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とりあえずお話を、という富岡さんと、明日家の近くのレストランで会うことになった。
とっても情けないけど、だって食事代出してくれるっていうんだもん。
ここ数日節約で白米と納豆しか食べてないから……、それにつられてしまった。
私はスマホで「TAKA」と検索する。
金髪に染めた髪の、カッコいいけどチャラそうな上半身裸でファーのベストを着てる男の画像が出て来た。ファーベストの間から見える腹筋がシックスパックに割れている。
細井、貴司――、貴司くん。
そういう名前のクラスメイトはいた、確かに。
私が星野、彼が細井で確か出席番号順で私のすぐ後が貴司くんだったはずだ。
頭を何度もひねって、10年以上前の小学校時代の記憶をたどった。
でもどう考えても、貴司くんとTAKAは一致しない。
だって貴司くんは太っていた。
――細いのくせに太いなぁー、お前『ふとし』に名前変えろよ
そうからかわれていた気がする。
でも、彼はいじられても泣くわけでもなく、言い返すわけでもなくただじとっと相手を睨んでた。だから相手はそのうち飽きてどっかに行ってしまってた気がする。
――目つき。
そうだ、と思い出した。
貴司くんはいっつもふてぶてしい感じの目つきをしてた。
世の中斜めに見てますみたいな。
改めてTAKAの写真を見返すと、どれもこれも同じような目つきで映っている。
「――貴司くんだ――」
よくよく見るとそんな気がしてきた。
目つき以外、面影は全くないけど。
「――人間変わるもんだなぁ」
あの『ふとし』ってからかわれてた貴司くんが今はこんな派手な格好で踊ってるなんて。
(ご飯だけ食べて帰ろう)
急に食事につられて話に応じた自分が恥ずかしくなって、ため息をついた。
□
「――飯塚 若葉さんですかぁ?」
駅の近くの喫茶店で待っていたアシスタントディレクターの富岡さんは想像してたよりもとっても若い女の子だった。同い年くらいか、年下かもしれない。茶髪のふんわりした髪が可愛い。
私は伸ばしっぱなしの黒髪の前髪を手で整えて顔を背けた。
「は、はい、一応……」
一応って何だよ、って自分で自分に突っ込む。
富岡さんすっごく『意外!』みたいな声してたなあ。
そりゃ、私みたいなのが『初恋の人』だとかなんとかで出てったらびっくりするよね。
「今日はお時間頂いてありがとうございます! よろしくお願いします」
富岡さんは礼儀正しく名刺をくれた。
「……私の連絡先、よくわかりましたね……、名前も変わってるのに……」
「そうです、飯塚さん、一番探すの大変だったんですよ。同級生の方も皆さん連絡先知らなかったですし、ご近所の方経由で何とかお母様のご連絡先を聞いて、そこからどうにか」
てへっと富岡さんは可愛く笑った。
「テレビって言うと怪しまれると思って、飯塚さんの高校のお友達で、何とか連絡先を知りたいってお母様には言ってしまったんですけど」
ほいほい人の連絡先教えて、ほんとうちの母親は……。
まあ、そのお陰で今日のお昼代浮くけど……って考えてる自分が一番虚しいな。
とっても情けないけど、だって食事代出してくれるっていうんだもん。
ここ数日節約で白米と納豆しか食べてないから……、それにつられてしまった。
私はスマホで「TAKA」と検索する。
金髪に染めた髪の、カッコいいけどチャラそうな上半身裸でファーのベストを着てる男の画像が出て来た。ファーベストの間から見える腹筋がシックスパックに割れている。
細井、貴司――、貴司くん。
そういう名前のクラスメイトはいた、確かに。
私が星野、彼が細井で確か出席番号順で私のすぐ後が貴司くんだったはずだ。
頭を何度もひねって、10年以上前の小学校時代の記憶をたどった。
でもどう考えても、貴司くんとTAKAは一致しない。
だって貴司くんは太っていた。
――細いのくせに太いなぁー、お前『ふとし』に名前変えろよ
そうからかわれていた気がする。
でも、彼はいじられても泣くわけでもなく、言い返すわけでもなくただじとっと相手を睨んでた。だから相手はそのうち飽きてどっかに行ってしまってた気がする。
――目つき。
そうだ、と思い出した。
貴司くんはいっつもふてぶてしい感じの目つきをしてた。
世の中斜めに見てますみたいな。
改めてTAKAの写真を見返すと、どれもこれも同じような目つきで映っている。
「――貴司くんだ――」
よくよく見るとそんな気がしてきた。
目つき以外、面影は全くないけど。
「――人間変わるもんだなぁ」
あの『ふとし』ってからかわれてた貴司くんが今はこんな派手な格好で踊ってるなんて。
(ご飯だけ食べて帰ろう)
急に食事につられて話に応じた自分が恥ずかしくなって、ため息をついた。
□
「――飯塚 若葉さんですかぁ?」
駅の近くの喫茶店で待っていたアシスタントディレクターの富岡さんは想像してたよりもとっても若い女の子だった。同い年くらいか、年下かもしれない。茶髪のふんわりした髪が可愛い。
私は伸ばしっぱなしの黒髪の前髪を手で整えて顔を背けた。
「は、はい、一応……」
一応って何だよ、って自分で自分に突っ込む。
富岡さんすっごく『意外!』みたいな声してたなあ。
そりゃ、私みたいなのが『初恋の人』だとかなんとかで出てったらびっくりするよね。
「今日はお時間頂いてありがとうございます! よろしくお願いします」
富岡さんは礼儀正しく名刺をくれた。
「……私の連絡先、よくわかりましたね……、名前も変わってるのに……」
「そうです、飯塚さん、一番探すの大変だったんですよ。同級生の方も皆さん連絡先知らなかったですし、ご近所の方経由で何とかお母様のご連絡先を聞いて、そこからどうにか」
てへっと富岡さんは可愛く笑った。
「テレビって言うと怪しまれると思って、飯塚さんの高校のお友達で、何とか連絡先を知りたいってお母様には言ってしまったんですけど」
ほいほい人の連絡先教えて、ほんとうちの母親は……。
まあ、そのお陰で今日のお昼代浮くけど……って考えてる自分が一番虚しいな。
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