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第15章 アルバイト編
第92話 初恋の人にしばらく会えない?
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【放課後の六組の教室にて】
「本当に俺なんかでいいのかなぁ……?」
高山が申し訳なさそうな顔をしながら大塚達に問いかけている。
それに対し大塚はニコッと微笑みながら答える。
「勿論!! 全然、構わないわよ」
「うんうん、それに五十鈴君の一番のお友達なんでしょ? だったらそういう人が一緒にアルバイトしてくれた方が良いと思うわ」
続けて北川も笑顔で答えてくれた。
「いっ、一番かどうかは分からないけどさぁ……まぁ、小一からよく一緒に遊んではいたけれど……」
高山が少し照れくさそうに頭を掻きながら話している。
「それじゃあ決まりね。二人共、次の日曜日からよろしくね?」
佐々木もまた笑顔で話をまとめてくれた。
「でもさ、あと一人、男子がいるんじゃないのか? もう一人誰か声をかけてみようか?」
俺がそう質問すると大塚が
「別に無理して誘わなくていいわよ。絶対に男子三名じゃないとダメとは言われていないから……」
まさかの回答だった……
羽田を誘わなくて本当に良かったのか?
まぁ、その事を俺が気にするのは本当はおかしなことだとは思っている。
俺が羽田達を誘わず高山を誘ってしまったんだからな。
それに羽田や南川は『前の世界』で直ぐにバイトを辞めてしまっているし、『仕事的』には問題無いだろうとは思う。
ただ羽田のことが好きなはずの大塚の気持ちはどうなんだろうか?
心の中で俺のことを『何故、羽田君を誘わなかったのよ? この役立たず』と思っているのではないか?
少しだけだが俺の心に不安が残った……
【その日の夜】
俺は『つねちゃん』にアルバイトをすることになった報告の為に電話をかけた。
「あのさぁ、つねちゃん……」
「うん? どうしたの、隆君?」
「実は俺……次の日曜日から『エキサイトランド』でアルバイトをすることになったんだよ……」
「えっ!? あの遊園地で隆君がアルバイトを!?」
「そ、そうなんだよ……驚かせてゴメン……」
「ううん……少し驚いてしまったけど先生は大丈夫よ。それにしても隆君がアルバイトだなんて……本当に高校生らしくなったわねぇ……」
「いや、俺本当に『高校生』だから……」
本当は『中年高校生』なんだけどな。と俺は心の中でつい思ってしまった。
「フフフ……こないだ会った時は先生よりも身長が高くなっていたけど、アルバイトもするとなると、色んなことが経験できて隆君、ますます大人になっていくわね? 先生、隆君が成長していく姿を見るのがとても楽しみなのよ……」
「えっ? そ、そうなんだ……まぁ俺も初めてのバイトだし、少し緊張はするけど、今からとてもワクワクしてるんだよ」
『初めてのバイト』っていうのはある意味嘘になるかもな……
俺は『前の世界』でのアルバイトの記憶は結構鮮明に覚えている。
そして緊張はしているが、それはアルバイトの内容では無く『前の世界』とは違い、羽田や南川がいないアルバイトだということで今後の大塚達の出方に対して少しだけ緊張するということである。
でもワクワクするところも大いにある。
まず、また『この世界』で根津さんや三田さん、西野さん達と一緒に仕事が出来るというワクワク……
高山が加わったことによって『この世界』でのアルバイトがどんな風に変化していくのかも良い意味でワクワクしている。
そしてもう一つ……これは絶対に『つねちゃん』には言えないが、あの佐々木と、あの『人生で一番好きだった』と思っていた佐々木真由子と、とても楽しかったアルバイト生活をもう一度経験できるというワクワク……
勿論、佐々木に心変わりする気など毛頭も無い。
それよりも俺はそんな佐々木に対しての想いをこのアルバイト期間で完全に断ち切るつもりなんだ。
そして、それが『つねちゃん』と俺が結婚する為の『最後の試練』だと思っている。
なかなか厳しいかもしれないが俺はそれを常に心に留めて進んで行こうと決意しているのだ……
「それでさ、つねちゃん……」
「なあに、隆君?」
「俺がさぁ、遊園地でアルバイトをするってことは、これからしばらく休みの日につねちゃんと会えなくなるってことなんだ……俺はそれだけが心残りというかさ……」
「隆君がそう思ってくれるのは嬉しいけど、先生は隆君がやりたいことをして楽しい高校生活を味わって欲しいから、先生のことは気にし無くていいよ……そりゃあ先生も隆君に会えないのはちょっぴり寂しいけど……」
「ちょっぴり……なんだ……?」
「もぉぉお、隆君ったら、意地悪なことを言わないでくれるかな!? 『ちょっぴり』というのは嘘だから……」
俺はその言葉にキュンとしてしまい、思わず『つねちゃん』を抱きしめたい衝動にかられたが、そんな事はできるはずもないので受話器を思いっきり抱きしめてやった。
受話器の向こうから『隆君、隆君? 何してるの?』という声が聞こえてきたので、俺は慌てて受話器を持ち直し、少し興奮した声でこう言った。
「それでさ、つねちゃん!! 出来れば夏休みまで待ってくれないかな? 夏休みは毎日バイトがあるからさ、絶対に休める日があると思うんだよ。だから、つねちゃんの休みに合わせて俺も休みを取るからそれまでは……」
「有難う、隆君……夏休みなんてあっという間に来るわ。だから全然大丈夫よ。先生、隆君に会えるのを楽しみに待っているから……だから隆君もアルバイト頑張ってちょうだいね?」
「う、うん……俺、頑張るよ……」
『試練』を乗り越えれる様に頑張るよ……
こうして俺は次の日曜日から身も心も『万全の体制?』で『エキサイトランド』のアルバイトに臨むこととなる。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に次回から隆達は『エキサイトランド』でのアルバイトが始まります。
果たしてどんなアルバイト生活になるのか?
隆が想像していた通りに世界は動くのか?
それとも……
それでは次回もお楽しみに!!
「本当に俺なんかでいいのかなぁ……?」
高山が申し訳なさそうな顔をしながら大塚達に問いかけている。
それに対し大塚はニコッと微笑みながら答える。
「勿論!! 全然、構わないわよ」
「うんうん、それに五十鈴君の一番のお友達なんでしょ? だったらそういう人が一緒にアルバイトしてくれた方が良いと思うわ」
続けて北川も笑顔で答えてくれた。
「いっ、一番かどうかは分からないけどさぁ……まぁ、小一からよく一緒に遊んではいたけれど……」
高山が少し照れくさそうに頭を掻きながら話している。
「それじゃあ決まりね。二人共、次の日曜日からよろしくね?」
佐々木もまた笑顔で話をまとめてくれた。
「でもさ、あと一人、男子がいるんじゃないのか? もう一人誰か声をかけてみようか?」
俺がそう質問すると大塚が
「別に無理して誘わなくていいわよ。絶対に男子三名じゃないとダメとは言われていないから……」
まさかの回答だった……
羽田を誘わなくて本当に良かったのか?
まぁ、その事を俺が気にするのは本当はおかしなことだとは思っている。
俺が羽田達を誘わず高山を誘ってしまったんだからな。
それに羽田や南川は『前の世界』で直ぐにバイトを辞めてしまっているし、『仕事的』には問題無いだろうとは思う。
ただ羽田のことが好きなはずの大塚の気持ちはどうなんだろうか?
心の中で俺のことを『何故、羽田君を誘わなかったのよ? この役立たず』と思っているのではないか?
少しだけだが俺の心に不安が残った……
【その日の夜】
俺は『つねちゃん』にアルバイトをすることになった報告の為に電話をかけた。
「あのさぁ、つねちゃん……」
「うん? どうしたの、隆君?」
「実は俺……次の日曜日から『エキサイトランド』でアルバイトをすることになったんだよ……」
「えっ!? あの遊園地で隆君がアルバイトを!?」
「そ、そうなんだよ……驚かせてゴメン……」
「ううん……少し驚いてしまったけど先生は大丈夫よ。それにしても隆君がアルバイトだなんて……本当に高校生らしくなったわねぇ……」
「いや、俺本当に『高校生』だから……」
本当は『中年高校生』なんだけどな。と俺は心の中でつい思ってしまった。
「フフフ……こないだ会った時は先生よりも身長が高くなっていたけど、アルバイトもするとなると、色んなことが経験できて隆君、ますます大人になっていくわね? 先生、隆君が成長していく姿を見るのがとても楽しみなのよ……」
「えっ? そ、そうなんだ……まぁ俺も初めてのバイトだし、少し緊張はするけど、今からとてもワクワクしてるんだよ」
『初めてのバイト』っていうのはある意味嘘になるかもな……
俺は『前の世界』でのアルバイトの記憶は結構鮮明に覚えている。
そして緊張はしているが、それはアルバイトの内容では無く『前の世界』とは違い、羽田や南川がいないアルバイトだということで今後の大塚達の出方に対して少しだけ緊張するということである。
でもワクワクするところも大いにある。
まず、また『この世界』で根津さんや三田さん、西野さん達と一緒に仕事が出来るというワクワク……
高山が加わったことによって『この世界』でのアルバイトがどんな風に変化していくのかも良い意味でワクワクしている。
そしてもう一つ……これは絶対に『つねちゃん』には言えないが、あの佐々木と、あの『人生で一番好きだった』と思っていた佐々木真由子と、とても楽しかったアルバイト生活をもう一度経験できるというワクワク……
勿論、佐々木に心変わりする気など毛頭も無い。
それよりも俺はそんな佐々木に対しての想いをこのアルバイト期間で完全に断ち切るつもりなんだ。
そして、それが『つねちゃん』と俺が結婚する為の『最後の試練』だと思っている。
なかなか厳しいかもしれないが俺はそれを常に心に留めて進んで行こうと決意しているのだ……
「それでさ、つねちゃん……」
「なあに、隆君?」
「俺がさぁ、遊園地でアルバイトをするってことは、これからしばらく休みの日につねちゃんと会えなくなるってことなんだ……俺はそれだけが心残りというかさ……」
「隆君がそう思ってくれるのは嬉しいけど、先生は隆君がやりたいことをして楽しい高校生活を味わって欲しいから、先生のことは気にし無くていいよ……そりゃあ先生も隆君に会えないのはちょっぴり寂しいけど……」
「ちょっぴり……なんだ……?」
「もぉぉお、隆君ったら、意地悪なことを言わないでくれるかな!? 『ちょっぴり』というのは嘘だから……」
俺はその言葉にキュンとしてしまい、思わず『つねちゃん』を抱きしめたい衝動にかられたが、そんな事はできるはずもないので受話器を思いっきり抱きしめてやった。
受話器の向こうから『隆君、隆君? 何してるの?』という声が聞こえてきたので、俺は慌てて受話器を持ち直し、少し興奮した声でこう言った。
「それでさ、つねちゃん!! 出来れば夏休みまで待ってくれないかな? 夏休みは毎日バイトがあるからさ、絶対に休める日があると思うんだよ。だから、つねちゃんの休みに合わせて俺も休みを取るからそれまでは……」
「有難う、隆君……夏休みなんてあっという間に来るわ。だから全然大丈夫よ。先生、隆君に会えるのを楽しみに待っているから……だから隆君もアルバイト頑張ってちょうだいね?」
「う、うん……俺、頑張るよ……」
『試練』を乗り越えれる様に頑張るよ……
こうして俺は次の日曜日から身も心も『万全の体制?』で『エキサイトランド』のアルバイトに臨むこととなる。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に次回から隆達は『エキサイトランド』でのアルバイトが始まります。
果たしてどんなアルバイト生活になるのか?
隆が想像していた通りに世界は動くのか?
それとも……
それでは次回もお楽しみに!!
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