上 下
55 / 83
第9章 運命の選択編

第55話 女の闘い?

しおりを挟む
「つっ、つねちゃん!?」

「隆君達もお友達と一緒に商店街にお買い物に来ていたのね? まさか会えると思っていなかったから先生とてもビックリしたわ……」

 『つねちゃん』は少し苦笑いをしながら私達に言っている。

 そして、つねちゃんは私の隣にいる久子にも視線がいったけど直ぐに視線を逸らした。久子も何故かつねちゃんの顔を見ようとしていない。

 あれ、何故だろう? 変な空気になっている様な……
 
 なので、私は空気を変える為に勢いよく『つねちゃん』に話しかけることにした。

「つねちゃん、お久しぶりです!! 最近、うちの学校の運動会に来てくれて無いからとても寂しかったじゃない!!」

 私も彼と同じつねちゃんの『元教え子』だから何でも言える間柄ということでとりあえず、つねちゃんに憎まれ口を言ってみた。
 
 すると、つねちゃんは、

「浩美ちゃん、ゴメンなさいね? ここ数年、うちの幼稚園の運動会と日が重なっちゃって全然、青六(青葉第六小学校)の運動会に行けてなかったわね……」

「そうよ、そうよ。私、毎年運動会でつねちゃんに良いところを見せようと練習頑張っているのに、肝心のつねちゃんが来ないから、当日になってやる気が無くなってしまって全然、徒競走で一位になれないわ!!」

 自分で『つねちゃん』のせいにするなよっ!! と、突っ込みたいところだけど、私は空気を変えたくて必死に話をした。

 そんな様子を見ていた志保さんが口を開く。
 
「あなた、石田浩美さんって言ったっけ? 石田さん、アナタとても面白い子ね?  なんか私と『同じ匂い』がするわ。もしかしたら石田さんは『幼稚園の先生』にむいているかもしれないわね!?」

「えっ、同じ匂い……?」

 志保さんに『幼稚園の先生』にむいていると言われた私はとても嬉しかったけど、『同じ匂い』の意味がよく分からなかったので彼に小声で聞いてみた。

 すると彼は小声で『明るくて美人って事じゃないの』とサラッと言ってくれた。

 私は彼の言葉がめちゃくちゃ嬉しくて身体中が熱くなり今でも飛び回りたい気持ちを押し殺しながら『フーン……』とだけ言うと、後の言葉が出て来なくなってしまった。

 次に『つねちゃん』が話し出す。

「それで君が前に隆君が紹介してくれた高山君だったかな? それとあなたはよく覚えているわ。青葉第一幼稚園卒園生の寿さんよね? 小一の頃に会った時もとても可愛らしかったけど、六年生になったら一段と『美人さん』になったわねぇ!? 寿さん、凄くモテるんじゃない?」

 えっ? つねちゃんは久子の事を知っているの?

 それも一年生の頃って……ああ、そういえば一年生の頃の運動会にはつねちゃん来てくれていたけど、その時にお話したことがあるのかな……


「そんな事無いですよ。私、全然モテませんから。常谷先生の方が凄くモテるんじゃないですか!?」

 久子の言葉が私にはなんか『トゲ』が有る様に感じてしまう。
 でも、つねちゃんは久子のトゲのある言葉など気にせずに笑顔で質問に答える。

「モテたいんだけどねぇぇ、それがサッパリなのよ。ホント先生、いつになったら結婚出来るんだろう……」

 その言葉に志保さんが反応する。

「えっ? 香織先生、結婚願望あるんですか!? 私、全然無いと思っていましたよ!! それなら今度、大学時代の同級生達と久しぶりに飲み会をするので、香織先生も是非参加してくださいよ? 男子も数名来ますから……あっ!! 『年下』は無理ですか!?」

 『年下』という言葉に私がドキッとしてしまった。
 だって中身が十五歳の私が現在十一歳の男の子に恋をしているのだから……

「い、いえ別に年下が無理とか、そんな事は無いけど……多分だけど……」

 つねちゃんはそう言いながら照れくさそうな表情をしている。

「うわぁぁわ、それなら是非参加してくださいね? また詳しい事は後日連絡させて頂きますから。あっ!! あらヤダ、君達の前で全然関係の無い話をしちゃってゴメンなさいねぇぇ?」

「常谷先生、良かったじゃないですか!? なんか『結婚の夢』が叶いそう!! 私、応援してますから!! 今度の飲み会、『ガンバッテ』ください!!」

 あれだけ今日は大人しかった久子がつねちゃんに対してだけは凄い弁舌になっている姿に私だけでなく恐らく彼や高山君も驚いているだろう……

 何故、久子はつねちゃんに対してあんなにも『敵対心』があるような雰囲気を出しているのだろう?

 相手は私達よりもズッと大人の人なのに……
 つねちゃんが久子の恋のライバルになんてなるはずも無いのに……

 そんな久子に対し、さすがのつねちゃんも苦笑いをしながら、あまり心のこもっていない『ありがとう』という言葉だけを久子に言っていた。

「それであなた達、どう? せっかく今日、ここで会ったんだし、これから私達と一緒にお買い物しない?」

 そう、志保さんが言ってくれたけど、

「いえ、今日は私達四人でお買い物しますので!!」

 久子が即答で断ってしまう。

 私達三人は久子の返事に対して反論など出来ない雰囲気になっていた。
 隣にいた高山君は小声で「今日の寿、なんか怖い……」と呟いている。

 私達はつねちゃんと志保さんに挨拶をして歩き出す。

 私は背中につねちゃん達の視線を感じながら、彼の両サイドに私と久子が挟む様な形で歩きだす。高山君はその後ろを歩いている。

 ようやく彼の横で歩くことができた久子だけど、ずっとうつむき黙ったまま……
 そして彼は何か考え事をしている様な感じで黙って歩いている。

 彼はつねちゃん達と一緒に買い物をしたかったのかな?
 いえ、そんな事は無いよね……

 私はそう思いながら商店街を歩いていた。




――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。

さっきまで大人しかった久子が何故かつねちゃんに対して敵対心を出している姿が不思議でたまらない浩美……

そして一緒に買い物に行く事を断ってしまう久子
何か考え事をしている隆
そんな二人を見て戸惑うと共に何かが動き出しているようにも感じてしまう浩美であった。

どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】愛していないと王子が言った

miniko
恋愛
王子の婚約者であるリリアナは、大好きな彼が「リリアナの事など愛していない」と言っているのを、偶然立ち聞きしてしまう。 「こんな気持ちになるならば、恋など知りたくはなかったのに・・・」 ショックを受けたリリアナは、王子と距離を置こうとするのだが、なかなか上手くいかず・・・。 ※合わない場合はそっ閉じお願いします。 ※感想欄、ネタバレ有りの振り分けをしていないので、本編未読の方は自己責任で閲覧お願いします。

【完結】悪役令嬢エヴァンジェリンは静かに死にたい

小達出みかん
恋愛
私は、悪役令嬢。ヒロインの代わりに死ぬ役どころ。 エヴァンジェリンはそうわきまえて、冷たい婚約者のどんな扱いにも耐え、死ぬ日のためにもくもくとやるべき事をこなしていた。 しかし、ヒロインを虐めたと濡れ衣を着せられ、「やっていません」と初めて婚約者に歯向かったその日から、物語の歯車が狂いだす。 ――ヒロインの身代わりに死ぬ予定の悪役令嬢だったのに、愛されキャラにジョブチェンしちゃったみたい(無自覚)でなかなか死ねない! 幸薄令嬢のお話です。 安心してください、ハピエンです――

従妹と親密な婚約者に、私は厳しく対処します。

みみぢあん
恋愛
ミレイユの婚約者、オルドリッジ子爵家の長男クレマンは、子供の頃から仲の良い妹のような従妹パトリシアを優先する。 婚約者のミレイユよりもクレマンが従妹を優先するため、学園内でクレマンと従妹の浮気疑惑がうわさになる。 ――だが、クレマンが従妹を優先するのは、人には言えない複雑な事情があるからだ。 それを知ったミレイユは婚約破棄するべきか?、婚約を継続するべきか?、悩み続けてミレイユが出した結論は……  ※ざまぁ系のお話ではありません。ご注意を😓 まぎらわしくてすみません。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

【完結】旦那様!単身赴任だけは勘弁して下さい!

たまこ
恋愛
 エミリーの大好きな夫、アランは王宮騎士団の副団長。ある日、栄転の為に辺境へ異動することになり、エミリーはてっきり夫婦で引っ越すものだと思い込み、いそいそと荷造りを始める。  だが、アランの部下に「副団長は単身赴任すると言っていた」と聞き、エミリーは呆然としてしまう。アランが大好きで離れたくないエミリーが取った行動とは。

愛する人が妊娠させたのは、私の親友だった。

杉本凪咲
恋愛
愛する人が妊娠させたのは、私の親友だった。 驚き悲しみに暮れる……そう演技をした私はこっそりと微笑を浮かべる。

愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。

石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。 ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。 それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。 愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。 この作品は他サイトにも投稿しております。 扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。

形だけの正妃

杉本凪咲
恋愛
第二王子の正妃に選ばれた伯爵令嬢ローズ。 しかし数日後、側妃として王宮にやってきたオレンダに、王子は夢中になってしまう。 ローズは形だけの正妃となるが……

処理中です...