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第5章 デート編
第25話 初恋の人と観覧車へ
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『根津昭雄』
おそらく今は二十五歳の独身……
どう見ても『四十前』に見える老け顔の人だ。
『つねちゃん』が危ない仕事をしている人と思ってしまっても仕方の無いくらい『イカツイ』風貌だ。
どうでも良い情報かもしれないが、俺にとっては『過去の世界』でのアルバイト時代に一番お世話になった人なんだ。
だから『この世界』で根津さんの顔が見れただけでも俺はとても嬉しかった。
そんな根津さんは見かけとは違い、とても優しい人である。
どう優しいかと言えば休憩時間に『チュンチュン』と言いながらスズメに餌をあげる様な人だ。まぁ、少し変わっているのかもしれないが……
当時俺は根津さんが外のベンチで休憩する度にスズメたちが餌をもらおうと根津さんの周りに集まる光景を見て、一人こっそりと、根津さんに聞こえないように、お腹を抱えて笑っていたものだ。
そんな当時の根津さんの事を思い出しながら俺はマジマジと見、そして『つねちゃん』は怖い者見たさで根津さんの方を見ていた。
「隆君? 今あの人、私達の方を見て笑ったんじゃない?」
『つねちゃん』が俺の身体を揺らしながら言ってきたが、俺はサングラスをしている根津さんがこっちを見て笑っているのかどうかは分からなかった。
船が『急流すべり』最大の見せ場である傾斜のある坂に近づいた時、『つねちゃん』が俺に話しかけてきた。
「隆君……本当は先生ね、昇にからかわれた事に腹が立っていた訳じゃないのよ。隆君はもう忘れているかもしれないけど、隆君が卒園した後にお母さんと一緒に駅まで先生を見送ってくれた時に別れ際に隆君が言ってくれた『あの言葉』を思い出してしまって……」
「えっ!?」
俺は驚いた。
『つねちゃん』はあの時の俺の『プロポーズ』をちゃんと覚えていてくれたんだと……
「それでね。先生、急に恥ずかしくなっちゃって……でも弟達に先生が恥ずかしがってるところを見せるのもシャクだったし……だからあんな態度をとって誤魔化したの……」
俺は『つねちゃん』が俺の『プロポーズ』を覚えてくれていた事がとても嬉しかったし、安堵もした。
しかし俺が本当に知りたいのは俺からの『プロポーズ』に対する『つねちゃん』の気持ちだ。
幼稚園児の戯言だと思っているのか、それとも少しは嬉しく思ってくれたのか……
そこのところを教えてくれないか、『つねちゃん』……
あと、今の俺……小六の俺が『プロポーズ』をしたらどうなんだろう?
幼稚園児が言うよりは、もう少し重く受け止めてくれるのだろうか……?
そんな事を考えているうちにいつの間にか船は斜面を登り切り、あとは勢いよく降下するだけの状態になっている。
俺の横で『つねちゃん』は手すりをしっかり握りしめ、緊張した顔で正面を見ている。
緊張している横顔の『つねちゃん』もとても綺麗だなぁ……
そう思った矢先に船は急降下をし、『つねちゃん』は大声で叫び出す。
そして俺は思わずこう叫んでしまった……
「つねちゃーん!! 大好きだ―――っ!!」
ドッバ――――――ンッッ
大きな水しぶきの音と共に俺の『叫び声』はかき消されるのであった。
『急流すべり』を後にした俺達は最後の急降下の余韻が残ったまま茫然としていた。
「先生の服、少し濡れちゃったわ。隆君は大丈夫だった?」
「えっ、ああ……俺の服も少し濡れちゃったけど全然大丈夫だよ」
『つねちゃん』の様子を見て、俺の『叫び声』が聞こえていなかった事に少しホッとした。
そしてお昼になり俺達はベンチで『つねちゃん』が作った弁当を食べている。
はっきり言って、『つねちゃん』の作った弁当はめちゃくちゃ美味かった。
母さんには申し訳ないが、母さんが作る弁当よりも美味しく思う。
「隆君、お味はどうかな? 美味しいかな?」
『つねちゃん』が少し不安そうな顔をしながら聞いてきたので俺は『つねちゃん』に親指を立てて『最高にうまいッ!』と答えた。
すると『つねちゃん』は満面の笑顔で『良かったぁ、ホッとしたわぁ……』と言いながら胸を撫でおろしていた。俺はそんな『つねちゃん』の姿がとてもたまらなく愛おしく感じるのであった。
弁当を食べながら『つねちゃん』が『観覧車には最後に乗らない?』と提案してきたので、俺は反対する理由も無く了承した。
そして弁当を食べ終えた俺達は『観覧車』以外の乗り物に次々と乗り『遊園地』を満喫していた。
ただその中で俺は最後に乗る『観覧車』の中で『つねちゃん』に誕生日プレゼントを渡そうと心に思うと同時に少しず緊張していっている俺がいるのであった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に次回、二人は『観覧車』へ!!
そして『デート編』最終話となる予定です。
どうぞ次回も楽しみにしてくださいね(^_-)-☆
おそらく今は二十五歳の独身……
どう見ても『四十前』に見える老け顔の人だ。
『つねちゃん』が危ない仕事をしている人と思ってしまっても仕方の無いくらい『イカツイ』風貌だ。
どうでも良い情報かもしれないが、俺にとっては『過去の世界』でのアルバイト時代に一番お世話になった人なんだ。
だから『この世界』で根津さんの顔が見れただけでも俺はとても嬉しかった。
そんな根津さんは見かけとは違い、とても優しい人である。
どう優しいかと言えば休憩時間に『チュンチュン』と言いながらスズメに餌をあげる様な人だ。まぁ、少し変わっているのかもしれないが……
当時俺は根津さんが外のベンチで休憩する度にスズメたちが餌をもらおうと根津さんの周りに集まる光景を見て、一人こっそりと、根津さんに聞こえないように、お腹を抱えて笑っていたものだ。
そんな当時の根津さんの事を思い出しながら俺はマジマジと見、そして『つねちゃん』は怖い者見たさで根津さんの方を見ていた。
「隆君? 今あの人、私達の方を見て笑ったんじゃない?」
『つねちゃん』が俺の身体を揺らしながら言ってきたが、俺はサングラスをしている根津さんがこっちを見て笑っているのかどうかは分からなかった。
船が『急流すべり』最大の見せ場である傾斜のある坂に近づいた時、『つねちゃん』が俺に話しかけてきた。
「隆君……本当は先生ね、昇にからかわれた事に腹が立っていた訳じゃないのよ。隆君はもう忘れているかもしれないけど、隆君が卒園した後にお母さんと一緒に駅まで先生を見送ってくれた時に別れ際に隆君が言ってくれた『あの言葉』を思い出してしまって……」
「えっ!?」
俺は驚いた。
『つねちゃん』はあの時の俺の『プロポーズ』をちゃんと覚えていてくれたんだと……
「それでね。先生、急に恥ずかしくなっちゃって……でも弟達に先生が恥ずかしがってるところを見せるのもシャクだったし……だからあんな態度をとって誤魔化したの……」
俺は『つねちゃん』が俺の『プロポーズ』を覚えてくれていた事がとても嬉しかったし、安堵もした。
しかし俺が本当に知りたいのは俺からの『プロポーズ』に対する『つねちゃん』の気持ちだ。
幼稚園児の戯言だと思っているのか、それとも少しは嬉しく思ってくれたのか……
そこのところを教えてくれないか、『つねちゃん』……
あと、今の俺……小六の俺が『プロポーズ』をしたらどうなんだろう?
幼稚園児が言うよりは、もう少し重く受け止めてくれるのだろうか……?
そんな事を考えているうちにいつの間にか船は斜面を登り切り、あとは勢いよく降下するだけの状態になっている。
俺の横で『つねちゃん』は手すりをしっかり握りしめ、緊張した顔で正面を見ている。
緊張している横顔の『つねちゃん』もとても綺麗だなぁ……
そう思った矢先に船は急降下をし、『つねちゃん』は大声で叫び出す。
そして俺は思わずこう叫んでしまった……
「つねちゃーん!! 大好きだ―――っ!!」
ドッバ――――――ンッッ
大きな水しぶきの音と共に俺の『叫び声』はかき消されるのであった。
『急流すべり』を後にした俺達は最後の急降下の余韻が残ったまま茫然としていた。
「先生の服、少し濡れちゃったわ。隆君は大丈夫だった?」
「えっ、ああ……俺の服も少し濡れちゃったけど全然大丈夫だよ」
『つねちゃん』の様子を見て、俺の『叫び声』が聞こえていなかった事に少しホッとした。
そしてお昼になり俺達はベンチで『つねちゃん』が作った弁当を食べている。
はっきり言って、『つねちゃん』の作った弁当はめちゃくちゃ美味かった。
母さんには申し訳ないが、母さんが作る弁当よりも美味しく思う。
「隆君、お味はどうかな? 美味しいかな?」
『つねちゃん』が少し不安そうな顔をしながら聞いてきたので俺は『つねちゃん』に親指を立てて『最高にうまいッ!』と答えた。
すると『つねちゃん』は満面の笑顔で『良かったぁ、ホッとしたわぁ……』と言いながら胸を撫でおろしていた。俺はそんな『つねちゃん』の姿がとてもたまらなく愛おしく感じるのであった。
弁当を食べながら『つねちゃん』が『観覧車には最後に乗らない?』と提案してきたので、俺は反対する理由も無く了承した。
そして弁当を食べ終えた俺達は『観覧車』以外の乗り物に次々と乗り『遊園地』を満喫していた。
ただその中で俺は最後に乗る『観覧車』の中で『つねちゃん』に誕生日プレゼントを渡そうと心に思うと同時に少しず緊張していっている俺がいるのであった。
――――――――――――――――――
お読みいただきありがとうございました。
遂に次回、二人は『観覧車』へ!!
そして『デート編』最終話となる予定です。
どうぞ次回も楽しみにしてくださいね(^_-)-☆
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