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追う者・追われる者
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そして、彼の側にはもう一人、生徒会長までもがついている。
生徒会長の立花は、桐生とは見た目は全く正反対のタイプだが、文武両道に秀でていて、その気さくで明るい人柄から男女ともに人気がある。
縁あって彼とは話をしたことがあるのだが、年上にも年下にも分け隔てなく接してくれ、とても話し上手で圭自身も好感が持てたのを覚えている。やはり生徒会長などになる人は、こういう人柄が皆に支持をされるんだなぁと感心したものだ。
だが、頭も切れるし何より勘が鋭い人物だ。敵に回せば厄介な強者になるに違いない。
(何にしても、あの人たちと紅葉が対峙するようなことにはならないようにしないと…)
圭は自分の勘に任せて適当な角を曲がると、再び細い裏道へと入って行った。
(…何処だ。何処へ行った?)
桐生は息を切らせながら差し掛かった路地で辺りをキョロキョロと見回していた。だが、周囲を見渡しても冷たいコンクリートの影が連なっているだけで薄暗い闇と静寂に包まれている。
「確かにこっちへ行ったハズなのに…」
耳をすましてみても、それらしい足音さえしない。
(…何処かに潜んでいるのか?)
周囲を警戒しながら少しの物音も逃さぬつもりで聞き耳を立てる。だが、夜風が吹き抜けるだけで人の気配は感じられなかった。
掃除屋らしき人物を追い掛けて数分。早くも目標を見失ってしまったようだ。桐生は自身の思わぬ失態に一人小さく舌打ちをした。
未だそんなに遠くへは行っていない筈なのだ。確かに奴は逃げ足が早かったが、こちらを振り返りもせず、ひたすらに駆けて行くその後ろ姿を少しずつ大きく捉え始めていたのだから。
そのまま走っていれば、きっと追いつくことが出来た筈だ。それくらい自分の足にはそれなりに自信があるし、流石にそこらの女に負ける気はしない。だが…。
(あの身の軽さ…。ハンパねぇな)
ちょっとした塀や障害物など、物ともせずに越えていくその身体能力は大したものだ。
(結局、話をつけるどころか顔さえ拝むことが出来ず上手く撒かれちまったってか。あとは立花だが…。どうだかな…)
上手く写真くらいは撮っていてくれてるといいが…と、何の収穫もない自分のことを棚に上げて調子の良いことを考える。だが、いつもこちらが思っている以上の働きをしてくれるのが立花という男なのだ。勝手に期待するくらいは良いだろう。
(ま、このままじゃあいつに合わす顔がねぇしな。もう少しこの辺りを探ってみるか)
桐生は一つ溜息を吐くと、再び走り出した。
圭は細い路地をゆっくりと自転車で流していた。
逃げた紅葉がどちらへ行ったのか確かなことは何も分からないが、全ては自分の勘に頼るのみだと圭は思っていた。
子どもの頃、母親の知らぬところで紅葉が夜、家を出てしまっているという事実が初めて明らかになった時、紅葉の母と探しに出た先で彼女の姿を見つけたのは、実は圭だった。
防犯パトロールの大人たちに追われて逃げ回っていた時も、逃げおおせた先でひとり佇む紅葉を見つけたのは自分だった。
確かなものは何もないのだが、自分には紅葉を見つけられるという自信が少なからずある。まるでセンサーが働くように。
以前、紅葉にそれを言ったら「じゃあかくれんぼはもう出来ないね」と、クスクス笑われてしまったけれど。
生徒会長の立花は、桐生とは見た目は全く正反対のタイプだが、文武両道に秀でていて、その気さくで明るい人柄から男女ともに人気がある。
縁あって彼とは話をしたことがあるのだが、年上にも年下にも分け隔てなく接してくれ、とても話し上手で圭自身も好感が持てたのを覚えている。やはり生徒会長などになる人は、こういう人柄が皆に支持をされるんだなぁと感心したものだ。
だが、頭も切れるし何より勘が鋭い人物だ。敵に回せば厄介な強者になるに違いない。
(何にしても、あの人たちと紅葉が対峙するようなことにはならないようにしないと…)
圭は自分の勘に任せて適当な角を曲がると、再び細い裏道へと入って行った。
(…何処だ。何処へ行った?)
桐生は息を切らせながら差し掛かった路地で辺りをキョロキョロと見回していた。だが、周囲を見渡しても冷たいコンクリートの影が連なっているだけで薄暗い闇と静寂に包まれている。
「確かにこっちへ行ったハズなのに…」
耳をすましてみても、それらしい足音さえしない。
(…何処かに潜んでいるのか?)
周囲を警戒しながら少しの物音も逃さぬつもりで聞き耳を立てる。だが、夜風が吹き抜けるだけで人の気配は感じられなかった。
掃除屋らしき人物を追い掛けて数分。早くも目標を見失ってしまったようだ。桐生は自身の思わぬ失態に一人小さく舌打ちをした。
未だそんなに遠くへは行っていない筈なのだ。確かに奴は逃げ足が早かったが、こちらを振り返りもせず、ひたすらに駆けて行くその後ろ姿を少しずつ大きく捉え始めていたのだから。
そのまま走っていれば、きっと追いつくことが出来た筈だ。それくらい自分の足にはそれなりに自信があるし、流石にそこらの女に負ける気はしない。だが…。
(あの身の軽さ…。ハンパねぇな)
ちょっとした塀や障害物など、物ともせずに越えていくその身体能力は大したものだ。
(結局、話をつけるどころか顔さえ拝むことが出来ず上手く撒かれちまったってか。あとは立花だが…。どうだかな…)
上手く写真くらいは撮っていてくれてるといいが…と、何の収穫もない自分のことを棚に上げて調子の良いことを考える。だが、いつもこちらが思っている以上の働きをしてくれるのが立花という男なのだ。勝手に期待するくらいは良いだろう。
(ま、このままじゃあいつに合わす顔がねぇしな。もう少しこの辺りを探ってみるか)
桐生は一つ溜息を吐くと、再び走り出した。
圭は細い路地をゆっくりと自転車で流していた。
逃げた紅葉がどちらへ行ったのか確かなことは何も分からないが、全ては自分の勘に頼るのみだと圭は思っていた。
子どもの頃、母親の知らぬところで紅葉が夜、家を出てしまっているという事実が初めて明らかになった時、紅葉の母と探しに出た先で彼女の姿を見つけたのは、実は圭だった。
防犯パトロールの大人たちに追われて逃げ回っていた時も、逃げおおせた先でひとり佇む紅葉を見つけたのは自分だった。
確かなものは何もないのだが、自分には紅葉を見つけられるという自信が少なからずある。まるでセンサーが働くように。
以前、紅葉にそれを言ったら「じゃあかくれんぼはもう出来ないね」と、クスクス笑われてしまったけれど。
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