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第6章 七夕編
第28話 初恋の人を思い短冊に
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七月七日 七夕祭り
俺の通う正月校では毎年、『七夕祭り』という行事を行っている。
巨大な笹を六本用意し、各学年ごとに短冊に『願い事』を書き、笹に結び付ける。
まぁ、こういう事はどこの小学校でも行っているだろうが、今回、俺が書く『願い事』は特別だ。
『つねちゃんと結婚できますように』
勿論、俺はそう書きたいのはやまやま何だが、誰が見ているのか分からないので、とりあえず俺は『好きな人と結婚できますように』と書くつもりだ。
それでも小六となれば誰かに冷やかされたり、突っ込まれたりするだろうが、それは俺の『大人の対応』で乗り切る予定だ。
大人のクセに短冊に願い事を書けば叶うと思っているのか?と思われるかもしれないが、今の俺は『叶う』と思っている。
だってそうだろ? 俺は『タイムリープ』をして現在、『この世界』で小学生をやっているんだからな。神様がいるのかどうかはよく分からないが、何があっても不思議では無いという考え方に俺はなっていた。
「おーい五十鈴~お前は短冊にどんな『願い事』を書くんだ?」
「なっ、何で高山に教えなきゃいけないんだよ!?」
俺はまさか高山が『願い事』の内容を聞いてくるとは思っていなかったので少し焦った感じの返事をしてしまった。
「別に教えてくれてもいいじゃん。そんな聞かれて恥ずかしい事なんて書かないだろ? まして『好きな人と結婚できますように』とか何て書くはずないしさぁぁ……」
こっ、こいつはエスパーか何かか!? と、俺は一瞬焦ったが、ここは『大人の対応』でアイツの質問を打ち消してやろう……
「あぁ、そうだな。俺は『どうか高山が将来、結婚しても離婚しませんように』って書こうと思ってるよ……」
俺がそう言うと、高山は『またか』という様な顔をしながら
「またそれかよぉぉ……五十鈴ってさぁ、毎年俺にソレ言ってないか? さすがに聞き飽きたよぉぉ。もう『願い事』なんてどうでも良くなったよ……」
よしっ、成功だ!!
俺は心の中でガッツポーズをした。
「ねぇねぇ、五十鈴君に高山君、ちょっといいかな?」
俺達二人に声をかけてきたのは『石田浩美』というクラスメイトだ。そしてその石田の横には同じくクラスメイトの『寿久子』もいる。
石田は俺や高山よりも背が高く、顔は美人な方だ。ただ、性格が男っぽい所があり、俺は心の中で『過去の世界』でよく使われていた言葉、『残念美人』と呼んでいるが本当は『過去の世界』で『つねちゃん』の死を知るまで俺が初恋だと思っていた子だ。
実は石田は高山よりも遥かに波乱な人生を歩むのだが今は伏せておこうと思う。
そしてその石田と一緒にいる寿はご存じ、『この世界』では俺の事が好きらしい子……そして『クラスのマドンナ』から今は『学年のマドンナ』へと昇り詰めている子だ。
さすがに俺も小六になった寿は可愛いと思うし、ちょっとした仕草でドキッとする事もある。やはり十二歳ともなれば『大人の顔』になる時もあるから、やっぱ女子って凄いと思う。
「で、二人して俺達になんか用?」
俺がそう二人に聞くと寿は何かモジモジした様な仕草をして何も言わないので、それを見かねた石田が俺達にこう言ってきた。
「あのね、今度の『七夕祭り』で私達のクラスは体育館で『お芝居』をする事になったでしょ? それで私達二人が衣装とか小道具とかの買い物に行く事になったんだけど、女子二人じゃ心細いから五十鈴君達にも一緒にお買い物について来てもらえないかなぁと思って……ダメかな?」
そういう事か。それなら……
「別に良いよぉぉ。どうせ俺達、暇だから……」
俺が返事をする前に高山の奴が先に返事をしてしまった。
「五十鈴君も良いのかな?」
「えっ? あ、あぁ……うん、良いよ……」
俺が石田にそう答えると横にいる寿が少しホッとした表情になり、そして何とも言えないような笑顔を見せている。
やはりな……
俺は本当は断ろうとしたんだ。それなのに高山の奴が勝手に引き受けてしまったから。
せっかく『大人の対応』で女子達に嫌われる事も無いような断り方をしようと思っていたのに……
これじゃ、あの二人の『作戦通り』になったじゃないか。
ん?
今、石田が高山の方に『ウィンク』をしなかったか?
いや、絶対したぞ!!
って事は高山の奴も『グル』って事なのかよ!?
はぁぁ……
さすがに小六ともなると『大人の俺』を超える作戦を考える事もあるのか……
これから益々、油断出来ないじゃないか……
俺は『つねちゃん』と結婚する為、約束を守る為に絶対に『つねちゃん』以外の女性に『恋愛感情』を抱かないって決めたんだ。
そしてなるべく、そうなりそうな場面にも近づかないって決めてたのにさ……
『過去の世界』の俺なら全然問題無かったけども、『この世界』の俺は十八歳になるまでの道のりは結構厳しいものになるのか?
『つねちゃん』と結婚する為の試練なのか……?
そういえば『つねちゃん』は短冊に何て願い事を書くのだろうか?
どうか俺と同じ事を書いてくれますように……
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『過去の世界』ではたいして異性にモテなかった隆
しかし『この世界』では『大人の対応』と『本人の努力』の甲斐あって誰からも好かれる人間になっている。それが今回、つねちゃんと結婚する為の『障害』になりつつある事に気付いて来た......
さぁ、四人での買い物はどんな感じになるのでしょうか?
それでは次回もお楽しみに(^_-)-☆
俺の通う正月校では毎年、『七夕祭り』という行事を行っている。
巨大な笹を六本用意し、各学年ごとに短冊に『願い事』を書き、笹に結び付ける。
まぁ、こういう事はどこの小学校でも行っているだろうが、今回、俺が書く『願い事』は特別だ。
『つねちゃんと結婚できますように』
勿論、俺はそう書きたいのはやまやま何だが、誰が見ているのか分からないので、とりあえず俺は『好きな人と結婚できますように』と書くつもりだ。
それでも小六となれば誰かに冷やかされたり、突っ込まれたりするだろうが、それは俺の『大人の対応』で乗り切る予定だ。
大人のクセに短冊に願い事を書けば叶うと思っているのか?と思われるかもしれないが、今の俺は『叶う』と思っている。
だってそうだろ? 俺は『タイムリープ』をして現在、『この世界』で小学生をやっているんだからな。神様がいるのかどうかはよく分からないが、何があっても不思議では無いという考え方に俺はなっていた。
「おーい五十鈴~お前は短冊にどんな『願い事』を書くんだ?」
「なっ、何で高山に教えなきゃいけないんだよ!?」
俺はまさか高山が『願い事』の内容を聞いてくるとは思っていなかったので少し焦った感じの返事をしてしまった。
「別に教えてくれてもいいじゃん。そんな聞かれて恥ずかしい事なんて書かないだろ? まして『好きな人と結婚できますように』とか何て書くはずないしさぁぁ……」
こっ、こいつはエスパーか何かか!? と、俺は一瞬焦ったが、ここは『大人の対応』でアイツの質問を打ち消してやろう……
「あぁ、そうだな。俺は『どうか高山が将来、結婚しても離婚しませんように』って書こうと思ってるよ……」
俺がそう言うと、高山は『またか』という様な顔をしながら
「またそれかよぉぉ……五十鈴ってさぁ、毎年俺にソレ言ってないか? さすがに聞き飽きたよぉぉ。もう『願い事』なんてどうでも良くなったよ……」
よしっ、成功だ!!
俺は心の中でガッツポーズをした。
「ねぇねぇ、五十鈴君に高山君、ちょっといいかな?」
俺達二人に声をかけてきたのは『石田浩美』というクラスメイトだ。そしてその石田の横には同じくクラスメイトの『寿久子』もいる。
石田は俺や高山よりも背が高く、顔は美人な方だ。ただ、性格が男っぽい所があり、俺は心の中で『過去の世界』でよく使われていた言葉、『残念美人』と呼んでいるが本当は『過去の世界』で『つねちゃん』の死を知るまで俺が初恋だと思っていた子だ。
実は石田は高山よりも遥かに波乱な人生を歩むのだが今は伏せておこうと思う。
そしてその石田と一緒にいる寿はご存じ、『この世界』では俺の事が好きらしい子……そして『クラスのマドンナ』から今は『学年のマドンナ』へと昇り詰めている子だ。
さすがに俺も小六になった寿は可愛いと思うし、ちょっとした仕草でドキッとする事もある。やはり十二歳ともなれば『大人の顔』になる時もあるから、やっぱ女子って凄いと思う。
「で、二人して俺達になんか用?」
俺がそう二人に聞くと寿は何かモジモジした様な仕草をして何も言わないので、それを見かねた石田が俺達にこう言ってきた。
「あのね、今度の『七夕祭り』で私達のクラスは体育館で『お芝居』をする事になったでしょ? それで私達二人が衣装とか小道具とかの買い物に行く事になったんだけど、女子二人じゃ心細いから五十鈴君達にも一緒にお買い物について来てもらえないかなぁと思って……ダメかな?」
そういう事か。それなら……
「別に良いよぉぉ。どうせ俺達、暇だから……」
俺が返事をする前に高山の奴が先に返事をしてしまった。
「五十鈴君も良いのかな?」
「えっ? あ、あぁ……うん、良いよ……」
俺が石田にそう答えると横にいる寿が少しホッとした表情になり、そして何とも言えないような笑顔を見せている。
やはりな……
俺は本当は断ろうとしたんだ。それなのに高山の奴が勝手に引き受けてしまったから。
せっかく『大人の対応』で女子達に嫌われる事も無いような断り方をしようと思っていたのに……
これじゃ、あの二人の『作戦通り』になったじゃないか。
ん?
今、石田が高山の方に『ウィンク』をしなかったか?
いや、絶対したぞ!!
って事は高山の奴も『グル』って事なのかよ!?
はぁぁ……
さすがに小六ともなると『大人の俺』を超える作戦を考える事もあるのか……
これから益々、油断出来ないじゃないか……
俺は『つねちゃん』と結婚する為、約束を守る為に絶対に『つねちゃん』以外の女性に『恋愛感情』を抱かないって決めたんだ。
そしてなるべく、そうなりそうな場面にも近づかないって決めてたのにさ……
『過去の世界』の俺なら全然問題無かったけども、『この世界』の俺は十八歳になるまでの道のりは結構厳しいものになるのか?
『つねちゃん』と結婚する為の試練なのか……?
そういえば『つねちゃん』は短冊に何て願い事を書くのだろうか?
どうか俺と同じ事を書いてくれますように……
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
『過去の世界』ではたいして異性にモテなかった隆
しかし『この世界』では『大人の対応』と『本人の努力』の甲斐あって誰からも好かれる人間になっている。それが今回、つねちゃんと結婚する為の『障害』になりつつある事に気付いて来た......
さぁ、四人での買い物はどんな感じになるのでしょうか?
それでは次回もお楽しみに(^_-)-☆
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