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風のウワサ
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チャイムが鳴りやむと同時に担任の教師が教室内へと入って来て、すぐに出席を取り始めた。
そんな中、紅葉は先程頭に浮かんだことをぼんやりと思い返していた。
(何だったんだろう…さっきの…)
昔の記憶…、とかなんだろうか。
過去の出来事が記憶の片隅にでも焼き付いて残っていたとか。
(でも、夜の街を出歩くようなことは滅多になかったと思うんだけどな…)
それも人気のない薄暗い路地裏なんて。
何にしても覚えている限りで、そんな場所へ行った記憶も、そんな場面に出くわしたこともない筈だ。
テレビや何かで見たものが印象に残っていたということも有り得るだろうか。
もしかしたら夢で見た一場面とかなのかも知れない。
(こないだカツアゲにあったっていう話を学校で聞いたから影響を受けたかな?)
それでも何にせよ、随分と物騒な夢には違いないけれど。
(でも、とりあえず悪さする人たちがいなくなって平和になったんなら良かったよね)
そこで出席番号順に自分の名が呼ばれて、紅葉は「はい」と返事をした。
その頃。
圭のいる隣のクラスでは…。
チャイムは鳴ったものの担任の到着が遅れているのか、まだ教室内は雑談をする生徒達で賑わっていた。
「なぁ、本宮ー」
「ん?」
前の席の友人が身体ごと圭の方を振り返って話し掛けてきた。
「お前さ、いっつも隣のクラスの女と朝一緒にいるじゃん?あれって、もしかしてカノジョ?」
「え?彼女っ?」
圭は思わぬ言葉に目を丸くした。
「あの妙に真面目そうなコだよ。三つ編み眼鏡の」
両手で二つ丸く輪を作って眼鏡のように顔に当ててこちらを覗いて見せる友人に。
そこまで言われて、やっとそれが紅葉のことを言ってるのだと理解した。
「ああ。紅葉は幼馴染みだよ。家が隣同志なんだ」
「おさななじみ?」
「うん」
「ただの?」
「ん?…うん。まぁ…」
すると友人は口を尖らせて、いかにも不服そうな顔をした。
「何だ、つまらん」
「つまらんって…」
(何を期待してるんだか)
そう思いながらも、ははは…と乾いた笑みを浮かべる。
「まあなー、お前の好みがあーいうタイプなのかってちょっとびっくりしてた位だし。そうだよなー、流石に違うよなー」
勝手に納得している。
そこへやっと担任が教室へと入って来て皆がバタバタと席に着いた。
その友人も慌てて前へと向き直る。
そんな様子を静かに見つめながら、圭は頬杖をついた。
(好みのタイプ…ね)
好き放題言ってくれるものだ、と小さく溜息を吐く。
幼馴染みの紅葉は、確かに学校では如何にも冴えない感じの女の子だ。
良く言えば『真面目』そう。
悪く言えば『地味』とも言える。
でも、それがただのフェイクであることを皆は知らないのだ。
(実際、知らなくていい。誰も…。僕以外は…)
自分は紅葉程に美しい人を今まで見たことがない。
こればかりは主観によるものだが、それ程に自分は紅葉に長い間心惹かれていた。
そんな中、紅葉は先程頭に浮かんだことをぼんやりと思い返していた。
(何だったんだろう…さっきの…)
昔の記憶…、とかなんだろうか。
過去の出来事が記憶の片隅にでも焼き付いて残っていたとか。
(でも、夜の街を出歩くようなことは滅多になかったと思うんだけどな…)
それも人気のない薄暗い路地裏なんて。
何にしても覚えている限りで、そんな場所へ行った記憶も、そんな場面に出くわしたこともない筈だ。
テレビや何かで見たものが印象に残っていたということも有り得るだろうか。
もしかしたら夢で見た一場面とかなのかも知れない。
(こないだカツアゲにあったっていう話を学校で聞いたから影響を受けたかな?)
それでも何にせよ、随分と物騒な夢には違いないけれど。
(でも、とりあえず悪さする人たちがいなくなって平和になったんなら良かったよね)
そこで出席番号順に自分の名が呼ばれて、紅葉は「はい」と返事をした。
その頃。
圭のいる隣のクラスでは…。
チャイムは鳴ったものの担任の到着が遅れているのか、まだ教室内は雑談をする生徒達で賑わっていた。
「なぁ、本宮ー」
「ん?」
前の席の友人が身体ごと圭の方を振り返って話し掛けてきた。
「お前さ、いっつも隣のクラスの女と朝一緒にいるじゃん?あれって、もしかしてカノジョ?」
「え?彼女っ?」
圭は思わぬ言葉に目を丸くした。
「あの妙に真面目そうなコだよ。三つ編み眼鏡の」
両手で二つ丸く輪を作って眼鏡のように顔に当ててこちらを覗いて見せる友人に。
そこまで言われて、やっとそれが紅葉のことを言ってるのだと理解した。
「ああ。紅葉は幼馴染みだよ。家が隣同志なんだ」
「おさななじみ?」
「うん」
「ただの?」
「ん?…うん。まぁ…」
すると友人は口を尖らせて、いかにも不服そうな顔をした。
「何だ、つまらん」
「つまらんって…」
(何を期待してるんだか)
そう思いながらも、ははは…と乾いた笑みを浮かべる。
「まあなー、お前の好みがあーいうタイプなのかってちょっとびっくりしてた位だし。そうだよなー、流石に違うよなー」
勝手に納得している。
そこへやっと担任が教室へと入って来て皆がバタバタと席に着いた。
その友人も慌てて前へと向き直る。
そんな様子を静かに見つめながら、圭は頬杖をついた。
(好みのタイプ…ね)
好き放題言ってくれるものだ、と小さく溜息を吐く。
幼馴染みの紅葉は、確かに学校では如何にも冴えない感じの女の子だ。
良く言えば『真面目』そう。
悪く言えば『地味』とも言える。
でも、それがただのフェイクであることを皆は知らないのだ。
(実際、知らなくていい。誰も…。僕以外は…)
自分は紅葉程に美しい人を今まで見たことがない。
こればかりは主観によるものだが、それ程に自分は紅葉に長い間心惹かれていた。
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