15 / 18
第三話 Duck
3/4
しおりを挟む
バラード調の目覚ましで起きる。
食卓のパンをかじり、麦茶で流し込んでから駅へ向かう。
1番ホームで湘南新宿ラインに乗り、横浜駅で下車する。
そこから学校までは目と鼻の先。
いつも通りだった。いつも通りの朝。いつもの日常。
教室に入ると、7時49分。相変わらずギリギリの時間だが、少しでも多く寝ていたい性分なので、仕方がない。
「よ」
「おはよ」
ダイキとヨシアキが声をかけてくる。僕も「よっす」と言い、自分の席についた。これもまた、半年ほど繰り返してきた日常だった。
そんな僕の日常に、非日常が唐突に紛れ込んだ。
「──えーっとね、転校生が来てるんだよね」
池内先生が教室に入ってきて、真っ先に発した言葉がそれだった。
教室は途端にざわつく。当然だ。7月に転校など、そうそうある事ではない。教室の後ろから耳を傾けてみると、「イケメンかなぁ」という女子の声と、「可愛い子であってくれ」という男子の声が入り混じっていた。
「全員、揃ってるよな? じゃあ、先に紹介しちゃうか」
池内先生は落ち着いた口調でそう言った。
「じゃ、鴨川さん。入って」
結論から先に言えば、転校生は女子だった。
男子が小さく「おお……」と言うのと同時に、他の女子も嘆息を漏らすのが聞こえた。
理由は至って単純だ。彼女が、この世のものとは思えないほどの美少女だったからである。彼女の出で立ちを表すには、『お人形さんみたい』という言い方がピッタリだろう。
「鴨川ダイヤです。初めまして」
弾けるような声で彼女はそう言い、皆を絶句させた。口を半開きにしている者、彼女をじっと見据えている者、神に感謝している者。そして、僕。
池内先生が
「じゃあ、鴨川さんは一番後ろに座ってもらっても良いかな。うん、岩橋の後ろ」
と言うのもろくに聞こえず、僕は、鴨川ダイヤが僕の横をすり抜け、僕の後ろの席に座るまで、彼女の事をじっと見つめていた。否、思わず見つめてしまったのだ。
鴨川ダイヤは、背が低かった。
鴨川ダイヤは、目が大きかった。
鴨川ダイヤは、鼻が小さかった。
鴨川ダイヤは、肌が白くて綺麗だった。
鴨川ダイヤは、目の下にほくろがあった。
鴨川ダイヤは、髪が短めのボブだった。
鴨川ダイヤは、良い匂いがした。
鴨川ダイヤは、髪が黒かった。
まるで妄想が現実になったような、奇妙な一目惚れだった。今までずっと好きだった人と、初めて出会ったような感覚だった。
より端的に、そしてシンプルに言うならば、鴨川ダイヤは僕のタイプの女性そのものだった。
食卓のパンをかじり、麦茶で流し込んでから駅へ向かう。
1番ホームで湘南新宿ラインに乗り、横浜駅で下車する。
そこから学校までは目と鼻の先。
いつも通りだった。いつも通りの朝。いつもの日常。
教室に入ると、7時49分。相変わらずギリギリの時間だが、少しでも多く寝ていたい性分なので、仕方がない。
「よ」
「おはよ」
ダイキとヨシアキが声をかけてくる。僕も「よっす」と言い、自分の席についた。これもまた、半年ほど繰り返してきた日常だった。
そんな僕の日常に、非日常が唐突に紛れ込んだ。
「──えーっとね、転校生が来てるんだよね」
池内先生が教室に入ってきて、真っ先に発した言葉がそれだった。
教室は途端にざわつく。当然だ。7月に転校など、そうそうある事ではない。教室の後ろから耳を傾けてみると、「イケメンかなぁ」という女子の声と、「可愛い子であってくれ」という男子の声が入り混じっていた。
「全員、揃ってるよな? じゃあ、先に紹介しちゃうか」
池内先生は落ち着いた口調でそう言った。
「じゃ、鴨川さん。入って」
結論から先に言えば、転校生は女子だった。
男子が小さく「おお……」と言うのと同時に、他の女子も嘆息を漏らすのが聞こえた。
理由は至って単純だ。彼女が、この世のものとは思えないほどの美少女だったからである。彼女の出で立ちを表すには、『お人形さんみたい』という言い方がピッタリだろう。
「鴨川ダイヤです。初めまして」
弾けるような声で彼女はそう言い、皆を絶句させた。口を半開きにしている者、彼女をじっと見据えている者、神に感謝している者。そして、僕。
池内先生が
「じゃあ、鴨川さんは一番後ろに座ってもらっても良いかな。うん、岩橋の後ろ」
と言うのもろくに聞こえず、僕は、鴨川ダイヤが僕の横をすり抜け、僕の後ろの席に座るまで、彼女の事をじっと見つめていた。否、思わず見つめてしまったのだ。
鴨川ダイヤは、背が低かった。
鴨川ダイヤは、目が大きかった。
鴨川ダイヤは、鼻が小さかった。
鴨川ダイヤは、肌が白くて綺麗だった。
鴨川ダイヤは、目の下にほくろがあった。
鴨川ダイヤは、髪が短めのボブだった。
鴨川ダイヤは、良い匂いがした。
鴨川ダイヤは、髪が黒かった。
まるで妄想が現実になったような、奇妙な一目惚れだった。今までずっと好きだった人と、初めて出会ったような感覚だった。
より端的に、そしてシンプルに言うならば、鴨川ダイヤは僕のタイプの女性そのものだった。
10
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
校長先生の話が長い、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。
学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。
とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。
寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ?
なぜ女子だけが前列に集められるのか?
そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。
新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。
あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる