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第一章

10 ライトブルー

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 俺たちは、二日間馬を走らせ、傭兵ギルドからの依頼の場所に立っていた。

 見渡す限りの草原。

 なるほど、遊牧するにはうってつけの土地かもしれない。

 遠くに、三頭の怪物がうろついているのが肉眼で見えた。


「あー……ありゃ、トリケラトプスだなあ……」


 俺は目を細めながら言った。

「あの……やっぱりやめにする……ませんか?」


 イーダがビクビクしながら言った。

「うーん……じゃ、イーダはここで待ってな。俺とキッサとシュシュとサクラだけで行ってくるから」

「……シュシュも一緒!? ……ですか?」


 まだ九歳の幼女であるシュシュは、緊張のない声で、

「私もおにいちゃんと一緒に行くー!」


 などと言っている。

 ま、キッサとシュシュは俺から離れすぎると死んじゃうからな。


「シュシュも行くなら私も行く……です」

「大丈夫か、無理しなくてもいいぞ?」

「大丈夫……です」


 ガチガチを奥歯を震わせながらそういうイーダ。

 よほどトリケラトプスの魔物、カスモラトが怖いらしい。

 それでも一緒に行くってんだから、なかなか殊勝じゃないか。

 俺たちは馬を並べてカスモラトへと近づいていく。

 三〇〇メートルくらいまで近づいた頃だろうか。

 三頭いるカスモラトのうち、一頭が俺たちに気づく。


「ウゴォォォォォ!」


 唸り声をあげ、俺たちに向けて大きく口を開けるカスモラト。


「ブファッ!」


 そして火炎を吐いた。


「うおっと!」


 俺は俺たちの周り半径十メートルほどをライムグリーンの法力で包む。

 火炎はそのバリアに跳ね返されて、俺たちのもとへと届くことはない。


「ひぃぃぃ……」


 怯えた声をあげるイーダ、キッサやサクラは落ち着いたもので、


「どうしますか? ここからやります?」

「そうだな、射程範囲内だ」


 俺は巾着袋に挿れた日本円の硬貨を握りしめる。


「そーら……よっと!」


 もう慣れたもんだ、ちょっと俺が腕を振ると、俺たちの前方を覆う扇型の光が現れる。

 サッカー場二枚分の広さの扇だ、攻撃は十分に届く。

 そいつでカスモラトをぶったたく。


「ガフゥ!? ブフッ、ガフッ……」


 あっさりとその場に倒れるカスモラト。

 むしろ手応えがなさすぎるな。

 と、今度は残りの二頭が俺たちを挟み撃ちにするかのように別々の方向から突進してくる。


「おるぁ!」


 そのうちの一頭をやはりライムグリーンの扇で叩き潰す。

 ま、実際は叩き潰しているんじゃなくて、脳細胞を焼き切っているんだけどな。


「うーん、これじゃあイーダの実力を測れないな、全然法力を消耗しねえぜ……でも、ま、一応」


 俺は自分の乗っている馬をイーダの馬に寄せる。


「な、なにを……する……です?」

「わりいな、ちょっとキスさせてもらうぜ」


 馬上で身体をのばして、俺はイーダの肩をつかむ。


「な……な……?」


 うーん、こいつもまたかわいい顔してるよなあ。

 整いすぎて男の子に見えるくらい整っている顔立ち、白いベリーショートの髪に白い肌、そして碧い瞳。


「悪いな、これから三十六時間つらいと思うけど、その間いくらでもキスしてやるからさ」


 粘膜直接接触法の副作用で、俺たちはこれから何百回もキスすることになる。

 ただ、これが最初の一回目だ。

 最初ってのはなんか、緊張するなあ。


「いったいなにを……です?」

「だから、キスするんだよ……粘膜直接接触法だ」

「な……? それは駄目なやつだ……です」

「いや、それが俺に限ってはそうじゃないんだよな」


 俺はぐいっと馬上から上半身を伸ばし、イーダのその薄紅色の唇に、くちづけをした。

 とたんに、さわやかなライトブルーの光が俺に流れ込んでくるのを感じた。

 お、こいつはなかなか……。

 サクラほどじゃないにせよ、結構な量の法力だ。

 俺はイーダの胸に手をやり、揉もうとして――揉むほどこいつ胸ないなあ! しょうがないから撫でてやる。

 こうして胸を刺激してやると、さらに法力を搾り取ることができるのだ。

 イーダのおっぱいは小さいながらもふかふかしていて、なかなか気持ちがよかった。

 しっかし、これ、自分の奴隷相手だからいいものの、そうじゃなかったら普通に犯罪だよなあ。

 自分の奴隷相手にこういうことやるのも十分に犯罪的ではあるけれど。

 やってること自体はあのサイコパス変態、リューシアとそうかわらんなこれ。

 奴隷を買って、その奴隷に無理やりキスをして、さらに胸を触ってんだからな。

 ああ、気持ちがいいなあ。

 ライトブルーの法力がある程度俺の中へと流れこむのを確認したあと、俺はイーダから口を離す。

 俺とイーダの間に絹糸みたいな唾液の糸ができて、そのうち消えた。

 とろんとした顔のイーダ、その分俺は元気いっぱいだ。

 気が付くと、最後のカスモラトがもう数十メートルまで近づいてきている。

 俺はライムグリーンの法力で三十メートルはあろうかという長い長い剣をつくると、そいつでカスモラトの頭をぶん殴った。


「ギャフゥッ!」


 これで終わりだ。


 うーん、こんな簡単でいいんだろうか。

 ま、俺が強すぎるというのもあるかもしれんが。


「終わりだな、えーとどうするんだっけ、カスモラトの角を切り取っていけばいいんだよな?」

「はい。……ところでエージ様」


 キッサが言う。


「カスモラトって、美味しいんですよ?」
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