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第17章 誘惑と嫉妬編
第113話 初恋の人がお見合い?
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『つねちゃん』がお見合い……
高校生になってからの俺は周りの変化に付いて行くのが精一杯で、『つねちゃん』のお見合いの時期が迫って来ていることなどすっかり頭から消えていた。
というか、『この世界』ではお見合いは無いのではないかとまで思っていたほどだ。それなのに……
『前の世界』の『つねちゃん』は五歳下の男性とお見合いをした後に結婚している。
最初は優しい旦那だったが、突然豹変した。
そしてその旦那に『つねちゃん』は一生、苦しめられたのだ。
俺は一度、『前の世界』に逆戻りをして弟である昇さんから詳しく話を聞いている。本当に『つねちゃん』の旦那は酷い男だった。
今回、お見合い相手がその男だとしたら……
俺はどうすればいいんだ。
『この男は最低だからお見合い何てするんじゃない』なんて言える訳が無い……
もし、そんな事を言ってしまったら、逆に俺が『最低の男』のレッテルを貼られる可能性だってあるんだ……
とりあえず、昇さんに出来るだけ詳しい話を聞こう……
「の、昇さん……そのお見合い相手の名前は知っているんですか……?」
「ああ、知ってるよ。『山本次郎』っていう名前さ。そして親父が勤めている会社の得意先の社長の息子さんみたいだよ……」
『山本次郎』……やはりそうだ。
『前の世界』での『つねちゃん』の苗字は『山本』だった。
前に俺が現在、志保姉ちゃんの旦那さんである山本三郎さんを『つねちゃん』のお見合い相手だと勘違いして、三郎さんのことを警戒していたが、それは俺の思い違いだということが分かり安心していたんだが……
『この世界』でも、そのろくでもない男が登場してしまうのか……
「その人はお父さんの会社を継がれるんですか?」
「うーん、どうだろうねぇ……息子といっても次男坊みたいだしね。お兄さんが専務として勤めているらしくて、その次郎っていう人は今は別の会社に勤めているらしいけど……」
「そうなんですか……それで、昇さんのご両親はそのお見合いに賛成されているのですか?」
「さぁ、どうだろうねぇ……親父は得意先の息子だし、簡単には断れないというのもあるだろうけど……おふくろはどうだろう……よく分からないなぁ……」
まぁ、そうだろうな……
得意先の社長からお見合い話を持って来られたら、普通は断れないだろうな。
それに『つねちゃん』はもう三十歳を超えている。
『前の世界』では三十歳を過ぎて結婚する女性はザラであるが、『この世界』…『この時代』では世間的に結婚適齢期をとっくに過ぎている年齢だ。
だから親としては正直、『つねちゃん』に早く結婚してほしいという気持ちは大いにあるだろう。
「と、ところで、肝心の『つねちゃん』はお見合いをするって決めたのはご両親の為ですか? それとも本当にそろそろ結婚を考えているのでしょうか?」
「うーん、そこんとこだよねぇ……それが俺にもよく分からないんだよ。親父に気を遣っている様にも見えるし、本当に年齢も年齢だからという思いが有る様にも見受けるし……今のところはよく分からないというのが正直なところだね……」
「そ、そうですか……分かりました……」
やはり直接『つねちゃん』に会って正直な気持ちを聞くしかないよな……
それにしてもだ。
近々、三田さんが佐々木に告白するかもしれないという状況でまさか『つねちゃん』のお見合いが重なるとは思っていなかった。
これもある意味、俺にとって『試練』というやつなのだろうか?
いずれにしても胃が痛くなる内容だ。
ん、ちょっと待てよ?
そう言えば何で昇さんからなんだ?
何故、『つねちゃん』からお見合いの話を教えてくれなかったんだろう?
俺に気を遣ってのことなのか? それとも言うのが恥ずかしいから?
俺にとって一番辛いのは、『つねちゃん』にとって俺がそこまで報告する必要の無い相手だと思われていることだ。
『つねちゃん』に限ってそんなことは無いはずだが……
いや、無いと思いたい……
とりあえず今週の土曜日はいつもの様に『つねちゃん』の家で『勉強会』がある。
その時に『つねちゃん』からお見合いの話をしてくれるのだろうか?
もし、してくれなかったら……俺から聞いても良いのだろうか?
昇さんの立場もあるしなぁ……
それはそれで難しい問題だな。
それに佐々木もいる。
佐々木のいる前でお見合いの話をするのもどうかとも思うしな……
そして次の日はバイトがある。
もしかすれば三田さんが佐々木に告白をするかもしれない。
俺の勝手な予想だが、おそらく佐々木は断らないだろう。
だって三田さんは背も高くてイケメンで、遊園地で働いている女性スタッフ達からも大人気だからな。
そんな三田さんを彼氏にすれば鼻高々になれるのは間違い無いのだから……
しかし……高校一年も色々あって大変だったが、二年生の方が内容が濃い様な気がする。
俺自身が一人でこんなにあれやこれやと悩むのもおかしな話だが、こんな事を他の奴等に相談できる訳も無いしなぁ……
さすがに高山にも言えない……というか、俺は奏の一件で少しだけ高山とは距離を置いている。
別にあいつが悪い訳でもないし、悪い男でもないのだが、どうしても『前の世界』のあいつが離婚しているのが引っかかってしまうんだ。
まぁ、『前の世界』の高山の奥さんが奏ではないのはたしかなんだが……
でも『前の世界』ではそんな事は無かったのに奏は高山に惚れている。
なので『この世界』では二人が将来、結婚してしまう可能性だってあるんだ。
だから、やはり兄として奏の幸せを願うのは当然だから、つい心配してしまう。
奏からすれば迷惑な話であろうが……
俺の気持ちも分かって欲しいなぁ……
うっ!! マジで胃が痛くなってきたぞ……
これは今日は早めに寝た方が良いみたいだな?
っていうか、今夜俺はちゃんと寝れるのだろうか……?
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂にあの『ろくでなし男』が登場するのか?
それに佐々木が三田に告白される日も近づいてきている。
色々な悩みを抱えることになった隆だが果たして全てをうまく乗り越えられるのか?
完結まであと30話有るか無しかです。
最後までどうぞ宜しくお願い致します。
どうぞ次回もお楽しみに。
高校生になってからの俺は周りの変化に付いて行くのが精一杯で、『つねちゃん』のお見合いの時期が迫って来ていることなどすっかり頭から消えていた。
というか、『この世界』ではお見合いは無いのではないかとまで思っていたほどだ。それなのに……
『前の世界』の『つねちゃん』は五歳下の男性とお見合いをした後に結婚している。
最初は優しい旦那だったが、突然豹変した。
そしてその旦那に『つねちゃん』は一生、苦しめられたのだ。
俺は一度、『前の世界』に逆戻りをして弟である昇さんから詳しく話を聞いている。本当に『つねちゃん』の旦那は酷い男だった。
今回、お見合い相手がその男だとしたら……
俺はどうすればいいんだ。
『この男は最低だからお見合い何てするんじゃない』なんて言える訳が無い……
もし、そんな事を言ってしまったら、逆に俺が『最低の男』のレッテルを貼られる可能性だってあるんだ……
とりあえず、昇さんに出来るだけ詳しい話を聞こう……
「の、昇さん……そのお見合い相手の名前は知っているんですか……?」
「ああ、知ってるよ。『山本次郎』っていう名前さ。そして親父が勤めている会社の得意先の社長の息子さんみたいだよ……」
『山本次郎』……やはりそうだ。
『前の世界』での『つねちゃん』の苗字は『山本』だった。
前に俺が現在、志保姉ちゃんの旦那さんである山本三郎さんを『つねちゃん』のお見合い相手だと勘違いして、三郎さんのことを警戒していたが、それは俺の思い違いだということが分かり安心していたんだが……
『この世界』でも、そのろくでもない男が登場してしまうのか……
「その人はお父さんの会社を継がれるんですか?」
「うーん、どうだろうねぇ……息子といっても次男坊みたいだしね。お兄さんが専務として勤めているらしくて、その次郎っていう人は今は別の会社に勤めているらしいけど……」
「そうなんですか……それで、昇さんのご両親はそのお見合いに賛成されているのですか?」
「さぁ、どうだろうねぇ……親父は得意先の息子だし、簡単には断れないというのもあるだろうけど……おふくろはどうだろう……よく分からないなぁ……」
まぁ、そうだろうな……
得意先の社長からお見合い話を持って来られたら、普通は断れないだろうな。
それに『つねちゃん』はもう三十歳を超えている。
『前の世界』では三十歳を過ぎて結婚する女性はザラであるが、『この世界』…『この時代』では世間的に結婚適齢期をとっくに過ぎている年齢だ。
だから親としては正直、『つねちゃん』に早く結婚してほしいという気持ちは大いにあるだろう。
「と、ところで、肝心の『つねちゃん』はお見合いをするって決めたのはご両親の為ですか? それとも本当にそろそろ結婚を考えているのでしょうか?」
「うーん、そこんとこだよねぇ……それが俺にもよく分からないんだよ。親父に気を遣っている様にも見えるし、本当に年齢も年齢だからという思いが有る様にも見受けるし……今のところはよく分からないというのが正直なところだね……」
「そ、そうですか……分かりました……」
やはり直接『つねちゃん』に会って正直な気持ちを聞くしかないよな……
それにしてもだ。
近々、三田さんが佐々木に告白するかもしれないという状況でまさか『つねちゃん』のお見合いが重なるとは思っていなかった。
これもある意味、俺にとって『試練』というやつなのだろうか?
いずれにしても胃が痛くなる内容だ。
ん、ちょっと待てよ?
そう言えば何で昇さんからなんだ?
何故、『つねちゃん』からお見合いの話を教えてくれなかったんだろう?
俺に気を遣ってのことなのか? それとも言うのが恥ずかしいから?
俺にとって一番辛いのは、『つねちゃん』にとって俺がそこまで報告する必要の無い相手だと思われていることだ。
『つねちゃん』に限ってそんなことは無いはずだが……
いや、無いと思いたい……
とりあえず今週の土曜日はいつもの様に『つねちゃん』の家で『勉強会』がある。
その時に『つねちゃん』からお見合いの話をしてくれるのだろうか?
もし、してくれなかったら……俺から聞いても良いのだろうか?
昇さんの立場もあるしなぁ……
それはそれで難しい問題だな。
それに佐々木もいる。
佐々木のいる前でお見合いの話をするのもどうかとも思うしな……
そして次の日はバイトがある。
もしかすれば三田さんが佐々木に告白をするかもしれない。
俺の勝手な予想だが、おそらく佐々木は断らないだろう。
だって三田さんは背も高くてイケメンで、遊園地で働いている女性スタッフ達からも大人気だからな。
そんな三田さんを彼氏にすれば鼻高々になれるのは間違い無いのだから……
しかし……高校一年も色々あって大変だったが、二年生の方が内容が濃い様な気がする。
俺自身が一人でこんなにあれやこれやと悩むのもおかしな話だが、こんな事を他の奴等に相談できる訳も無いしなぁ……
さすがに高山にも言えない……というか、俺は奏の一件で少しだけ高山とは距離を置いている。
別にあいつが悪い訳でもないし、悪い男でもないのだが、どうしても『前の世界』のあいつが離婚しているのが引っかかってしまうんだ。
まぁ、『前の世界』の高山の奥さんが奏ではないのはたしかなんだが……
でも『前の世界』ではそんな事は無かったのに奏は高山に惚れている。
なので『この世界』では二人が将来、結婚してしまう可能性だってあるんだ。
だから、やはり兄として奏の幸せを願うのは当然だから、つい心配してしまう。
奏からすれば迷惑な話であろうが……
俺の気持ちも分かって欲しいなぁ……
うっ!! マジで胃が痛くなってきたぞ……
これは今日は早めに寝た方が良いみたいだな?
っていうか、今夜俺はちゃんと寝れるのだろうか……?
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂にあの『ろくでなし男』が登場するのか?
それに佐々木が三田に告白される日も近づいてきている。
色々な悩みを抱えることになった隆だが果たして全てをうまく乗り越えられるのか?
完結まであと30話有るか無しかです。
最後までどうぞ宜しくお願い致します。
どうぞ次回もお楽しみに。
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