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第3章 伊緒奈の秘密編
第14話 伊緒奈の家来達
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入学してから二週間が経った。
不本意ながら『クラス副委員長』になった俺だったが、これといってやることは無かった。
というか、ほとんど委員長の徳川がやってくれているから俺は何もやらなくて済んでいたともいえる。
しかし俺は副委員長としての仕事はしていないが、何故か『美化委員』の手伝いで毎朝、教室の掃除をさせられる羽目になっていた。
勿論、あいつのせいだ。
「前田の野郎……俺をこき使いやがって……」
と、奴に言いたいところだが、俺はあいつに一票入れなかったという引け目があったので、しばらくの間は前田の言う事を聞くようにしていた。
「いやぁ、颯~っ! 毎朝、掃除を手伝ってくれて助かるよぉぉ!! 俺一人じゃ大変だからな!!」
放課後、掃除当番の奴等が掃除をするのに、こんな朝早くから教室を掃除する意味があるのか?
本当によく分からん奴だな……
ガラッ…ガラガラッ
「おはようございます。竹中さん……ついでに前田も……」
ん? 本多太鳳か。彼女は先週からずっと俺のことを『さん付け』で呼び、敬語で話してくる。ほんと、勘弁してほしいんだけどな……
「お、おはよう……本多さん……」
「ちょっと待ってくれないかな、太鳳ちゃん!? なんで俺はついでなんだよぉぉ!? それに颯のことは『竹中さん』で俺のことは『呼び捨て』なんだよぉぉ!?」
「朝からうるさいよ、前田!! それに私のことを下の名前で呼んでいいなんて許可を出した覚えは無いわよ!! それに竹中さんの事を『さん付け』するのは『副委員長』だからに決まっているでしょ!! 悔しかったら前田も二学期に『委員長』か『副委員長』になることね。それに竹中さんは私よりも力が……」
「本多さん、それ以上は何も言わないでくれないか……」
「は、はい!! 申し訳ありませんでした!!」
はぁ……何なんだ、この強者には絶対服従するみたいなスタンスは……
それに俺は別に何も強くは無いんだけどな……
「颯はいいよなぁ……こんな強い子が家来になってさ……」
前田の奴、何を訳の分からないことを言っているんだ?
本多が俺の家来のはずが……
「ま、前田!! 私が竹中さんの家来って、どういう事よ!? 私は竹中さんを尊敬しているだけで家来では無いわよ!! 私が心からお慕いしているのは伊緒奈お嬢……いえ、伊緒奈さんだけなんだから!!」
ガラッ…ガラガラッ
「あっ、皆さん、おはよう……それに竹中君と前田君、朝から教室のお掃除ご苦労様です。毎朝、教室が綺麗だと何だか心も綺麗になるみたいで嬉しいわ……」
「うっ……うう……」
どうした、前田? お前、もしかして泣いているのか?
「い、いやマジで伊緒奈ちゃんは天使だよ。俺の『美化委員』としての活動を褒めてくれるなんて嬉し過ぎてさぁ……グスン……」
まぁ、前田の言う通りかもしれないな。徳川は出会ってから人を落とす様なことは全然言わないからな。もしそれが演技だとしてもブレずに貫き通せるんだから、やっぱり凄い奴だとは思う……っていうか前田の奴、いつの間にか徳川のことも下の名前で呼んでいやがる。
何て馴染むのが早い奴なんだ。
さすがは『陽キャ』だよな。
「さすが、伊緒奈さんです。素敵過ぎます!! 最近、私……伊緒奈さんが素敵過ぎて一つ困っていることがあるんです……」
ん? 本多みたいな奴でも困ることがあるのか?
「えっ、太鳳ちゃん、何かあったの?」
「は、はい……最近、『あの四人』が私だけ伊緒奈さんと同じクラスということで、めちゃくちゃ羨ましがってくるんですよ!!」
あの四人? ああ、各クラスに散らばっている徳川の家来というか幼馴染のことか。
「えっ、そうなの? あの子達がねぇ……」
「そうなんですよ! 八雲は大人しいから何も言わないですけど目が羨ましいって言っています」
別に何も言わないならいいじゃねぇか……
「華子は私が飲んでいる缶コーヒーの中身を私がよそ見をしているうちに青汁に変えるんですよ!! 苦いったらありゃしない!!」
そんな素早く中身を変えれるのか!? それは違う意味で凄いじゃないか!!
「直人はいつもキレながら私にクラスを代れって言ってくるし、知由は自分のことは棚に上げて私と伊緒奈さんは毎日キスをしているだろうと言いがかりをつけてくるし……知由が伊緒奈さんとキスをしたいだけですから。彼女は『百合』ですし!!」
『徳川一派』には男子もいるのか……それに『百合』ってアニメの世界だけに存在していた訳では無かったんだな?
怪力に目で語る女に忍びのような女にキレる男子に百合っ子って……
徳川、お前も大変なんだなぁ……
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
颯は副委員長の仕事よりも美化委員の前田の手伝いをすることの方が多いようだ。
そんな中、徳川伊緒奈には本多を含む五名の家来、いや幼馴染が他のクラスにいることを知り驚く。
しかし本多の話を聞く限り、どの人間も一癖も二癖もありそうな感じがして颯は逆に徳川を同情するのであった。
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
不本意ながら『クラス副委員長』になった俺だったが、これといってやることは無かった。
というか、ほとんど委員長の徳川がやってくれているから俺は何もやらなくて済んでいたともいえる。
しかし俺は副委員長としての仕事はしていないが、何故か『美化委員』の手伝いで毎朝、教室の掃除をさせられる羽目になっていた。
勿論、あいつのせいだ。
「前田の野郎……俺をこき使いやがって……」
と、奴に言いたいところだが、俺はあいつに一票入れなかったという引け目があったので、しばらくの間は前田の言う事を聞くようにしていた。
「いやぁ、颯~っ! 毎朝、掃除を手伝ってくれて助かるよぉぉ!! 俺一人じゃ大変だからな!!」
放課後、掃除当番の奴等が掃除をするのに、こんな朝早くから教室を掃除する意味があるのか?
本当によく分からん奴だな……
ガラッ…ガラガラッ
「おはようございます。竹中さん……ついでに前田も……」
ん? 本多太鳳か。彼女は先週からずっと俺のことを『さん付け』で呼び、敬語で話してくる。ほんと、勘弁してほしいんだけどな……
「お、おはよう……本多さん……」
「ちょっと待ってくれないかな、太鳳ちゃん!? なんで俺はついでなんだよぉぉ!? それに颯のことは『竹中さん』で俺のことは『呼び捨て』なんだよぉぉ!?」
「朝からうるさいよ、前田!! それに私のことを下の名前で呼んでいいなんて許可を出した覚えは無いわよ!! それに竹中さんの事を『さん付け』するのは『副委員長』だからに決まっているでしょ!! 悔しかったら前田も二学期に『委員長』か『副委員長』になることね。それに竹中さんは私よりも力が……」
「本多さん、それ以上は何も言わないでくれないか……」
「は、はい!! 申し訳ありませんでした!!」
はぁ……何なんだ、この強者には絶対服従するみたいなスタンスは……
それに俺は別に何も強くは無いんだけどな……
「颯はいいよなぁ……こんな強い子が家来になってさ……」
前田の奴、何を訳の分からないことを言っているんだ?
本多が俺の家来のはずが……
「ま、前田!! 私が竹中さんの家来って、どういう事よ!? 私は竹中さんを尊敬しているだけで家来では無いわよ!! 私が心からお慕いしているのは伊緒奈お嬢……いえ、伊緒奈さんだけなんだから!!」
ガラッ…ガラガラッ
「あっ、皆さん、おはよう……それに竹中君と前田君、朝から教室のお掃除ご苦労様です。毎朝、教室が綺麗だと何だか心も綺麗になるみたいで嬉しいわ……」
「うっ……うう……」
どうした、前田? お前、もしかして泣いているのか?
「い、いやマジで伊緒奈ちゃんは天使だよ。俺の『美化委員』としての活動を褒めてくれるなんて嬉し過ぎてさぁ……グスン……」
まぁ、前田の言う通りかもしれないな。徳川は出会ってから人を落とす様なことは全然言わないからな。もしそれが演技だとしてもブレずに貫き通せるんだから、やっぱり凄い奴だとは思う……っていうか前田の奴、いつの間にか徳川のことも下の名前で呼んでいやがる。
何て馴染むのが早い奴なんだ。
さすがは『陽キャ』だよな。
「さすが、伊緒奈さんです。素敵過ぎます!! 最近、私……伊緒奈さんが素敵過ぎて一つ困っていることがあるんです……」
ん? 本多みたいな奴でも困ることがあるのか?
「えっ、太鳳ちゃん、何かあったの?」
「は、はい……最近、『あの四人』が私だけ伊緒奈さんと同じクラスということで、めちゃくちゃ羨ましがってくるんですよ!!」
あの四人? ああ、各クラスに散らばっている徳川の家来というか幼馴染のことか。
「えっ、そうなの? あの子達がねぇ……」
「そうなんですよ! 八雲は大人しいから何も言わないですけど目が羨ましいって言っています」
別に何も言わないならいいじゃねぇか……
「華子は私が飲んでいる缶コーヒーの中身を私がよそ見をしているうちに青汁に変えるんですよ!! 苦いったらありゃしない!!」
そんな素早く中身を変えれるのか!? それは違う意味で凄いじゃないか!!
「直人はいつもキレながら私にクラスを代れって言ってくるし、知由は自分のことは棚に上げて私と伊緒奈さんは毎日キスをしているだろうと言いがかりをつけてくるし……知由が伊緒奈さんとキスをしたいだけですから。彼女は『百合』ですし!!」
『徳川一派』には男子もいるのか……それに『百合』ってアニメの世界だけに存在していた訳では無かったんだな?
怪力に目で語る女に忍びのような女にキレる男子に百合っ子って……
徳川、お前も大変なんだなぁ……
――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
颯は副委員長の仕事よりも美化委員の前田の手伝いをすることの方が多いようだ。
そんな中、徳川伊緒奈には本多を含む五名の家来、いや幼馴染が他のクラスにいることを知り驚く。
しかし本多の話を聞く限り、どの人間も一癖も二癖もありそうな感じがして颯は逆に徳川を同情するのであった。
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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