80 / 95
君のために出来ること
8-7
しおりを挟む
でも、多くの人に迷惑を掛けてしまい本当に申し訳なかったと思う反面、今まで曖昧だった自分の行動の全てが分かったことは、自分の中では大きな進展になったと思う。
そして、何よりそれを知った上で桐生たちは紅葉を認め、今後の対策まで考えてくれた。紅葉としては、その気持ちが何より嬉しかった。
(桐生さんが、掃除屋の私をずっと追いかけてたっていうのを聞いた時はびっくりしたけど…)
実は不満顔で「散々捲かれた」だの「おちょくられた」だのと恨み節も沢山聞かされてしまったのだけれど。でも、その後見せた彼の笑顔はとても優しいもので。
掃除屋としての自分を追っていたのが他の見知らぬ人などでなく本当に良かったと今なら思う。その辺の危険性についても散々説いて聞かされたのだけれど。心底心配してくれているのが伝わってきて、紅葉の心は温かくなった。
(桐生さんには励まされてばかりだ。昨日も相談に乗って貰ったばかりなのに…)
そう思ったところで不意に思い出した。
『そいつは文句言わずに、ずっと一緒にいてくれたんだろ?だったら迷惑とは思ってないんじゃねぇのか?別の奴の言葉なんか真に受ける前に、そいつのこと信じてやれってーの』
『それでも、どうしてもお前の気が済まねぇってんだったら、そいつに感謝の気持ちの分をたっぷり返してやれ』
『それが義理ってもんだろ?自分が嫌だとかって落ち込んでるヒマなんかねぇってことだ』
(圭ちゃん…)
まさか、圭ちゃんが来てくれるなんて思ってなかった。
前に、あんなに酷いことを言ったのに。
もう一度、紅葉は隣を歩く圭にそっと視線を向けた。圭は何か考え事でもしているのか、先程からずっと無言のまま自転車を押して歩いている。
その横顔を見る限り、表情から不機嫌さや何かは感じられないけれど。
(「少し歩きたい」だなんて圭ちゃんの都合も考えず我がままを言って付き合わせて…。悪いことしちゃったかな…)
それでなくとも、今日は朝早くからうちの母親に付き合わされて自分のことを探してくれていたというから、疲れているのかも知れない。
本当は、圭ちゃんに話したいことが一杯あった。
こないだの朝のことをまず謝りたかった。そして今更だけれど、その前日の夜のこともお礼が言いたかった。
そう、いつだって私は圭ちゃんにお世話になりっぱなしで。感謝の気持ちなんていくら伝えても足りない位なのに。
『放っておいてくれて良いから』
勝手に負い目を感じて。圭ちゃんの言葉に耳も貸さず、一方的に言ってしまった言葉。
確かに磯山さんに言われたことが尾を引いていた自覚はある。でも、あれではただの逆ギレというやつだ。
『本人が言ったんじゃねぇんなら、もっと相手を信用してやれよ』
本当に桐生さんの言う通りだなと今なら思う。
それに、もしも圭ちゃんが実際に迷惑だと今までの不満を募らせていたとしても、私としては感謝の気持ちを伝えること位しか出来ないのだから。その上で、これからは迷惑を掛けないようにと努めていくだけだ。
今日もこうして迎えに来てくれた。その事実が何より嬉しかったから…。
自分の素直な気持ちを伝えたい。そう、思った。
そして、何よりそれを知った上で桐生たちは紅葉を認め、今後の対策まで考えてくれた。紅葉としては、その気持ちが何より嬉しかった。
(桐生さんが、掃除屋の私をずっと追いかけてたっていうのを聞いた時はびっくりしたけど…)
実は不満顔で「散々捲かれた」だの「おちょくられた」だのと恨み節も沢山聞かされてしまったのだけれど。でも、その後見せた彼の笑顔はとても優しいもので。
掃除屋としての自分を追っていたのが他の見知らぬ人などでなく本当に良かったと今なら思う。その辺の危険性についても散々説いて聞かされたのだけれど。心底心配してくれているのが伝わってきて、紅葉の心は温かくなった。
(桐生さんには励まされてばかりだ。昨日も相談に乗って貰ったばかりなのに…)
そう思ったところで不意に思い出した。
『そいつは文句言わずに、ずっと一緒にいてくれたんだろ?だったら迷惑とは思ってないんじゃねぇのか?別の奴の言葉なんか真に受ける前に、そいつのこと信じてやれってーの』
『それでも、どうしてもお前の気が済まねぇってんだったら、そいつに感謝の気持ちの分をたっぷり返してやれ』
『それが義理ってもんだろ?自分が嫌だとかって落ち込んでるヒマなんかねぇってことだ』
(圭ちゃん…)
まさか、圭ちゃんが来てくれるなんて思ってなかった。
前に、あんなに酷いことを言ったのに。
もう一度、紅葉は隣を歩く圭にそっと視線を向けた。圭は何か考え事でもしているのか、先程からずっと無言のまま自転車を押して歩いている。
その横顔を見る限り、表情から不機嫌さや何かは感じられないけれど。
(「少し歩きたい」だなんて圭ちゃんの都合も考えず我がままを言って付き合わせて…。悪いことしちゃったかな…)
それでなくとも、今日は朝早くからうちの母親に付き合わされて自分のことを探してくれていたというから、疲れているのかも知れない。
本当は、圭ちゃんに話したいことが一杯あった。
こないだの朝のことをまず謝りたかった。そして今更だけれど、その前日の夜のこともお礼が言いたかった。
そう、いつだって私は圭ちゃんにお世話になりっぱなしで。感謝の気持ちなんていくら伝えても足りない位なのに。
『放っておいてくれて良いから』
勝手に負い目を感じて。圭ちゃんの言葉に耳も貸さず、一方的に言ってしまった言葉。
確かに磯山さんに言われたことが尾を引いていた自覚はある。でも、あれではただの逆ギレというやつだ。
『本人が言ったんじゃねぇんなら、もっと相手を信用してやれよ』
本当に桐生さんの言う通りだなと今なら思う。
それに、もしも圭ちゃんが実際に迷惑だと今までの不満を募らせていたとしても、私としては感謝の気持ちを伝えること位しか出来ないのだから。その上で、これからは迷惑を掛けないようにと努めていくだけだ。
今日もこうして迎えに来てくれた。その事実が何より嬉しかったから…。
自分の素直な気持ちを伝えたい。そう、思った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
天ヶ崎高校二年男子バレーボール部員本田稔、幼馴染に告白する。
山法師
青春
四月も半ばの日の放課後のこと。
高校二年になったばかりの本田稔(ほんだみのる)は、幼馴染である中野晶(なかのあきら)を、空き教室に呼び出した。
三姉妹の姉達は、弟の俺に甘すぎる!
佐々木雄太
青春
四月——
新たに高校生になった有村敦也。
二つ隣町の高校に通う事になったのだが、
そこでは、予想外の出来事が起こった。
本来、いるはずのない同じ歳の三人の姉が、同じ教室にいた。
長女・唯【ゆい】
次女・里菜【りな】
三女・咲弥【さや】
この三人の姉に甘やかされる敦也にとって、
高校デビューするはずだった、初日。
敦也の高校三年間は、地獄の運命へと導かれるのであった。
カクヨム・小説家になろうでも好評連載中!
夏休み、隣の席の可愛いオバケと恋をしました。
みっちゃん
青春
『俺の隣の席はいつも空いている。』
俺、九重大地の左隣の席は本格的に夏休みが始まる今日この日まで埋まることは無かった。
しかしある日、授業中に居眠りして目を覚ますと隣の席に女の子が座っていた。
「私、、オバケだもん!」
出会って直ぐにそんなことを言っている彼女の勢いに乗せられて友達となってしまった俺の夏休みは色濃いものとなっていく。
信じること、友達の大切さ、昔の事で出来なかったことが彼女の影響で出来るようになるのか。
ちょっぴり早い夏の思い出を一緒に作っていく。
亡き少女のためのベルガマスク
二階堂シア
青春
春若 杏梨(はるわか あんり)は聖ヴェリーヌ高等学校音楽科ピアノ専攻の1年生。
彼女はある日を境に、人前でピアノが弾けなくなってしまった。
風紀の厳しい高校で、髪を金色に染めて校則を破る杏梨は、クラスでも浮いている存在だ。
何度注意しても全く聞き入れる様子のない杏梨に業を煮やした教師は、彼女に『一ヶ月礼拝堂で祈りを捧げる』よう反省を促す。
仕方なく訪れた礼拝堂の告解室には、謎の男がいて……?
互いに顔は見ずに会話を交わすだけの、一ヶ月限定の不思議な関係が始まる。
これは、彼女の『再生』と彼の『贖罪』の物語。
自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話
水島紗鳥
青春
成績優秀でスポーツ万能な男子高校生の黒月拓馬は、学校では常に1人だった。
そんなハイスペックぼっちな拓馬の前に未来の妻を自称する日英ハーフの美少女転校生、十六夜アリスが現れた事で平穏だった日常生活が激変する。
凄まじくヤンデレなアリスは拓馬を自分だけの物にするためにありとあらゆる手段を取り、どんどん外堀を埋めていく。
「なあ、サインと判子欲しいって渡された紙が記入済婚姻届なのは気のせいか?」
「気にしない気にしない」
「いや、気にするに決まってるだろ」
ヤンデレなアリスから完全にロックオンされてしまった拓馬の運命はいかに……?(なお、もう一生逃げられない模様)
表紙はイラストレーターの谷川犬兎様に描いていただきました。
小説投稿サイトでの利用許可を頂いております。
【完結】ツインクロス
龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる