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第5章 嫉妬編
第48話 好きな人/加奈子
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私は生まれて初めてボランティアを経験している。
まさかこんなにもボランティア活動が楽しいだなんて思ってもいなかった。
元々、私が参加したのは少しでもりょう君と一緒にいたかったからだし、日頃りょう君が大学でどんな学生生活をしているのか知りたかったから。
ただそれだけの理由だったのに……今日はとても楽しくて仕方がない。
りょう君と一緒にボランティア活動をしているからというのもあるだろうけど……
でも、母校の後輩達が七夕祭りを盛り上げる為に頑張っている姿を見て感動している私がいる。私、そんなことで感動する様なタイプじゃないはずなのに……それによく考えれば私も去年まではこの子達と同じ様に七夕祭りを頑張っていた児童の一人だったのに何だかおかしいよね?
幼稚園児達もとても可愛いいし、お年寄りの人達もとても優しくてお世話のし甲斐がある。
私、こういうボランティアって向いているのかな?
中学にもボランティア部があれば直ぐに入部するのになぁ……
あっ、そうだわ。無いなら創っちゃえば……5人揃える事ができればボランティア部を創れるんじゃ……
深夜アニメでよく観るパターンまでも考えてしまうくらいに私はボランティア活動が好きになっていた。
私はお年寄りを休憩所まで案内した後、りょう君と別れた場所に戻って来た。そして大石さん達が着ぐるみを着て子供達の相手をしている場所の方を見たけど、そこには橋本さんと子供達だけしかいない。
あれ? 大石さんとりょう君はどこに行ったんだろう?
私は不思議に思いながら橋本さんに近づく。
そして本当は苦手なタイプであまり話したくはなかったけど、仕方なく恐る恐る橋本さんに話しかけた。
「あ、あのぉ……」
「えっ!? か、か、加奈子ちゃん!? な、な、何だい!? もしかして僕に大事な話でもあるのかい!? 僕の妹になりたいとか!!」
「言っている意味が分かりません」
「へっ!? はぁ……そうだよねぇ……しょぼん……」
自分で『しょぼん』っていう人を初めて見たけどそんなことはどうでもいいわ。
「あのぉ、りょう君と大石さんはどこに行ったんですか? さっきまでここに二人共いたはずじゃ……」
「ああ、二人なら校舎裏で休憩中だよ。着ぐるみを着ていた大石さんが具合悪くなっちゃってさ……それで鎌田先輩が校舎裏に大石さんを連れて行ったんだよぉ」
「そうなんですか!? それじゃぁ私も校舎裏に行ってきます!!」
「加奈子ちゃん、今行けば二人の邪魔になるんじゃないかなぁ? それよりもここで僕とお話でもしようよ?」
「言っている意味が全然、分かりません!!」
私は橋本さんに少し怒り口調でそう言うと直ぐに背を向けて駆け足で校舎裏に行こうとした。
私の背中越しにいる橋本さんは子供達に「やーい、おじさん、あのお姉ちゃんにフラれてらぁ」とバカにされているみたいだけど、それはどうでもいいことだ。
何よ、あの橋本さんは!? 何も考え無い様なタイプのクセに何で今日に限って余計なところで気を回すのよ!?
私は怒りと焦りが入り混じった状態で校舎裏に近づいて行く。
そして校舎横の壁にたどり着き左に曲がれば校舎裏という所まで来た時、二人の話声が聞こえてきたので私は気付かれないようにソッと覗いてみた。
「か、鎌田先輩……私凄く汗をかいていたから……着ぐるみの中、汗臭くないですか? 大丈夫ですか?」
「ハハハ、大丈夫さ。どちらかと言えば大石さんがいつもつけている香水の香りがしているから……」
「えっ!? 私の香水の匂いは大丈夫ですか? きつくないですか!?」
「大丈夫、大丈夫。いつも大石さんはとても良い香りの香水をつけているなぁって思っていたくらいだしさ……」
そういう事か……りょう君が大石さんの代わりに着ぐるみを着てるんだわ。
でも大石さんの後にりょう君が着るのはちょっと嫌なんだけどなぁ。
ん? 何だか大石さんの様子がおかしいような……
「鎌田先輩……」
ガバッ
「えっ!? な、何!?」
大石さん、何をしているの!?
着ぐるみ越しにりょう君に抱き着いてるわ!!
「お、大石さん!? 何故突然抱き着いてくるんだよ!? ビ、ビックリするじゃないか!?」
「鎌田先輩が私のつけている香水の香りがとっても良いって言ってくれたから……だから思わず着ぐるみの中だけじゃなくて外側にも私の香りをつけたくなってしまって……お願いです。もう少しだけこのまま抱き着かせてください……」
「お、大石さん……」
お願い離れて……お願いだから……
私はどうすればいい? ここで飛び出して大石さんをりょう君から離せばいいの?
いえ、私はりょう君の正式な彼女じゃないんだからそんな事をする権利はない。
それに今私が飛び出して一番困るのはりょう君だと思うし……
だからお願い。今なら大石さんの事を許すから、りょう君を抱き締めるのは止めてちょうだい!!
「離れてくれないかな……?」
「えっ?」
えっ?
「だから俺に抱き着くのは止めてほしいんだよ」
「あと少しだけこのままで……」
「ダメだ!! 俺から離れてくれ!!」
「は、はい……分かりました……すみませんでした……」
りょう君……
「ゴメン、大石さん。怒鳴ったりして……でもダメなんだよ……今の俺はダメなんだよ……」
今の俺?
「今の俺ってどういうことですか!? 私は前にも言いましたが鎌田先輩の事が……それに今、彼女はいないんですよね? だったらこれくらいのこと……」
「大石さんの気持ちは分かっているよ。それに俺は彼女もいない。でも……」
でも?
「でも何ですか!?」
「でも『好きな人』はいるんだ。少し前までは『気になる人』だったけど、今はハッキリと言える……俺には好きな人がいる。だからこの気持ちを守る為にも誤解を招く様な事はしたくないんだよ」
す、好きな人……りょう君の好きな人って……
「好きな人……? も、もしかしてあの子ですか!? 鎌田先輩の好きな人って加奈子ちゃんの事なんですか!? 兄妹の様な関係っていうのはやっぱり嘘だったんですね!?」
「……今はこれ以上のことは言えない……」
「絶対に無理です!! 鎌田先輩、よく考えてくださいよ!? 先輩は大学生で加奈子ちゃんはまだ中学1年生なんですよ!? 絶対にうまくいく訳がないじゃないですか!? 二人が良くても世間が認めてくれませんよ!!」
「大石さん、世間は関係無いよ……それじゃあ俺、子供達の所へ行くから。大石さんはもう少しここで休憩していて……それで休憩後は橋本君と一緒にお年寄りのお世話をしてくれるかな? それじゃぁ、そういう事でよろしくね?」
「か、鎌田先輩……私は……もし世間が認めても私は認めませんから!!」
校舎裏に大石さんの声が鳴り響く。私はりょう君が近づいて来たので慌てて走り出し橋本さんの所ではなくさっきまでいた場所に戻るのだった。
そして呼吸を整えてから少し遅れて着ぐるみを着ながら子供達と一緒に遊んでいるりょう君の所へと向かった。橋本さんはいないみたいだわ。
「りょう君、大人気だね?」
「えっ、カナちゃん? どうして俺が着ぐるみを着ているのが分かったんだい?」
「えっ!?」マズい……
「そ、それは着ぐるみの動きがいつものりょう君の動きに何となく似ていたから……」
「えーっ!? そうなのかい!? 俺っていつもこんなにぎこちない動きをしているのかい!?」
「ハハハ、そんな事は無いよぉ。ただ少しだけ似ていただけだから……それよりも……」
ガバッ
「えっ!? カナちゃん!?」
「 「 「あーっ!! お姉ちゃんがアオタンに抱き着いたぞーっ!! 僕達も負けずにアオタンに抱き着こうぜ!?」 」 」
「きゅ、急にどうしたんだい、カナちゃん?」
「ううん、何でも無いよ。ただ小さい頃からアオタンに一度、抱き着きたいと思っていたから夢を叶えただけだよ……」
「そ、そうなんだ。夢を叶えれて良かったね……」
りょう君もそう言いながら私をギュっと抱きしめてくれた。
アオタンは大石さんの香水の香りがする。
今度は私が違う香りの香水を買ってりょう君に私の匂いをつけてやるんだと思いながらも、さっきのりょう君の言葉を思い出し、二人の関係が少し進展した気がして私はとても幸せな気分だった。
まさかこんなにもボランティア活動が楽しいだなんて思ってもいなかった。
元々、私が参加したのは少しでもりょう君と一緒にいたかったからだし、日頃りょう君が大学でどんな学生生活をしているのか知りたかったから。
ただそれだけの理由だったのに……今日はとても楽しくて仕方がない。
りょう君と一緒にボランティア活動をしているからというのもあるだろうけど……
でも、母校の後輩達が七夕祭りを盛り上げる為に頑張っている姿を見て感動している私がいる。私、そんなことで感動する様なタイプじゃないはずなのに……それによく考えれば私も去年まではこの子達と同じ様に七夕祭りを頑張っていた児童の一人だったのに何だかおかしいよね?
幼稚園児達もとても可愛いいし、お年寄りの人達もとても優しくてお世話のし甲斐がある。
私、こういうボランティアって向いているのかな?
中学にもボランティア部があれば直ぐに入部するのになぁ……
あっ、そうだわ。無いなら創っちゃえば……5人揃える事ができればボランティア部を創れるんじゃ……
深夜アニメでよく観るパターンまでも考えてしまうくらいに私はボランティア活動が好きになっていた。
私はお年寄りを休憩所まで案内した後、りょう君と別れた場所に戻って来た。そして大石さん達が着ぐるみを着て子供達の相手をしている場所の方を見たけど、そこには橋本さんと子供達だけしかいない。
あれ? 大石さんとりょう君はどこに行ったんだろう?
私は不思議に思いながら橋本さんに近づく。
そして本当は苦手なタイプであまり話したくはなかったけど、仕方なく恐る恐る橋本さんに話しかけた。
「あ、あのぉ……」
「えっ!? か、か、加奈子ちゃん!? な、な、何だい!? もしかして僕に大事な話でもあるのかい!? 僕の妹になりたいとか!!」
「言っている意味が分かりません」
「へっ!? はぁ……そうだよねぇ……しょぼん……」
自分で『しょぼん』っていう人を初めて見たけどそんなことはどうでもいいわ。
「あのぉ、りょう君と大石さんはどこに行ったんですか? さっきまでここに二人共いたはずじゃ……」
「ああ、二人なら校舎裏で休憩中だよ。着ぐるみを着ていた大石さんが具合悪くなっちゃってさ……それで鎌田先輩が校舎裏に大石さんを連れて行ったんだよぉ」
「そうなんですか!? それじゃぁ私も校舎裏に行ってきます!!」
「加奈子ちゃん、今行けば二人の邪魔になるんじゃないかなぁ? それよりもここで僕とお話でもしようよ?」
「言っている意味が全然、分かりません!!」
私は橋本さんに少し怒り口調でそう言うと直ぐに背を向けて駆け足で校舎裏に行こうとした。
私の背中越しにいる橋本さんは子供達に「やーい、おじさん、あのお姉ちゃんにフラれてらぁ」とバカにされているみたいだけど、それはどうでもいいことだ。
何よ、あの橋本さんは!? 何も考え無い様なタイプのクセに何で今日に限って余計なところで気を回すのよ!?
私は怒りと焦りが入り混じった状態で校舎裏に近づいて行く。
そして校舎横の壁にたどり着き左に曲がれば校舎裏という所まで来た時、二人の話声が聞こえてきたので私は気付かれないようにソッと覗いてみた。
「か、鎌田先輩……私凄く汗をかいていたから……着ぐるみの中、汗臭くないですか? 大丈夫ですか?」
「ハハハ、大丈夫さ。どちらかと言えば大石さんがいつもつけている香水の香りがしているから……」
「えっ!? 私の香水の匂いは大丈夫ですか? きつくないですか!?」
「大丈夫、大丈夫。いつも大石さんはとても良い香りの香水をつけているなぁって思っていたくらいだしさ……」
そういう事か……りょう君が大石さんの代わりに着ぐるみを着てるんだわ。
でも大石さんの後にりょう君が着るのはちょっと嫌なんだけどなぁ。
ん? 何だか大石さんの様子がおかしいような……
「鎌田先輩……」
ガバッ
「えっ!? な、何!?」
大石さん、何をしているの!?
着ぐるみ越しにりょう君に抱き着いてるわ!!
「お、大石さん!? 何故突然抱き着いてくるんだよ!? ビ、ビックリするじゃないか!?」
「鎌田先輩が私のつけている香水の香りがとっても良いって言ってくれたから……だから思わず着ぐるみの中だけじゃなくて外側にも私の香りをつけたくなってしまって……お願いです。もう少しだけこのまま抱き着かせてください……」
「お、大石さん……」
お願い離れて……お願いだから……
私はどうすればいい? ここで飛び出して大石さんをりょう君から離せばいいの?
いえ、私はりょう君の正式な彼女じゃないんだからそんな事をする権利はない。
それに今私が飛び出して一番困るのはりょう君だと思うし……
だからお願い。今なら大石さんの事を許すから、りょう君を抱き締めるのは止めてちょうだい!!
「離れてくれないかな……?」
「えっ?」
えっ?
「だから俺に抱き着くのは止めてほしいんだよ」
「あと少しだけこのままで……」
「ダメだ!! 俺から離れてくれ!!」
「は、はい……分かりました……すみませんでした……」
りょう君……
「ゴメン、大石さん。怒鳴ったりして……でもダメなんだよ……今の俺はダメなんだよ……」
今の俺?
「今の俺ってどういうことですか!? 私は前にも言いましたが鎌田先輩の事が……それに今、彼女はいないんですよね? だったらこれくらいのこと……」
「大石さんの気持ちは分かっているよ。それに俺は彼女もいない。でも……」
でも?
「でも何ですか!?」
「でも『好きな人』はいるんだ。少し前までは『気になる人』だったけど、今はハッキリと言える……俺には好きな人がいる。だからこの気持ちを守る為にも誤解を招く様な事はしたくないんだよ」
す、好きな人……りょう君の好きな人って……
「好きな人……? も、もしかしてあの子ですか!? 鎌田先輩の好きな人って加奈子ちゃんの事なんですか!? 兄妹の様な関係っていうのはやっぱり嘘だったんですね!?」
「……今はこれ以上のことは言えない……」
「絶対に無理です!! 鎌田先輩、よく考えてくださいよ!? 先輩は大学生で加奈子ちゃんはまだ中学1年生なんですよ!? 絶対にうまくいく訳がないじゃないですか!? 二人が良くても世間が認めてくれませんよ!!」
「大石さん、世間は関係無いよ……それじゃあ俺、子供達の所へ行くから。大石さんはもう少しここで休憩していて……それで休憩後は橋本君と一緒にお年寄りのお世話をしてくれるかな? それじゃぁ、そういう事でよろしくね?」
「か、鎌田先輩……私は……もし世間が認めても私は認めませんから!!」
校舎裏に大石さんの声が鳴り響く。私はりょう君が近づいて来たので慌てて走り出し橋本さんの所ではなくさっきまでいた場所に戻るのだった。
そして呼吸を整えてから少し遅れて着ぐるみを着ながら子供達と一緒に遊んでいるりょう君の所へと向かった。橋本さんはいないみたいだわ。
「りょう君、大人気だね?」
「えっ、カナちゃん? どうして俺が着ぐるみを着ているのが分かったんだい?」
「えっ!?」マズい……
「そ、それは着ぐるみの動きがいつものりょう君の動きに何となく似ていたから……」
「えーっ!? そうなのかい!? 俺っていつもこんなにぎこちない動きをしているのかい!?」
「ハハハ、そんな事は無いよぉ。ただ少しだけ似ていただけだから……それよりも……」
ガバッ
「えっ!? カナちゃん!?」
「 「 「あーっ!! お姉ちゃんがアオタンに抱き着いたぞーっ!! 僕達も負けずにアオタンに抱き着こうぜ!?」 」 」
「きゅ、急にどうしたんだい、カナちゃん?」
「ううん、何でも無いよ。ただ小さい頃からアオタンに一度、抱き着きたいと思っていたから夢を叶えただけだよ……」
「そ、そうなんだ。夢を叶えれて良かったね……」
りょう君もそう言いながら私をギュっと抱きしめてくれた。
アオタンは大石さんの香水の香りがする。
今度は私が違う香りの香水を買ってりょう君に私の匂いをつけてやるんだと思いながらも、さっきのりょう君の言葉を思い出し、二人の関係が少し進展した気がして私はとても幸せな気分だった。
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