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第22話 sideクレバ
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「お、おい、クレバ! 大変だ!」
「何の騒ぎだ!」
あの忌々しいクソ王子がやって来て数日――こっちは色々パニクっててただでさえ寝不足気味なのに、一体なんだってんだ!
「すす、スラムの住人が……」
「住人が何だってんだ!」
「ゴミを……拾っている……それも笑って!!」
「はぁぁあああああああああああああっ!?」
んっなアホな!?
心の底まで堕落して腐りきったここの連中が……ゴミ拾いだと!?
そんなことあり得るかっ!
俺が急いで家を飛び出すと……、
「嘘だろ!? どうなってんだ!?」
みんな笑ってゴミを拾っていやがる。しかも……それを抱えてにやついてる。
狂ってる、どいつもこいつも狂ってやがる!
何なんだよこの光景はっ!?
間違いねぇ……あのクソ王子が何かしやがったんだ!
「おい、こりゃどういうことだ! 一体あのクソは何をしやがった!」
「わわ、わからねぇよ! ただ、気がついた時にはここの連中が、笑ってゴミを拾ってやがったんだよ! 俺……気味が悪りぃよクレバ!」
チクショッ、一体何をしやがった!? 奇妙な魔法の一種か?
わからねぇ、わかるはずもねぇ……クソがっ!
「クレバ! あんたはゴミを集めないのかい?」
「は?」
何言ってやがんだこの野郎!
仲間の一人がにやにやしながらゴミを抱えていやがる。
「何があった!? あのクソ王子に脅されたか?」
「違う違う! これよ、これ!」
なんだそれ?
突き出された紙切れには判子が押されている。
そんなの持って何してんだ?
さっぱり意味がわからねぇ。
「ゴミ拾いスタンプ? 何だよこれ?」
「あんた知らないのかい? 毎日どんなゴミでも商人の所に持っていけば、必ず飴玉が貰えるんだよ! さらに、ゴミの量が多ければ、甘いジュース何かも貰えるんだ。ゴミと交換してくれるなんてあり得ないだろ? あたし笑いが止まらないよ」
マジかよ……。
あのクソ王子……とんでもねぇことをしやがる。
「どうすんだよクレバ! このままじゃ賭けに負けちまうぞ!」
イカれてる……あのクソ王子は発想がヤバ過ぎるだろ!
どこの世界に、ゴミと食い物を交換するなんて発想を思いつくバカがいんだよ!
しかも、飴玉って……安過ぎるだろっ!
いや……確かに飴玉は安い。
だが、ここスラムに暮らす連中からしたら甘いお菓子はとにかく貴重だ!
と、言うのも、飴玉一個は安いが、それを買うための店に俺達スラム出身者は入れねぇんだ。
湯浴びもろくにできねぇ俺達は臭うらしく、菓子店に入ることさえ許されねぇ。
だけど、なんで王族のあいつがそれを知ってるんだ?
嫌味な貴族はもちろん、王族の身分のあのクソがそれを知ってるなんて思えねぇ。
って……アゼルか!?
あのバカ弟……俺達スラム出身者の習性や、街での扱いを教えてんじゃねぇだろうな!
いや、そうとしか思えねぇ。ぜってぇにそうだ!
どうする……このままじゃ賭けに負けちまう。
かと言って、俺に打つ手はねぇじゃねぇか!
あの女に相談するか?
ダメダメだ! あのリズベットとかいう女は信用ならねぇ!
第一、俺達が革命軍を発足しようとした矢先に、あのクソ王子がやって来て先手を打ったんだぞ!
いくらなんでもタイミングが良過ぎるだろ!
そう考えると、リズベットとあのクソ王子がグルだと考えられる。
でも……何のために?
何のために資金と題して大金や宝石を俺に渡した?
資金力を見せつけるためか?
自分達には人を従えさせるだけの財力があると知らしめるため?
それにしては飴玉って……あのクソ王子せこ過ぎるだろ!
「おい、クレバ! 何テンパってんだよ! どうすんだよ!」
「うるせぇなっ! 今必死に考えてんだろうがっ!!」
あの悪夢のゴミ拾い光景から数日――スラムが嘘みたいに綺麗になっていく!
挙げ句の果てにはゴミを必死に探すバカまで現れる始末。
みっともねぇから止めろよなっ!
あぁ……め、目眩が……。
「おい、クレバ!」
「今度は何だよっ!」
「スラムの連中が……笑って掃き掃除をしていやがる!」
「あ、あぁ……気が……」
「クレバ、クレバ! 気をしっかり持てクレバ!」
だ、ダメだ……ここの連中がおかしな方向に変わっていく。
全部あのクソ王子のせいだ。
一体あいつは何を考えてんだよ! 読めねぇ……。
「おい、クレバ」
「もうわかった……次は何だって言うんだ?」
「スラムの連中が……働いてる……」
――バタンッ!
「クレバァァアアアアアア!?」
あぁ、意識が朦朧とする。
そして、気を失って次に目が覚めると……スラムが賑わいでいる。
「これからしばらくは大浴場の建設で働き先には困らねぇぞ」
「ああ、何でも帝国の第三王子、ジュノス殿下が革命軍ってのを作ったらしくてな」
「ああ、それなら俺も聞いたよ。世界中の貧困層を対象として、支援と改革を行うらしいぞ!」
「初めはこの街からで、ゆくゆくは帝国全土……果ては帝国外にも支援するって話しだ!」
「凄い御方が居たもんだよな」
「噂では聖人様、神の使いだって話しだぜ!」
「ああ、違いねぇ。俺も革命軍に入ろうかな?」
終わった……完全に終わったよ。
ついこの間までてめぇらも帝国のクソ王子がこの街にやって来たって、敵意剥き出しだったじゃねぇか。
それが……飴玉貰って大掃除? お次は安月給で肉体労働? 果てはクソ王子から聖人様昇格ときた……。
やってられっか!
そして、――約束の一ヶ月後。
スラムが見違えるほど綺麗になっていた。
綺麗になったことで悪臭も消え、働き先があるということから殺気だっていた連中が穏やかだ。
そのお陰か……誰も寄り付かなかったスラムに人が流れてくる。
露店なんか開いて、野菜や日常品を売る連中まで現れていた。
スラムの連中が収入を得たことで、物が売れるんだとよ。
ここはもう……俺の生まれ育ったスラムじゃない。まるで別物だ。
だけど、大浴場が完成すれば……どうせまた元通りのスラムになる。
働き先を失い、路頭に迷い、元通りの絶望がすぐに訪れる。
これはまやかし、一時的な幻想に過ぎない。
だが……負けは負けだな。
「さてと、クソ王子に会いに行くか……」
「何の騒ぎだ!」
あの忌々しいクソ王子がやって来て数日――こっちは色々パニクっててただでさえ寝不足気味なのに、一体なんだってんだ!
「すす、スラムの住人が……」
「住人が何だってんだ!」
「ゴミを……拾っている……それも笑って!!」
「はぁぁあああああああああああああっ!?」
んっなアホな!?
心の底まで堕落して腐りきったここの連中が……ゴミ拾いだと!?
そんなことあり得るかっ!
俺が急いで家を飛び出すと……、
「嘘だろ!? どうなってんだ!?」
みんな笑ってゴミを拾っていやがる。しかも……それを抱えてにやついてる。
狂ってる、どいつもこいつも狂ってやがる!
何なんだよこの光景はっ!?
間違いねぇ……あのクソ王子が何かしやがったんだ!
「おい、こりゃどういうことだ! 一体あのクソは何をしやがった!」
「わわ、わからねぇよ! ただ、気がついた時にはここの連中が、笑ってゴミを拾ってやがったんだよ! 俺……気味が悪りぃよクレバ!」
チクショッ、一体何をしやがった!? 奇妙な魔法の一種か?
わからねぇ、わかるはずもねぇ……クソがっ!
「クレバ! あんたはゴミを集めないのかい?」
「は?」
何言ってやがんだこの野郎!
仲間の一人がにやにやしながらゴミを抱えていやがる。
「何があった!? あのクソ王子に脅されたか?」
「違う違う! これよ、これ!」
なんだそれ?
突き出された紙切れには判子が押されている。
そんなの持って何してんだ?
さっぱり意味がわからねぇ。
「ゴミ拾いスタンプ? 何だよこれ?」
「あんた知らないのかい? 毎日どんなゴミでも商人の所に持っていけば、必ず飴玉が貰えるんだよ! さらに、ゴミの量が多ければ、甘いジュース何かも貰えるんだ。ゴミと交換してくれるなんてあり得ないだろ? あたし笑いが止まらないよ」
マジかよ……。
あのクソ王子……とんでもねぇことをしやがる。
「どうすんだよクレバ! このままじゃ賭けに負けちまうぞ!」
イカれてる……あのクソ王子は発想がヤバ過ぎるだろ!
どこの世界に、ゴミと食い物を交換するなんて発想を思いつくバカがいんだよ!
しかも、飴玉って……安過ぎるだろっ!
いや……確かに飴玉は安い。
だが、ここスラムに暮らす連中からしたら甘いお菓子はとにかく貴重だ!
と、言うのも、飴玉一個は安いが、それを買うための店に俺達スラム出身者は入れねぇんだ。
湯浴びもろくにできねぇ俺達は臭うらしく、菓子店に入ることさえ許されねぇ。
だけど、なんで王族のあいつがそれを知ってるんだ?
嫌味な貴族はもちろん、王族の身分のあのクソがそれを知ってるなんて思えねぇ。
って……アゼルか!?
あのバカ弟……俺達スラム出身者の習性や、街での扱いを教えてんじゃねぇだろうな!
いや、そうとしか思えねぇ。ぜってぇにそうだ!
どうする……このままじゃ賭けに負けちまう。
かと言って、俺に打つ手はねぇじゃねぇか!
あの女に相談するか?
ダメダメだ! あのリズベットとかいう女は信用ならねぇ!
第一、俺達が革命軍を発足しようとした矢先に、あのクソ王子がやって来て先手を打ったんだぞ!
いくらなんでもタイミングが良過ぎるだろ!
そう考えると、リズベットとあのクソ王子がグルだと考えられる。
でも……何のために?
何のために資金と題して大金や宝石を俺に渡した?
資金力を見せつけるためか?
自分達には人を従えさせるだけの財力があると知らしめるため?
それにしては飴玉って……あのクソ王子せこ過ぎるだろ!
「おい、クレバ! 何テンパってんだよ! どうすんだよ!」
「うるせぇなっ! 今必死に考えてんだろうがっ!!」
あの悪夢のゴミ拾い光景から数日――スラムが嘘みたいに綺麗になっていく!
挙げ句の果てにはゴミを必死に探すバカまで現れる始末。
みっともねぇから止めろよなっ!
あぁ……め、目眩が……。
「おい、クレバ!」
「今度は何だよっ!」
「スラムの連中が……笑って掃き掃除をしていやがる!」
「あ、あぁ……気が……」
「クレバ、クレバ! 気をしっかり持てクレバ!」
だ、ダメだ……ここの連中がおかしな方向に変わっていく。
全部あのクソ王子のせいだ。
一体あいつは何を考えてんだよ! 読めねぇ……。
「おい、クレバ」
「もうわかった……次は何だって言うんだ?」
「スラムの連中が……働いてる……」
――バタンッ!
「クレバァァアアアアアア!?」
あぁ、意識が朦朧とする。
そして、気を失って次に目が覚めると……スラムが賑わいでいる。
「これからしばらくは大浴場の建設で働き先には困らねぇぞ」
「ああ、何でも帝国の第三王子、ジュノス殿下が革命軍ってのを作ったらしくてな」
「ああ、それなら俺も聞いたよ。世界中の貧困層を対象として、支援と改革を行うらしいぞ!」
「初めはこの街からで、ゆくゆくは帝国全土……果ては帝国外にも支援するって話しだ!」
「凄い御方が居たもんだよな」
「噂では聖人様、神の使いだって話しだぜ!」
「ああ、違いねぇ。俺も革命軍に入ろうかな?」
終わった……完全に終わったよ。
ついこの間までてめぇらも帝国のクソ王子がこの街にやって来たって、敵意剥き出しだったじゃねぇか。
それが……飴玉貰って大掃除? お次は安月給で肉体労働? 果てはクソ王子から聖人様昇格ときた……。
やってられっか!
そして、――約束の一ヶ月後。
スラムが見違えるほど綺麗になっていた。
綺麗になったことで悪臭も消え、働き先があるということから殺気だっていた連中が穏やかだ。
そのお陰か……誰も寄り付かなかったスラムに人が流れてくる。
露店なんか開いて、野菜や日常品を売る連中まで現れていた。
スラムの連中が収入を得たことで、物が売れるんだとよ。
ここはもう……俺の生まれ育ったスラムじゃない。まるで別物だ。
だけど、大浴場が完成すれば……どうせまた元通りのスラムになる。
働き先を失い、路頭に迷い、元通りの絶望がすぐに訪れる。
これはまやかし、一時的な幻想に過ぎない。
だが……負けは負けだな。
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