上 下
43 / 109

第43話 同担拒否

しおりを挟む
 やばい、まじで寝てた!
 パチッと目を開ける。
 すると、いつからそうしていたのだろうか、俺の顔をじっと眺めていたみっしーと目があった。

「ひゃっ」

 と短く声をあげると目をそらすみっしー。
 うぐぐ、俺の寝顔、見てたのか? なんで? 
 よだれでも垂らしてたか?
 口元をぬぐう。
 うん、よだれは出てないみたいだけど……。
 みっしーは横を向いてちょっと頬が赤いような……?
 体調でも悪いのか?
 ずっとハードな戦いがつづいていたからなー。
 でもさ、こうしてみると、みっしーって、まじで顔がちっちゃいな。
 俺と同じ人間だとは思えん。
 さすが日本トップレベルの配信者だよな、かわいいし、なんかこう、オーラがある。

「へへへー」

 紗哩シャーリーがそんなみっしーにぎゅっと抱き着く。

「あっれぇ? ふふふ、みっしー、ほっぺた赤いよ? えっへっへっへ、あたしだけのお兄ちゃんだから、あげないけど、でもそっか、推しがかぶっちゃったかー。良さがわかっちゃったんだねー。うん、同担拒否したいとこだけど、みっしーならいいか」
「同担拒否って……紗哩シャーリーちゃん、そんなんじゃないし……」
「そうそう、で、どっちがお姉さまになる? あたしのほうがぁ、年上だけどさー。もしさー。ねー? そうなるとあたしが妹になるからさー」

 俺の方をちらっちらっと見ながら楽しそうにいう紗哩シャーリー

「やめ、ちがっ、そういうんじゃないから! 全然違うから!」
「顔真っ赤だよ? へへへ、美詩歌お姉ちゃん!」
「もう、やめてよ、もう! もう!」

 みっしーは風呂敷を頭からかぶってしまった。
 うーん、起き抜けにわけわからん会話されても俺にはわからんぞ?
 困惑していると……。
 突然、傍らに寝ていた人物が、がばっと跳ね起きた。
 アニエスさんだ!
 アニエスさんが、目を覚ましたのだ。
 同時に、彼女にかけていた風呂敷がずり落ちる。
 出血でゴワゴワになっっちゃったドレスは、みっしーと紗哩シャーリーが脱がせてたので、今はパンツ一枚の、ほとんど裸。
 魔法のように真っ白な肌、細い腕。
 華奢な身体つき、かわいらしいおへそに、とても控えめなお胸、それに、淡い桜色の……。
 あれ、こんなん俺が見ちゃいけないやつだわ。
 すぐに目を逸らす。

「ひゃーっ! 基樹さん見ちゃ駄目!」

 みっしーがかぶっていた風呂敷であわててアニエスさんの身体を包む。
 ごめん、ちょっと見えちゃった、すこし罪悪感。

「ふー、カメラ切っているタイミングでよかったよー」

 紗哩シャーリーがそういう。
 まじでよかった、yootubeってグロには甘いくせにエロには厳しいからなあ。
 アニエスさんはぼーっとした顔で、あたりを見渡している。
 金髪青メッシュに透き通るような碧い瞳。

「Where is this place?」

 アニエスさんがつぶやく。

「あ、あの、こんにちは、えーとアイアムミシカ ハリヤマ!」
「ミシカ……ミシー?」
「イエース!」

 と、そこでやっとハッとした顔をしたアニエスは、

「ワタシ、vampireニ……?」
「大丈夫だ、アンジェラ・ナルディはやっつけた。もうアニエスさんはヴァンパイアじゃないです」
「ヤッツケタ……? アノ、vampire lord ヲ……? キミタチガ……?」
「はい、だから今は安全です」

 しかし、アニエスさんの声、初めて生で聞いたけど、すごく印象に残る、綺麗な声をしているなー。
 なんかこうフルートっぽいっていうか、音楽的。
 アニエスさんは順々に俺たちの顔を見ていく。

「ミシカ、モトキ、Shirley。クライアントニタノマレタ タンサクシャ……」
「うん、あたしたちは無事だよ! ……あたしの名前の発音、なんかかっこよかった、本場の発音もいい!」

 ちょっと嬉しがっている紗哩シャーリー

「ワタシノ party memberハ……?」

 それについては、俺たちは残念なニュースをアニエスさんに伝えざるを得なかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

無能な悪役王子に転生した俺、推しの為に暗躍していたら主人公がキレているようです。どうやら主人公も転生者らしい~

そらら
ファンタジー
【ファンタジー小説大賞の投票お待ちしております!】 大人気ゲーム「剣と魔法のファンタジー」の悪役王子に転生した俺。 王族という血統でありながら、何も努力しない怠惰な第一王子。 中盤で主人公に暗殺されるざまぁ対象。 俺はそんな破滅的な運命を変える為に、魔法を極めて強くなる。 そんで推しの為に暗躍してたら、主人公がキレて来たんだが? 「お前なんかにヒロインと王位は渡さないぞ!?」 「俺は別に王位はいらないぞ? 推しの為に暗躍中だ」 「ふざけんな! 原作をぶっ壊しやがって、殺してやる」 「申し訳ないが、もう俺は主人公より強いぞ?」 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル総合週間ランキング50位入り。1300スター、3500フォロワーを達成!

【R18】らぶえっち短編集

おうぎまちこ(あきたこまち)
恋愛
調べたら残り2作品ありました、本日投稿しますので、お待ちくださいませ(3/31)  R18執筆1年目の時に書いた短編完結作品23本のうち商業作品をのぞく約20作品を短編集としてまとめることにしました。 ※R18に※ ※毎日投稿21時~24時頃、1作品ずつ。 ※R18短編3作品目「追放されし奴隷の聖女は、王位簒奪者に溺愛される」からの投稿になります。 ※処女作「清廉なる巫女は、竜の欲望の贄となる」2作品目「堕ちていく竜の聖女は、年下皇太子に奪われる」は商業化したため、読みたい場合はムーンライトノベルズにどうぞよろしくお願いいたします。 ※これまでに投稿してきた短編は非公開になりますので、どうぞご了承くださいませ。

【R18】TS銀竜人ちゃんの異種姦妊娠出産ダンジョン 触手編

みやび
ファンタジー
TS銀竜人ちゃんが、迷い込んだダンジョンを攻略しようとする話です。 無茶苦茶犯されて無茶苦茶にされます。 前作 【R18】TS銀竜人ちゃんの異種姦妊娠出産ダンジョン オーク編 https://www.alphapolis.co.jp/novel/902071521/501488799

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

WorldReversi

りすわん
SF
感情表現がちょっと苦手で健気な少女兵が、 銃と硝煙、それに廃墟が並ぶシビアな世界を懸命に生き抜いていく ――そんな物語。 ==== R18G。 ヒロインがリョナられながら魔物を相手に戦い続ける。 腹パンなどの暴力表現と性的なシーンが多くあります。

義兄に告白されて、承諾したらトロ甘な生活が待ってました。

アタナシア
恋愛
母の再婚をきっかけにできたイケメンで完璧な義兄、海斗。ひょんなことから、そんな海斗に告白をされる真名。 捨てられた子犬みたいな目で告白されたら断れないじゃん・・・!! 承諾してしまった真名に 「ーいいの・・・?ー ほんとに?ありがとう真名。大事にするね、ずっと・・・♡」熱い眼差を向けられて、そのままーーーー・・・♡。

魔術師セナリアンの憂いごと

野村にれ
ファンタジー
エメラルダ王国。優秀な魔術師が多く、大陸から少し離れた場所にある島国である。 偉大なる魔術師であったシャーロット・マクレガーが災い、争いを防ぎ、魔力による弊害を律し、国の礎を作ったとされている。 シャーロットは王家に忠誠を、王家はシャーロットに忠誠を誓い、この国は栄えていった。 現在は魔力が無い者でも、生活や移動するのに便利な魔道具もあり、移住したい国でも挙げられるほどになった。 ルージエ侯爵家の次女・セナリアンは恵まれた人生だと多くの人は言うだろう。 公爵家に嫁ぎ、あまり表舞台に出る質では無かったが、経営や商品開発にも尽力した。 魔術師としても優秀であったようだが、それはただの一端でしかなかったことは、没後に判明することになる。 厄介ごとに溜息を付き、憂鬱だと文句を言いながら、日々生きていたことをほとんど知ることのないままである。

いらないと言ったのはあなたの方なのに

水谷繭
恋愛
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。 セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。 エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。 ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。 しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。 ◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました🍬 ◇いいね、エールありがとうございます!

処理中です...