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第15章 デート編

第83話 付き合う為の条件

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 【伊緒奈サイド】

「太鳳ちゃん、八雲ちゃんが迷子になったっていうのは本当なの!?」

「そうみたいです。先程、八雲からラインが来ました」

「何やってんだ、八雲は!? ってか、華子はどうしたんだ?」

「華ちゃんまで迷子になるって事は無いと思うけど……あっ? 華ちゃんからもラインが……えーっと……!?」

『伊緒奈様、申し訳ありません。諸事情により私は今『忍者ショー』に出演しております……』

「 「 「え―――――――――っ!!??」 」 」



 【センゴク一騎打ちのゴンドラ内】

「で、お話って何かな?」

「え、ああ……実はですね……」

「あっ!? もしかして颯君から私に告白してくれるのかな?」

「いえ、それは無いです!!」

「えーっ!? そんな、ハッキリ言わないでよ~!!」

「す、すみません……じ、実は俺……乃恵瑠さんもご存じだと思いますが、数名の人達から告白されているんですが……」

「そうね、ホント迷惑しちゃうわ!! 私だけだと思っていたのに次から次と……でもまぁ、それだけ颯君に魅力があるってことなんだけどね」

 俺のどこに魅力があるっていうんだろうか?
 それも学園の美少女ばかりに告白されるなんて……

「そ、それでですね……俺もどうすれば良いのか色々と考えたんですが……俺みたいな『陰キャオタク』が『この人』っていうのを決める事が出来なくて……」

「私に決めてくれれば直ぐ楽になれるのに~」

「い、いや……それで、俺の中で一つ条件を決めたんですよ。こ、今度の生徒会長選挙で生徒会長になった人、もしくはその会長候補を応援した人の中から付き合おうかと……」

 ど、どうだ、乃恵瑠さん?

 俺の変な条件に幻滅して嫌気がさしてくれればいいんだが……

「……ふーん……なるほどねぇ……一人の女性を選ぶ事の出来ない優しい颯君はまずそれで数人に絞ろうと考えたのねぇ?」

 優しいってのは違うけどな……ほぼ伊緒奈が考えた事だし……

「す、すみません。こんな条件はおかしいし、俺みたいな奴に告白をしてくれた皆さんに失礼ですよね? 乃恵瑠さんも俺の案に幻滅したんじゃないですか?」

「えっ、何で? 私は颯君の出す条件には賛成よ」

「えっ!? ほ、本当ですか!?」

「ええ、仮に颯君の口から直接断られたら私も含めて学校を辞めたくなるくらいにショックを受けると思うの」

 いやいや、俺にフラれたくらいで学校を辞めなくても……

「でも生徒会長選挙で負けて『颯君の彼女候補』から脱落したとなれば、ショックはショックだけど、学校を一週間くらい休んだら気持ちは落ち着くと思うし……」

 それでも学校は休むのか!?

「ありがとう……颯君……」

「え? 何でお礼なんか……」

「私達の事を考えての条件だもん。私はその条件に『愛』さえ感じるわ!! ますます颯君の事が好きになっちゃった……このまま颯君に抱きついて、私のファ、ファーストキスをあげたい気持ちになったし……」

「い、いや、それは……」

「フフフ……大丈夫、今日はしないわ。私がこの『戦い』に勝利するまでは大事に取っておくことにする。さぁ、これから忙しくなるわねぇ……二年連続生徒会長になった人は今までいないらしいし……私が新たな伝説を創る時が来たみたいね……」

「ってことは……」

「うん、私は誰かを応援するよりも、やっぱり自分が立候補する方が性に合っていると思うから……私、次の生徒会長選挙に立候補するわ。って言ってもまずは一学期末の『学園人気投票』で一位か二位に入らなくちゃ立候補できないけどね……」

「の、乃恵瑠さんならきっと大丈夫ですよ……」

「フフフ……ありがとね、颯君……」



 【映画館前】

 俺は乃恵瑠さんとのデートを無事に終え、今は映画館の前で次のデート相手である武田静香さんを待っている。

 そして伊緒奈達も色々なところから俺の様子を伺っているのが何となくだが分かる。

 しかし、伊緒奈達も俺なんかの為に大変だなぁ……

 かなり疲れているんじゃないのか?


「は、は、颯君……お、お、お待たせしちゃってゴメンなさい!!」

「あっ? し、静香さん……」

 乃恵瑠さんの時と同様に静香さんの私服姿も素敵だった。

 赤い髪とは対照的な白のブラウスにピンクのミニスカート、そして赤のスニーカー……

「静香さんの私服姿を初めて見ましたが、とても似合ってますね……」

「えっ!? あ、あ、ありがとう颯君!! 普段の私はこんな格好しないから服を決めるのに何時間もかかっちゃって……でも颯君にそう言ってもらえて時間をかけた甲斐があったわ」

 俺なんかとのデートの為に何時間もかけて服を決めただなんて……

 さすがの俺でも少しグッとくるものがあるよな。

「そ、それで今から何の映画を観るのですか?」

「え? ああ、私はあの映画を観たいのだけど、颯君もそれでいいかな?」

 静香さんが指さした本日上映中の映画のポスター……

「『戦国恋愛夏物語』……ですか?」

「うん、そう!! 私、前からこの映画を大好きな人と一緒に観たかったの!!」

「わ、分かりました……そ、それではそろそろ映画館に入りましょうか?」

「そうね……あっ、でもちょっと待って? 颯君、映画を観るにあたり、一つだけ私のお願いを聞いてくれないかな?」

「え? 何でしょうか?」

「あ、あのね……映画を観ている時間だけ……颯君の手をずっと握っていてもいいかな?」

「えーっ!?」


 こうして静香さんに手をギュっと握られながら俺は只今、映画鑑賞中だが、映画の内容よりも緊張による手汗が気になって仕方がない。

 と同時に瞳を潤ませながら映画を観ている静香さんの横顔は見とれてしまいそうなくらいに、とても綺麗であった。



―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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