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第1章 前の世界編
第2話 初恋の人の思い出
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『常谷香織』先生……
通称……『つねちゃん』
まさか、俺の初恋の人が亡くなった事を知ってしまうなんて……
今の冴えない状況の俺にとっては輪をかけて落ち込む内容が追加される事になってしまった。
ここ数年、仕事が忙しかった事もあって、『つねちゃん』の事を思い出す事も無かったが、流石に亡くなったと聞くと当時の事が走馬灯の様に蘇ってくる。
俺は『幼稚園年長の二学期』から『つねちゃん』が勤務する幼稚園に転入して来た。
俺が生れた頃は隣の市の『文化住宅』に住んでいた。
でも俺が地元の幼稚園年長の一学期途中で両親が隣の市で『一戸建て』の良い物件を見つけたのだ。
兼ねてから両親は『一戸建ての家』を買う事を目標に商売を頑張っていたらしく、現在俺達が住んで居るこの家に飛びついたのだ。
俺の気持ちも考えないで……
俺は引っ越す前の地元では結構な『やんちゃ坊主』だったんだ。
友達も多く、地元の商店街で働く人達にも可愛がられていたと思う。
今思えばその頃が俺にとって人生のピークだったかもしれない。
俺は夏休みに今まで仲良くしていた友達と別れ今の街に越して来たんだ。
母親は俺の為にと思い、近所の子供達の輪の中に無理やり入れて遊ばせる様にしてくれたが、俺はなかなか馴染めず、いつの間にか『大人しい性格』に変わってしまっていた。
しばらくの間は前の友達を思い出し、毎晩布団の中で泣いていたものだ。
そして、そんな俺の唯一の救いが『つねちゃん』だった。
二学期途中から転入してきた俺を、不安一杯の俺を優しく迎え入れてくれたんだ。
後で分かった事だが『つねちゃん』はその年に幼稚園の先生になったらしい。
社会人一年生で不安一杯の中、精一杯、先生として頑張っている『つねちゃん』にしてみれば、途中からやって来た俺の不安な気持ちが直ぐに察知出来たんだと思う。
だから常に『つねちゃん』は俺の傍にいてくれた。
他の園児が『嫉妬』するくらいに……
そして俺はそんな『つねちゃん』の事をいつの間にか、『先生』としではなく『異性』として好きになっていた。
今になって思えば俺って結構マセた子供だったんだなぁと思う。
それから月日が流れ、俺は卒園を迎える事となる。
俺にとって苦痛の卒園式だった。
小学生になるっていう不安も大きかったが、やはり『つねちゃん』と離れ離れになるって事が一番辛かったんだ。
卒園式の日、母親から俺は衝撃的な話を聞かされ、卒園式どころではない心境になってしまた。
『つねちゃん』が四月から違う幼稚園勤務になるという事を聞かされたのだ。
俺は小学生になっても幼稚園に遊びに行けば『つねちゃん』に会えると思っていたからショックが大きかった。
俺の街からは電車じゃないと行けない、遠い街の幼稚園に移動するという事だったんだ。
でも、もしかしたら幼稚園児の俺にとっては遠い街でも今の俺からすれば目と鼻の先の距離だったかもしれないな……
そして、ここからの俺の記憶は曖昧になっている。
卒園式の後だったか、それとも別の日だったか定かでは無いが、何故か俺は母親に連れられて駅のホームにいて、そこには今から電車に乗り込もうとしている『つねちゃん』がいた。
そしてお互いに、恐らくお別れの言葉を言い合い、花束を渡し、握手をして別れたんだ。
あっけない別れだった……
その日以来、俺は『つねちゃん』に会う事は無かった。
あの時、何故、次に勤める幼稚園の名前を聞かなかったのか?
何故、自宅の住所を聞かなかったのか?
幼稚園の俺が無理なら何故、母親に頼んでおかなかったのか?
思い出せば思い出す程、後悔の念が大きくなっていく……
今の俺なら……
今の時代なら……
何で……何で……一度も会えずに死んでしまったんだよ……
つねちゃんに会いたかった……
つねちゃんに会いたい……
通称……『つねちゃん』
まさか、俺の初恋の人が亡くなった事を知ってしまうなんて……
今の冴えない状況の俺にとっては輪をかけて落ち込む内容が追加される事になってしまった。
ここ数年、仕事が忙しかった事もあって、『つねちゃん』の事を思い出す事も無かったが、流石に亡くなったと聞くと当時の事が走馬灯の様に蘇ってくる。
俺は『幼稚園年長の二学期』から『つねちゃん』が勤務する幼稚園に転入して来た。
俺が生れた頃は隣の市の『文化住宅』に住んでいた。
でも俺が地元の幼稚園年長の一学期途中で両親が隣の市で『一戸建て』の良い物件を見つけたのだ。
兼ねてから両親は『一戸建ての家』を買う事を目標に商売を頑張っていたらしく、現在俺達が住んで居るこの家に飛びついたのだ。
俺の気持ちも考えないで……
俺は引っ越す前の地元では結構な『やんちゃ坊主』だったんだ。
友達も多く、地元の商店街で働く人達にも可愛がられていたと思う。
今思えばその頃が俺にとって人生のピークだったかもしれない。
俺は夏休みに今まで仲良くしていた友達と別れ今の街に越して来たんだ。
母親は俺の為にと思い、近所の子供達の輪の中に無理やり入れて遊ばせる様にしてくれたが、俺はなかなか馴染めず、いつの間にか『大人しい性格』に変わってしまっていた。
しばらくの間は前の友達を思い出し、毎晩布団の中で泣いていたものだ。
そして、そんな俺の唯一の救いが『つねちゃん』だった。
二学期途中から転入してきた俺を、不安一杯の俺を優しく迎え入れてくれたんだ。
後で分かった事だが『つねちゃん』はその年に幼稚園の先生になったらしい。
社会人一年生で不安一杯の中、精一杯、先生として頑張っている『つねちゃん』にしてみれば、途中からやって来た俺の不安な気持ちが直ぐに察知出来たんだと思う。
だから常に『つねちゃん』は俺の傍にいてくれた。
他の園児が『嫉妬』するくらいに……
そして俺はそんな『つねちゃん』の事をいつの間にか、『先生』としではなく『異性』として好きになっていた。
今になって思えば俺って結構マセた子供だったんだなぁと思う。
それから月日が流れ、俺は卒園を迎える事となる。
俺にとって苦痛の卒園式だった。
小学生になるっていう不安も大きかったが、やはり『つねちゃん』と離れ離れになるって事が一番辛かったんだ。
卒園式の日、母親から俺は衝撃的な話を聞かされ、卒園式どころではない心境になってしまた。
『つねちゃん』が四月から違う幼稚園勤務になるという事を聞かされたのだ。
俺は小学生になっても幼稚園に遊びに行けば『つねちゃん』に会えると思っていたからショックが大きかった。
俺の街からは電車じゃないと行けない、遠い街の幼稚園に移動するという事だったんだ。
でも、もしかしたら幼稚園児の俺にとっては遠い街でも今の俺からすれば目と鼻の先の距離だったかもしれないな……
そして、ここからの俺の記憶は曖昧になっている。
卒園式の後だったか、それとも別の日だったか定かでは無いが、何故か俺は母親に連れられて駅のホームにいて、そこには今から電車に乗り込もうとしている『つねちゃん』がいた。
そしてお互いに、恐らくお別れの言葉を言い合い、花束を渡し、握手をして別れたんだ。
あっけない別れだった……
その日以来、俺は『つねちゃん』に会う事は無かった。
あの時、何故、次に勤める幼稚園の名前を聞かなかったのか?
何故、自宅の住所を聞かなかったのか?
幼稚園の俺が無理なら何故、母親に頼んでおかなかったのか?
思い出せば思い出す程、後悔の念が大きくなっていく……
今の俺なら……
今の時代なら……
何で……何で……一度も会えずに死んでしまったんだよ……
つねちゃんに会いたかった……
つねちゃんに会いたい……
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