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前編②
しおりを挟む——謁見の場にて
重々しい雰囲気の中、勇者は国王と王女に激しく詰め寄っていた。
何故にシスリーを言い分も聞かずに投獄したのか。
彼女はやっていない。
動機が無い。
濡れ衣だ。
国王は答えた。
ならば、王女が虚偽の報告をしたというのか。
生死を彷徨いかけた彼女が。
あり得ぬ。
娘に毒を盛るなど、言語道断。
勇者の連れでなければ、即刻死罪に処していた、と。
王女は答えた。
勇者には命を狙われた私の気持ちが分からないのだ。
深く傷つけられた私の気持ちが。
シスリーを許す気はない、と。
頑なに拒む二人。
説得に失敗したと悟った勇者は、失意の目で2人を見つめた。
そして、シスリーが解放されるまで、魔物討伐は中断すると言い残して、城を出た。
☆★☆
勇者帰宅後、王女は勇者の脅しに動揺する国王に囁いた。
反逆の恐れがある。
次に命を狙われるのは父かもしれない。
相手は魔物をも蹴散らす勇者。
味方の時は心強いが、敵に回すと………。
民からの信頼も今や、王以上ともいえる勇者が次の王になっても何も不思議ではない。
解毒してからまだ日は浅く、まだ体力が万全に回復していない状態。
青白い顔で、怯えた声で胸に顔をうずめて泣きついてくる娘に、王は決心した。
――やられる前にやらなければ。
しかし、意は決したものの、その手段が浮かばない。
国外追放にすれば、民から糾弾されるだろうし、隣国が勇者を放っておくはずがない。
シスリー同様に勇者を牢に入れても、同様。
何より、勇者が黙って捕まる保証などない。
民から非難を浴びず、かつ勇者をこれまで同様に魔物討伐に向かわせる方法などあるのだろうか?
国王が何を考えているのか、見通しているのか。
王女は恐ろしいことを提案した。
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