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17話 今日からダンジョンマスター
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次に目が覚めたとき、真っ先に目にしたのはシミだらけの天井。
俺は上体を起して、確認するように周囲を見渡した。
そこは一ヶ月間引きこもり続けた、見慣れた部屋だ。
フィーネアが宿まで運んでくれたのだろうか?
だけど、肝心のフィーネアの姿がどこにもない。
真夜ちゃんと、ついでに明智も無事なのだろうか?
俺はゆっくりとベッドから起き上がり、体を弄って確かめる。
「あれ? 折れてた骨が……どこも痛くないな。フィーネアが治癒魔法を掛けてくれたのだろうか……? ま、それしか考えられないな」
だけど、俺の所持金は残り銅貨5枚だったから……一泊したとなれば、残金は銅貨2枚……か。
厳しいな。
飯食ってないんだから、まけてもらえないだろうか?
ま、金のことはあとで考えるとして……。
あのとき、意識がなくなる寸前。
なんか獲得したって文字が出てたな。
俺はベッドに腰掛けて、ステータスを開いた。
―――――――――
名前:月影遊理
性別:男
装備:探知ダガー(F)
レベル:12
力 F
耐久 F
敏捷 F
魔力 F
スキル:探知
固有スキル:他人の不幸は蜜の味
固有スキル:ダンジョンマスター
【リヤンポイント】
(フィーネア)
――――――――――
おお! 探知ダガーを使用していないのに、レベルが一気に跳ね上がっている。
使用してなくても、装備してれば上がるのか。
確か、ゴブリンを倒した時点ではレベル4だったはずだ。
12ってことはかなり切れ味が増していそうだな。
どこかで武器の扱いとか、戦闘訓練が受けられるといいんだけど……ギルドで聞いてみるか。
それと……なんだこれ?
固有スキル、ダンジョンマスターって……?
称号とかじゃなくて……固有スキルなのか?
それに、固有スキルって増えるモノなのか?
どんな能力なんだろう?
出来る事なら、俺の糞みたいなステータスを補えるくらいの、戦闘向きスキルだと有難いんだが。
俺は試しに、ダンジョンマスターなる固有スキルを発動させてみた。
《ダンジョンマスターを発動致します》
すると、突如部屋に『ゴォォオオオ』と地鳴りが響き渡り、床の一部分が膨れ上がってきた。
「なっ、ななな、なんだ!?」
木造仕立ての床から、モクモクと土が泉の如く湧き上がり、粘土細工のように瞬く間に見覚えのある形へと形成されていく。
それは薄暗い地底へと続く、洞窟への入口。
そう、あの忌まわしきダンジョンだ。
「なっ、なんで部屋の中にダンジョンが出現するんだよ!? つーか……これどうなってんだ?」
俺は少し怖かったが、好奇心を抑えられず、ダンジョンに足を踏み入れた。
一歩足を踏み出すと、あの時と同じように松明が行く手を照らし始める。
恐る恐るダンジョン内を進んでいくと、すぐに小さな人影らしきものを視界に捉えた。
俺は咄嗟に腰に提げていた、扱えもしないダガーを引き抜き、身構えると。
人影はこちらに気付いたように、ゆっくりと近付いて来る。
奥から真っ直ぐやって来るそいつを見たとき、俺は不味いと焦った。
何故なら、俺の方へと向かって来るそいつはゴブリンなのだ。
一匹だけとはいえ、動き回るゴブリンをこんな短剣で仕留められるほど、俺は強くない。
引き返そと身を仰け反ると。
「あっ! マスターおはようございます」
「へ!?」
俺は固まってしまった。
何故なら、目の前のゴブリンは子供のような幼い声で、ニコニコと笑いながら俺に頭を下げているのだから。
マスターってなんだよ?
というか……ゴブリンてのは人の言葉を話すのか?
「おっ、おおお、お前喋れるのか?」
「はい。多分マスターが変わって、新たなマスターになったことで、ダンジョンの加護が変化したからだと思いますよ」
「…………」
ダンジョンの加護ってなんだよ!?
なんで俺のスキルは毎回毎回こんなに変なのなんだよ?
それとも……固有スキルってこんなのばっかりなのか?
まったくわからんっ!
ミスフォーチュンのヴァッサーゴといい、ダンジョンのゴブリンといい、どうなってんの!?
俺がオロオロと目を泳がせていると。
「ああー。そりゃー驚かれますよね。実は僕たちも驚いてるんですよ。なんたって、人間がダンジョンマスターに選ばれるなんて聞いたことないですからね」
「……」
俺はどうしたらいいの?
「とりあえずマスタールームにご案内しますよ。マスター」と言う。
やたらと人懐っこいゴブリンに案内されて、歩いているのだが……。
今、俺の前を歩くゴブリンは、この間倒したゴブリンのようなイカつい見た目ではなく、まるでUFOキャッチャーの景品で出てきそうな、ぬいぐるみみたいな見た目なのだ。
なんでこいつだけこんなにポップな見た目なんだ?
お陰でまったく怖くないけど……。
種族が違うのか? 気になる。
俺は前方を歩くゴブリンに、話しかけてみた。
「あの~なんか見た目……違くない? この間のゴブリンはめっちゃリアルと言うかなんというか……」
「ああー、それもダンジョンの加護の影響だと思いますよ。とにかくマスタールームで確認してくださいよ。僕たちはマスタールームに入れても、詳しいことを確認することはできないんで」
いまいちよくわからんが、俺は案内されるままダンジョンを下りて行き、マスタールームとか言う場所の手前までやって来た。
「てか、ここはこの前俺が死闘を繰り広げた、だだっ広い場所じゃないかっ!」
「こっちですよ」
ぬいぐるみみたいなゴブリンに手招きされて、何もない壁際の前で立ち止まると。
「開けゴマ!」と、なんとも古典的な台詞をゴブリンが口にする。
すると、あら不思議。
岩壁が真っ二つに裂けて、中にこれまた無駄に広い……ルームというか、似たような空間が広がっていた。
一つ違うところがあるとすれば、洞穴という名のマスタールームの中央には、巨大な黒い石版みたいなのが置かれていることだ。
その黒い石版に近付くと、突然発行し、宙に不気味な見慣れない文字が浮かび上がった。
と、思ったら、すぐに画面が切り替わる。
宙に投影された画面には、以下のように記されている。
―――――――――――
ダンジョン管理者:月影遊理
ダンジョンレベル 1
階層:地下3階
雇用数:48
内装:シンプルな洞窟
加護:ヒューマンコミュニケーション
加護:遊理好みのデフォルト
魂ポイント:84ポイント
ランキング:ポイント0
ランキング:1000/1000位
ダンジョン通販:入口
―――――――――――
「なんじゃこりゃー!?」
「やはりマスターの加護の影響ですね」
俺の横で宙に浮かび上がった文字を見て、納得したように頷くゴブリン。
「では、僭越ながらご説明させていただきますね」
ゴブリンの説明を、俺は呆然と聞いていた。
このぬいぐるみゴブリンの話によると。
まず、管理者というのがダンジョンマスターのことだという。
つまり、俺だ。
なぜ俺になったのかは謎だという。
本来は魔物がダンジョンマスターを倒すことで、その権利が譲渡される。
また、人間によってダンジョンマスターが殺されてしまった場合は、ダンジョンマスターになりたい魔物が早い者勝ちでマスタールーム、要はこの部屋で新規登録することが可能。
ダンジョンのレベルは、ダンジョン内で死んだ敵の数と質で上がる。
早い話が、ここを襲って来た人間や魔物を返り討ちにすることで、経験値的なものを得て、自然とダンジョンのレベルが上がるらしい。
レベルが上がるとダンジョンの規模も大きくなる。
階層が増えるってことらしい。
ダンジョンてのは逆ピラミッド式で、下に行けば行くほどフロアも広くなるのだとか。
さらに、ダンジョン内で敵を倒すと、魂ポイントが得られる。
このポイントは色々と使い道があるんだと。
雇用数は、現在このダンジョンに居る魔物の数。
内装は、そのままの意味らしい。
ちなみにポイントを使って変更可能。
加護は管理者の意向がそのまま現れたもの。
そして、ダンジョン内のモンスターはダンジョンからは出られないのだとか。
「ま、大体わかったけどさ。なんで俺なんだよ。これ放棄できないの?」
俺の言葉を聞いたゴブリンは、身振り手振り大げさに、慌てた様子で口にする。
「それはできないですよ! もし、マスターの権利を破棄したいのなら、死んでください。そうすれば誰かが新たにマスターになれますから」
「ふざけるなっ! そんなバカなお願い聞けるかっ!」
「なら、しっかりマスターをやってくださいね」
「……サボったらどうなるんだよ?」
「マスターも、ここで働く僕たちもみんな死にますよ」
「……はぁああああああああああああああああっ!?」
惚けた顔して、なんてことをサラっと言いやがるんだよ!
びっくりし過ぎて叫んじまったじゃないか!
それにしても……死ぬってどういうことだよっ!!
「ランキングって書いてあるのわかりますよね?」
「見りゃわかるよっ! 1000/1000位だろ?」
「はい、ダンジョンランキング最下位です」
「だから何なんだよっ?」
「一年間、900位以内に留まっていると、ダンジョンマスターとしては無能と判断されて、何故か死んでしまいます。ここに居る僕たちも同様です」
何言ってんの?
何故か死ぬってどういうことだよ!
まったく意味がわからないんですけどっ!!
頼むからもうちょっとわかりやすく説明してくれよ。
「ランキングを上げるには、より多くの命をダンジョン内で奪えばいいのですよ。勇者とかを殺せれば得られるポイントも多いと思いますよ。あっ! ちなみにダンジョン通販ではいろいろ便利なモノをポイントで買えますよ」
脳内プチパニックを起こしていると言うのに、またポイントかよっ!
勘弁してくれよ。なんなんだよこのポイント地獄はっ!!
「一応……84ポイントはあるみたいだが」
「ポイントだけは、前回のマスターから受け継いだみたいですね」
発狂しそうな気持ちを静めるため、俺は深呼吸した。
もはや慣れっこだ。
俺はステータスが低い分、適応力でも上昇してるのか? と、自分を疑いたくなるよ。
とにかくっ! 命に関わるのなら真剣にダンジョンマスターをするしかない。
俺はダンジョン通販を開いてみた。
―――――――――――
ダンジョン通販
モンスター購入
トラップ購入
家具購入
内装購入
進化玉購入
―――――――――――
色々と突っ込みたいことはあるけど……。
とりあえず、モンスター購入だ!
―――――――――――
ゴブリン 1ポイント
スライム 1ポイント
バット 1ポイント
コボルト 2ポイント
ゾンビ 2ポイント
オーク 2ポイント
スケルトン 3ポイント
ガーゴイル 4ポイント
トロール 5ポイント
リザードマン 6ポイント
オーガ 7ポイント
etc.
――――――――――――
価格は……ミスフォーチュンより明らかにリーズナブルに見えるが……。
どうなんだろ?
とりあえず、強そうなのを何匹か購入しておくか?
俺はオーガを三匹と、50ポイントのケンタウロスを一匹購入した。
これで残りのポイントは13か……。
ま、ボス的な奴は必要だから仕方ない。
ボスのいないダンジョンなんて聞いたことないもんな。
もちろん。
ステータスオールFの俺がボスなんてやれるわけない。
なら、買うしかないだろ!
「おお! マスターは太っ腹ですね」
「そ、そうかな?」
褒められて、少し気を良くしていると。
石版から禍々しい魔法陣が飛び出して、今しがた購入したオーガ三匹と、ケンタウロス一匹が召喚されたようだ。
四匹とも、凄く人間ぽい見た目なのは……デフォルトのせいなのか……?
それにしても……なんで俺だけこんなに人生ハードモードなんだろ?
俺は上体を起して、確認するように周囲を見渡した。
そこは一ヶ月間引きこもり続けた、見慣れた部屋だ。
フィーネアが宿まで運んでくれたのだろうか?
だけど、肝心のフィーネアの姿がどこにもない。
真夜ちゃんと、ついでに明智も無事なのだろうか?
俺はゆっくりとベッドから起き上がり、体を弄って確かめる。
「あれ? 折れてた骨が……どこも痛くないな。フィーネアが治癒魔法を掛けてくれたのだろうか……? ま、それしか考えられないな」
だけど、俺の所持金は残り銅貨5枚だったから……一泊したとなれば、残金は銅貨2枚……か。
厳しいな。
飯食ってないんだから、まけてもらえないだろうか?
ま、金のことはあとで考えるとして……。
あのとき、意識がなくなる寸前。
なんか獲得したって文字が出てたな。
俺はベッドに腰掛けて、ステータスを開いた。
―――――――――
名前:月影遊理
性別:男
装備:探知ダガー(F)
レベル:12
力 F
耐久 F
敏捷 F
魔力 F
スキル:探知
固有スキル:他人の不幸は蜜の味
固有スキル:ダンジョンマスター
【リヤンポイント】
(フィーネア)
――――――――――
おお! 探知ダガーを使用していないのに、レベルが一気に跳ね上がっている。
使用してなくても、装備してれば上がるのか。
確か、ゴブリンを倒した時点ではレベル4だったはずだ。
12ってことはかなり切れ味が増していそうだな。
どこかで武器の扱いとか、戦闘訓練が受けられるといいんだけど……ギルドで聞いてみるか。
それと……なんだこれ?
固有スキル、ダンジョンマスターって……?
称号とかじゃなくて……固有スキルなのか?
それに、固有スキルって増えるモノなのか?
どんな能力なんだろう?
出来る事なら、俺の糞みたいなステータスを補えるくらいの、戦闘向きスキルだと有難いんだが。
俺は試しに、ダンジョンマスターなる固有スキルを発動させてみた。
《ダンジョンマスターを発動致します》
すると、突如部屋に『ゴォォオオオ』と地鳴りが響き渡り、床の一部分が膨れ上がってきた。
「なっ、ななな、なんだ!?」
木造仕立ての床から、モクモクと土が泉の如く湧き上がり、粘土細工のように瞬く間に見覚えのある形へと形成されていく。
それは薄暗い地底へと続く、洞窟への入口。
そう、あの忌まわしきダンジョンだ。
「なっ、なんで部屋の中にダンジョンが出現するんだよ!? つーか……これどうなってんだ?」
俺は少し怖かったが、好奇心を抑えられず、ダンジョンに足を踏み入れた。
一歩足を踏み出すと、あの時と同じように松明が行く手を照らし始める。
恐る恐るダンジョン内を進んでいくと、すぐに小さな人影らしきものを視界に捉えた。
俺は咄嗟に腰に提げていた、扱えもしないダガーを引き抜き、身構えると。
人影はこちらに気付いたように、ゆっくりと近付いて来る。
奥から真っ直ぐやって来るそいつを見たとき、俺は不味いと焦った。
何故なら、俺の方へと向かって来るそいつはゴブリンなのだ。
一匹だけとはいえ、動き回るゴブリンをこんな短剣で仕留められるほど、俺は強くない。
引き返そと身を仰け反ると。
「あっ! マスターおはようございます」
「へ!?」
俺は固まってしまった。
何故なら、目の前のゴブリンは子供のような幼い声で、ニコニコと笑いながら俺に頭を下げているのだから。
マスターってなんだよ?
というか……ゴブリンてのは人の言葉を話すのか?
「おっ、おおお、お前喋れるのか?」
「はい。多分マスターが変わって、新たなマスターになったことで、ダンジョンの加護が変化したからだと思いますよ」
「…………」
ダンジョンの加護ってなんだよ!?
なんで俺のスキルは毎回毎回こんなに変なのなんだよ?
それとも……固有スキルってこんなのばっかりなのか?
まったくわからんっ!
ミスフォーチュンのヴァッサーゴといい、ダンジョンのゴブリンといい、どうなってんの!?
俺がオロオロと目を泳がせていると。
「ああー。そりゃー驚かれますよね。実は僕たちも驚いてるんですよ。なんたって、人間がダンジョンマスターに選ばれるなんて聞いたことないですからね」
「……」
俺はどうしたらいいの?
「とりあえずマスタールームにご案内しますよ。マスター」と言う。
やたらと人懐っこいゴブリンに案内されて、歩いているのだが……。
今、俺の前を歩くゴブリンは、この間倒したゴブリンのようなイカつい見た目ではなく、まるでUFOキャッチャーの景品で出てきそうな、ぬいぐるみみたいな見た目なのだ。
なんでこいつだけこんなにポップな見た目なんだ?
お陰でまったく怖くないけど……。
種族が違うのか? 気になる。
俺は前方を歩くゴブリンに、話しかけてみた。
「あの~なんか見た目……違くない? この間のゴブリンはめっちゃリアルと言うかなんというか……」
「ああー、それもダンジョンの加護の影響だと思いますよ。とにかくマスタールームで確認してくださいよ。僕たちはマスタールームに入れても、詳しいことを確認することはできないんで」
いまいちよくわからんが、俺は案内されるままダンジョンを下りて行き、マスタールームとか言う場所の手前までやって来た。
「てか、ここはこの前俺が死闘を繰り広げた、だだっ広い場所じゃないかっ!」
「こっちですよ」
ぬいぐるみみたいなゴブリンに手招きされて、何もない壁際の前で立ち止まると。
「開けゴマ!」と、なんとも古典的な台詞をゴブリンが口にする。
すると、あら不思議。
岩壁が真っ二つに裂けて、中にこれまた無駄に広い……ルームというか、似たような空間が広がっていた。
一つ違うところがあるとすれば、洞穴という名のマスタールームの中央には、巨大な黒い石版みたいなのが置かれていることだ。
その黒い石版に近付くと、突然発行し、宙に不気味な見慣れない文字が浮かび上がった。
と、思ったら、すぐに画面が切り替わる。
宙に投影された画面には、以下のように記されている。
―――――――――――
ダンジョン管理者:月影遊理
ダンジョンレベル 1
階層:地下3階
雇用数:48
内装:シンプルな洞窟
加護:ヒューマンコミュニケーション
加護:遊理好みのデフォルト
魂ポイント:84ポイント
ランキング:ポイント0
ランキング:1000/1000位
ダンジョン通販:入口
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「なんじゃこりゃー!?」
「やはりマスターの加護の影響ですね」
俺の横で宙に浮かび上がった文字を見て、納得したように頷くゴブリン。
「では、僭越ながらご説明させていただきますね」
ゴブリンの説明を、俺は呆然と聞いていた。
このぬいぐるみゴブリンの話によると。
まず、管理者というのがダンジョンマスターのことだという。
つまり、俺だ。
なぜ俺になったのかは謎だという。
本来は魔物がダンジョンマスターを倒すことで、その権利が譲渡される。
また、人間によってダンジョンマスターが殺されてしまった場合は、ダンジョンマスターになりたい魔物が早い者勝ちでマスタールーム、要はこの部屋で新規登録することが可能。
ダンジョンのレベルは、ダンジョン内で死んだ敵の数と質で上がる。
早い話が、ここを襲って来た人間や魔物を返り討ちにすることで、経験値的なものを得て、自然とダンジョンのレベルが上がるらしい。
レベルが上がるとダンジョンの規模も大きくなる。
階層が増えるってことらしい。
ダンジョンてのは逆ピラミッド式で、下に行けば行くほどフロアも広くなるのだとか。
さらに、ダンジョン内で敵を倒すと、魂ポイントが得られる。
このポイントは色々と使い道があるんだと。
雇用数は、現在このダンジョンに居る魔物の数。
内装は、そのままの意味らしい。
ちなみにポイントを使って変更可能。
加護は管理者の意向がそのまま現れたもの。
そして、ダンジョン内のモンスターはダンジョンからは出られないのだとか。
「ま、大体わかったけどさ。なんで俺なんだよ。これ放棄できないの?」
俺の言葉を聞いたゴブリンは、身振り手振り大げさに、慌てた様子で口にする。
「それはできないですよ! もし、マスターの権利を破棄したいのなら、死んでください。そうすれば誰かが新たにマスターになれますから」
「ふざけるなっ! そんなバカなお願い聞けるかっ!」
「なら、しっかりマスターをやってくださいね」
「……サボったらどうなるんだよ?」
「マスターも、ここで働く僕たちもみんな死にますよ」
「……はぁああああああああああああああああっ!?」
惚けた顔して、なんてことをサラっと言いやがるんだよ!
びっくりし過ぎて叫んじまったじゃないか!
それにしても……死ぬってどういうことだよっ!!
「ランキングって書いてあるのわかりますよね?」
「見りゃわかるよっ! 1000/1000位だろ?」
「はい、ダンジョンランキング最下位です」
「だから何なんだよっ?」
「一年間、900位以内に留まっていると、ダンジョンマスターとしては無能と判断されて、何故か死んでしまいます。ここに居る僕たちも同様です」
何言ってんの?
何故か死ぬってどういうことだよ!
まったく意味がわからないんですけどっ!!
頼むからもうちょっとわかりやすく説明してくれよ。
「ランキングを上げるには、より多くの命をダンジョン内で奪えばいいのですよ。勇者とかを殺せれば得られるポイントも多いと思いますよ。あっ! ちなみにダンジョン通販ではいろいろ便利なモノをポイントで買えますよ」
脳内プチパニックを起こしていると言うのに、またポイントかよっ!
勘弁してくれよ。なんなんだよこのポイント地獄はっ!!
「一応……84ポイントはあるみたいだが」
「ポイントだけは、前回のマスターから受け継いだみたいですね」
発狂しそうな気持ちを静めるため、俺は深呼吸した。
もはや慣れっこだ。
俺はステータスが低い分、適応力でも上昇してるのか? と、自分を疑いたくなるよ。
とにかくっ! 命に関わるのなら真剣にダンジョンマスターをするしかない。
俺はダンジョン通販を開いてみた。
―――――――――――
ダンジョン通販
モンスター購入
トラップ購入
家具購入
内装購入
進化玉購入
―――――――――――
色々と突っ込みたいことはあるけど……。
とりあえず、モンスター購入だ!
―――――――――――
ゴブリン 1ポイント
スライム 1ポイント
バット 1ポイント
コボルト 2ポイント
ゾンビ 2ポイント
オーク 2ポイント
スケルトン 3ポイント
ガーゴイル 4ポイント
トロール 5ポイント
リザードマン 6ポイント
オーガ 7ポイント
etc.
――――――――――――
価格は……ミスフォーチュンより明らかにリーズナブルに見えるが……。
どうなんだろ?
とりあえず、強そうなのを何匹か購入しておくか?
俺はオーガを三匹と、50ポイントのケンタウロスを一匹購入した。
これで残りのポイントは13か……。
ま、ボス的な奴は必要だから仕方ない。
ボスのいないダンジョンなんて聞いたことないもんな。
もちろん。
ステータスオールFの俺がボスなんてやれるわけない。
なら、買うしかないだろ!
「おお! マスターは太っ腹ですね」
「そ、そうかな?」
褒められて、少し気を良くしていると。
石版から禍々しい魔法陣が飛び出して、今しがた購入したオーガ三匹と、ケンタウロス一匹が召喚されたようだ。
四匹とも、凄く人間ぽい見た目なのは……デフォルトのせいなのか……?
それにしても……なんで俺だけこんなに人生ハードモードなんだろ?
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