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第9章 空白の一年編
第51話 初恋の人に会う前にあの子に言っておきたい
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俺は『つねちゃん』の実家の最寄り駅であり、この沿線の『終点の駅』に降り立った。
『終点』まで来るのは久しぶりだなぁ……
『前の世界』でもあまりここまで来る用事が無かったからな。
『この時代』の駅周辺は見た感じ、まだ『発展途上』って感じだ。
『国立』の大きな病院はあるが、他には何も無い。
これから数年後にはおそらく今でいう『大型ショッピングモール』の様なものができるのだが……
俺はそんな事を思いながら駅前の大通りを歩いている。
ここから『つねちゃん』の実家まではそんなに遠くは無い。
すると突然、俺の名前を呼ぶ声がする。
「五十鈴君?」
俺は声の主を見て驚いた。
「えっ? いっ……!?」
声の主は石田浩美だった。
「いっ、石田!? ど、どうしてこんなところに!?」
「う、うん……わ、私はあの『国立青葉病院』にちょっと用事があってさ……」
「えっ、石田どこか悪いのか?」
「いっ、いや、アレよ!! お、お婆ちゃんがあの病院に入院していてさ、それで今日はお見舞いに行っていたの。それに今日はゴールデンウィークよ。診察なんて『救急』以外やっているはず無いじゃない……」
「そっ、そうだよな。言われてみればそうだ……ハッ、ハハハハ……」
何となく俺達二人はぎこちない会話をしている感じがする。
やはり小六の時の『キス』の影響だろうか?
まぁ、少なくとも俺には影響がある。
やっぱ石田の顔を見るとつい、思わず照れてしまう……
「それで五十鈴君は何故こんなところに一人で歩いているの?」
さすがに俺は本当の事を言える訳が無いので『大人の対応』……いや『大人の誤魔化し』をしようと試みた。
「いや、俺はここの近くに親戚が住んでいてさ、前から『隆君、休みの日に一度遊びにおいで』って言われていて、それで今日は一日予定が無かったから遊びに来たって感じかな……」
今ので誤魔化せただろうか……?
「ふーん……そうなんだぁぁ……一人で親戚の家に遊びに来るなんて五十鈴君、偉いよねぇぇ……?」
「えっ? そっ、そんな事無いよ。っていうかその親戚の家に俺と昔から仲良しの従弟が居るからさ……俺はその従弟に会いたいし、一緒に遊びたいからさぁ……」
それにしても俺と石田は『空白の一年』の間、どんな関係だったのだろうか?
普通に今まで通り、仲良くしていたのであろうか?
それに俺達はもう『中学生』……
二年後の夏には石田はこの世にはいない……
俺は『この世界』での一番の目的は『つねちゃん』と結婚する事だが、出来れば石田の命も救いたいと前から思っている。
だが俺に石田の命を救う事が出来るのか? という不安があるのはたしかだ。
この『タイムリープ』で人の『寿命』まで変えれるのだろうか……?
という思いも頭から離れない……
しかし何もせずに一生後悔するよりはずっとマシであろうとも思っている。
だからこの際、今の内から『ジャブ』だけでも打っておこうと俺は思った。
「石田、そういえばさ……」
「えっ、どうしたの?」
「いや、俺こないださぁ……石田が『事故』で死んでしまう夢を見ちゃったんだよ……だからさぁ……『乗り物』には十分に気を付けろよ? って言っても気を付けようが無いんだけどさぁ……」
石田は一瞬驚いた表情をしたが直ぐに笑顔に戻り、俺にこう言った。
「五十鈴君、半年前にも同じような事を言っていたわね? でも何回も同じ夢を見るなんてとても不吉よね? 分かったわ。心配してくれてありがとね。『乗り物』には十分に気を付けるわ。特に『飛行機』なんて墜落しちゃったら一巻の終わりだものね……?」
「へっ!? そ、そうだな……本当に一巻の終わりだよな……」
石田の言葉の中に俺は二つも驚いてしまう事がある。
一つは俺は半年前にも同じ様な事を石田に言っていたという事……
おそらく『空白の一年』の間、俺は今の様な事を考えてしまい、居ても立っても居られなくなり、つい『夢を見た』という嘘をついて石田に伝えたのだろう……
そしてもう一つは……『飛行機』……
そうである。石田は中三の夏休みに飛行機事故にあい帰らぬ人になってしまった。
あまりにもあっけないお別れ……
あまりにもむご過ぎるお別れであった……
俺だけでは無く、他の同級生達も『あの時』のショックは尋常では無かったと思う。
中学生の少年少女には『トラウマ』になる様な出来事だった……
何年も何年も……いや、未だに俺の心から消えた事は無い……
「私、何だか五十鈴君の言う事ってさ、夢もだけど、なんか当たりそうな気がするのよねぇ……だからこれからは十分に気を付けるわね? 私はこれからまだまだ『やりたい事』も『言いたい事』もたくさんあるんだから……」
「やりたい事っていうのは意味分かるけどさ、言いたい事って何なのさ?」
「えっ? フフフ……それは秘密よ。でもいずれ分かるから……」
「そうなんだ。いずれ分かるなら別に良いよ……」
どうせ分かる日が来るなら、出来れば中三の夏休み以降が良いなぁと俺は思った。
そして石田は『そろそろ帰らないと』と言い、慌てて駅の方へ向かうのであった。
石田は駅に向かっている途中で立ち止まり、俺の方に振り向いて笑顔で手を振っている。
その姿に太陽の光が当たりとても眩しく、とても綺麗だった……
そういえば去年のあの『キス』の話題にはならなかったな……
まぁお互いに恥ずかしくて話題になんて出来やしないだろうけど……
俺は気を取り直し、改めて『つねちゃん』の実家に向けて歩き出すのであった。
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
石田が亡くなった理由は飛行機事故でした。
隆は『この世界』でなんとか『石田の死』を食い止めようとこれから努力をしていく。
果たして隆は自分自身や『つねちゃん』『石田』の運命を変える事が出来るのか!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
『終点』まで来るのは久しぶりだなぁ……
『前の世界』でもあまりここまで来る用事が無かったからな。
『この時代』の駅周辺は見た感じ、まだ『発展途上』って感じだ。
『国立』の大きな病院はあるが、他には何も無い。
これから数年後にはおそらく今でいう『大型ショッピングモール』の様なものができるのだが……
俺はそんな事を思いながら駅前の大通りを歩いている。
ここから『つねちゃん』の実家まではそんなに遠くは無い。
すると突然、俺の名前を呼ぶ声がする。
「五十鈴君?」
俺は声の主を見て驚いた。
「えっ? いっ……!?」
声の主は石田浩美だった。
「いっ、石田!? ど、どうしてこんなところに!?」
「う、うん……わ、私はあの『国立青葉病院』にちょっと用事があってさ……」
「えっ、石田どこか悪いのか?」
「いっ、いや、アレよ!! お、お婆ちゃんがあの病院に入院していてさ、それで今日はお見舞いに行っていたの。それに今日はゴールデンウィークよ。診察なんて『救急』以外やっているはず無いじゃない……」
「そっ、そうだよな。言われてみればそうだ……ハッ、ハハハハ……」
何となく俺達二人はぎこちない会話をしている感じがする。
やはり小六の時の『キス』の影響だろうか?
まぁ、少なくとも俺には影響がある。
やっぱ石田の顔を見るとつい、思わず照れてしまう……
「それで五十鈴君は何故こんなところに一人で歩いているの?」
さすがに俺は本当の事を言える訳が無いので『大人の対応』……いや『大人の誤魔化し』をしようと試みた。
「いや、俺はここの近くに親戚が住んでいてさ、前から『隆君、休みの日に一度遊びにおいで』って言われていて、それで今日は一日予定が無かったから遊びに来たって感じかな……」
今ので誤魔化せただろうか……?
「ふーん……そうなんだぁぁ……一人で親戚の家に遊びに来るなんて五十鈴君、偉いよねぇぇ……?」
「えっ? そっ、そんな事無いよ。っていうかその親戚の家に俺と昔から仲良しの従弟が居るからさ……俺はその従弟に会いたいし、一緒に遊びたいからさぁ……」
それにしても俺と石田は『空白の一年』の間、どんな関係だったのだろうか?
普通に今まで通り、仲良くしていたのであろうか?
それに俺達はもう『中学生』……
二年後の夏には石田はこの世にはいない……
俺は『この世界』での一番の目的は『つねちゃん』と結婚する事だが、出来れば石田の命も救いたいと前から思っている。
だが俺に石田の命を救う事が出来るのか? という不安があるのはたしかだ。
この『タイムリープ』で人の『寿命』まで変えれるのだろうか……?
という思いも頭から離れない……
しかし何もせずに一生後悔するよりはずっとマシであろうとも思っている。
だからこの際、今の内から『ジャブ』だけでも打っておこうと俺は思った。
「石田、そういえばさ……」
「えっ、どうしたの?」
「いや、俺こないださぁ……石田が『事故』で死んでしまう夢を見ちゃったんだよ……だからさぁ……『乗り物』には十分に気を付けろよ? って言っても気を付けようが無いんだけどさぁ……」
石田は一瞬驚いた表情をしたが直ぐに笑顔に戻り、俺にこう言った。
「五十鈴君、半年前にも同じような事を言っていたわね? でも何回も同じ夢を見るなんてとても不吉よね? 分かったわ。心配してくれてありがとね。『乗り物』には十分に気を付けるわ。特に『飛行機』なんて墜落しちゃったら一巻の終わりだものね……?」
「へっ!? そ、そうだな……本当に一巻の終わりだよな……」
石田の言葉の中に俺は二つも驚いてしまう事がある。
一つは俺は半年前にも同じ様な事を石田に言っていたという事……
おそらく『空白の一年』の間、俺は今の様な事を考えてしまい、居ても立っても居られなくなり、つい『夢を見た』という嘘をついて石田に伝えたのだろう……
そしてもう一つは……『飛行機』……
そうである。石田は中三の夏休みに飛行機事故にあい帰らぬ人になってしまった。
あまりにもあっけないお別れ……
あまりにもむご過ぎるお別れであった……
俺だけでは無く、他の同級生達も『あの時』のショックは尋常では無かったと思う。
中学生の少年少女には『トラウマ』になる様な出来事だった……
何年も何年も……いや、未だに俺の心から消えた事は無い……
「私、何だか五十鈴君の言う事ってさ、夢もだけど、なんか当たりそうな気がするのよねぇ……だからこれからは十分に気を付けるわね? 私はこれからまだまだ『やりたい事』も『言いたい事』もたくさんあるんだから……」
「やりたい事っていうのは意味分かるけどさ、言いたい事って何なのさ?」
「えっ? フフフ……それは秘密よ。でもいずれ分かるから……」
「そうなんだ。いずれ分かるなら別に良いよ……」
どうせ分かる日が来るなら、出来れば中三の夏休み以降が良いなぁと俺は思った。
そして石田は『そろそろ帰らないと』と言い、慌てて駅の方へ向かうのであった。
石田は駅に向かっている途中で立ち止まり、俺の方に振り向いて笑顔で手を振っている。
その姿に太陽の光が当たりとても眩しく、とても綺麗だった……
そういえば去年のあの『キス』の話題にはならなかったな……
まぁお互いに恥ずかしくて話題になんて出来やしないだろうけど……
俺は気を取り直し、改めて『つねちゃん』の実家に向けて歩き出すのであった。
―――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
石田が亡くなった理由は飛行機事故でした。
隆は『この世界』でなんとか『石田の死』を食い止めようとこれから努力をしていく。
果たして隆は自分自身や『つねちゃん』『石田』の運命を変える事が出来るのか!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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