32 / 47
第32話 エロ動画じゃん!!
しおりを挟む
「さてこれから配信するけど、山本先輩?ちょっと聞きますけど」
小南江と一緒に買い物に行った次の日。
舞亜瑠は武士郎の家に来ていた。
父親は不動産業なので、休日は家にいないことも多い。
つまり、二人きりだった。
まあ妹と二人だからといって武士郎は特に何も思っていない。
そもそもこの家はついこの間までこの妹――元義妹と普通に暮らしていた家なのだ。
だけど、舞亜瑠は休みの日に馴染んだ家にいるというのにきちんとメイクまでしている。
家にいるときはいつもはすっぴん丸眼鏡だったのな。
武士郎にしてみればおかしな感覚だけど、祖母の家からここまでは電車に乗ってきているわけで、女子高生としてはちょっとした外出でも身なりには気を使うのが当然ではあった。
ダボっとしたオーバーサイズのシャツにワークパンツ。髪の毛はなんだか一昨日より色が明るいような……? 昨日、母親と出かけたってのは美容室だったのかな?
その舞亜瑠は形の良い眉をキリッと引き締め、顔をずずいっと武士郎に寄せて言った。
「ね、山本先輩。私の質問に答えてくださいね」
「なんだよ、俺んちに二人でいるのに敬語はこわいぞ……他に誰もいないんだから普通に話せ普通に……」
武士郎を睨む舞亜瑠の目は怒っていた。
なんなら、怒りに燃えていたと言ってもいい。
「山本先輩、昨日、小南江ちゃんと一緒に買い物行ったよね? ……行きましたよね?」
「あ、ああ……」
「何買ったの?」
「雑貨屋でなんかのキャラの限定品のグッズみたいなの買ってたぞ……」
「そ。で、ボディガードでついて行ったんだよね?」
「そうだな」
「じゃ、お店にまっすぐ行って買い物済ませたらまっすぐ帰ってきたんだよね? まさか一緒にご飯食べたりしてないよね?」
そういわれてドキッとする武士郎。
「え? あ……だっておごるっていうから……」
「言われて素直に奢《おご》られてきたの!? なにそれ!? さなえちゃん、私に嘘ついてんじゃん! ちょっと山本先輩、スマホ見せてよ」
「なんだよ嫌だよ」
「昨日小南江ちゃんとツーショットでセルフィー取ったりしてないよね!? ってかさなえちゃんと変な感じになってないよね!? 確認するだけだから!」
「だめだって!」
「みーせーろー!!」
舞亜瑠は武士郎に襲い掛かる。
持っていたスマホをもぎ取ろうとするので、
「やめろ馬鹿!」
抵抗するのだが、
「見せないってことはやっぱり見せらんないことしてるんでしょ!? 手を離せ~~
!!」
「待て待て待て!」
スマホの取り合いで二人は取っ組み合う。
とはいえ、武士郎は空手経験者で筋肉もそこそこある。こんな華奢な女子高生と力で負けるわけもないのだが、なんというかこう、舞亜瑠の身体の微妙なところに触りそうになるのでいまいち本気を出せない。
「お、に、い、ちゃ、ん~~! それよこせ~!」
くそ、女の子って腕細いなあ、折れちゃいそうだ、などと思っていると舞亜瑠は武士郎に身体ごとのしかかってきて、そのでっかい胸の膨らみがむにゅうっ! と武士郎の顔に押し付けられた。
いい匂い、あったかい柔らかい、頭の中がほわ~んとした。
いやいやいや妹だぞ妹、でも血の繋がりとかないわけで生物学的にはどうかなってもおかしくないわけで――。
駄目だ駄目だ駄目だ!
妹を守るべきお兄ちゃんの俺が変な気分になってたらそれはおかしいだろ!?
「わかったわかった、一回離れろ、な?」
まあしかしよく考えたらスマホの中身くらい見られたってどうということもないということに武士郎は気づいたのだった。
舞亜瑠に見られてやましいデータは何も入ってない、はずだ。
「わかったよ、中身くらい見せるよ」
「じゃあお兄ちゃんが操作して見せて。……よく考えたら人のスマホをいじるのは抵抗がある」
「だったら最初からスマホを奪おうとすんなよ……。ホント馬鹿だな。わかったわかった、LINEか? ほら、これがさなえとのやり取り。普通だろ?」
「写真とか動画のデータも見せて」
「これか?」
一瞬、さなえが踊っている動画は見せちゃいけないかな、と思ったけど、それだって別にやましいことはない。
「なにこれ、さなえちゃんのTACTOK用の動画じゃん。これ全部そうなの? なんでお兄ちゃんが撮っているの?」
「いや頼まれたから……」
動画ファイルの中身を見せながら言う。
やましいことはないから問題ない。
やましいことは……。
水色の、トータルコーディネート。
それを思い出した瞬間、武士郎は反射的にスマホを引っ込めようとしたが、間に合わなかった。
回転する小南江、回転してぶわっと舞うスカート、丸見えの水色。
「エロ動画じゃん!!」
舞亜瑠が悲鳴のような声で叫んだ。
「いやこれは違う、わざとじゃなくて」
「だったらこんなのすぐ消せばよかったじゃん!」
「いや忘れていて……」
「とか言って消すの忘れたことにして自分にそう言い聞かせて実は永久保存しようとしたんじゃないの?」
「そんなわけないって!」
「じゃあすぐ消して!」
「わかったよ、そんなに怒るなよ、何なんだよ……」
舞亜瑠はほっぺたをぷっくり膨らませて、なんなら目に涙まで浮かべて、
「とにかくこういうの、嫌なの! 自分でもわかんないけど嫌なの!」
「わかった、これは消すよ、全方位に失礼だもんなこんな動画……。ほら消した」
「……じゃーもう、配信始めるからね! ……もーなんだよもーなんだよーお兄ちゃん馬鹿お兄ちゃん」
小南江と一緒に買い物に行った次の日。
舞亜瑠は武士郎の家に来ていた。
父親は不動産業なので、休日は家にいないことも多い。
つまり、二人きりだった。
まあ妹と二人だからといって武士郎は特に何も思っていない。
そもそもこの家はついこの間までこの妹――元義妹と普通に暮らしていた家なのだ。
だけど、舞亜瑠は休みの日に馴染んだ家にいるというのにきちんとメイクまでしている。
家にいるときはいつもはすっぴん丸眼鏡だったのな。
武士郎にしてみればおかしな感覚だけど、祖母の家からここまでは電車に乗ってきているわけで、女子高生としてはちょっとした外出でも身なりには気を使うのが当然ではあった。
ダボっとしたオーバーサイズのシャツにワークパンツ。髪の毛はなんだか一昨日より色が明るいような……? 昨日、母親と出かけたってのは美容室だったのかな?
その舞亜瑠は形の良い眉をキリッと引き締め、顔をずずいっと武士郎に寄せて言った。
「ね、山本先輩。私の質問に答えてくださいね」
「なんだよ、俺んちに二人でいるのに敬語はこわいぞ……他に誰もいないんだから普通に話せ普通に……」
武士郎を睨む舞亜瑠の目は怒っていた。
なんなら、怒りに燃えていたと言ってもいい。
「山本先輩、昨日、小南江ちゃんと一緒に買い物行ったよね? ……行きましたよね?」
「あ、ああ……」
「何買ったの?」
「雑貨屋でなんかのキャラの限定品のグッズみたいなの買ってたぞ……」
「そ。で、ボディガードでついて行ったんだよね?」
「そうだな」
「じゃ、お店にまっすぐ行って買い物済ませたらまっすぐ帰ってきたんだよね? まさか一緒にご飯食べたりしてないよね?」
そういわれてドキッとする武士郎。
「え? あ……だっておごるっていうから……」
「言われて素直に奢《おご》られてきたの!? なにそれ!? さなえちゃん、私に嘘ついてんじゃん! ちょっと山本先輩、スマホ見せてよ」
「なんだよ嫌だよ」
「昨日小南江ちゃんとツーショットでセルフィー取ったりしてないよね!? ってかさなえちゃんと変な感じになってないよね!? 確認するだけだから!」
「だめだって!」
「みーせーろー!!」
舞亜瑠は武士郎に襲い掛かる。
持っていたスマホをもぎ取ろうとするので、
「やめろ馬鹿!」
抵抗するのだが、
「見せないってことはやっぱり見せらんないことしてるんでしょ!? 手を離せ~~
!!」
「待て待て待て!」
スマホの取り合いで二人は取っ組み合う。
とはいえ、武士郎は空手経験者で筋肉もそこそこある。こんな華奢な女子高生と力で負けるわけもないのだが、なんというかこう、舞亜瑠の身体の微妙なところに触りそうになるのでいまいち本気を出せない。
「お、に、い、ちゃ、ん~~! それよこせ~!」
くそ、女の子って腕細いなあ、折れちゃいそうだ、などと思っていると舞亜瑠は武士郎に身体ごとのしかかってきて、そのでっかい胸の膨らみがむにゅうっ! と武士郎の顔に押し付けられた。
いい匂い、あったかい柔らかい、頭の中がほわ~んとした。
いやいやいや妹だぞ妹、でも血の繋がりとかないわけで生物学的にはどうかなってもおかしくないわけで――。
駄目だ駄目だ駄目だ!
妹を守るべきお兄ちゃんの俺が変な気分になってたらそれはおかしいだろ!?
「わかったわかった、一回離れろ、な?」
まあしかしよく考えたらスマホの中身くらい見られたってどうということもないということに武士郎は気づいたのだった。
舞亜瑠に見られてやましいデータは何も入ってない、はずだ。
「わかったよ、中身くらい見せるよ」
「じゃあお兄ちゃんが操作して見せて。……よく考えたら人のスマホをいじるのは抵抗がある」
「だったら最初からスマホを奪おうとすんなよ……。ホント馬鹿だな。わかったわかった、LINEか? ほら、これがさなえとのやり取り。普通だろ?」
「写真とか動画のデータも見せて」
「これか?」
一瞬、さなえが踊っている動画は見せちゃいけないかな、と思ったけど、それだって別にやましいことはない。
「なにこれ、さなえちゃんのTACTOK用の動画じゃん。これ全部そうなの? なんでお兄ちゃんが撮っているの?」
「いや頼まれたから……」
動画ファイルの中身を見せながら言う。
やましいことはないから問題ない。
やましいことは……。
水色の、トータルコーディネート。
それを思い出した瞬間、武士郎は反射的にスマホを引っ込めようとしたが、間に合わなかった。
回転する小南江、回転してぶわっと舞うスカート、丸見えの水色。
「エロ動画じゃん!!」
舞亜瑠が悲鳴のような声で叫んだ。
「いやこれは違う、わざとじゃなくて」
「だったらこんなのすぐ消せばよかったじゃん!」
「いや忘れていて……」
「とか言って消すの忘れたことにして自分にそう言い聞かせて実は永久保存しようとしたんじゃないの?」
「そんなわけないって!」
「じゃあすぐ消して!」
「わかったよ、そんなに怒るなよ、何なんだよ……」
舞亜瑠はほっぺたをぷっくり膨らませて、なんなら目に涙まで浮かべて、
「とにかくこういうの、嫌なの! 自分でもわかんないけど嫌なの!」
「わかった、これは消すよ、全方位に失礼だもんなこんな動画……。ほら消した」
「……じゃーもう、配信始めるからね! ……もーなんだよもーなんだよーお兄ちゃん馬鹿お兄ちゃん」
0
お気に入りに追加
153
あなたにおすすめの小説
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】
最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。
戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。
目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。
ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!
彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
切り抜き師の俺、同じクラスに推しのVtuberがいる
星宮 嶺
青春
冴木陽斗はVtuberの星野ソラを推している。
陽斗は星野ソラを広めるために切り抜き師になり応援をしていくがその本人は同じクラスにいた。
まさか同じクラスにいるとは思いもせず星野ソラへの思いを語る陽斗。
陽斗が話をしているのを聞いてしまい、クラスメイトが切り抜きをしてくれていると知り、嬉しさと恥ずかしさの狭間でバレないように活動する大森美優紀(星野ソラ)の物語
幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた
久野真一
青春
最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、
幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。
堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。
猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。
百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。
そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。
男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。
とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。
そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から
「修二は私と恋人になりたい?」
なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。
百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。
「なれたらいいと思ってる」
少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。
食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。
恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。
そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。
夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと
新婚生活も満喫中。
これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、
新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる