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第三話 Duck
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バラード調の目覚ましで起きる。
食卓のパンをかじり、麦茶で流し込んでから駅へ向かう。
1番ホームで湘南新宿ラインに乗り、横浜駅で下車する。
そこから学校までは目と鼻の先。
いつも通りだった。いつも通りの朝。いつもの日常。
教室に入ると、7時49分。相変わらずギリギリの時間だが、少しでも多く寝ていたい性分なので、仕方がない。
「よ」
「おはよ」
ダイキとヨシアキが声をかけてくる。僕も「よっす」と言い、自分の席についた。これもまた、半年ほど繰り返してきた日常だった。
そんな僕の日常に、非日常が唐突に紛れ込んだ。
「──えーっとね、転校生が来てるんだよね」
池内先生が教室に入ってきて、真っ先に発した言葉がそれだった。
教室は途端にざわつく。当然だ。7月に転校など、そうそうある事ではない。教室の後ろから耳を傾けてみると、「イケメンかなぁ」という女子の声と、「可愛い子であってくれ」という男子の声が入り混じっていた。
「全員、揃ってるよな? じゃあ、先に紹介しちゃうか」
池内先生は落ち着いた口調でそう言った。
「じゃ、鴨川さん。入って」
結論から先に言えば、転校生は女子だった。
男子が小さく「おお……」と言うのと同時に、他の女子も嘆息を漏らすのが聞こえた。
理由は至って単純だ。彼女が、この世のものとは思えないほどの美少女だったからである。彼女の出で立ちを表すには、『お人形さんみたい』という言い方がピッタリだろう。
「鴨川ダイヤです。初めまして」
弾けるような声で彼女はそう言い、皆を絶句させた。口を半開きにしている者、彼女をじっと見据えている者、神に感謝している者。そして、僕。
池内先生が
「じゃあ、鴨川さんは一番後ろに座ってもらっても良いかな。うん、岩橋の後ろ」
と言うのもろくに聞こえず、僕は、鴨川ダイヤが僕の横をすり抜け、僕の後ろの席に座るまで、彼女の事をじっと見つめていた。否、思わず見つめてしまったのだ。
鴨川ダイヤは、背が低かった。
鴨川ダイヤは、目が大きかった。
鴨川ダイヤは、鼻が小さかった。
鴨川ダイヤは、肌が白くて綺麗だった。
鴨川ダイヤは、目の下にほくろがあった。
鴨川ダイヤは、髪が短めのボブだった。
鴨川ダイヤは、良い匂いがした。
鴨川ダイヤは、髪が黒かった。
まるで妄想が現実になったような、奇妙な一目惚れだった。今までずっと好きだった人と、初めて出会ったような感覚だった。
より端的に、そしてシンプルに言うならば、鴨川ダイヤは僕のタイプの女性そのものだった。
食卓のパンをかじり、麦茶で流し込んでから駅へ向かう。
1番ホームで湘南新宿ラインに乗り、横浜駅で下車する。
そこから学校までは目と鼻の先。
いつも通りだった。いつも通りの朝。いつもの日常。
教室に入ると、7時49分。相変わらずギリギリの時間だが、少しでも多く寝ていたい性分なので、仕方がない。
「よ」
「おはよ」
ダイキとヨシアキが声をかけてくる。僕も「よっす」と言い、自分の席についた。これもまた、半年ほど繰り返してきた日常だった。
そんな僕の日常に、非日常が唐突に紛れ込んだ。
「──えーっとね、転校生が来てるんだよね」
池内先生が教室に入ってきて、真っ先に発した言葉がそれだった。
教室は途端にざわつく。当然だ。7月に転校など、そうそうある事ではない。教室の後ろから耳を傾けてみると、「イケメンかなぁ」という女子の声と、「可愛い子であってくれ」という男子の声が入り混じっていた。
「全員、揃ってるよな? じゃあ、先に紹介しちゃうか」
池内先生は落ち着いた口調でそう言った。
「じゃ、鴨川さん。入って」
結論から先に言えば、転校生は女子だった。
男子が小さく「おお……」と言うのと同時に、他の女子も嘆息を漏らすのが聞こえた。
理由は至って単純だ。彼女が、この世のものとは思えないほどの美少女だったからである。彼女の出で立ちを表すには、『お人形さんみたい』という言い方がピッタリだろう。
「鴨川ダイヤです。初めまして」
弾けるような声で彼女はそう言い、皆を絶句させた。口を半開きにしている者、彼女をじっと見据えている者、神に感謝している者。そして、僕。
池内先生が
「じゃあ、鴨川さんは一番後ろに座ってもらっても良いかな。うん、岩橋の後ろ」
と言うのもろくに聞こえず、僕は、鴨川ダイヤが僕の横をすり抜け、僕の後ろの席に座るまで、彼女の事をじっと見つめていた。否、思わず見つめてしまったのだ。
鴨川ダイヤは、背が低かった。
鴨川ダイヤは、目が大きかった。
鴨川ダイヤは、鼻が小さかった。
鴨川ダイヤは、肌が白くて綺麗だった。
鴨川ダイヤは、目の下にほくろがあった。
鴨川ダイヤは、髪が短めのボブだった。
鴨川ダイヤは、良い匂いがした。
鴨川ダイヤは、髪が黒かった。
まるで妄想が現実になったような、奇妙な一目惚れだった。今までずっと好きだった人と、初めて出会ったような感覚だった。
より端的に、そしてシンプルに言うならば、鴨川ダイヤは僕のタイプの女性そのものだった。
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