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しおりを挟む「そう来ると思いまして……片方は激辛&衝撃シュークリームとなってます!」
「全然面白くねー! それどころか迷惑だ!」
折角のデザートタイムになんてことするんだ!
それにだな、こんな二択にしてしまったら……。
「さあ、選んで食べましょう!」
「……サヤ、一ついいか?」
「はぃ?」
「どっちが外れを引くかなんて、最初から決まってるじゃんよ」
俺がどれだけ不幸かわかってるだろ。こんなの100回したって100回とも結果は同じなんだよ。断言しよう、俺が普通のシュークリームを選べるはずがない。
「いえいえ。それを考慮しまして、こちらを用意致しましたっ」
サヤはどこからかA4サイズの紙を取り出した。紙上には梯子のようになった二本線があって、下が見えない様に折り曲げられている。これは、アミダくじ。
……なんら変わってないじゃないか。考慮はどこいった?
「アンタ、俺で遊んでるだろ」
「いえいえ。景気よく楽しもうと企画しただけですよぅ」
屈託のない笑みを浮かべるコイツの頭の中がわからない。
これも……本当は俺を想ってくれている、のか?
最後の思い出作りなの、か?
…………人の心を、信じてみよう。真意はわからないけど、サヤなりに発破をかけてくれていると思い込まそう。うん。こうやってテンションを上げてんだよね? ったく、本当にお戯れが好きなんだから。
「いいさ。やってやろうじゃないか」
「さすが順平さんですっ」
「知りたくないけど訊いておこう。はずれの中身は何が入っている?」
激辛&衝撃じゃなんもわからない。
「すべてミキサーで混ぜてますけど……とんかつ、鯛の切り身と肝、わさび、おじゃこ、からし、にんにく、生姜、柏餅、ブラックペッパー、七味唐辛子、す」
「どんだけ凝縮してんだ! なんだそのバラエティの豊かさは!」
「シガミの私が言うのもなんですけど、明日のげん担ぎにとありがたい食べ物を随所に入れてみました。『勝つ』『めでタイ』、といいますしねー」
「……お前ってヤツは」
「ふふ~です。喜んでくださったみたいですねー」
正直有難迷惑だ。
確かに、そのお気持ちは最高に嬉しいけど……こう言われると断れないから最低。それにさあ、やっぱり俺に喰わせるを前提にしてるじゃないか!
「他にも、酢、ハバネロさん、塩辛、豆乳、海老の殻――」
「もういい。始めるぞ……」
これ以上訊くと食べる勇気がない。世の中には知らない方が良いことが沢山あるんだ。
「そうです? では、好きな方をお選び下さい。美味しいシュークリームは×、私の愛がこもった必勝シュークリームは○となってます」
「○と×が逆だからな!?」
あえてツッコむけど、お前の愛ってとんでもない形なんだなっ。
「さあ、お選び下さいなっ」
「……はぁ。じゃあ右で」
どう足掻いたって○になるんだから、適当に選んだ。別に、結果出る前に食べてもいいんだぜ?
「では、アミダスタート! シーシガミシシッシシガミシシッシッシガミシシシシシシガミシ~♪」
やけに耳に残るメロディーで口ずさみならがサヤの華奢な指が線を辿って行く。無駄に多い線により、右と左をゆらゆら進んだ結果、左で止まった。
「はてさて、紙をめくった先には○か×か、さあどっち!?」
勢いよくオープン。左の末端には当然――
×(美味しいシュークリーム)
「「あれ?」」
同じ声の大きさ同じ言葉を発し、同じ動きで顔を上げ見つめ合う。俺とサヤはシンクロした。
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