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最終章 新たな未来編

最終話 夢を叶える為に

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 あの立花部長なの!?

 立花部長がケイティっていう脚本家だったの……?
 
 あ!! 

 よく考えれば立花部長のイニシャルって……KTじゃない……

 そ、そうだったんだ……

 私は衝撃が強すぎて心臓の鼓動が激しくなっていた。


 ガラッ、ガラガラッ

 私は順子の後について恐る恐る病室に入る。

 ベッドの上には呼吸器をつけた状態で眠っているやせ細った女性が眠っていた。

 この人が……本当にあの立花部長なの?

 私達はゆっくりとベッドに近づく。そして順子が横になっている女性に話しかける。

「立花先輩、お身体の具合はどうですか? お約束通り、広美ちゃんを連れて来ましたよ」

 すると眠っていたと思われる立花部長の目がゆっくりと開き、私に気付くと笑顔で見つめている。

 そして小さな声で

「じゅ、順子ちゃん……約束を果たしてくれてありがとね? でも申し訳ないんだけど、しばらくの間、彼女と二人にしてくれないかな……?」

「え? はい、分かりました。広美ちゃん、立花先輩の状態が少しでも悪くなったら直ぐに呼んでね?」

「は、はい……分かりました……」

 順子は不思議そうな顔をしながら病室を出て行った。病室には私と立花部長だけとなる。

 私は正直言ってショックだった。
 約二十年ぶりに会えた立花部長がこんなにも……

 あれだけ凛としていた、憧れの立花部長がこんなにもやせ細り弱々しい姿になっているなんて……でも今の私は石田浩美ではない。五十鈴広美なんだ。

 だから初めて会う形の立花部長に対してちゃんとご挨拶をしなければ……

「は、初めまして……私は女優をやらせていただいております、五十鈴広美といいます」

「うん、よく知っているわ……凄い活躍をされているわねぇ……」

「あ、ありがとうございます。それで早速で申し訳ないのですが、今日の日に私に会いたいというのはどういう事なのでしょうか?」

「もっと私の近くに来てちょうだい。そして私の手を握ってもらえないかな?」

 え?

「は、はい……分かりました」

 私は立花部長に近づき両手で優しく手を握ると立花部長がニコッとした。

 そして……

「広美ちゃん……やっぱり生まれ変わっても浩美ちゃんと同じ温もりだわ。ずっとあなたを待っていた甲斐があったわ……『前の世界』ではお互いに会えなかったものね……」

「えっ!? ま、まさか……立花……部長も……」

「そうよ。私も隆君や浩美ちゃんと同じ『タイムリープ者』なの。そして『前の世界』では今日が私の命日なんだよ……」

「えっ、め、命日!?」

「うん、そうなの……だから死ぬ前に一度でいいからあなたや隆君に会いたかったけど、こちらの暮らしに慣れるのに大変でいつの間にかあなた達とは疎遠になってしまった。あなたがあの飛行機事故で亡くなったのも知らなかったの。それを知ったのは私が死ぬ数日前だった……これまでの人生をこれだけ悔やんだ事なんて無かったわ。なんで東京に引っ越してからもあなた達と交流をしなかったんだろう。そんな思いの中、私は病気になり死んだ……はずだったの……」

「それじゃぁ、私が小四の時には……」

「うん、全てを知っていた私も人生をやり直している途中だった。でも二人を見ているうちに確信したわ。あなた達も私と『同じ』なんだって……そして未来を変えてくれるんだって……だから私は安心して東京に引っ越したの。でも順子ちゃんから浩美ちゃんが病気で亡くなったと聞いた時は凄いショックだった。やはり運命は変える事ができないんだと思った」

「立花部長……」

「しかし……あなたが突然、テレビの世界に現れた。聞くと隆君の娘さんで名前は広美……再び私に希望が見えたわ。もしかしたら広美ちゃんは石田浩美ちゃんの生まれ変わりかもしれないと思ったの。そして今日、私が死ぬ前に間違い無い事が分かった……凄く嬉しい……ようやく私の夢が叶ったわ……」

 私の手は嬉しさで震えていた。まさか『この世界』にタイムリープしていた人が私や五十鈴君以外にもいただなんて……それも憧れの立花部長が……

 それに『前の世界』の立花部長はつねちゃんと同じ年の同じ日に亡くなっていたんだよね? ……これもまた偶然とは思えない気がする。

 私は手を握りながら立花部長との思い出が走馬灯の様によみがえり涙が込み上げてくる。そして我慢しきれず泣きながら立花部長に抱き着いた。

「立花部長、会えて凄く嬉しいです!!」

 立花部長は私の頭を撫でながら優しい声で、

「おかえり、広美ちゃん……」

「ただいま、立花部長……」

「これで思い残すことは無いわ。私も『前の世界』よりは寿命を引き延ばせたみたいだし……これで満足よ。後悔しないで死ねるわ……」

「な、何を言っているんですか、立花部長!? まだ部長の夢は叶っていませんよ!!」

「え?」

「だって私の父、いえ……五十鈴隆君にまだ会ってないじゃないですか!! 今もこうして生きているという事はそういう事じゃないですか!!」

「で、でも……私の病気は……」

「諦めるなんてまだ早過ぎます。私と再会したのはそういうことじゃないでしょうか!? 私達の……『この世界の未来』はまだまだこれからなんですよ!! あ、すみません。病室なのに大きな声を出してしまいまして……」

 立花部長は嫌な顔どころか私を見つめながら優しく微笑んでいる。

「そ、そうね……フフ……やっぱり、私の目の前にいるのは、元気で明るい、あの『浩美ちゃん』だなぁ……うん、あなたの言う通りかもしれないわね。これだけ『奇跡』を経験しているんだからまだまだ奇跡が起こっても不思議じゃないわね……」

「そうですよ!! 絶対にまだ何か奇跡は起こりますよ!!」

「ありがとね、広美ちゃん……」

 立花部長の表情に生気が戻って来たような感じがした。

「それに今の医学は凄いんですよ!! 今の医学なら石田浩美時代になっていた白血病だって完治できるんです。ちなみに私の主人は医者なんですがハッキリ言ってました。だから諦めるのはまだ早いんです。これから立花部長の幸せな未来に向けて一緒に頑張りましょう!!」

「う、うん……私、広美ちゃんとなら頑張れるわ」

 そう、私達の未来はこれからよ。

 幸せな未来を信じて夢に向かってがむしゃらに頑張るだけなんだ……


 夢は見るだけのものじゃない……

 きっと叶えるもの……叶えれるもの……


 そして叶える為にどう考え、どう行動していくかが大事なんだ……



「さぁ、立花部長……これから忙しくなりますよぉ!! ウフッ」

「そうだね。寝込んでいる場合じゃないわねぇ……フフフ」


 それと五十鈴君……あなたもよ……

 まだお爺ちゃんをしている場合じゃないんだからね……

 あなたの前に元気な姿の立花部長を連れて行ってやるんだから!!
 楽しみに待っていなさいよぉ。




 完




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最後までお読み頂き有難うございました。
皆様の応援のお陰を持ちましてようやく完結となりました。
本当に有難うございました。
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