57 / 138
第三章 隕石が産まれるの
57 しぱたたっ!
しおりを挟む
ヴェルはまだ動揺を隠しきれないまま、
「…………帝国臣民八〇〇万の頂点、神聖にして不可侵なる皇帝たるもの、粘膜接触法の副作用ごときでたかだか第五等準騎士――そういやあんた昇進してたのね――の唇を求めるなんてはしたない、そういうことは皇帝にふさわしくない、とか、この子らしくないこと言って……。で、そうならないように縛ってくれっていうから、そうしたんだけど」
「いや、どっちかというと今のこの芋虫状態の方がよっぽどはしたないと思うぞ」
「そうなのよねえ」
ヴェルは困ったようにため息をつく。
ま、皇帝陛下本人はこれも楽しんでいるのかもしれないからいいけど。
でも、麻薬の十倍の禁断症状ってのはただごとじゃない。
それを丸一日こうやって我慢してたっていうのは、いくらドMでも限界を越えて苦痛だっただろう。
皇帝だからって、中身は十二歳の少女にすぎない。
なんだか、かわいそうになってくる。
コミカルな格好にはなってるけど、本人はどれだけ苦しんでいるか。
ヴェルは、転がっている芋虫――毛布でぐるぐる巻きにされている、親友にして主君の女帝陛下――を抱き上げると、きゅっと抱きしめて、
「っっていうかさ。この子はね、優しくて頭が悪いから」と言った。
「ん?」
「この子ね、皇帝陛下の次女として生まれて何一つ不自由なく育って、困ったことがあったらエリンやあたしが解決してあげて。でもこんな時代でしょ、臣民は苦しんでいるのに自分だけ楽してる、そう思ってんのよ、きっと。だから、わざと自分で自分を痛がらせて気を紛らわせてんの。臣民が苦しんだ分だけ、自分も苦しみたいのよ。この子がそう言ったわけじゃないけど、そうだと思う。だから、あたしはいつもこの子は優しくて頭が悪いなあと思いながらお尻を叩いてあげてるのよ」
芋虫はヴェルの胸に顔をうずめてじっとしている。
そっか、そういう事情もあるのか。
まあ本人がドM体質なのも確かだろうけどな。
でもなあ、麻薬の十倍となると、ちょっと苦しみすぎる。
「なあ、俺は思うんだけど」
「なによ」
「俺たちがお慕い申し上げている皇帝陛下は、慈愛深いお方だ」
「うん」
「きっと、皇帝陛下は副作用に苦しむ部下が、ご自分に対して非常に不躾な行いをしてしまっても、その広いお心で許してださるんじゃないだろうか」
「ん? どういうこと?」
「もちろん陛下はこんな副作用なんかに負けず、平気でいらっしゃるわけだけど、愚かで間抜けな臣下である俺が副作用に耐えられない」
「あー」
「だから、俺が、俺がだぞ、陛下じゃなくて俺の方からお願いしてどうかどうかこの副作用のつらさから抜けださせてくださいといったら、どうだろうか」
「うーん」
「心の狭い君主なら断るだろう。だけど、臣民の苦しみを理解してくださる君主であれば……」
ヴェルは顔を傾げてちょっとのあいだ考えていたが、
「ね、ミーシア、あんなことをいっている間抜け面の家臣がいるけど、どう?」
おい。間抜けとは言ったが間抜け面とはいってねえぞ……。顔のことは言うな、ひどいじゃないか。
ヴェルに尋ねられて、芋虫みたいな格好のロリ女帝陛下、ミーシアは、ヴェルの腕の中でコクコクとうなづく。
「……いいって。ま、スジは通っている……とは思うわ、この子の性癖は知ってるけどさ、さすがにあたしも、もう見てられなかったし。禁断症状って、このあたしが耐えられないほどつらいんだもん」
「じゃ」
俺は芋虫に近づき、その目隠し猿ぐつわを取り去る。
「ふわぁ……」
もう、ほんと、表情をどろどろに溶かして俺をみつめる十二歳のロリ皇帝陛下。
床に転がっていたせいで、あんなにつやつやだった黒髪おかっぱも、ほこりやごみだらけだ、おいたわしい。
「陛下、俺……じゃない、私はもう副作用に我慢できません」
実際は、ほかの女の子たちとキスしていたわけで、そうでもないんだけど。
いや待てよ、さっきの説明からすると、それだけじゃ足りなくて、ミーシアとも粘膜接触したくなるはずだよな?
そりゃ、この日本人形みたいなかわいい女の子とキスしたいかしたくないかでいったらしたい。でもそれは俺の通常運転の情欲なわけで、なんか禁断症状とは違う気もするけど、今は置いておこう。
「ですから陛下、大変不躾だとは思いますが、どうかどうか、私にお情けを……」
「許す」
即答するミーシア。
そりゃそうだ、麻薬の十倍の苦しさだってんだからな。もう頭の中はぐらぐらに煮えたぎってるはずだ。
「許す、ゆりゅすから、は、はやく、はやくひてぇ……」
うーん、威厳があったりなかったりする皇帝陛下だな。
まあ、許しがでたから、さっそく。
毛布でぐるぐる巻きのままのミーシアを抱きかかえるようにして目を閉じ、ゆっくりと口を――
「んちゅうっ!!」
ゆっくりどころじゃない、すごい勢いで向こうから吸い付いてきた。
そして、
「はむはむはむんちゅんちゅんちゅじゅるじゅるじゅるんれろれろれろ」
まだまだ幼い、ミルクの香りすら漂ってきそうな十二歳の女の子、その子が気が触れたかのように俺の唇をむさぼる。
十二歳の舌の動きじゃねーぞこれ……。
一応、気を使っているのか、ヴェルやキッサは横を向いて見ないようにしているっぽい、まあ音は聞こえちゃってるけどな。
ちなみにシュシュは、俺たちのキスを興味深そうに見ている。
おいキッサ、妹の教育に悪いからあっちに連れていっておけよ。
「れろれろるろるろんじゅるぅぅ……ぷっはぁ……ふう……」
たっぷり五分は俺の粘膜を堪能したあと、やっと俺から離れるミーシア。
唇がびりびりしびれている、うーん、昨日今日と女の子とキスしすぎて、俺の中でなにかが麻痺しちゃうぞこれ。
ヴェルがなんというか、実に微妙な顔で、
「うん、仕方がないわよね、うん。副作用だから。……ミーシアがほかの人間とこんなことしてたら、あたしそいつを殺したくなると思うけど。変ね、エージとだと、むしろ腹が立つのは――」
といいかけて、口をつぐむ。
「ヴェル、そんなことより緊急事態が起こりそうなの、っていうか起こっているかもしれないの」
早口でそういうミーシア陛下。
「ん? なによ」
「えっとね、えっと……。ほら、あの、……ちょっとこっちきて耳を貸して」
そうして、ミーシアはヴェルに何事かをささやく。
「……が、……で、代えの……ンツ……おし……」
なんかやばげな単語が聞こえたが、聞こえなかったことにする。
と、さらにキッサまでもが、
「すみません、私も……ちょっと、……が変な感じで……」
ヴェルも応じて、
「実は、あたしもなのよね……変ねえ、どうしてこうなるのかしら……」
なにがどうなってるのか。
うん、まあ、全然わからないわけでもなかったけど。
俺だって健康な男子なわけで、まあ、ほら、ね、女の子とキスしまくっている間、変なとこが変なことにならないわけはなかったし、さ。
キッサの話を総合するに、どうも、ヴェルもキッサもミーシアも、俺に対してなんらかの好意をいだいていると考えても間違いではないような気がしないでもないし。
俺たちみんな若い男女だもの、好意を抱いている男女がキスしまくれば、さ。
いろいろと大変なのだ。
で、空気を読めなすぎてもはや真空の中で生きているんじゃないかと思うほどの九歳奴隷少女が最後に大声で叫ぶのだった。
「私もおしっこするー! 少しもれちゃった! だってこの馬車すごく揺れるんだもん! おねえちゃんも騎士しゃまもちぃねえちゃんも替えのおぱんつもっていっしょにおしっこしよー!」
聞こえない聞こえない聞かない。
で。
馬車は山中を貫く街道、その道ばたに止められ、みんなで『お花を摘む』ことになったのだった。
一人馬車に残されお留守番の俺。
安全のために馬車からほど近くで用を足すことにしたらしく。
しぱたたっ! という、なにか液体状のものが地面の土を叩く音を、すこし赤らむ気持ちで聞いちゃったりなんかして。
……これ、誰のだろう……。
少なくともシュシュではない、シュシュはさっき自分で大声で実況中継しながらおしっこしてたからな……。
シュシュ、思春期になってからこういうことを思い出したら、恥ずかしくて死にたくなるんじゃなかろうか。っていうか、九歳でこれって、精神年齢低くねえか。
と。
いきなり、知らない声が聞こえた。
「おまえ等、どこの奴隷だ? ご主人様はあの馬車か? おい、そこの金髪、そんなに睨むなよ。なに、大丈夫さ、あたし等は奴隷には手をださないよ。今日からあたしがあんたらのご主人様になるってだけさ」
何事かと馬車から降りようとした俺の目の前に、粗末な剣を持った、ごっつい男みたいな女が現れた。
「おおっと。あんたがご主人様か。悪いね、奴隷はもらっていくよ。……わかるよな? 金目のものがあったらとっとと出しな」
武装した十五人ほどの集団。
中にはキッサやシュシュと同じ、白髪紅目の女もいて、六本足の魔獣――フルヤコイラを三匹も連れている。
――山賊だ。
そうか、山賊もいるよな、こんな世界、こんな時代だからな。
やばいな。
普通なら、ヴェル一人でこんな奴ら瞬殺できるだろうけど。
『三十六時間のあいだ、マナのコントロールがうまくいかずに法術を使うこともできなくなります』
さっき聞いたキッサの言葉。
いくら鍛えているとはいえ、ヴェルも法術なしではこの人数を相手にできないだろうし、俺にいたっては法術が使えなかったらただのひ弱男だ。
十五人と魔獣三頭。
力技では、とても切り抜けられそうにない。
「…………帝国臣民八〇〇万の頂点、神聖にして不可侵なる皇帝たるもの、粘膜接触法の副作用ごときでたかだか第五等準騎士――そういやあんた昇進してたのね――の唇を求めるなんてはしたない、そういうことは皇帝にふさわしくない、とか、この子らしくないこと言って……。で、そうならないように縛ってくれっていうから、そうしたんだけど」
「いや、どっちかというと今のこの芋虫状態の方がよっぽどはしたないと思うぞ」
「そうなのよねえ」
ヴェルは困ったようにため息をつく。
ま、皇帝陛下本人はこれも楽しんでいるのかもしれないからいいけど。
でも、麻薬の十倍の禁断症状ってのはただごとじゃない。
それを丸一日こうやって我慢してたっていうのは、いくらドMでも限界を越えて苦痛だっただろう。
皇帝だからって、中身は十二歳の少女にすぎない。
なんだか、かわいそうになってくる。
コミカルな格好にはなってるけど、本人はどれだけ苦しんでいるか。
ヴェルは、転がっている芋虫――毛布でぐるぐる巻きにされている、親友にして主君の女帝陛下――を抱き上げると、きゅっと抱きしめて、
「っっていうかさ。この子はね、優しくて頭が悪いから」と言った。
「ん?」
「この子ね、皇帝陛下の次女として生まれて何一つ不自由なく育って、困ったことがあったらエリンやあたしが解決してあげて。でもこんな時代でしょ、臣民は苦しんでいるのに自分だけ楽してる、そう思ってんのよ、きっと。だから、わざと自分で自分を痛がらせて気を紛らわせてんの。臣民が苦しんだ分だけ、自分も苦しみたいのよ。この子がそう言ったわけじゃないけど、そうだと思う。だから、あたしはいつもこの子は優しくて頭が悪いなあと思いながらお尻を叩いてあげてるのよ」
芋虫はヴェルの胸に顔をうずめてじっとしている。
そっか、そういう事情もあるのか。
まあ本人がドM体質なのも確かだろうけどな。
でもなあ、麻薬の十倍となると、ちょっと苦しみすぎる。
「なあ、俺は思うんだけど」
「なによ」
「俺たちがお慕い申し上げている皇帝陛下は、慈愛深いお方だ」
「うん」
「きっと、皇帝陛下は副作用に苦しむ部下が、ご自分に対して非常に不躾な行いをしてしまっても、その広いお心で許してださるんじゃないだろうか」
「ん? どういうこと?」
「もちろん陛下はこんな副作用なんかに負けず、平気でいらっしゃるわけだけど、愚かで間抜けな臣下である俺が副作用に耐えられない」
「あー」
「だから、俺が、俺がだぞ、陛下じゃなくて俺の方からお願いしてどうかどうかこの副作用のつらさから抜けださせてくださいといったら、どうだろうか」
「うーん」
「心の狭い君主なら断るだろう。だけど、臣民の苦しみを理解してくださる君主であれば……」
ヴェルは顔を傾げてちょっとのあいだ考えていたが、
「ね、ミーシア、あんなことをいっている間抜け面の家臣がいるけど、どう?」
おい。間抜けとは言ったが間抜け面とはいってねえぞ……。顔のことは言うな、ひどいじゃないか。
ヴェルに尋ねられて、芋虫みたいな格好のロリ女帝陛下、ミーシアは、ヴェルの腕の中でコクコクとうなづく。
「……いいって。ま、スジは通っている……とは思うわ、この子の性癖は知ってるけどさ、さすがにあたしも、もう見てられなかったし。禁断症状って、このあたしが耐えられないほどつらいんだもん」
「じゃ」
俺は芋虫に近づき、その目隠し猿ぐつわを取り去る。
「ふわぁ……」
もう、ほんと、表情をどろどろに溶かして俺をみつめる十二歳のロリ皇帝陛下。
床に転がっていたせいで、あんなにつやつやだった黒髪おかっぱも、ほこりやごみだらけだ、おいたわしい。
「陛下、俺……じゃない、私はもう副作用に我慢できません」
実際は、ほかの女の子たちとキスしていたわけで、そうでもないんだけど。
いや待てよ、さっきの説明からすると、それだけじゃ足りなくて、ミーシアとも粘膜接触したくなるはずだよな?
そりゃ、この日本人形みたいなかわいい女の子とキスしたいかしたくないかでいったらしたい。でもそれは俺の通常運転の情欲なわけで、なんか禁断症状とは違う気もするけど、今は置いておこう。
「ですから陛下、大変不躾だとは思いますが、どうかどうか、私にお情けを……」
「許す」
即答するミーシア。
そりゃそうだ、麻薬の十倍の苦しさだってんだからな。もう頭の中はぐらぐらに煮えたぎってるはずだ。
「許す、ゆりゅすから、は、はやく、はやくひてぇ……」
うーん、威厳があったりなかったりする皇帝陛下だな。
まあ、許しがでたから、さっそく。
毛布でぐるぐる巻きのままのミーシアを抱きかかえるようにして目を閉じ、ゆっくりと口を――
「んちゅうっ!!」
ゆっくりどころじゃない、すごい勢いで向こうから吸い付いてきた。
そして、
「はむはむはむんちゅんちゅんちゅじゅるじゅるじゅるんれろれろれろ」
まだまだ幼い、ミルクの香りすら漂ってきそうな十二歳の女の子、その子が気が触れたかのように俺の唇をむさぼる。
十二歳の舌の動きじゃねーぞこれ……。
一応、気を使っているのか、ヴェルやキッサは横を向いて見ないようにしているっぽい、まあ音は聞こえちゃってるけどな。
ちなみにシュシュは、俺たちのキスを興味深そうに見ている。
おいキッサ、妹の教育に悪いからあっちに連れていっておけよ。
「れろれろるろるろんじゅるぅぅ……ぷっはぁ……ふう……」
たっぷり五分は俺の粘膜を堪能したあと、やっと俺から離れるミーシア。
唇がびりびりしびれている、うーん、昨日今日と女の子とキスしすぎて、俺の中でなにかが麻痺しちゃうぞこれ。
ヴェルがなんというか、実に微妙な顔で、
「うん、仕方がないわよね、うん。副作用だから。……ミーシアがほかの人間とこんなことしてたら、あたしそいつを殺したくなると思うけど。変ね、エージとだと、むしろ腹が立つのは――」
といいかけて、口をつぐむ。
「ヴェル、そんなことより緊急事態が起こりそうなの、っていうか起こっているかもしれないの」
早口でそういうミーシア陛下。
「ん? なによ」
「えっとね、えっと……。ほら、あの、……ちょっとこっちきて耳を貸して」
そうして、ミーシアはヴェルに何事かをささやく。
「……が、……で、代えの……ンツ……おし……」
なんかやばげな単語が聞こえたが、聞こえなかったことにする。
と、さらにキッサまでもが、
「すみません、私も……ちょっと、……が変な感じで……」
ヴェルも応じて、
「実は、あたしもなのよね……変ねえ、どうしてこうなるのかしら……」
なにがどうなってるのか。
うん、まあ、全然わからないわけでもなかったけど。
俺だって健康な男子なわけで、まあ、ほら、ね、女の子とキスしまくっている間、変なとこが変なことにならないわけはなかったし、さ。
キッサの話を総合するに、どうも、ヴェルもキッサもミーシアも、俺に対してなんらかの好意をいだいていると考えても間違いではないような気がしないでもないし。
俺たちみんな若い男女だもの、好意を抱いている男女がキスしまくれば、さ。
いろいろと大変なのだ。
で、空気を読めなすぎてもはや真空の中で生きているんじゃないかと思うほどの九歳奴隷少女が最後に大声で叫ぶのだった。
「私もおしっこするー! 少しもれちゃった! だってこの馬車すごく揺れるんだもん! おねえちゃんも騎士しゃまもちぃねえちゃんも替えのおぱんつもっていっしょにおしっこしよー!」
聞こえない聞こえない聞かない。
で。
馬車は山中を貫く街道、その道ばたに止められ、みんなで『お花を摘む』ことになったのだった。
一人馬車に残されお留守番の俺。
安全のために馬車からほど近くで用を足すことにしたらしく。
しぱたたっ! という、なにか液体状のものが地面の土を叩く音を、すこし赤らむ気持ちで聞いちゃったりなんかして。
……これ、誰のだろう……。
少なくともシュシュではない、シュシュはさっき自分で大声で実況中継しながらおしっこしてたからな……。
シュシュ、思春期になってからこういうことを思い出したら、恥ずかしくて死にたくなるんじゃなかろうか。っていうか、九歳でこれって、精神年齢低くねえか。
と。
いきなり、知らない声が聞こえた。
「おまえ等、どこの奴隷だ? ご主人様はあの馬車か? おい、そこの金髪、そんなに睨むなよ。なに、大丈夫さ、あたし等は奴隷には手をださないよ。今日からあたしがあんたらのご主人様になるってだけさ」
何事かと馬車から降りようとした俺の目の前に、粗末な剣を持った、ごっつい男みたいな女が現れた。
「おおっと。あんたがご主人様か。悪いね、奴隷はもらっていくよ。……わかるよな? 金目のものがあったらとっとと出しな」
武装した十五人ほどの集団。
中にはキッサやシュシュと同じ、白髪紅目の女もいて、六本足の魔獣――フルヤコイラを三匹も連れている。
――山賊だ。
そうか、山賊もいるよな、こんな世界、こんな時代だからな。
やばいな。
普通なら、ヴェル一人でこんな奴ら瞬殺できるだろうけど。
『三十六時間のあいだ、マナのコントロールがうまくいかずに法術を使うこともできなくなります』
さっき聞いたキッサの言葉。
いくら鍛えているとはいえ、ヴェルも法術なしではこの人数を相手にできないだろうし、俺にいたっては法術が使えなかったらただのひ弱男だ。
十五人と魔獣三頭。
力技では、とても切り抜けられそうにない。
0
お気に入りに追加
340
あなたにおすすめの小説
特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった
なるとし
ファンタジー
鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。
特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。
武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。
だけど、その母と娘二人は、
とおおおおんでもないヤンデレだった……
第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。
選ばれたのはケモナーでした
竹端景
ファンタジー
魔法やスキルが当たり前に使われる世界。その世界でも異質な才能は神と同格であった。
この世で一番目にするものはなんだろうか?文字?人?動物?いや、それらを構成している『円』と『線』に気づいている人はどのくらいいるだろうか。
円と線の神から、彼が管理する星へと転生することになった一つの魂。記憶はないが、知識と、神に匹敵する一つの号を掲げて、世界を一つの言葉に染め上げる。
『みんなまとめてフルモッフ』
これは、ケモナーな神(見た目棒人間)と知識とかなり天然な少年の物語。
神と同格なケモナーが色んな人と仲良く、やりたいことをやっていくお話。
※ほぼ毎日、更新しています。ちらりとのぞいてみてください。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
異世界転生漫遊記
しょう
ファンタジー
ブラック企業で働いていた主人公は
体を壊し亡くなってしまった。
それを哀れんだ神の手によって
主人公は異世界に転生することに
前世の失敗を繰り返さないように
今度は自由に楽しく生きていこうと
決める
主人公が転生した世界は
魔物が闊歩する世界!
それを知った主人公は幼い頃から
努力し続け、剣と魔法を習得する!
初めての作品です!
よろしくお願いします!
感想よろしくお願いします!
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる