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未定編

Loli14.お店の相談

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「なんだか物凄くスッキリしている気がする。」

お祝いした翌日、俺は悶々としていたものが、妙にスッキリしたような感覚があった。特になにもしてない気がするが、特に悪いことではなさそうなので気にしないことにする。

カーテンの隙間から強い日差しが差し込み、すでに日が昇ってある程度時間が経っていることを感じさせた。傍らには穏やかにスヤスヤと眠る美少女リーシャ。いつ見ても心が抉られる可愛さだ。

世の中の紳士諸君羨ましいだろう?
ハハハハ!!

さて、起こすのも悪いし、今後のことを考えてみよう。

俺の目標は、

■リーシャと店を運営してのんびり暮らすこと

だ。

それから、

■幼女の保護や援助

は紳士の義務だし、俺のやりたいことだ。

ひとまず家と店とアトリエ、それに幼女保護施設の建物の目処がたった。立ってしまった、あっという間に。ただ、数人ならまだしも、何十人となると収入が安定しなければ、幼女保護施設の稼働は難しい。管理運営に人手がいるし、幼女を育てるのにはお金がかかる。

ミスリルで稼いだからといって、収入がなければどんどん減ってしまう。まずは環境とそれを維持できるだけの収入が必要になるだろう。だから、軌道に乗るまでは店とアトリエだけ建てて貰えればそれで良い。

次は店でも何を売るかだが、探索者が集まるこの街では、風邪薬などよりまずはポーション類だ。もちろん普通のポーションではなく、うちの店独自の目玉商品として、劣化しないポーションがあると良いんじゃなかろうか。

ポーションは7日もすれば劣化する。それが劣化しないとなればかなり嬉しいはず。完全に劣化しないまでも、劣化までの時間が伸びれば助かるだろう。

容器に劣化防止、時間遅延や時間停止などの魔法を掛けられればいいのかもしれないが、一本当たりの単価が跳ね上がるか、容器を使い捨てに出来ないなどのデメリットがある。俺の店でもそれなりに割高にはするつもりだが、付与魔法に比べれば、なんとでもないだろう。

ターゲットは探索者の中でも長期的に迷宮に入る者たちかね。

◼︎回復ポーション
◼︎魔力回復ポーション
◼︎体力回復ポーション
◼︎各種状態異常回復ポーション

この辺りを最初は売っていこう。

ただ、それぞれ下級、中級、上級、最上級と別れていて、現在下級しか作れない。まず他の店がどんなものか確認もしておきたい。
下級だけだと駄目そうなら、なんとかして誰かに弟子入りしたい。

それからリーシャの実力次第になるけど、武具や装飾品の類も販売する者いいかな。俺も付与魔法師の端くれ、下級になるけど、付けないよりはつけた方が良い武器になる。その上、スキルで汚れが付かないなどの追加すれば、非常に価値のある武器になるはず。

うぉー!!考えるのがすげー楽しくなってきた。

他の店に負ける可能性があるのは、下級しか作れないことだな。これはますます偵察にいかねばなるまいて。

「ふわぁ……。」

取らぬヌッキーの皮算用の思考にどっぷりハマっていると、可愛らしい欠伸と共に俺の水の精霊さんがもぞもぞと動き出した。

「トーマさん、おはようございます。」
「おはよう、リーシャ。」

目をこすりながら挨拶するリーシャに、俺も挨拶を返す。
毎日可愛すぎて心が痛い。

リーシャがしっかりと目を覚ました後、お互いに部屋と洗面所でいそいそと着替えを済ませると、今日の予定を話す。

「今日は商業ギルドに行って、店を構える前にやっておいた方いいことを聞いたり、他のライバル店を回ったりしたいと思う。一緒に行くか?」
「もちろんです。」

今日の予定が決まったので、二人で部屋を出る。他の店のことをタゴヤさんに聞きたいので、受付に寄って行くことにした。受付に向かうとタゴヤさんがいたので、問題なく聞けそうである。

「こんにちは。タゴヤさん」
「こんにちは。」
「おはようございます。トーマ様、リーシャさん。何か御用ですか?」
「えっとですね、この街のポーション系を扱っている店と、武具を扱っている店を知っていれば教えてもらえますか?」
「そうですね、ポーションを取り扱う魔道具店や薬種店は大小30店舗以上あるかと思います。その中で私が信用できる店は10店舗くらいですね。また、武具を扱っている店も非常に多くありますが、私が信用できる店は20店舗程になります。」
「思ったより多いんですね。」
「この街は広いですし、世界でも有数のダンジョン都市ですからね、人も物も良く集まってるんですよ。あ、これが各店舗の地図です。」
「えっ!?」

タゴヤさんが出してきたのは信用できる店の地図、一体いつの間に準備していたのか、俺は驚きを隠せなかった。

「そうおっしゃられるかと思ってあらかじめ準備しておきました。」

タゴヤさんの好々爺のような微笑みにゾクッとした寒気を感じた。漏れるはずのない情報のはず。いったいどこから仕入れてきたのか恐ろしい人である。

いや、怖れていても仕方がない。タゴヤさんは俺に不利益なことはできない。つまり俺にとってとても有能ということだ。

「ありがとうございます。」

俺は頭を軽く下げて礼を言った後、リーシャとゼツボウと共に街へと繰り出した。

「まずは、商業ギルドに行こう。」
「わかりました。」
「ワフッ」

二人の返事と共に商業ギルドに向かって歩き出す。商業ギルドに着くまでの間、リーシャの技術について聞いてみることにした。

「リーシャは武具はどの程度扱えるんだ?思い出させて申し訳ないけど、ロッテルの所ではどの程度のことをしていた?」
「いえいえ大丈夫です。そうですね、ご主人様以外の皆の武具の作成と手入れは、私が担当していました。他のお店のことはわかりませんが、奴隷になる前の私の故郷では、同年代でも優秀だったと思います。自分で言うのも可笑しな話ですが。」
「なるほどな。リーシャは凄いな。」
「いいい、いえ、そんなことないです。(トーマさんと比べれば私なんてスライムみたいなものです。)」

ふむ、リーシャたんは可愛いだけでなく、鍛冶も優秀と、流石である。

「作れるものは何がある?」
「そうですね、金属系の武器防具なら大体作れると思います。でも……皮や布系の防具はあまり得意じゃないですね……。」
「布系防具はエリカの所で買うから自分達の装備として問題ないな。販売するのは金属系の防具をメインにしよう。」
「申し訳……ありません……。」

リーシャがぽつりとつぶやく。

いやいや、なんでそこで謝罪の言葉が出るの?
俺また紳士失格じゃないか?

「なんで謝るんだ?」
「だって布系作れなくて、お役に立てないので……。」
「何言ってるんだ?金属系だけで十分さ。元々は薬屋だけで行こうと思ってたし、とっても助かるよ。」
「ありがとうございます……グス。」
「泣かないでくれ。泣いてるリーシャも可愛いけど、リーシャは笑ってる方がずっと可愛いんだからな。」
「は、はひ(だ、だめですよ、そんな!!ふ、ふいうちです!!)」

リーシャたんが健気過ぎて辛い!!
居てくれるだけで幸せだし、金属扱えるだけでも十分すぎるのに、革製品扱えないだけで申し訳ないとか、どんだけ役に立ちたいと思ってくれてるのだろうか。
こんな子に出会えた俺は本当に幸せ者だ。

今まで俺をだましてくれた糞野郎ども!!
礼を言うぜ!!

リーシャたんの技能について話しているうちに商業ギルドについたので、中に入ってカイナンさんの所へ行く。

「あ、こんにちは、トーマ様」
「こんにちは、カイナンさん」
「本日はどのようなご用件で?」
「えっと、店を持つことになったので、いろいろ教えてもらいたいな、と。」
「え!?まだD……うぐっ!?」

カイナンさんは信じられないといった表情で叫ぼうとするも、俺のスキルのせいか俺の情報を述べることができなかった。急に息が詰まったように苦しそうな顔になる。

ほほう。俺に不利なことを言おうとするとこんな感じになるのか、いい参考になった。

「カイナンさん、声が大きいですよ?」
「いやぁ、申し訳ありません。先日から驚きっぱなしですよ。ここではなんですので、応接室にご案内しますね。」
「わかりました。」

ホントこんな人がギルド員だなんて大丈夫なんだろうか。少し心配になりながらもカイナンさんの後ろに続き、応接室へと向かった。

応接室は、派手でいかにも高そうな見栄え重視の部屋といった印象を受けた。向かい合っておかれたソファーに互いに向き合って座る。リーシャは後ろに立っていようとしたが、無理やり座らせた。

美少女を立たせたままとか、ダメ、絶対!!

ゼツボウはソファーの隣でお座りしている。やはりどう見ても犬である。

「さて、お店をもつという話でしたね?」
「そうです。」
「いったいどんな手を使われたのか、伺っても?」
「秘密です。と言っても気になると思いますので、詳細は言えませんが、アインディ家の方と仲良くなりましてね。」
「ア、アインディ家ですって!?」

グインディ家の名前を出した途端、カイナンさんの目ん玉が飛び出そうになった。

そんな凄い家なのか、アインディ家って。聞いてみよう。

「そこまで驚く程凄いんですか?アインディ家って。」
「え、知らないんですか?」
「ええ、田舎から出て、ここに来たばかりですし。」
「そ、そうですか。えっとアインディ家というのは、この街を支配してる御三家の内の一つです。つまり、この街で一番偉い家の一つです。しかも公明正大な方で、貴族だからと偉そうにせず、平民や冒険者にも分け隔てなく接される方の為、かなり人気が高く、支持している貴族も多いですね。実質勢力としては一番大きいです。」
「マジか……。」
「マジです。というか、私だけで抱えるには大きすぎるので、ギルドマスターを呼んできてもいいですか?」
「ええ、構いませんよ。」

カイナンさんは、焦りながらビューんという音が聞こえそうなほどのスピードで部屋を出て行った。

マジかよ、実質この街の領主みたいな立場の人と俺仲良くなっちゃったのね。
同士よ、とか言っちゃってたよ。

ま、いっか。

ーガチャ

しばらく待っていると、部屋の入り口が開いて、カイナンさんともう二人入ってくる。誰かに似てる気がする爺さんに、20代後半くらいの熟女だ。爺さんは常に笑みを絶やさず、何を考えてるのか分からない。熟女も無表情でクールな切れ目、これまた何を考えているのか分からなかった。

油断は出来なそうだ。俺は一応立ち上がる。

「君がカイナンが言っていたトーマ君かね、私がこのギルドの長、アルベルト・ワークマンだ。ギルドマスターとでも呼んでくれ。よろしく頼むぞ。」
「私は秘書のリミナ・アークホルンです。リミナと呼んでください。宜しくお願いします。」
「おっしゃる通り、俺はトーマと申します。トーマで構いません。宜しくお願いします。」

恒例の自己紹介握手タイムこれで俺は無敵だ。
座るように指示されたので、お互いに腰を下ろす。

「それで、今日は店を持つことになったから、いろいろ聞きたいということだったか。」
「はい、運よくアインディ家の方と縁を結ぶ機会がありまして、便宜を図ってくれるということで。」
「なるほどな。昨日いきなりグリス様から土地を用意してくれ、と言われたのはそういうことだったか!!」

我が意を得たりといった顔で膝を叩くギルドマスター。
まぁ気になるよな。

とは言え、それが俺のことだとは確証は持てないので、軽く否定しておく。

「いや~、まだ何も聞いてないので俺と関係があるかは分かりませんが。」
「おそらく間違いないだろう。任せてくれたまえ、素晴らしい土地を用意しよう。それで何が聞きたいかな?」
「そうですね、ポーションをメインとした薬と、金属系の武具を売りたいと思うんですが、どこかに挨拶に行った方がいいですか?」

まずは一番聞きたかったことを聞いてみた。
根回し・人付き合いは大事です。それで俺は嵌められたし、騙されたからな。
握手しない奴は信用しないが。

「そうだな。薬となると薬種ギルドか錬金術ギルドには挨拶に行くべきだろう。武具に関しては鍛冶ギルドだな。」
「そうですね、それと店舗近くのご近所や店舗が置かれる区の顔役への挨拶も必要かと。」

ギルドマスターが顎を擦りながら少し考えるようなそぶりをして答えた後、リミナおばさんがギルドマスターの言葉に続けるように告げた。

「なるほど。今まで探索者だったもので何も知らなかったのですが、ご近所だけでなく、顔役や各種ギルドにも顔を出した方がいいのですね、助かりました。」

正直探索者の経験しかない俺には分からないことばかりだ。
こういう助言は助かる。

「何も言わず自分の縄張りに入ってきたら誰でも嫌だろ?ボスにはお伺いを立てないとな。今日君がウチに話を通しに来てくれたようにね。」
「おっしゃる通りですね。」

ニヤリと人の悪そうな笑みを浮かべるギルドマスターに、俺も似た笑みを浮かべて返事をした。

「一応警告しておくが、薬種ギルドには注意しておくのだぞ。あそこは先代のギルドマスターが退任した後、評判がどんどん悪くなっとる。」

苦々し気な表情になるギルドマスター。薬種ギルドがよほど嫌いらしい。
俺もそんな人とは関わり合いになりたくない。

挨拶だけして後は距離を置こう。

「分かりました。警戒します。」
「他には何かあるかね。」
「そうですね、治安はそれほど良くはないと思いますが、留守の場合の防犯や営業時の守りってどうしてるんですか?」
「そうだな。どちらも奴隷にさせているな。奴隷は裏切れないからな。」

なるほど。確かに奴隷は裏切ることはできない。
でもそこは奴隷の扱い次第って気もする。
裏切ることはできないが、報告した方がいいことを報告しなかったり、力を抜いたりはできるかもしれない。
気を付ける必要があるだろう。俺も虐げられていた時は、いろいろやったし。奴隷を扱ったうえで舐められない程度に良い待遇にした方が良いか。

奴隷に用心棒をさせるにしても、少女たちに用心棒させるのは心苦しいし、少女たちが襲われたり、いやらしい目で見られるのも嫌だ。それに見た目的にも威圧感がなく、用心棒として向かないな。

「ありがとうございます。助かりました。最後は質問ではなく、お願いなのですが、経営や経理に強い人間を2,3人紹介していただくことは難しいですか?何分素人なもので、店の管理や運営を手伝ってもらいたいのです。」
「うーむ。何人かいるが……。リミナはどうだ?」
「私も何人かはおります。」

ギルドマスターもリミナおばさんもいまいち反応が悪い。
しょうがない、ここで伝家の宝刀を使いましょう。

「もちろんただとは言いませんよ。これでどうでしょう。」

俺は袋からミスリルスライムを一匹取り出し、目の前のテーブルの上にドンと載せる。

「な、なんと!?」
「これは!?ミスリルスライム!?」
「まだ持ってたんですか!?」

三者三様に驚きを現した。

「こちら一匹提供しましょう。いかがでしょうか?」
「先日15匹卸したというのに、まだ持っておったとは……うむ、よかろう紹介しよう。」
「ありがとうございます。できればこの子、リーズシャルテと同じくらいの見た目の子がいいですね。その方がこの子とも仲良くなれるでしょう。このはドワーフなので、長命種の子だといいですね。」
「難しいかもしれんが、なんとかしよう。」
「私も最大限手を尽くさせてもらいますね。」
「宜しくお願いします。」

ギルドマスターとリスナおばさんの協力を得ることのが出来た。
やった!!美幼女~美少女と仲良くなれるぞ!!

喜びを隠しつつ、握手をして契約書を作成し、魔法契約を結んだ後、街の常識や最近の様子について雑談し、商業ギルドを後にした。
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