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最終章 永遠の愛編
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俺は記憶を取りもどし、カナちゃんにプロポーズをしたあの日を思い出していた。
ゴンドラから降りると目の前には広美と岸本さんを先頭に大勢の人が俺達を笑顔で出迎えてくれた。隆おじさん、博おじさんと千夏ねぇ……そして今ならはっきりと分かる立花部長に沙耶香ちゃん、桃花ちゃん姉妹、大学時代の後輩だった橋本君や大石さん……それにマリリ、いや、神谷さん……っていうか、神谷さん、前にあなたが言っていた意味が凄く分かりました。
思い出しても思い出していないフリを貫かないと……でも、あの約束だけは果たしておこう。
俺は神谷さんに向かってソッとピースサインをした。それを見て笑顔の神谷さんが一瞬「はっ!!」とした表情になったが直ぐに笑顔に戻り、そして周りに聞こえるくらいの大きな声で俺に話しかけてきた。
「鎌田さん、遂に記憶が戻ったんですね!?」
神谷さんの言葉に周りの人達は当然のごとく驚き始める。そして橋本君や大石さん達は大泣きしながら俺に抱きつき「ぼ、僕の事も思い出してくれたんですか!?」「鎌田先輩、私の事もですか!?」と聞いてくるので「うん、思い出したよ。今まで君達の事を忘れていてゴメンね?」と謝った。
後で知ったことだけど橋本君は『ハシモトコーポレーション』創業者の一族ということで来賓者やマスコミから注目されている存在だった為、そんな人間がよく分からない若者に泣きながら抱きついている姿を見て「あの若者は五十鈴広美の幼馴染だけではなく、橋本社長の息子さんとも知り合いなのか!? なんか凄い人間が現れたぞ!!」ということになり俺に取材の依頼がたくさん来て、断るのに苦労したものだ。
そんな中、カナちゃんも沙耶香ちゃんや桃花ちゃん、それにボランティア部の仲間達に囲まれて俺の記憶の事やゴンドラ内での出来事などの質問攻めにあっていたけど、笑顔で質問に答えていたのでホッとした。
無事にセレモニーが終わり、一時だけ主役扱いをしてもらった俺ではあったが、本来通りスタッフの一員として他のスタッフ達やカナちゃん達、ボランティア部の皆と会場の後片付けをしていた。
すると俺の両肩を違う強さでポンと誰かが叩いてきた。
「え?」
振り向くとそこには隆おじさんと広美の姿が……
「亮二君、本当に記憶が戻って良かった……この日に賭けてみて良かったよ……」
「だねぇ……まさか本当に記憶が戻るなんて奇跡としか思えないわ。お父さんの提案に乗って良かったわ」
「や、やっぱりそうだったんですね? 色々と俺の為に動いてくださり有難うございます、社長!! あ、それに広美も!!」
このスリーショットは周りから見れば普通なのかもしれないが、タイムリープ者二人とその秘密を知っている唯一の人物が揃っていると思えば凄い組み合わせだろう。
「広美もって言い方は酷いなぁ……私、ワガママ女優って言われる覚悟で頑張ったのよぉ。それに岸本さんまで巻き込んじゃってさぁ……」
「ゴ、ゴメン、広美。そんなつもりは……」
「フフフ……冗談よ。幼馴染の為なら私はどう思われたって気にしないわ。そんな事よりもこれから加奈子ちゃんと幸せになってよね? 加奈子ちゃんを泣かせたりしたら私が許さないんだから」
「も、勿論さ。絶対にカナちゃんを幸せにするよ。だから広美も今以上に凄い女優になって……それにプライベートの方でも幸せになれよ? 俺も幼馴染として広美の事をずっと応援してるから……」
「う、うん……グスン……ありがとう……」
涙ぐむ広美の頭を隆おじさんが優しい眼差しで撫でている姿を見ると俺には少年の頃の隆おじさんと顔は知らない広美の転生前である石田浩美さんの姿が見えたような気がした。
そして優しい表情だった隆おじさんが突然、真剣な表情になり俺に話し出す。
「実はね亮二君。俺は君の記憶が戻った時、こうしようと思っていたことがあったんだよ」
えっ、何だろう……?
「これは俺からのプレゼントなんだけど、別に受け取らなくても構わない。ご両親には以前から承諾はもらっているから問題は無いが、亮二君が自分で受け取るかどうかを決めてくれればそれでいいから……」
隆おじさんからのプレゼント?
俺が自分で決める?
一体、どういうことなんだ?
――――――――――――――――――――――――
平成27年11月22日、カナちゃんの誕生日にたくさんの親戚、友人、知り合い達の祝福を受けながら遂に俺達は結婚した。
俺は26歳、カナちゃんは19歳、あれだけ気にしていた歳の差も、この歳になるとあまり違和感が無いのは不思議なものだ。
しかし……26歳の俺が言うのも少し恥ずかしいが、俺達の結婚は……実は……
学生結婚なのだ。
そうなってしまったというのが本当のところだけど。
元々、カナちゃんは高校を卒業したら俺と結婚してしばらくは専業主婦になる予定だった。でも俺がカナちゃんに大学進学を決意させてしまう行動をとってしまったから……そう、先程の学生結婚……
実は俺が記憶を取り戻した日、隆おじさんから頂いたプレゼントに理由があった。
その理由とは俺が意識を取り戻した時、大学時代の記憶も全て消えていた為、いつ記憶が戻るかも分からないし、学費もかかるという事で家族で話し合った結果、中退という選択をしたはずだった。
しかし、その話を聞いた隆おじさんがうちの両親に掛け合い「もし彼が記憶を取り戻した時、大学を中退した事に後悔をすれば亮二君が気の毒で仕方が無い。せっかく頑張って大学に入学して成績も悪くなかったのに勿体なさ過ぎる。学費が大変なら俺が出します。先でうちの社員として働いてもらう亮二君に今から投資します。だから彼に記憶が戻るまでは休学扱いという事にしませんか!?」と……
そして両親は隆おじさんの熱意に心を打たれ全額、おじさんに負担させるのは申し訳無いという事で両親も学費の一部を引き続き負担し俺には今まで隠していたのだった。
そんな話を聞かされれば俺としては隆おじさんの熱意や両親の気持ちに応えたいというか、大学時代の記憶も戻った俺の中でも大学でやり残した勉強をしたいという思いもあったので喜んで大学復帰をする事にしたのだ。今、考えても感謝しかない。
ただそうなると頭の回転が速いカナちゃんは俺の通う青葉学院大学に1年だけでも「りょう君と一緒に通える」と気付いたらしく、高校2年生からは受験勉強に専念し、そして結婚後もお互い学生なのでお金が必要という事で以前に働きたいと考えた事があったサワレルでアルバイトを始めたのだった。
その後、カナちゃんは見事、大学に合格して1年だけではあるが俺と同じキャンパスライフをおくることとなる。
ちなみに俺も大学生の間は一旦、隆おじさんの会社を退職し、三たび、山田さんのお店でアルバイトをさせてもらう。そして大学卒業後に隆おじさんの会社に再雇用してもらったのだった。
――――――――――――――――――――――――
それから月日が流れ、前に隆おじさんが言っていた『令和』の時代が本当に始まった。
隆おじさんの言っていた『前の世界』の話を疑っていた訳では無いが1パーセントくらいは信じられないという思いもあったので、その残りの1パーセントが消えた年になり、同時に広美の話も間違いなく本当の事なんだと信じれたのだ。
そうなると俺の心の中にある感情が芽生え始める。
俺だけしか知らない隆おじさんと広美の真実……誰かに言いたいというのではなく、まぁ言っても誰も信用しないだろうけど……だけど、こんな2人の凄い人生を何か記録として残しておきたいという思いになったのだ。
そして考えた結果、2人をモデルにした恋愛小説を書いてみようと決意し、たまに電話やラインで2人に『この世界』にタイムリープしてからの人生を改めて聞くようになった。勿論、お互いには内緒で……
「りょう君、コーヒーを入れたわよ。どう、小説ははかどってるのかな?」
大きなお腹をしたカナちゃんがコーヒーを入れてくれた。
実は今年、俺とカナちゃんにとって初めてとなる子供が産まれる予定なのだ。
「ありがとう。うん、はかどってるよ。2作品とも面白く仕上がりそうだよ」
「へぇ、完成が楽しみだわ。それにしても隆おじさんと広美さんがモデルっていうのは面白いよね? それにタイムリープを取り入れるのも面白いと思うし……でも2作品ってことは2人別々の主人公なんだね?」
「まぁ、それぞれの視点から書きたいと思ってさ。でもこの作品は3部作にするつもりなんだよ」
「え、そうなの? じゃぁ3作品目のモデルは誰なのかしら? 私達が知っている人? それとも空想の人物?」
「ハハハ、ちゃんと実在する人物をモデルにするよ。それも2人に負けないくらいの人生を歩んできた人物をね」
「えぇ、誰だろう? 私が知っている人なのかな?」
「知っているというか、俺達2人をモデルにするんだよ。俺達が出会ってから結婚するまでの物語をね……」
「えーっ!? 私とりょう君がモデルなの!? そ、それって凄く恥ずかしいんだけど……」
「恥ずかしがることは無いよ。色々と内容は小説に合うように変えるしさ」
「ふーん、そうなんだぁ……それで、その私達をモデルにする小説のタイトルは決まっているのかな?」
「うん、決まっているよ。タイトルは『あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。』にする予定さ」
「えーっ!? タイトル長すぎない?」
「いや、最近は長いタイトルが流行なんだよ」
「えーっ、そうなの!? でもこのタイトルってさぁ……」
「え? どこか不満なところがあるのかい?」
「別に不満は無いけどさぁ……でもね、私は気付いていたよ。幼稚園児の頃からりょう君が運命の人だって……」
「カナちゃん……」
「あ、早く飲まないとコーヒー冷めちゃうよ?」
「うん、そうだね」
俺はそう返事をしたがコーヒーカップを持たず、カナちゃんの手を握る。そして優しく抱きしめた。
「りょう君、急にどうしたの?」
「カナちゃんが俺の運命の人で本当に良かった……これからもずっと一緒だよ」
「フフ、私も同じ気持ちだよ。りょう君、これからもよろしくね? お腹の子も私と同じくらいに愛してね?」
「ああ、勿論さ」
そう言いながら俺達はいつまでも抱き合っていた。
完
――――――――――――――――――――――――
最後までお読み頂き有難うございました。
読者様の温かい応援のお陰で無事に完結する事ができ大変感謝致してしております。
この作品は私が書いた恋愛小説3作品目となり、私の全ての作品の中で一番、読者様が多い作品となり更新するたびにワクワクドキドキしておりました。
まだまだ私は小説を書き始めて4年目の素人作家ですので読者様に満足してもらえるような文章力はありませんが、1年目に比べると少しは成長しているような気もしています。でもこれに満足せずにもっと上を目指し、これから更に面白い小説を書こうと思っておりますので今後ともNOV作品を何卒、宜しくお願い致します。
ゴンドラから降りると目の前には広美と岸本さんを先頭に大勢の人が俺達を笑顔で出迎えてくれた。隆おじさん、博おじさんと千夏ねぇ……そして今ならはっきりと分かる立花部長に沙耶香ちゃん、桃花ちゃん姉妹、大学時代の後輩だった橋本君や大石さん……それにマリリ、いや、神谷さん……っていうか、神谷さん、前にあなたが言っていた意味が凄く分かりました。
思い出しても思い出していないフリを貫かないと……でも、あの約束だけは果たしておこう。
俺は神谷さんに向かってソッとピースサインをした。それを見て笑顔の神谷さんが一瞬「はっ!!」とした表情になったが直ぐに笑顔に戻り、そして周りに聞こえるくらいの大きな声で俺に話しかけてきた。
「鎌田さん、遂に記憶が戻ったんですね!?」
神谷さんの言葉に周りの人達は当然のごとく驚き始める。そして橋本君や大石さん達は大泣きしながら俺に抱きつき「ぼ、僕の事も思い出してくれたんですか!?」「鎌田先輩、私の事もですか!?」と聞いてくるので「うん、思い出したよ。今まで君達の事を忘れていてゴメンね?」と謝った。
後で知ったことだけど橋本君は『ハシモトコーポレーション』創業者の一族ということで来賓者やマスコミから注目されている存在だった為、そんな人間がよく分からない若者に泣きながら抱きついている姿を見て「あの若者は五十鈴広美の幼馴染だけではなく、橋本社長の息子さんとも知り合いなのか!? なんか凄い人間が現れたぞ!!」ということになり俺に取材の依頼がたくさん来て、断るのに苦労したものだ。
そんな中、カナちゃんも沙耶香ちゃんや桃花ちゃん、それにボランティア部の仲間達に囲まれて俺の記憶の事やゴンドラ内での出来事などの質問攻めにあっていたけど、笑顔で質問に答えていたのでホッとした。
無事にセレモニーが終わり、一時だけ主役扱いをしてもらった俺ではあったが、本来通りスタッフの一員として他のスタッフ達やカナちゃん達、ボランティア部の皆と会場の後片付けをしていた。
すると俺の両肩を違う強さでポンと誰かが叩いてきた。
「え?」
振り向くとそこには隆おじさんと広美の姿が……
「亮二君、本当に記憶が戻って良かった……この日に賭けてみて良かったよ……」
「だねぇ……まさか本当に記憶が戻るなんて奇跡としか思えないわ。お父さんの提案に乗って良かったわ」
「や、やっぱりそうだったんですね? 色々と俺の為に動いてくださり有難うございます、社長!! あ、それに広美も!!」
このスリーショットは周りから見れば普通なのかもしれないが、タイムリープ者二人とその秘密を知っている唯一の人物が揃っていると思えば凄い組み合わせだろう。
「広美もって言い方は酷いなぁ……私、ワガママ女優って言われる覚悟で頑張ったのよぉ。それに岸本さんまで巻き込んじゃってさぁ……」
「ゴ、ゴメン、広美。そんなつもりは……」
「フフフ……冗談よ。幼馴染の為なら私はどう思われたって気にしないわ。そんな事よりもこれから加奈子ちゃんと幸せになってよね? 加奈子ちゃんを泣かせたりしたら私が許さないんだから」
「も、勿論さ。絶対にカナちゃんを幸せにするよ。だから広美も今以上に凄い女優になって……それにプライベートの方でも幸せになれよ? 俺も幼馴染として広美の事をずっと応援してるから……」
「う、うん……グスン……ありがとう……」
涙ぐむ広美の頭を隆おじさんが優しい眼差しで撫でている姿を見ると俺には少年の頃の隆おじさんと顔は知らない広美の転生前である石田浩美さんの姿が見えたような気がした。
そして優しい表情だった隆おじさんが突然、真剣な表情になり俺に話し出す。
「実はね亮二君。俺は君の記憶が戻った時、こうしようと思っていたことがあったんだよ」
えっ、何だろう……?
「これは俺からのプレゼントなんだけど、別に受け取らなくても構わない。ご両親には以前から承諾はもらっているから問題は無いが、亮二君が自分で受け取るかどうかを決めてくれればそれでいいから……」
隆おじさんからのプレゼント?
俺が自分で決める?
一体、どういうことなんだ?
――――――――――――――――――――――――
平成27年11月22日、カナちゃんの誕生日にたくさんの親戚、友人、知り合い達の祝福を受けながら遂に俺達は結婚した。
俺は26歳、カナちゃんは19歳、あれだけ気にしていた歳の差も、この歳になるとあまり違和感が無いのは不思議なものだ。
しかし……26歳の俺が言うのも少し恥ずかしいが、俺達の結婚は……実は……
学生結婚なのだ。
そうなってしまったというのが本当のところだけど。
元々、カナちゃんは高校を卒業したら俺と結婚してしばらくは専業主婦になる予定だった。でも俺がカナちゃんに大学進学を決意させてしまう行動をとってしまったから……そう、先程の学生結婚……
実は俺が記憶を取り戻した日、隆おじさんから頂いたプレゼントに理由があった。
その理由とは俺が意識を取り戻した時、大学時代の記憶も全て消えていた為、いつ記憶が戻るかも分からないし、学費もかかるという事で家族で話し合った結果、中退という選択をしたはずだった。
しかし、その話を聞いた隆おじさんがうちの両親に掛け合い「もし彼が記憶を取り戻した時、大学を中退した事に後悔をすれば亮二君が気の毒で仕方が無い。せっかく頑張って大学に入学して成績も悪くなかったのに勿体なさ過ぎる。学費が大変なら俺が出します。先でうちの社員として働いてもらう亮二君に今から投資します。だから彼に記憶が戻るまでは休学扱いという事にしませんか!?」と……
そして両親は隆おじさんの熱意に心を打たれ全額、おじさんに負担させるのは申し訳無いという事で両親も学費の一部を引き続き負担し俺には今まで隠していたのだった。
そんな話を聞かされれば俺としては隆おじさんの熱意や両親の気持ちに応えたいというか、大学時代の記憶も戻った俺の中でも大学でやり残した勉強をしたいという思いもあったので喜んで大学復帰をする事にしたのだ。今、考えても感謝しかない。
ただそうなると頭の回転が速いカナちゃんは俺の通う青葉学院大学に1年だけでも「りょう君と一緒に通える」と気付いたらしく、高校2年生からは受験勉強に専念し、そして結婚後もお互い学生なのでお金が必要という事で以前に働きたいと考えた事があったサワレルでアルバイトを始めたのだった。
その後、カナちゃんは見事、大学に合格して1年だけではあるが俺と同じキャンパスライフをおくることとなる。
ちなみに俺も大学生の間は一旦、隆おじさんの会社を退職し、三たび、山田さんのお店でアルバイトをさせてもらう。そして大学卒業後に隆おじさんの会社に再雇用してもらったのだった。
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それから月日が流れ、前に隆おじさんが言っていた『令和』の時代が本当に始まった。
隆おじさんの言っていた『前の世界』の話を疑っていた訳では無いが1パーセントくらいは信じられないという思いもあったので、その残りの1パーセントが消えた年になり、同時に広美の話も間違いなく本当の事なんだと信じれたのだ。
そうなると俺の心の中にある感情が芽生え始める。
俺だけしか知らない隆おじさんと広美の真実……誰かに言いたいというのではなく、まぁ言っても誰も信用しないだろうけど……だけど、こんな2人の凄い人生を何か記録として残しておきたいという思いになったのだ。
そして考えた結果、2人をモデルにした恋愛小説を書いてみようと決意し、たまに電話やラインで2人に『この世界』にタイムリープしてからの人生を改めて聞くようになった。勿論、お互いには内緒で……
「りょう君、コーヒーを入れたわよ。どう、小説ははかどってるのかな?」
大きなお腹をしたカナちゃんがコーヒーを入れてくれた。
実は今年、俺とカナちゃんにとって初めてとなる子供が産まれる予定なのだ。
「ありがとう。うん、はかどってるよ。2作品とも面白く仕上がりそうだよ」
「へぇ、完成が楽しみだわ。それにしても隆おじさんと広美さんがモデルっていうのは面白いよね? それにタイムリープを取り入れるのも面白いと思うし……でも2作品ってことは2人別々の主人公なんだね?」
「まぁ、それぞれの視点から書きたいと思ってさ。でもこの作品は3部作にするつもりなんだよ」
「え、そうなの? じゃぁ3作品目のモデルは誰なのかしら? 私達が知っている人? それとも空想の人物?」
「ハハハ、ちゃんと実在する人物をモデルにするよ。それも2人に負けないくらいの人生を歩んできた人物をね」
「えぇ、誰だろう? 私が知っている人なのかな?」
「知っているというか、俺達2人をモデルにするんだよ。俺達が出会ってから結婚するまでの物語をね……」
「えーっ!? 私とりょう君がモデルなの!? そ、それって凄く恥ずかしいんだけど……」
「恥ずかしがることは無いよ。色々と内容は小説に合うように変えるしさ」
「ふーん、そうなんだぁ……それで、その私達をモデルにする小説のタイトルは決まっているのかな?」
「うん、決まっているよ。タイトルは『あの日、幼稚園児を助けたけど、歳の差があり過ぎてその子が俺の運命の人になるなんて気付くはずがない。』にする予定さ」
「えーっ!? タイトル長すぎない?」
「いや、最近は長いタイトルが流行なんだよ」
「えーっ、そうなの!? でもこのタイトルってさぁ……」
「え? どこか不満なところがあるのかい?」
「別に不満は無いけどさぁ……でもね、私は気付いていたよ。幼稚園児の頃からりょう君が運命の人だって……」
「カナちゃん……」
「あ、早く飲まないとコーヒー冷めちゃうよ?」
「うん、そうだね」
俺はそう返事をしたがコーヒーカップを持たず、カナちゃんの手を握る。そして優しく抱きしめた。
「りょう君、急にどうしたの?」
「カナちゃんが俺の運命の人で本当に良かった……これからもずっと一緒だよ」
「フフ、私も同じ気持ちだよ。りょう君、これからもよろしくね? お腹の子も私と同じくらいに愛してね?」
「ああ、勿論さ」
そう言いながら俺達はいつまでも抱き合っていた。
完
――――――――――――――――――――――――
最後までお読み頂き有難うございました。
読者様の温かい応援のお陰で無事に完結する事ができ大変感謝致してしております。
この作品は私が書いた恋愛小説3作品目となり、私の全ての作品の中で一番、読者様が多い作品となり更新するたびにワクワクドキドキしておりました。
まだまだ私は小説を書き始めて4年目の素人作家ですので読者様に満足してもらえるような文章力はありませんが、1年目に比べると少しは成長しているような気もしています。でもこれに満足せずにもっと上を目指し、これから更に面白い小説を書こうと思っておりますので今後ともNOV作品を何卒、宜しくお願い致します。
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