5 / 95
風のウワサ
1-4
しおりを挟む
クラスメイトたちと挨拶を交わしながら紅葉が自分の席へと着くと、そこへ一人の生徒が傍へと歩み寄って来た。
「もーみじ!おっはよー」
「あっタカちゃん、おはよー」
彼女はクラスで仲の良い友人の一人だ。
「ね、ね、聞いた?あのウワサ!」
「…ウワサ?何の?」
興奮気味な彼女の様子に首を傾げる。紅葉には何のことだか分からなかった。
そんな紅葉に彼女は得意げに話し始めた。
「実は、もう一部では朝から大騒ぎになってるみたいなんだけどねー。なんでも最近、この辺を仕切ってた不良グループが何者かに潰されたんだって」
「潰された…?」
随分と穏やかじゃない話のようだ。
「そいつらのユスリやタカリやなんかが酷くて、この学校でも被害を受けてた生徒が結構いたらしいんだけど。そのグループのメンバー皆が病院送りにされたとかで巷では大騒ぎになってるんだって」
「へぇー」
そう言えば先日の朝会でも、それらしい注意喚起があった気がする。
暴行事件等が多発してるから夜間の出歩きを控えるようにとか言っていたっけ。
(圭ちゃん、いつも塾で帰りが遅いから心配してたんだよね。その心配がなくなったなら良かったなぁ)
そんなことを頭の端で思っていると、タカちゃんが尚も興奮しながら身を乗り出してきた。
「でもこの話は、これで終わりじゃないの!」
「そ…そうなの?」
(今日はまた、随分とテンション高いなぁ…)
彼女は情報通であり、極度の噂好きなのだ。
「そのグループを潰したのが、どんな人物なのかって色んな憶測が飛び交ってるんだって」
「どんな人物って…。それって一人なの?グループとかじゃなくって?」
「それそれっ。普通別のグループとの抗争とか喧嘩とかって思うじゃない?でも、どうやらそうじゃないみたいなんだって。流石に一人ってことはないと思うけどね」
「ふーん…」
そこまで聞いて、ふと何かが頭を過ぎった。
不意に浮かんだ、夜の街。
暗がりに潜む複数の黒い影。
その影の向こうに小さくうずくまり震える塊。
執拗に絡まれ、時には手や足が振り降ろされ――…
(何だろう?こんな場面…。私、知らない…)
「どうしたの?紅葉?」
「え…?」
タカちゃんが急に黙ってしまった自分を不思議そうに覗き込んでいた。
思わず自らの意識に集中してしまっていたみたいだ。
「う、ううんっ何でもないっ。でも、その不良グループがいなくなったんならひと安心だね。これで少しは平和になるかもね」
慌てて感想を口にした。
「それがね、そう簡単な話でもないみたいよ」
タカちゃんが大袈裟に肩をすくめる動作を見せる。
「どういうこと?」
「最近は治安悪いしね。今までは例のグループが顔を効かせていたけど、それがいなくなったらなったで別の奴らが出て来るんじゃないかって心配されてるんだって」
「…キリがないんだね」
「ホントにねー」
そこまで話したところでチャイムが鳴り響き、タカちゃんは自分の席へと戻って行った。
「もーみじ!おっはよー」
「あっタカちゃん、おはよー」
彼女はクラスで仲の良い友人の一人だ。
「ね、ね、聞いた?あのウワサ!」
「…ウワサ?何の?」
興奮気味な彼女の様子に首を傾げる。紅葉には何のことだか分からなかった。
そんな紅葉に彼女は得意げに話し始めた。
「実は、もう一部では朝から大騒ぎになってるみたいなんだけどねー。なんでも最近、この辺を仕切ってた不良グループが何者かに潰されたんだって」
「潰された…?」
随分と穏やかじゃない話のようだ。
「そいつらのユスリやタカリやなんかが酷くて、この学校でも被害を受けてた生徒が結構いたらしいんだけど。そのグループのメンバー皆が病院送りにされたとかで巷では大騒ぎになってるんだって」
「へぇー」
そう言えば先日の朝会でも、それらしい注意喚起があった気がする。
暴行事件等が多発してるから夜間の出歩きを控えるようにとか言っていたっけ。
(圭ちゃん、いつも塾で帰りが遅いから心配してたんだよね。その心配がなくなったなら良かったなぁ)
そんなことを頭の端で思っていると、タカちゃんが尚も興奮しながら身を乗り出してきた。
「でもこの話は、これで終わりじゃないの!」
「そ…そうなの?」
(今日はまた、随分とテンション高いなぁ…)
彼女は情報通であり、極度の噂好きなのだ。
「そのグループを潰したのが、どんな人物なのかって色んな憶測が飛び交ってるんだって」
「どんな人物って…。それって一人なの?グループとかじゃなくって?」
「それそれっ。普通別のグループとの抗争とか喧嘩とかって思うじゃない?でも、どうやらそうじゃないみたいなんだって。流石に一人ってことはないと思うけどね」
「ふーん…」
そこまで聞いて、ふと何かが頭を過ぎった。
不意に浮かんだ、夜の街。
暗がりに潜む複数の黒い影。
その影の向こうに小さくうずくまり震える塊。
執拗に絡まれ、時には手や足が振り降ろされ――…
(何だろう?こんな場面…。私、知らない…)
「どうしたの?紅葉?」
「え…?」
タカちゃんが急に黙ってしまった自分を不思議そうに覗き込んでいた。
思わず自らの意識に集中してしまっていたみたいだ。
「う、ううんっ何でもないっ。でも、その不良グループがいなくなったんならひと安心だね。これで少しは平和になるかもね」
慌てて感想を口にした。
「それがね、そう簡単な話でもないみたいよ」
タカちゃんが大袈裟に肩をすくめる動作を見せる。
「どういうこと?」
「最近は治安悪いしね。今までは例のグループが顔を効かせていたけど、それがいなくなったらなったで別の奴らが出て来るんじゃないかって心配されてるんだって」
「…キリがないんだね」
「ホントにねー」
そこまで話したところでチャイムが鳴り響き、タカちゃんは自分の席へと戻って行った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
【完結】カワイイ子猫のつくり方
龍野ゆうき
青春
子猫を助けようとして樹から落下。それだけでも災難なのに、あれ?気が付いたら私…猫になってる!?そんな自分(猫)に手を差し伸べてくれたのは天敵のアイツだった。
無愛想毒舌眼鏡男と獣化主人公の間に生まれる恋?ちょっぴりファンタジーなラブコメ。
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
青天のヘキレキ
ましら佳
青春
⌘ 青天のヘキレキ
高校の保健養護教諭である金沢環《かなざわたまき》。
上司にも同僚にも生徒からも精神的にどつき回される生活。
思わぬ事故に巻き込まれ、修学旅行の引率先の沼に落ちて神将・毘沙門天の手違いで、問題児である生徒と入れ替わってしまう。
可愛い女子とイケメン男子ではなく、オバちゃんと問題児の中身の取り違えで、ギャップの大きい生活に戸惑い、落としどころを探って行く。
お互いの抱えている問題に、否応なく向き合って行くが・・・・。
出会いは化学変化。
いわゆる“入れ替わり”系のお話を一度書いてみたくて考えたものです。
お楽しみいただけますように。
他コンテンツにも掲載中です。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】ツインクロス
龍野ゆうき
青春
冬樹と夏樹はそっくりな双子の兄妹。入れ替わって遊ぶのも日常茶飯事。だが、ある日…入れ替わったまま両親と兄が事故に遭い行方不明に。夏樹は兄に代わり男として生きていくことになってしまう。家族を失い傷付き、己を責める日々の中、心を閉ざしていた『少年』の周囲が高校入学を機に動き出す。幼馴染みとの再会に友情と恋愛の狭間で揺れ動く心。そして陰ではある陰謀が渦を巻いていて?友情、恋愛、サスペンスありのお話。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる