ナロー姫の大冒険

きーぼー

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その14

鬼岩城攻略戦Ⅳ

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 戦いが有利に進む中、勇者アルファポリスは仲間であるパーティーメンバーたちを引き連れて鬼岩城の指揮官黒騎士バーンのいる中央部の司令塔を目指します。
ナロー姫とシールズもその後に続きます。
混乱した城内を一気に駆け抜けた彼らはついに鬼岩城の中枢である背の高い司令塔の前にたどり着きました。
彼らは塔の入り口までたどり着くと見張り番の三つ首の魔犬(ケルベロス)をあっと言う間に倒し塔の中に突入しました。
塔の内部には螺旋階段があり勇者たちはそれを駆け上がりながら途中で待ち受ける魔族の戦士たちを次々に倒していきます。
そしてついに彼らは黒騎士バーンのいる最上階の部屋まで辿り着きました。
巨大な観音扉が音も無く開きます。
そしてその中には黒騎士バーンが鉄の玉座に座り少数の部下と共に待ち構えていました。
部屋の中に踏み込んで黒騎士バーンと対峙する勇者一行とナロー姫たち。
勇者アルファポリスは神剣を振りかざし黒騎士バーンに対決を迫ります。

「鬼岩城はもう終わりだ。黒騎士バーンよ。潔く降伏するなら貴公と部下の生命は保証しよう」

黒騎士バーンは玉座からゆっくりと立ち上がって周りの部下に指示を出します。

「お前たちは下がっていろ。万が一俺が敗れたら他の兵と共に降伏するように」

「し、しかしー」

抗議しようとした部下たちを片手の一振りで黙らせ彼らを部屋の奥まで下がらせます。
そして自分自身は勇者達の方へゆっくりと歩み寄り腰から長剣をスラリと抜き放ち構えを取りました。

「お主と戦うのはこれで3度目か。だが今回が最後になりそうだな」

アルファポリスを始め勇者一行の面々もそれぞれの武器を構えて彼に対峙します。
勇者アルファポリスが言いました。

「望むところ」

一方ナロー姫は少し離れた場所で騎士シールズに守られて彼らの戦いの様子を固唾を飲んで見守っていました。
今まさに戦いのクライマックスが始まろうとしていたのです。

「ウオォーッ!!」

剣を構えた黒騎士バーンは掛け声と共にマントを翻しながらジャンプして勇者アルファポリスに襲いかかります。
神剣を振りかざしそれを受け止める勇者アルファポリス。
二人の間合いは一気に縮まり剣と剣がぶつかり激しく火花を散らしました。
部屋の中央で身体と剣を密着させつばぜり合いをする勇者と黒騎士。
しかしー。

「ムンッ!!」

黒騎士バーンの気合いと共に勇者アルファポリスの身体は空中に浮いて部屋の隅まで弾き飛ばされました。

「うわぁーっ!!」

床に激突してゴロゴロと転がる勇者アルファポリス。

「勇者さまっ!!」

「アルファポリス!!」

「おのれっ!!」

勇者の後衛を守っていた彼の3人のパーティーメンバーたち。
エルフの弓使いジーナ姫と傭兵剣士オグマそれに大賢者サマナーの3人は倒れたアルファポリスをかばう様に前に出て黒騎士バーンを次々と攻撃します。
しかし彼らの剣や弓そして魔法による攻撃はバーンにことごとく防がれてしまいます。
そしてー。

「オリャッ!!」

バーンの持つ魔剣の一振りで彼ら3人は身体を一斉に吹き飛ばされ勇者と同じく床上に次々と倒れこんでしまいました。

「勇者様ーっ!!みんなーっ!!」

シールズと共に事態を見守っていたナロー姫が叫びます。
黒騎士バーンは床に倒れている勇者一行をぐるっと見回してから剣を持っていない方の腕を上げて呪文を詠唱し始めます。
殲滅魔法で勇者たちにとどめを刺すつもりなのです。
彼の指先に光が走り急激に魔法の力が集まっていきます。
その時でしたー。

「お待ちなさいっ!!」

シールズが止める暇もなくナロー姫が黒騎士バーンの前に飛び出しました。
魔法の詠唱を中止しいきなり自分の前に飛び出して来たその少女を訝しげな視線で見つめる黒騎士バーン。
彼は今まで全く眼中に無かった彼女に対して探る様な口調で尋ねます。

「お主は何者だ?命が惜しければ下がっておれ」

ナロー姫は黒騎士バーンの顔を睨みつけながら答えました。

「わたくしはナロー・ショー・セツカニ。カスニート王国の第一王女にして大魔法使いマーリンの一番弟子ですわ」

[続く]


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