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第二章 サソリの毒針

24 女騎士様の裸をっ!

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「え? 下着も脱ぐのか?」


 と訊くと、ヴェルは当然でしょ、みたいな感じで、


「こんな上等な下着つけている奴隷、いるわけないでしょ。陛下のお命がかかっているのよ、少しのリスクでも潰しておきたいわ」


 と言った。

 なるほどぉ。

 素晴らしい忠誠心だと思います!

 どうでもいいけど、俺この世界にきてからというもの、Iカップなキッサと九歳幼女のシュシュの裸は見るし、ロリ女帝陛下のうさちゃんパンツも見るし、そして今、女騎士様の裸をっ! 堪能しようとしているっ!

 なんだよ、俺の異世界ライフってそういう趣旨だったのか?

 ドキドキしながら『その時』を待つが、でも、ヴェルはピタリと動きを止めた。

 腕を背中にまわしたまま、ちらりと俺の顔を見る。

 そして、


「あれ……? おかしいな……?」


 と言った。

 ん?

 どうしたんだ、早く脱げよ!

 おっといかんいかん、思わず本音が声にでるとこだった。


「んー。あれえ?」


 ヴェルが困惑したような声を出す。

 見てると、ヴェルの真っ白な肌が、だんだんと朱に染まっていく。


「あれ、あたし、なんでこんな心臓がバクバクしてるんだろ……」 


 殻を剥いたゆでたまごみたいにつるつるで白かったヴェルの肌。

 それがいまやヴェルの顔も全身も真っ赤になっていて、ブラを外そうとしているその体勢からピクリとも動かない。

 ロリ女帝ミーシアは自分のほっぺたを両手で抑えてヴェルの姿をじーっと見ている。

 その表情、めっちゃワクワクしてるよね!

 俺だって同じだ。

 ヴェルが生まれたままの姿になるのを今か今かと待ち構えて見守っている。

 ところがヴェルは、いつまでたってもブラのホックをはずさない。


「あれ、おかしいわ、恥ずかしいことなんて、ない、……はずなのに」


 俺と目が合う。

 ヴェルの鍛えぬかれた身体がぷるっと震え、そして一度は止まったはずの涙がその碧眼のはしっこに浮かんできた。


「あれ? あれ? なにこれ?」


 ヴェルのほっぺたはもう、湯気が出そうなほど火照って真っ赤だ。

 潤んだ瞳で俺を見て、困ったような表情をする。

 うん、やはりな。

 この世界には男がほとんどいないから、ヴェルは知らなかっただけなのだ。

 騎士だろうがなんだろうが、十代の女の子が男の前で裸になれば、そりゃ恥ずかしく思うに決まってる。

 気を使って俺もキッサ達と一緒に階段の陰にでも行こうかと思ったけど。

 まあでもほらここまできたらさ。

 こう、なんというか、勢いみたいなもんで。

 見たいじゃん?

 女の子の裸、見たいよね?

 うん、見たい。

 だから、俺は平静を装って、


「ほらヴェル、早く着替えろよ、敵がきちゃうぞ」


 と言った。


「あ、う、うん」


 プチン。

 ついに、ヴェルがブラのホックを外した。

 きたっ!

 きたぞっ!

 奴隷姉妹の裸もドキドキしたけど、ほらあれはさ、本人たちが嫌がってたからさ。

 俺としても素直に喜べなかった。

 なんかごめんっていうか、悪いっていうか、胸がチクチク痛んでさ。

 でも女騎士、ヴェルはさ。

 自分で恥ずかしくないって言ってるんだから、こっちも堂々と見てもいいわけだよねっ?

 ねっ、ねっ!?

 ドM変態露出狂ロリ女帝、ミーシアが両手で顔を覆い、でも指の間からガン見しながら、


「きゃぁっ」


 と嬉しそうな悲鳴を上げる。

 俺もゴクリと唾を飲み込んだ。

 ところが。

 ホックは外したけれど、ヴェルはブラを手で抑えたまま俯く。

 そのままちょっと立ち尽くしたあと、


「……うん、ごめん、さっきの発言は全部取り消すわ。やっぱり、恥ずかしいみたい」

「あ、ああそうだよな。陛下、陛下の前で裸を晒すのは恐れ多くてヴェル卿は恥ずかしいそうです。ここは私が見張っておりますから、陛下はあちらに……」

「そうじゃなくてあんたのことよーッ!!」


 騎士として、そして戦士として、鍛えに鍛えぬかれたヴェルのフロントキックが俺のみぞおちにジャストミート。

 俺を階段の下へと軽くふっ飛ばしてくれたのだった。


「エージ様、危ない!」


 踊り場にいたキッサが身体を張って俺を受け止めてくれた。

 そうじゃなかったら壁に頭を打って死んでたかもしれない。

 いやあ、さすがIカップ、そのクッション性は俺に怪我一つさせない。

 うん、Iカップ、やーらかかったです。

 どっちに転んでも、ラッキーでした。

 キックがみぞおちにまともに入ったからちょっと吐きそうだけど。

 超いてえ。


「結局ヴェルだけ裸になるとか、ちょっとずるい……。ね、私も脱いでいい?」

「駄目です!」


 とか階上で交わされる馬鹿みたいな会話を聞きながら、俺は気合をいれなおす。

 ここからは、本当に死と隣合わせの、危険な帝都脱出作戦となるのだ。

 俺は俺の所有物である奴隷姉妹に言葉をかける。


「キッサ、シュシュ、俺達、絶対生きてこの帝都から抜け出すからな」


 キッサも真面目な顔で、


「はい。エージ様のため、シュシュのため。命がけで協力します」


 と言った。


「おにいちゃん、こわいよお、まだ死にたくないよお、まだ食べたことないお料理いっぱいあるのに……」

「大丈夫、おにいちゃんとおねえちゃんに任せな、ヴェルの領地に無事たどりついたら、うまいものいっぱい食わせてやるからな」

「うん、ありがと、へへ」


 無邪気な笑顔を見せる幼女奴隷、シュシュの頭を優しく撫でてやる。

 ここからが、本当の闘いなのだ。

 俺は顔を自分でバチバチと叩く。

 さあ、おふざけはここまでだ、やるぞ!


「ね、ヴェル、ちょっとだけ! ちょっとだけ縛ってくれない?」

「駄目だってば!」

「じゃ、さっきエージにやったキックを私にも!」

「ミーシアってばいいからあたしのパンツ掴まないでよ! 脱げないでしょ!」


 ……うん、頼むからお前らは黙って着替えてろっつうの。
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