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6:思いもよらぬ接点
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だが、その人物がいったい誰なのか。
その顔を見れば一目瞭然だった。
(朝霧のお父さんだ…)
「へぇー珍しいね、ウチに猫がいるなんて。いったい何年振りだろうね?」
朝霧の父親は嬉しそうに笑うと、固まっている実琴を覗き込むように傍に屈み込んで来た。
人好きのする笑顔で「おいで」と手を伸ばしてくる。
優しい笑顔。
顔は似てても、だいぶ朝霧とは違う印象だ。
その目前の人物の想定外の柔らかい雰囲気に圧倒され、実琴は尚更目を丸くして動けずにいた。
(このお父さんにして、あの息子とは…。意外だ…。意外過ぎるっ!)
「ああ、その子は伊織坊ちゃまが最近拾ってきた子猫ちゃんなんですよ。お名前はミコちゃんっていうんです」
千代が丁寧に紹介してくれる。
「ほぉ?伊織くんが?それは珍しいね。何か心境の変化でもあったかな?」
面白そうにクスクス笑っている。
(あ…でもこの笑顔は少し似てるかも)
子猫限定で見せてくれる朝霧の貴重な笑顔を思い出して、実琴は僅かに胸をドキドキさせた。
手を伸ばしても特に抵抗を見せずにいる子猫の様子に朝霧の父は、そっと慣れた手つきでその身を抱え上げた。
そして大きな手で優しく撫でてくれる。
「うん、良いコだ。よく人に慣れているね」
だが、不意に目線の高さまで持ち上げると、じっ…と観察するように実琴の目を見て言った。
「ん…?このコは…」
その顔を見れば一目瞭然だった。
(朝霧のお父さんだ…)
「へぇー珍しいね、ウチに猫がいるなんて。いったい何年振りだろうね?」
朝霧の父親は嬉しそうに笑うと、固まっている実琴を覗き込むように傍に屈み込んで来た。
人好きのする笑顔で「おいで」と手を伸ばしてくる。
優しい笑顔。
顔は似てても、だいぶ朝霧とは違う印象だ。
その目前の人物の想定外の柔らかい雰囲気に圧倒され、実琴は尚更目を丸くして動けずにいた。
(このお父さんにして、あの息子とは…。意外だ…。意外過ぎるっ!)
「ああ、その子は伊織坊ちゃまが最近拾ってきた子猫ちゃんなんですよ。お名前はミコちゃんっていうんです」
千代が丁寧に紹介してくれる。
「ほぉ?伊織くんが?それは珍しいね。何か心境の変化でもあったかな?」
面白そうにクスクス笑っている。
(あ…でもこの笑顔は少し似てるかも)
子猫限定で見せてくれる朝霧の貴重な笑顔を思い出して、実琴は僅かに胸をドキドキさせた。
手を伸ばしても特に抵抗を見せずにいる子猫の様子に朝霧の父は、そっと慣れた手つきでその身を抱え上げた。
そして大きな手で優しく撫でてくれる。
「うん、良いコだ。よく人に慣れているね」
だが、不意に目線の高さまで持ち上げると、じっ…と観察するように実琴の目を見て言った。
「ん…?このコは…」
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