゲームの舞台に突然参加するお話です。
*番外編も含め完結いたしました!感想はいつでもありがたく読ませていただきますのでお気軽に!
隻眼の騎士王の歪な溺愛に亡国の王女は囚われる
玉響
恋愛
平和だったカヴァニス王国が、隣国イザイアの突然の侵攻により一夜にして滅亡した。
カヴァニスの王女アリーチェは、逃げ遅れたところを何者かに助けられるが、意識を失ってしまう。
目覚めたアリーチェの前に現れたのは、祖国を滅ぼしたイザイアの『隻眼の騎士王』ルドヴィクだった。
憎しみと侮蔑を感情のままにルドヴィクを罵倒するが、ルドヴィクは何も言わずにアリーチェに治療を施し、傷が癒えた後も城に留まらせる。
ルドヴィクに対して憎しみを募らせるアリーチェだが、時折彼の見せる悲しげな表情に別の感情が芽生え始めるのに気がついたアリーチェの心は揺れるが………。
※内容の一部に残酷描写が含まれます。
雇われ側妃は邪魔者のいなくなった後宮で高らかに笑う
ちゃっぷ
キャラ文芸
多少嫁ぎ遅れてはいるものの、宰相をしている父親のもとで平和に暮らしていた女性。
煌(ファン)国の皇帝は大変な女好きで、政治は宰相と皇弟に丸投げして後宮に入り浸り、お気に入りの側妃/上級妃たちに囲まれて過ごしていたが……彼女には関係ないこと。
そう思っていたのに父親から「皇帝に上級妃を排除したいと相談された。お前に後宮に入って邪魔者を排除してもらいたい」と頼まれる。
彼女は『上級妃を排除した後の後宮を自分にくれること』を条件に、雇われ側妃として後宮に入る。
そして、皇帝から自分を楽しませる女/遊姫(ヨウチェン)という名を与えられる。
しかし突然上級妃として後宮に入る遊姫のことを上級妃たちが良く思うはずもなく、彼女に幼稚な嫌がらせをしてきた。
自分を害する人間が大嫌いで、やられたらやり返す主義の遊姫は……必ず邪魔者を惨めに、後宮から追放することを決意する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる