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第10章 波乱の部活編
第56話 初恋の人に諭される
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その日の夜、俺は今日の出来事を話す為、『つねちゃん』に電話をした。
「そうねぇ……隆君の言う通りかもね。もし先生の学生時代に隆君の言っている練習のやり方をしていたら、先生絶対に隆君に負けていなかったと思うわ!!」
『つねちゃん』……よほど夏休みに俺に負けたのが悔しかったんだな!?
『つねちゃん』がそんなに負けず嫌いだったとは……
「もしもし、つねちゃん? つねちゃんが俺に負けて悔しいのは良く分かったからさぁ……俺が聞きたいのはそこじゃ無くてさぁ……」
「あっ、ゴメンなさい!! そっ、そうだったわね!? その二年生との試合で隆君が『本気』を出すべきかどうかって事だったわね?」
俺は先輩達との試合を承諾した後に羽和さんから一年生代表の五名の中には絶対に俺が入いるように言われている。これも条件の一つらしい……
元々は俺は五名の中に入るつもりは無かった。
俺は『交渉権』を勝ち取るまでの役目のつもりだったんだ。
勿論、俺がメンバーに入るつもりが無かったのは知らず知らずに我を忘れて『本気』を出してしまい、先輩に勝ってしまったら、後々面倒な事が起こるのではという不安があったからだ。
先日俺は『つねちゃん』と卓球をした際にも熱くなってしまい、全然手を抜く事が出来ずに『本気』を出してしまった『とても不器用な男』だという事が判明してしいる。
それに対戦相手によっては小学生から卓球をやっている村瀬や森重あたりが勝てるという自信もあった。だから、あとのメンバーは適当に決めれば良いと考えていたのだ。
そして最悪、全員が負けて今まで通りの『練習方法』になったとしても、俺達は次の年に爆発的に強くなるのだから。
「もし……もしだけど、俺があてにしている二人が負けてしまったらどうしようかなって思ってしまって……」
「うーん、そうねぇ……まず先生が分からないのは隆君はあれだけ卓球が上手いのに何故皆に隠す必要があるのかなってことなんだけど……」
『つねちゃん』からその様な質問をされる事は想定内であった。
俺が『前の世界』から中三のレギュラーレベルで『タイムリープ』して来たんだなんて言えるはずも無い。だからもし、その様な質問をされた時はこう返事しようと……
「そっ、それは一年生で、それも卓球素人と皆から思われている俺が急に先輩や今まで卓球を頑張って来た同級生に勝ってしまったら、きっと嫌な思いをさせるんじゃないかなぁって思うし……俺が『隠れて父さんと練習していた』なんて言うのも今更恥ずかしいしさ……」
自分で言っていて凄く違和感がある。
なんて苦しい言い訳なんだろう……嫌になるくらい嘘の塊だ……
「隆君……先生は仲間の為にも『本気』を出すべきだと思うわ。隆君はお父さんの協力も得て、影で努力しながら卓球が上手くなったんでしょ? だったら別に何も気にする必要は無いじゃない。正々堂々と皆の前で『影の努力の成果』を見せるべきだわ。その方がきっと『卓球部』の為に……部員全員の為になると思うわよ。なんとなくだけど隆君は他にも『何か隠している』様な気がするけどそれは別に良いわ。『手を抜いた事』を後で後悔するよりも『本気を出して』後悔する方がずっとずっと良いと先生は思う……」
『何か隠している』という言葉に俺はドキッとしてしまったが、『つねちゃん』はそんな事よりも俺に『本気』を出して欲しいという思いが強いのがよく伝わってくる。
『影の努力』かぁ……
そうだよなぁ……俺はこのレベルになる為に……『レギュラー』になる為にかなりの努力をしたのはたしかだ。
まぁ『前の世界』の話ではあるが……
あんな『練習方法』じゃ俺達は卓球は上手くなれないと思い、一年生の頃から毎週休みの日には『アイツ等』と一緒に『市民体育館』で朝から晩まで練習をしていたんだよなぁ……
そして途中からは同じ体育館に俺達と『同じ理由』で通っていた『別の中学一年の卓球部員』とも親しくなり、彼等と合同で練習をしてお互いにレベルを上げていき最終的には『夏の大会』団体戦の『準決勝』で当たったんだよなぁ……懐かしいよなぁ……
「分かったよ、つねちゃん……どうしても俺が『本気』を出さないといけない場面が来たら、もう何も考えずに必死で試合に臨んでみるよ……」
「ウフッ、良かった。先生も必死で隆君を説得した甲斐があったわ。先生も隆君が『本気』で試合をしている姿、観てみたいなぁ……とてもカッコイイでしょうねぇ……」
「いっ、いや……できる事なら他の奴に勝ってもらいたいんだよ。そうすれば俺が『本気』を出す必要は無いんだからさ……」
「さぁ、どうなるんでしょうね? 試合は明後日の水曜日だったよね? 先生も陰ながら応援してるわね……」
「う、うん……有難う……本当に今日は俺の話を聞いてくれて、そして色々と俺に話をしてくれて有難う……」
「いえいえ、どういたしまして……」
俺は『つねちゃん』との電話を終えると自分の部屋に戻り布団の上に転がりながら天井を見つめている。
はぁ……一体どうなるんだろうか……?
やっぱ、『前の世界』で経験していない事が起こると少し不安だよな。
っていうか、こんな事になってしまったのは俺の責任なんだけども……
『手を抜いた事』を後で後悔するよりも『本気を出して』後悔する方がずっとずっと良い……っか……
さすが『つねちゃん』良い事を言うよな。
そうだよな。
俺は『この世界』に来た時から全ての事を『本気』で『全力』で頑張るって心に決めていたじゃないか。最近、生活が安定していたからすっかり忘れていたよ。
『つねちゃん』……その事を思い出させてくれて有難う……
本当に有難う……つねちゃ……スー……スー……
そして俺はそのまま眠りについてしまうのであった。
――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『つねちゃん』に説得され、その時が来たら『本気』を出すと決意した隆......
いよいよ次回は先輩達との『卓球対決』!!
果たして勝敗の行方は!?
次回もどうぞお楽しみに(^_-)-☆
「そうねぇ……隆君の言う通りかもね。もし先生の学生時代に隆君の言っている練習のやり方をしていたら、先生絶対に隆君に負けていなかったと思うわ!!」
『つねちゃん』……よほど夏休みに俺に負けたのが悔しかったんだな!?
『つねちゃん』がそんなに負けず嫌いだったとは……
「もしもし、つねちゃん? つねちゃんが俺に負けて悔しいのは良く分かったからさぁ……俺が聞きたいのはそこじゃ無くてさぁ……」
「あっ、ゴメンなさい!! そっ、そうだったわね!? その二年生との試合で隆君が『本気』を出すべきかどうかって事だったわね?」
俺は先輩達との試合を承諾した後に羽和さんから一年生代表の五名の中には絶対に俺が入いるように言われている。これも条件の一つらしい……
元々は俺は五名の中に入るつもりは無かった。
俺は『交渉権』を勝ち取るまでの役目のつもりだったんだ。
勿論、俺がメンバーに入るつもりが無かったのは知らず知らずに我を忘れて『本気』を出してしまい、先輩に勝ってしまったら、後々面倒な事が起こるのではという不安があったからだ。
先日俺は『つねちゃん』と卓球をした際にも熱くなってしまい、全然手を抜く事が出来ずに『本気』を出してしまった『とても不器用な男』だという事が判明してしいる。
それに対戦相手によっては小学生から卓球をやっている村瀬や森重あたりが勝てるという自信もあった。だから、あとのメンバーは適当に決めれば良いと考えていたのだ。
そして最悪、全員が負けて今まで通りの『練習方法』になったとしても、俺達は次の年に爆発的に強くなるのだから。
「もし……もしだけど、俺があてにしている二人が負けてしまったらどうしようかなって思ってしまって……」
「うーん、そうねぇ……まず先生が分からないのは隆君はあれだけ卓球が上手いのに何故皆に隠す必要があるのかなってことなんだけど……」
『つねちゃん』からその様な質問をされる事は想定内であった。
俺が『前の世界』から中三のレギュラーレベルで『タイムリープ』して来たんだなんて言えるはずも無い。だからもし、その様な質問をされた時はこう返事しようと……
「そっ、それは一年生で、それも卓球素人と皆から思われている俺が急に先輩や今まで卓球を頑張って来た同級生に勝ってしまったら、きっと嫌な思いをさせるんじゃないかなぁって思うし……俺が『隠れて父さんと練習していた』なんて言うのも今更恥ずかしいしさ……」
自分で言っていて凄く違和感がある。
なんて苦しい言い訳なんだろう……嫌になるくらい嘘の塊だ……
「隆君……先生は仲間の為にも『本気』を出すべきだと思うわ。隆君はお父さんの協力も得て、影で努力しながら卓球が上手くなったんでしょ? だったら別に何も気にする必要は無いじゃない。正々堂々と皆の前で『影の努力の成果』を見せるべきだわ。その方がきっと『卓球部』の為に……部員全員の為になると思うわよ。なんとなくだけど隆君は他にも『何か隠している』様な気がするけどそれは別に良いわ。『手を抜いた事』を後で後悔するよりも『本気を出して』後悔する方がずっとずっと良いと先生は思う……」
『何か隠している』という言葉に俺はドキッとしてしまったが、『つねちゃん』はそんな事よりも俺に『本気』を出して欲しいという思いが強いのがよく伝わってくる。
『影の努力』かぁ……
そうだよなぁ……俺はこのレベルになる為に……『レギュラー』になる為にかなりの努力をしたのはたしかだ。
まぁ『前の世界』の話ではあるが……
あんな『練習方法』じゃ俺達は卓球は上手くなれないと思い、一年生の頃から毎週休みの日には『アイツ等』と一緒に『市民体育館』で朝から晩まで練習をしていたんだよなぁ……
そして途中からは同じ体育館に俺達と『同じ理由』で通っていた『別の中学一年の卓球部員』とも親しくなり、彼等と合同で練習をしてお互いにレベルを上げていき最終的には『夏の大会』団体戦の『準決勝』で当たったんだよなぁ……懐かしいよなぁ……
「分かったよ、つねちゃん……どうしても俺が『本気』を出さないといけない場面が来たら、もう何も考えずに必死で試合に臨んでみるよ……」
「ウフッ、良かった。先生も必死で隆君を説得した甲斐があったわ。先生も隆君が『本気』で試合をしている姿、観てみたいなぁ……とてもカッコイイでしょうねぇ……」
「いっ、いや……できる事なら他の奴に勝ってもらいたいんだよ。そうすれば俺が『本気』を出す必要は無いんだからさ……」
「さぁ、どうなるんでしょうね? 試合は明後日の水曜日だったよね? 先生も陰ながら応援してるわね……」
「う、うん……有難う……本当に今日は俺の話を聞いてくれて、そして色々と俺に話をしてくれて有難う……」
「いえいえ、どういたしまして……」
俺は『つねちゃん』との電話を終えると自分の部屋に戻り布団の上に転がりながら天井を見つめている。
はぁ……一体どうなるんだろうか……?
やっぱ、『前の世界』で経験していない事が起こると少し不安だよな。
っていうか、こんな事になってしまったのは俺の責任なんだけども……
『手を抜いた事』を後で後悔するよりも『本気を出して』後悔する方がずっとずっと良い……っか……
さすが『つねちゃん』良い事を言うよな。
そうだよな。
俺は『この世界』に来た時から全ての事を『本気』で『全力』で頑張るって心に決めていたじゃないか。最近、生活が安定していたからすっかり忘れていたよ。
『つねちゃん』……その事を思い出させてくれて有難う……
本当に有難う……つねちゃ……スー……スー……
そして俺はそのまま眠りについてしまうのであった。
――――――――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『つねちゃん』に説得され、その時が来たら『本気』を出すと決意した隆......
いよいよ次回は先輩達との『卓球対決』!!
果たして勝敗の行方は!?
次回もどうぞお楽しみに(^_-)-☆
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