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第11章 運命との戦い編
第75話 運命の日
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彼とつねちゃんがお見舞いに来てくれてから数日後、友人達が数名ずつ代わる代わるにお見舞いに来てくれるようになった。
彼は私の病名を皆に伝えているみたいだけど、誰も病名の事は触れなかった。
きっと私に気を遣ってくれているんだろうなぁ……
そして今日は彼の当番らしく、妹の奏ちゃんと高山君の三名でお見舞いに来てくれている。
私は毎回、皆がお見舞いに来てくれるのが嬉しくて笑顔で迎えているけど日に日に顔色は悪くなっているし、『抗がん剤治療』をしているため髪の毛も抜け出していき、今はニット帽をかぶっているので無理をして笑顔を作っていると思っているかもしれないなぁ……
でも今日は久しぶりに奏ちゃんにも会えたのでいつも以上に私は嬉しかった。
「奏ちゃん、しばらく見ないうちに身長伸びたんじゃない? 五十鈴君とあまり変わらないわよ」
「オイオイ、そんな事は無いぞ!! 俺とはまだ身長差が結構あるぞ!!」
「やっぱりバレーボールのお陰ですよね? 私、今年中にお兄ちゃんを抜かす事を目標に頑張りますね!?」
「おい奏、そんな事を目標にするんじゃないよ!!」
「 「 「ハッハッハッハ!!」 」 」
彼以外は大笑いをしている。
そしてそんな中、高山君が奏ちゃんに話かける。
「でも奏ちゃんは中学生になってからとても大人っぽくなったし、それに隆には似ずに美人さんになったよなぁ……」
「えっ? そ、そんなことないですよ、高山さん!! 私をからかわないでくださいよ!?」
奏ちゃんが顔を真っ赤にしているのがとても可愛い。
「えーっ!? 俺は別にからかってなんていないんだけどなぁ……本当の事を言っているだけなんだけど……」
すると彼は奏ちゃんと高山君のやり取りに対して、嫉妬する様な言葉を言い出した。
「おいケンチ!? お前とうちの妹とは絶対に結婚させないからな!!」
「はーっ!? だっ、誰もそんな事、言ってないじゃん!!」
高山君は顔を少し赤くしながら彼に反論している。
そして奏ちゃんも顔を赤くしながら頬を膨らませ彼に怒っていた。
「お兄ちゃん、何を変なこと言っているのよ!? なんで今の会話で結婚になるのよ!? 信じられないわ!!」
すかさず私もフォローを入れた。
「そうよ、五十鈴君。少し先走り過ぎじゃないの? でも私は高山君と奏ちゃんはお似合いだと思うけど……」
「だから石田先輩まで私の事をからかわないでください!!」
奏ちゃんは更に赤い顔をしながら私に抱き着いてきた。
私の言葉はフォローになっていなかったみたいねと苦笑いをしながら、私は奏ちゃんの頭を撫でるのだった。
こんな楽しい会話をずっとしていたい……
こんな雰囲気をいつまでも続いて欲しい……
私は心の中でそう思った。
そんな中、彼は高山君に小声で話しかけている。
「ケンチ……? もしお前が、これから何があっても一生、奥さんの事を大切にするって誓うなら別に奏と結婚しても俺は許す事にする……」
「はぁあ!? またその話かよ、隆!? っていうか、俺が奏ちゃんと結婚なんてあり得ないから!! それに俺は絶対に隆の事を『お兄さん』なんて呼びたくない!!」
「 「ハッハッハッハ」 」
私と彼は爆笑し、奏ちゃんは苦笑いをしていたけど、一瞬、がっかりした表情に見えたのは私だけだろうか……
それに以前から彼は高山君に『将来、結婚したら奥さんを絶対に大切にしろよ』って、よく言っていたけど、もしかして彼は高山君の『未来』を何かしら知っていてそんな事を言っていたのだろうか?
そして、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。
「そろそろ帰る時間だな?」
「そうだな。それじゃあ帰るとしようか……奏、帰るぞ……」
「石田先輩、また来ますから!!」
「うん、待っているね……」
私はベッドの上から彼達に笑顔で手を振りながら『また会いたい』という強い想いを持ちながら見送くるのだった。
そして、日は巡り
遂にその日が来た。
【八月十二日】
私にとって運命の日……
『前の世界』の私はその日の朝にお母さんと一緒に飛行機で東京に行き、白血病の専門医に診察や検査等をしてもらった。そして、その日のうちに飛行機で帰る予定だったけど……でも、その帰りの飛行機が……
私は緊張しながらテレビをつける。
飛行機事故そのものが無くなっていますように……
『緊急速報です!!』
しかし……
各局で『緊急速報』が行われている。
やはり『前の世界』同様に飛行機事故が起こってしまったのだ。
私の目から涙がポロポロと流れ出す。
『この世界』に来て『飛行機事故で死なない』という一つの目標が達成された喜びよりも、私とお母さんだけが助かってしまった罪悪感の方が遥かに大きかった。
「ご、ごめんなさい……うっ……でも私も直ぐに……そっちに行くから……もう少しだけ待ってください……」
私が泣いているとテレビからアナウンサーによる搭乗者名の発表がされていた。
そして私は耳を疑った。
『ヒロミ イシダ』……
えっ? 搭乗者に私の名前が?
同姓同名の人が乗っていたの?
もしかして私の身代わりになってしまったんじゃ……
私はそう思うと更に涙が溢れ出し枕に顔を埋めずっと泣き叫んでいた。
しばらくして、ようやく私は落ち着きを取り戻した。そしてベッドから起き上がり、窓から見える少し薄暗くなりかけている空を見上げていた。
タンタンタンタン……
え?
部屋の外からかすかだけど、誰かが走って来る音が聞こえる。
も、もしかして……
足音がどんどん大きくなっている。
もしかして彼が私を心配して……
私の心臓の鼓動が大きくなっているのが分かる。
ドクン……ドクン……
そして私の病室の前で足音が止まる。
ガラガラッ!!
「石田―っ!!」
息を切らしながら苦しそうな彼が精一杯の大きな声で私の名前を呼びながら病室のドアを開けた。
彼は私の姿を見た途端に力が抜けた様に膝間ついてしまう。そして彼は半泣きになりながらこう言った。
「よっ、良かった……無事でいてくれて良かった……」
そんな彼の姿を見た私は今まで言いたくて、言いたくてたまらなかった言葉を遂に言う決心をした。
「五十鈴君……いえ、五十鈴隆さん……私、まだ生きてるよ。今日が自分の『命日』にならなくて済んだよ。なんとか自分の『未来』を変える事が出来たよ……」
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に浩美にとっての運命の日が……
そして隆が浩美のもとに駆け付ける!!
浩美と隆の『答え合わせ』の時間が始まる。
彼は私の病名を皆に伝えているみたいだけど、誰も病名の事は触れなかった。
きっと私に気を遣ってくれているんだろうなぁ……
そして今日は彼の当番らしく、妹の奏ちゃんと高山君の三名でお見舞いに来てくれている。
私は毎回、皆がお見舞いに来てくれるのが嬉しくて笑顔で迎えているけど日に日に顔色は悪くなっているし、『抗がん剤治療』をしているため髪の毛も抜け出していき、今はニット帽をかぶっているので無理をして笑顔を作っていると思っているかもしれないなぁ……
でも今日は久しぶりに奏ちゃんにも会えたのでいつも以上に私は嬉しかった。
「奏ちゃん、しばらく見ないうちに身長伸びたんじゃない? 五十鈴君とあまり変わらないわよ」
「オイオイ、そんな事は無いぞ!! 俺とはまだ身長差が結構あるぞ!!」
「やっぱりバレーボールのお陰ですよね? 私、今年中にお兄ちゃんを抜かす事を目標に頑張りますね!?」
「おい奏、そんな事を目標にするんじゃないよ!!」
「 「 「ハッハッハッハ!!」 」 」
彼以外は大笑いをしている。
そしてそんな中、高山君が奏ちゃんに話かける。
「でも奏ちゃんは中学生になってからとても大人っぽくなったし、それに隆には似ずに美人さんになったよなぁ……」
「えっ? そ、そんなことないですよ、高山さん!! 私をからかわないでくださいよ!?」
奏ちゃんが顔を真っ赤にしているのがとても可愛い。
「えーっ!? 俺は別にからかってなんていないんだけどなぁ……本当の事を言っているだけなんだけど……」
すると彼は奏ちゃんと高山君のやり取りに対して、嫉妬する様な言葉を言い出した。
「おいケンチ!? お前とうちの妹とは絶対に結婚させないからな!!」
「はーっ!? だっ、誰もそんな事、言ってないじゃん!!」
高山君は顔を少し赤くしながら彼に反論している。
そして奏ちゃんも顔を赤くしながら頬を膨らませ彼に怒っていた。
「お兄ちゃん、何を変なこと言っているのよ!? なんで今の会話で結婚になるのよ!? 信じられないわ!!」
すかさず私もフォローを入れた。
「そうよ、五十鈴君。少し先走り過ぎじゃないの? でも私は高山君と奏ちゃんはお似合いだと思うけど……」
「だから石田先輩まで私の事をからかわないでください!!」
奏ちゃんは更に赤い顔をしながら私に抱き着いてきた。
私の言葉はフォローになっていなかったみたいねと苦笑いをしながら、私は奏ちゃんの頭を撫でるのだった。
こんな楽しい会話をずっとしていたい……
こんな雰囲気をいつまでも続いて欲しい……
私は心の中でそう思った。
そんな中、彼は高山君に小声で話しかけている。
「ケンチ……? もしお前が、これから何があっても一生、奥さんの事を大切にするって誓うなら別に奏と結婚しても俺は許す事にする……」
「はぁあ!? またその話かよ、隆!? っていうか、俺が奏ちゃんと結婚なんてあり得ないから!! それに俺は絶対に隆の事を『お兄さん』なんて呼びたくない!!」
「 「ハッハッハッハ」 」
私と彼は爆笑し、奏ちゃんは苦笑いをしていたけど、一瞬、がっかりした表情に見えたのは私だけだろうか……
それに以前から彼は高山君に『将来、結婚したら奥さんを絶対に大切にしろよ』って、よく言っていたけど、もしかして彼は高山君の『未来』を何かしら知っていてそんな事を言っていたのだろうか?
そして、そんな楽しい時間はあっという間に過ぎて行く。
「そろそろ帰る時間だな?」
「そうだな。それじゃあ帰るとしようか……奏、帰るぞ……」
「石田先輩、また来ますから!!」
「うん、待っているね……」
私はベッドの上から彼達に笑顔で手を振りながら『また会いたい』という強い想いを持ちながら見送くるのだった。
そして、日は巡り
遂にその日が来た。
【八月十二日】
私にとって運命の日……
『前の世界』の私はその日の朝にお母さんと一緒に飛行機で東京に行き、白血病の専門医に診察や検査等をしてもらった。そして、その日のうちに飛行機で帰る予定だったけど……でも、その帰りの飛行機が……
私は緊張しながらテレビをつける。
飛行機事故そのものが無くなっていますように……
『緊急速報です!!』
しかし……
各局で『緊急速報』が行われている。
やはり『前の世界』同様に飛行機事故が起こってしまったのだ。
私の目から涙がポロポロと流れ出す。
『この世界』に来て『飛行機事故で死なない』という一つの目標が達成された喜びよりも、私とお母さんだけが助かってしまった罪悪感の方が遥かに大きかった。
「ご、ごめんなさい……うっ……でも私も直ぐに……そっちに行くから……もう少しだけ待ってください……」
私が泣いているとテレビからアナウンサーによる搭乗者名の発表がされていた。
そして私は耳を疑った。
『ヒロミ イシダ』……
えっ? 搭乗者に私の名前が?
同姓同名の人が乗っていたの?
もしかして私の身代わりになってしまったんじゃ……
私はそう思うと更に涙が溢れ出し枕に顔を埋めずっと泣き叫んでいた。
しばらくして、ようやく私は落ち着きを取り戻した。そしてベッドから起き上がり、窓から見える少し薄暗くなりかけている空を見上げていた。
タンタンタンタン……
え?
部屋の外からかすかだけど、誰かが走って来る音が聞こえる。
も、もしかして……
足音がどんどん大きくなっている。
もしかして彼が私を心配して……
私の心臓の鼓動が大きくなっているのが分かる。
ドクン……ドクン……
そして私の病室の前で足音が止まる。
ガラガラッ!!
「石田―っ!!」
息を切らしながら苦しそうな彼が精一杯の大きな声で私の名前を呼びながら病室のドアを開けた。
彼は私の姿を見た途端に力が抜けた様に膝間ついてしまう。そして彼は半泣きになりながらこう言った。
「よっ、良かった……無事でいてくれて良かった……」
そんな彼の姿を見た私は今まで言いたくて、言いたくてたまらなかった言葉を遂に言う決心をした。
「五十鈴君……いえ、五十鈴隆さん……私、まだ生きてるよ。今日が自分の『命日』にならなくて済んだよ。なんとか自分の『未来』を変える事が出来たよ……」
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に浩美にとっての運命の日が……
そして隆が浩美のもとに駆け付ける!!
浩美と隆の『答え合わせ』の時間が始まる。
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