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第6章 七夕編
第30話 初恋の人に対しての不安
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「つっ、つねちゃん!?」
「隆君達もお友達と一緒に商店街にお買い物に来てたのね? まさか会えると思っていなかったから先生とてもビックリしたわ……」
『つねちゃん』は少し苦笑いをしながら俺にそう言ったが、俺の後ろにいる寿に気が付いたみたいで俺から視線を少し逸らした。
そして、そんな事など関係ない石田が勢いよく『つねちゃん』に話しかける。
「つねちゃん、お久しぶりです!! 最近、うちの学校の運動会に来てくれて無いからとても寂しかったじゃない!!」
石田が『つねちゃん』に憎まれ口を言っている。
実は石田も俺と同じ『つねちゃん』の『元教え子』である。
「浩美ちゃん、ゴメンなさいね。ここ数年、うちの幼稚園の運動会と日が重なっちゃって全然、青六(青葉第六小学校)の運動会に行けてなかったわね……」
「そうよ、そうよ。私、毎年運動会でつねちゃんに良いところを見せようと練習頑張ってるのに、肝心のつねちゃんが来ないから、当日になってやる気が無くなってしまって全然、徒競走で一位になれないわ!!」
オイオイ、『つねちゃん』のせいにするなよっ!! と、突っ込みたいところだが、石田が気分を悪くしたら後々面倒なので俺は我慢した。
その様子を見ていた志保さんが口を開く。
「アナタ、石田浩美さんって言ったっけ? 石田さん、アナタとても面白い子ね!! なんか私と『同じ匂い』がするわ……もしかしたら石田さんは『幼稚園の先生』にむいているかもしれないわね!!」
志保さんに『幼稚園の先生』にむいていると言われて石田はとても嬉しそうだったが、『同じ匂い』の意味がよく分からなかったみたいで俺に小声で聞いてきた。
なので俺も小声で『明るくて美人って事じゃないの』と言うと、石田は『フーン……』とだけ言うと、俺から離れ寿の隣に行ってしまう。その時の石田の頬は少し赤くなっている様な気がしたのは俺だけだろうか?
次に『つねちゃん』が話し出す。
「それで君が前に隆君が紹介してくれた高山君だったかな? それとアナタはよく覚えているわ。寿さんよね? 一年生の頃に会った時もとても可愛らしかったけど、六年生になったら一段と『美人さん』になったわねぇ!? 寿さん、凄くモテるんじゃない?」
『つねちゃん』は寿にかなり気を遣いながら話しかけている様に俺は感じたが、対する寿は『作り笑い』的な感じで『つねちゃん』に返事をする。
「そんな事無いですよ。私、全然モテませんから。常谷先生の方が凄くモテるんじゃないですか!?」
寿の言葉が俺にはなんか『トゲ』が有る様に感じてしまった。
ただ『つねちゃん』は大人の対応で直ぐにこう言い返す。
「モテたいんだけどねぇぇ、それがサッパリなのよ。ホント先生、いつになったら結婚出来るんだろう……」
その言葉に志保さんが反応する。
「えっ? 香織先生、結婚願望あるんですか!? 私、全然無いと思ってましたよ!! それなら今度、大学時代の同級生達と久しぶりに飲み会をするので、香織先生も是非参加してくださいよ。男子も数名来ますから……あっ!! 年下は無理ですか!?」
『年下』というワードに今度は俺がドキッとしてしまった。
「い、いえ別に年下が無理とか、そんな事は無いけど……多分だけど……」
『つねちゃん』はそう言いながら俺の顔をチラッと見てきた。
「うわぁぁわ、それなら是非参加してくださいね。また詳しい事は後日連絡させて頂きますから。あっ!! あらヤダ。君達の前で全然関係の無い話をしちゃってゴメンなさいね」
「常谷先生、良かったじゃないですか!? なんか『結婚の夢』が叶いそう!! 私、応援してますから!! 今度の飲み会、『ガンバッテ』ください!!」
あれだけ大人しかった寿が『つねちゃん』に対してだけは凄い弁舌になっている姿に俺だけでなく恐らく高山や石田も驚いただろう……
それに対し、さすがの『つねちゃん』も大人の対応とはいかず、あまり心のこもっていない『ありがとう』という言葉だけを返した。
「それであなた達、どう? せっかく今日、ここで会ったんだし、これから私達と一緒にお買い物しない?」
「いえ、今日は私達四人でお買い物しますので!!」
寿が即答した。
俺達三人は寿の返事に対して反論など出来なかった。
俺は後ろ髪を引かれる思いで『つねちゃん』達の前から立ち去った。
俺は背中に『つねちゃん』の視線を感じながら、両サイドに寿と石田に挟まれ、高山には背後をつかれ、振り返りたいけ振りど返れない状況に胃が痛くなる思いだった。
今、『つねちゃん』は俺達を見てどう思っているのだろう……
俺は『つねちゃん』達と一緒に買い物をしたかったいう気持ちは分かってくれているのだろうか?
俺は女子に挟まれて喜んでいる訳では無いという事を理解してくれているのだろうか?
そして『つねちゃん』は志保さんが言っていた『飲み会』に参加するのだろうか?
色々な不安な思いが頭の中を駆け巡り、買い物どころではない俺がいるのであった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
せっかく遊園地デート以来『つねちゃん』に会えた隆だが寿の『頑張り?』によってあっさりと引き離され胃の痛い思いをする結果に......
そして『つねちゃん』に対して新たな不安がよぎる......
果たしてこれからの二人の行方は!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
「隆君達もお友達と一緒に商店街にお買い物に来てたのね? まさか会えると思っていなかったから先生とてもビックリしたわ……」
『つねちゃん』は少し苦笑いをしながら俺にそう言ったが、俺の後ろにいる寿に気が付いたみたいで俺から視線を少し逸らした。
そして、そんな事など関係ない石田が勢いよく『つねちゃん』に話しかける。
「つねちゃん、お久しぶりです!! 最近、うちの学校の運動会に来てくれて無いからとても寂しかったじゃない!!」
石田が『つねちゃん』に憎まれ口を言っている。
実は石田も俺と同じ『つねちゃん』の『元教え子』である。
「浩美ちゃん、ゴメンなさいね。ここ数年、うちの幼稚園の運動会と日が重なっちゃって全然、青六(青葉第六小学校)の運動会に行けてなかったわね……」
「そうよ、そうよ。私、毎年運動会でつねちゃんに良いところを見せようと練習頑張ってるのに、肝心のつねちゃんが来ないから、当日になってやる気が無くなってしまって全然、徒競走で一位になれないわ!!」
オイオイ、『つねちゃん』のせいにするなよっ!! と、突っ込みたいところだが、石田が気分を悪くしたら後々面倒なので俺は我慢した。
その様子を見ていた志保さんが口を開く。
「アナタ、石田浩美さんって言ったっけ? 石田さん、アナタとても面白い子ね!! なんか私と『同じ匂い』がするわ……もしかしたら石田さんは『幼稚園の先生』にむいているかもしれないわね!!」
志保さんに『幼稚園の先生』にむいていると言われて石田はとても嬉しそうだったが、『同じ匂い』の意味がよく分からなかったみたいで俺に小声で聞いてきた。
なので俺も小声で『明るくて美人って事じゃないの』と言うと、石田は『フーン……』とだけ言うと、俺から離れ寿の隣に行ってしまう。その時の石田の頬は少し赤くなっている様な気がしたのは俺だけだろうか?
次に『つねちゃん』が話し出す。
「それで君が前に隆君が紹介してくれた高山君だったかな? それとアナタはよく覚えているわ。寿さんよね? 一年生の頃に会った時もとても可愛らしかったけど、六年生になったら一段と『美人さん』になったわねぇ!? 寿さん、凄くモテるんじゃない?」
『つねちゃん』は寿にかなり気を遣いながら話しかけている様に俺は感じたが、対する寿は『作り笑い』的な感じで『つねちゃん』に返事をする。
「そんな事無いですよ。私、全然モテませんから。常谷先生の方が凄くモテるんじゃないですか!?」
寿の言葉が俺にはなんか『トゲ』が有る様に感じてしまった。
ただ『つねちゃん』は大人の対応で直ぐにこう言い返す。
「モテたいんだけどねぇぇ、それがサッパリなのよ。ホント先生、いつになったら結婚出来るんだろう……」
その言葉に志保さんが反応する。
「えっ? 香織先生、結婚願望あるんですか!? 私、全然無いと思ってましたよ!! それなら今度、大学時代の同級生達と久しぶりに飲み会をするので、香織先生も是非参加してくださいよ。男子も数名来ますから……あっ!! 年下は無理ですか!?」
『年下』というワードに今度は俺がドキッとしてしまった。
「い、いえ別に年下が無理とか、そんな事は無いけど……多分だけど……」
『つねちゃん』はそう言いながら俺の顔をチラッと見てきた。
「うわぁぁわ、それなら是非参加してくださいね。また詳しい事は後日連絡させて頂きますから。あっ!! あらヤダ。君達の前で全然関係の無い話をしちゃってゴメンなさいね」
「常谷先生、良かったじゃないですか!? なんか『結婚の夢』が叶いそう!! 私、応援してますから!! 今度の飲み会、『ガンバッテ』ください!!」
あれだけ大人しかった寿が『つねちゃん』に対してだけは凄い弁舌になっている姿に俺だけでなく恐らく高山や石田も驚いただろう……
それに対し、さすがの『つねちゃん』も大人の対応とはいかず、あまり心のこもっていない『ありがとう』という言葉だけを返した。
「それであなた達、どう? せっかく今日、ここで会ったんだし、これから私達と一緒にお買い物しない?」
「いえ、今日は私達四人でお買い物しますので!!」
寿が即答した。
俺達三人は寿の返事に対して反論など出来なかった。
俺は後ろ髪を引かれる思いで『つねちゃん』達の前から立ち去った。
俺は背中に『つねちゃん』の視線を感じながら、両サイドに寿と石田に挟まれ、高山には背後をつかれ、振り返りたいけ振りど返れない状況に胃が痛くなる思いだった。
今、『つねちゃん』は俺達を見てどう思っているのだろう……
俺は『つねちゃん』達と一緒に買い物をしたかったいう気持ちは分かってくれているのだろうか?
俺は女子に挟まれて喜んでいる訳では無いという事を理解してくれているのだろうか?
そして『つねちゃん』は志保さんが言っていた『飲み会』に参加するのだろうか?
色々な不安な思いが頭の中を駆け巡り、買い物どころではない俺がいるのであった。
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お読みいただきありがとうございました。
せっかく遊園地デート以来『つねちゃん』に会えた隆だが寿の『頑張り?』によってあっさりと引き離され胃の痛い思いをする結果に......
そして『つねちゃん』に対して新たな不安がよぎる......
果たしてこれからの二人の行方は!?
どうぞ次回もお楽しみに(^_-)-☆
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