空のない世界(裏)

石田氏

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4章 外の世界

01

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 無事、退院した真紀と山吹は再び学校生活が始まった。
 


 各生徒は自分たちの席につき、教師が来るのを待った。一週間ぶりの学校となるが、今も水口教官と東は見つかっいなかった。あの一件で、発見されてないとしたら、逃げきった可能性もある。しかし、それなら何故姿をあらわさないのか。噂では、既に黒の王のところまで、連れて行かれたのではないのかという意見がある。
 とにかく、国をあげて捜索にあたっている。私達ができることなんてない。だから、こうしていつも通り学生らしく学校に登校するしかなかった。
「ふきちゃん、確か水口教官の代わりに別の教官が配属されるんだよね」
「うん。どんな人だろうね」
そんなことを言っていたら、教室のドアが開いた。噂をすればなんとやらだ。そして、教室に入って来た教官を見て、皆驚き、全員の目が点になった。
「英雄様だ・・・」
誰かが言った。教卓の前に立つ、一人の少女。それはさくらだった。
「えぇ~~!?」
「さくら様が新しい教官?」
「はい、そうです。皆さんのクラスを受け持つことになりましたさくらです」
それを聞き、皆歓声をあげた。英雄様に直々に指導するというのだ。
「ふきちゃん。確かさくら様は幻術の能力だよね」
「うん、そうだよ。そして、その能力と今の首相のキャプラ様の協力で、ピンクの少女を倒したの。色なしの少女でも、色ありの少女に勝てると証明した最初の人だよ」
「すげぇ」
皆の興奮をおさえるかのように、さくらは両手を叩いた。
「みんな、静かに。今はホームルーム中です」
その指摘に、皆一斉に静かになり、背筋を伸ばした者までいた。
 静かになったのを確認すると、さくらは続けた。
「みなさんは、あの一件でこの国にとって大きく期待されています。いや、国のみならず他の国、世界規模からしても、既にみなさんのことは知られています」
「つまり、私達は有名人ってことですか?」
「そうです。あなた達は色ありの少女、トリニティのNo.2を倒したのです。これは凄いことです。誰もが真似できることではありません」
「ですが先生、あれは全員が協力してたまたま倒せただけではないんですか?」
「いいえ。たまたまで倒れる相手ではないのです。実際、アメリカのとある色なしの少女が集まる学校に襲撃がありました」
「!」
「ちょうど、皆さんが入院している最中です」
「先生、それでどうなったんですか?」
「全滅しました。たった一人の少女に全校生徒400人強が、全員殺され亡くなりました」
「ぜ、全滅!?」
「生存者ゼロ」
「!」
皆、唾を飲み込んだ。
「だからこそ、あなた方に世界は注目しているのです。だから、自分たちは周りに評価されていることを自覚して、これから生活していただきたいのです。
 それと、理事が不在ですが、お兄ちゃんが理事の代理を勤めます」
「お兄ちゃん?」
「あっ!えっと・・・首相が理事の代理になります」
「えっ、首相が!?」
「実は、かなり前から東さんが、自分がいなくなった時の為に、首相にいくつかお願いをしておりまして、その一つが理事の代理をお願いするとのことでした。まぁ、首相が理事長を受け持つのは前代未聞ですが、事態が事態なもので、例外として受け持つことになりました。
 さて、話しを戻しましてみなさんに世界は期待していると言いました。それなら、その期待にこたえられるよう、国が全力で資金源等、全面支援することになりました。これから、みなさんには能力向上に向けた、新しいトレーニングルームを用意しております。そこでは最新鋭の設備が揃っていますので、みなさんはこれから毎日、そこでトレーニングに励んでもらいます。因みに、一人一人にマネージャーをつけて、みなさんのトレーニングのアシストをしてもらえるので心配はいりませんよ」
「な、なんか凄い待遇なんだけど」
「だいたいの説明は以上です。何か質問がある方は挙手をお願いします」
しかし、特に誰も挙手する様子はなかった。
「質問が無いようなので、これでホームルームを終了します。あっ、真紀さんは後で相談室に来てください。では、解散」
全員が起立をし、教官に礼をする。
 ホームルームが終わり、各々解散する中、真紀と山吹はまだ教室に残っていた。
「相談室って、何の呼び出しだれ?」
「成績の話しだったりして。真紀ちゃんは、実技は最高得点だけど、筆記になると全然駄目だからね」
「むっ・・・」
「まぁ、行けば分かると思うよ」
「そうだけどさ・・・・」
真紀は渋々、相談室へと一人で向かった。




 コン、コン
「失礼します」
「はい」
ドアを開き中に入る。ここは相談室。既に席についているさくら教官がいた。
「どうぞ、席について」
「はい、失礼します」
「あなたを呼んだのは、お願いがあるの」
「お願い?」
「先程のホームルームでも話した通り、アメリカで色ありの少女による被害があった。そして、それは今も続いている。アメリカでは、既に応援要請がきてるの。そこで、あなたにアメリカにいる少女の攻略戦に参加して欲しいの」
「私がですか?」
「えぇ。真紀さん・・・会ってそうそうだけど、真紀ちゃんって呼んでいい?」
「あっ、はい」
「じゃあ真紀ちゃん、青髪の少女にとどめを刺したのは真紀ちゃんでいいんだよね」
「はい」
「真紀ちゃんのことは、東さんから実は聞いてるの」
「えっ?」
「真紀ちゃん、青髪の少女にとどめを刺したことを覚えてる?とどめを刺した時、どんな能力を使ったのか教え欲しいの」
「!」
「お願い、答えて。これは重要なことなの」
「・・・破壊の能力です」
「真紀ちゃんの能力は、透明化の能力だったはずだよね」
「はい」
「でも、他の能力も同時に持っていると」
「はい。最初は透明化だけでした。だけど、いつからか夢に金髪の少女があらわれた時から、破壊の能力が使えるようになりました」
「金髪の少女!」
「はい。でも、その時の一回限りです」
「成る程。まだ謎は残るけどだいたいは理解したよ。じゃあ真紀ちゃんは、透明化の能力と破壊の能力を持ってるんだね」
「いえ、違います」
「えっ?」
「他にもあります」
「他にも!?」
真紀は自分が持ち得ている全ての能力を伝えた。それはかつて倒した少女、紫、赤、ピンク、白が持っていた能力だった。そして、最近では新たに黄、緑、青まで能力を手にしていた。
 つまり、今まで倒してきた色ありの少女の能力を全て持っていることを意味していた。
「はぁ、成る程ね。東さんが、真紀ちゃんばかりに目がいく理由がなんとなく分かったよ」
「?」
「真紀ちゃん、是非アメリカに行って、橙色の少女を倒して欲しい!」
「・・・・先生、一つ質問よろしいですか?」
「ん?何かな」
「東理事長は自分が消える前にいくつかお願いしたんですよね。一つは理事長の代理の件。他に何をお願いしたんですか?」
「あぁ、その事ね。これは機密事項だから、他の人には教えないこと」
真紀は頷いた。その返事に納得したさくらは答えた。
「一つは首相が理事長代理を勤めること。そして、他にも3つ。まず、真紀ちゃんのことを宜しくお願いすると言われたね」
「私?」
「それと、世界構築の少女を絶対に守りきること。最後に真紀ちゃんが茶色の少女と灰色の少女と出くわした時、監視カメラではもう一人他に少女がいたようなんだけど、そこだけ何かに邪魔されていてよく分からないの。そのもう一人の少女の解析よ」
「茶色と灰色って、犬耳と猫耳があった少女のことですか?」
「そうだよ」
「でも、あの時は二人しかいませんでしたが」
「それでも、監視カメラには映っていたの。東さんは嫌な予感がするとも言っていたけど」
「そうですか・・・。さくら先生は世界構築の少女についてどれぐらい知っているんですか」
「残念ながら何も。世界構築の少女については東さんしか知らないはずだけど」
「分かりました」
「それでは、さっきの質問なんだけど」
「はい、行きます。是非行かせてください」
「その返事が貰えて良かった。じゃあ、アメリカへ出発する日時だけど」
「はい」
さくらは、アメリカ出発の日時と作戦を伝えた。




「それで、真紀ちゃんは3日後にアメリカへ出発するの?」
相談室から戻って来た真紀は山吹に質問攻めにあっていた。
「うん」
「何で真紀ちゃんだけなの」
「私が特別だからだって」
「複数の能力を持っているから?」
「うん」
「それで、真紀ちゃんを危険な所に送ろうって話しなんて・・・・。真紀ちゃんはそれでいいの?」
「うん。困ってる人を助ける力があるなら、助けに行きたい」
「真紀ちゃん、それは使命じゃなくて自分の意思なんだよね」
「うん」
「・・・・はぁ、分かった。でも、無理はしないでね」
「うん。ごめんね、心配かけさせちゃって」
「今に始まったことじゃないでしょ。その代わり、絶対に帰って来てね」
「うん、分かった」




 そして、アメリカ出発当日。
 空港に、真紀の姿があった。
「来たね」
「おはようございます、さくら先生」
「おはよう。私はここであなたを見送ることしかできない。前も説明したけど私は同行できないから、現地にいる人の指示に従って。一様、空港には迎えがいるはずだから。何かあったら遠慮なく連絡頂戴」
「分かりました」
「じゃあ、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
そうして、真紀はゲートを通過した。



 日本からアメリカまで約9時間かけて飛行機で向かう。その飛行中、真紀はあることに気づいた。
「私、飛行機苦手だった」
トイレにこもり、吐き続けた。
 そうして、やっとの思いでアメリカに到着した。
「はぁ~、やっと着いた。でも、日本に帰る時も飛行機乗るんだよね。しかも、帰りは12時間かけて帰るんだよね・・・、帰れないかも。ごめん、ふきちゃん。約束守れそうにないや」
そう言いながら、現地の迎えの人を探す。
「私、英語喋れないから日本語喋れる人がいたら助かるんだけど・・・」
すると、日本語(ひらがな)で真紀と書いてあるプラカードを見つけた。急いでその場所に駆け寄る。そこには体格ががっちりした黒人男性がいた。
「あ、私真紀です。アイアム、マキ」
「日本語で大丈夫です。私、分かります」
「良かった。日本語喋れる人がいて」
「ようこそ、アメリカへ。早速ですが、駐車場に向かいましょう。これから、作戦本部へ向かいます。と言ってもホテルですが。因みに、マキさんがここに滞在する際の住まいも、同じホテルになります。ホテル代や、その他の費用は他で出ますので心配はいりません。あと、こちらのカードをお渡ししときます。買い物の際はこちらをお使い下さい。日本に帰国する際に返却して頂ければよろしいです。では、行きましょうか」
「はい」
二人は駐車場へと向かった。




 車で空港から3時間程かけて、目的地のホテルに到着した。
「こちらがルームキーになります」
「ありがとうございます」
「まずはお部屋に行き荷物を置いてくるといいでしょう。1時間後に下のロビーに来てください。そこで、メンバー紹介したいと思います」
「分かりました」
そう言って、黒人の男の人と別れた。
「そういえば、あの人の名前聞くの忘れてたな」
とりあえず、自分の部屋に向かうことにした。




 集合の10分前、真紀は集合場所のロビーに来た。既にもう皆集まっており、自分が最後だった。
「すいません、なんか待たせちゃって」
「いや、いいんだ。まだ待ち合わせ時間まで結構早い。私らは暇だったから早く来てただけだよ。それより、少し早いが集会をやってもいいか?」
「あっ、はい」
「と言っても、今日は自己紹介だけで、作戦会議は明日だ。真紀さんもこちらに来たばかりだ。今日は、これが終わったらゆっくりと休むといい。
 私は、このメンバーのリーダーをやっているマドセインだ。隣にいるのがケイティで、もう一人がエリザベートだ」
「あの、3人だけですか?」
「君を含めて4人だ」
「この数で戦うんですか?」
「真紀の言いたいことは分かる。しかし、この人数だけで戦うしかない。他の国にいる有能な少女たちにも招集はかけたが、来たのは君だけだ」
「アメリカにいる少女達は?」
「真紀も知ってると思うけど、400人強の少女が全滅した。数で敵わない相手だと分かっていて、ここに来た少女は我々だけだ。それ以外は皆逃げたよ。遠くに避難した。立ち向かわなきゃ、なんの解決にもならないのにな。我々アメリカ人は、日本人と違って簡単に故郷を捨てて逃げる卑怯もの揃いだ。兵器をちらつかせて、自分達は強いと言ってるだけで、兵器が通用しないと分かると寝返る、世界で一番弱い国なんだ」
「自分たちの国をそんなこと言っちゃ駄目だよ」
「真紀は優しいな。でもな、私はこの国を愛せないんだよ。それでも、自分の故郷は守るつもりだ。だから、ここにいる。
 いや、すまない。つまらない話しだったな。自己紹介は終了だ。明日の朝8時にここにまた集合してくれ。では、解散」
「ちょっ・・、まだ私自己紹介してないよ」
しかし、マドセインは行ってしまった。代わりにケイティが答える。
「ゴメンね。自分達故郷を守りに集まった自分達の国の人があまりにも少な過ぎて、ショックが隠せないの。でも、それには理由があるの。マドセインが言ったこともあるけど、大統領が女の子に戦わせるのに反対しているの。アメリカ軍が対処してみせるって言い出したの。だから、少女攻略戦に参加せず避難するよう指示を出したからよ」
「そんな!色ありの少女相手に兵器何て通用しないのに」
「大統領は次の選挙のことしか考えていないから。若い女の子が沢山死んだことに、野党は大統領に責任追及をしている。これ以上の被害は避けたいみたいなの」
「今、選挙の話をしてる場合じゃないのに」
「確かにね。政界も最悪なタイミングで少女があらわれたものだと、嘆いていたよ。大人なんて、自分の利益のことしか考えてないから」
「狂ってる・・・・」
「そう思うのが普通だよ。大人はそれに気づけないけどね」
「私は大人の考えてることが分からない」
「同感。まぁ、そんなこと言うと、まだまだ子供だなって言われるんだろうけど、子供のままのほうがいいに決まっている」
「そうだね」
「私たち、気が合いそうだね。私はケイティ。能力は脳内ジャック」
「脳内ジャック?」
「相手の脳をハッキングする能力だよ」
「スゲー。あっ、私の名前は真紀」
「知ってるよ。有名人だもん」
「あははは、そうなんだ」
「うん。あっ、もうこんな時間。ゴメンね、長い時間足止めさせちゃって。また、明日」
「うん、また明日」
そう言って、二人は各々自分の部屋に戻った。




 部屋に戻った真紀は、窓の外を見る。
「何かよく分かんないや。でも、ここに来たからには勝って帰る!」
真紀は強くそう宣言した。



【アメリカ滞在・2日目】


 朝。8時、全員ロビーに集合していた。その後、話し合って朝食をとりながらミーティングをすることになった。
 ホテルの朝食は毎回、バイキング形式だった。各々、自分の食事をよそい、席についた。ミーティングの司会はリーダーのマドセインだ。
「さて、今回の少女だが、橙色の少女の能力は炎を操る能力だ」
「炎ですか?」
「あれ、真紀ちゃんは知らなかったの?」
ケイティの疑問に素直に答えた。すると、皆驚いて思わずケイティは声をあげた。
「嘘でしょ。知らないで来たの?普通、相手の能力次第で、自分の能力と相性がいいのか悪いのか気になるでしょ」
「あぁ~、私複数の能力持ってるから、あまり気にしなかったけど・・・」
「えっ、複数の能力?」
真紀はケイティが身をのりだして聞いてくるのに少し抵抗を出しながら、頷いた。
「え、えぇーーーー!?」
最早、周りの目など気にしていなかった。大声で驚くケイティにマドセインが落ち着くように言った。だが、その当人さえ驚きの顔までは隠せていなかった。
 マドセインは言う。
「少女が複数の能力を持っていることは前代未聞なんだ。しかし、君はある意味例外な存在なのかもしれない」
「例外?」
「世界構築の少女によって生まれた少女のうち、例外的存在の少女は、世界構築の少女に特別な能力を受けとると言われている。
 例外的存在の少女とは、世界構築の少女に好まれるような子を意味するのだ。つまり、人間でありながら高評価を貰うだけの価値があると認められ、色ありの少女と同等の能力を渡されると言う噂話しがある。それが噂話しなのは、今までその例外的存在の少女があらわれなかったからだ。しかし、今証明された。
 真紀の話しによると、最初の能力は透明化らしいが、しかし実はそれは後から追加された能力だと私は思う。真紀の能力は相手の能力を自分のものにする能力。故に複数の能力を所持することが可能となる。つまり、真紀は


      例外的存在の少女であり、無色の少女


であると」
「つまり、世界構築の少女によって生まれた、色ありの少女ってことですか」
「そうだ。しかも、色ありで色がない、例外的色と言うわけだ。まさに、最強の少女誕生と言うわけだ」
真紀はマドセインの言うことに、何も反応を返せないでいた。




【アメリカ滞在・3日目】


 昨日のミーティングから、少女攻略は予定通り3日後におこなうことが決まった。昨日から3日後なので、今日で作戦決行まで後2日後になる。それよりも、マドセインが言った「例外的、無色の少女に今回は期待させてもらう」と言われたことに、いつの間にか自分に重大な責任を押し付けられたように感じていた。
 コン、コン。
「真紀ちゃん、いる?」
ノック音と共にケイティの声が部屋まで聞こえてきた。別にチャイム(インターホン)がないわけじゃないんだが、ケイティはいつもノックをしてくる。本人曰く、チャイムがあることをいつも忘れるとのこと。ケイティは田舎出身で、家にインターホンは無いんだそうだ。
「今行きます!」
その返事にケイティは少しだけ待ってくれた。



 少女攻略までの期間、各自の準備期間だとマドセインは言っていたが、特にやることがない真紀とケイティは、せっかく日本から来たのだから観光はどうかと、ケイティに誘われたのだ。真紀にとっても今回のアメリカ滞在は、初めての海外旅行のようなものだった。
 英語が苦手な真紀は、ケイティの誘いにのることにした。と言うより、誘ってもらって助かった感じである。故に、
「誘ってくれてありがとうね」
「ううん、お礼なんていいんだよ。逆に迷惑だったかなって思ってたとこだったから」
「そんなことないよ」
「そう言ってくれると助かる。それより真紀ちゃんはアメリカに来るのは初めてなんだよね?」
「と言うより、日本に出たことが初めてって言うか・・・・」
「うんうん。でも、大丈夫だよ。私なんてまだ海外に行ったことないから、真紀ちゃんの方が先輩だよ」
「あっ、そうなんだ」
「と言うか、海外に行ける人なんてそうそうないよ。だから、日本の学校の修学旅行が、海外旅行って知った時は驚いたよ。日本は金持ちの子供(家庭)が多いんだなって」
「そんなことないよ。多分、どこも一緒だと思う。日本の全ての学校が、修学旅行が海外とは限らないし」
「あっ、そうなんだ」
「うん」
「それより真紀ちゃんは、どこか行きたいとこある?」
「ごめん。アメリカのことあまり知らないんだ。だから、エスコートしてくれると助かる」
「了解!じゃあ、ついて来て」
 真紀は言われるままに、ケイティについて行った。
 


まず、観光スポットをいくつか周り、その地域の有名な飲食店でお食事をした。
「うま~」
真紀の反応にケイティは思わず笑った。
 その後も、ケイティのエスコートは続いた。
「私の友人のふきちゃんに、おみやげ買いたいんだけど」
「うん。私、いいとこ知ってるよ!」
真紀とケイティは色々なお店を周り、ショッピングを楽しんだ。
 「これなんてどう?」
ケイティは光るイルカのキーホルダーを見せた。
「うわぁ~綺麗」
「真紀ちゃんのお友達喜ぶかなって、思ったんだけど」
「うん、絶対喜ぶと思う。ありがとう」
「いえいえ、どういたしまして」



 その後、ケイティと真紀は夜景の絶景スポットを見て、ホテルへと帰った。
「今日は本当にありがとう」
「私こそ。真紀ちゃんと一緒にあちこち行けて楽しかったよ」
「えへへ」
そう言いながらホテルロビーに到着した。すると、ロビーにある巨大テレビに多くの人だかりが集まっていた。
「何だろう?」
「ケイティか。それに真紀も一緒か」
「マドセインもこんなところにいたんだ。マドセイン、これはいったい何事?」
「アメリカ軍が独自で、橙色の少女に今日の夕方頃挑んだんだ」
「えっ、どうしてなの!?」
「アメリカ軍も、女の子供に戦果をとられ、自分たちは何も出来ないとなったら、プライドが丸潰れ。しかも、予算カットもされるだろう。その前に対策をとったと言うべきだろうか」
「それでどうなったの?」
「出動したアメリカ軍は全滅した」
「どうして・・・・、どうして大人達は何にも分からないの!」
「ケイティ、最後まで話を聞いてくれ。それよりもっと最悪なことがおきた」
アメリカ軍の全滅。それ以上の悪いことなど、ケイティと真紀の二人は、想像ができなかった。
「実は、アメリカ軍が出動した際に、アメリカ軍が新しい兵器の開発をおこなっていたんだ。その兵器は無人機AIロボ・maximum。その兵器が暴走して、街を襲っているんだ」
「なんだって!?」
「無人機AIロボ・maximumは、少女攻略に実用性があると言われていた兵器。通常の兵器と違い、少女対策専用ロボ。つまり、少女キラー・マシンだった。
 少女による能力の攻撃を、能力ごと無効果する特殊装甲を持っているの。原理は分からないけど、そのポンコツがシステムエラーをおこし、街を襲っているってわけ。まぁ、無理もないさ。試験運用する前に、いきなり本番で起動させちまったんだから」
「そんなことはどうでもいい。それでどうするの?」
「どうするって、何も出来ないさ。相手は、敵味方の識別が出来ない兵器なうえに、うちらの能力は効かないんだ」
「じゃあ、どうなるの?」
「あのポンコツが停止するまで放置するしかないだろう。まぁ、停止するまで後1時間はあるが」
「それまで大人しく街を破壊されろって言うの?」
「アメリカ軍が勝手にやったことだ。うちらに関係はない」
「・・・マドセインさ、それは違うよ。関係あるんだよ。アメリカ兵も、自分たちの国守ろうとしたんだよ。確かに、結果自分たちの国を襲われてる形にはなったけど関係無いなんて言えないよ」
「・・・・」
「私は行く!真紀ちゃんも一緒にお願い。私たちの国を助けて」
「うん、分かった」
しかし、マドセインは二人の行く手をさえぎった。
「駄目だ、行かせない!うちらには、橙色の少女攻略がある。maximumの所へは行かせるわけにはいかない。それに、真紀はこの件には関係ないだろう。真紀は少女攻略の為に来てもらってるんだ。こんなことで怪我でもされたら困る」
「それでも私もケイティと一緒に行きます!」
「真紀ちゃん・・・・」
「何故だ、何故行く!?」
「ケイティは、私の大事な友人です。友達の助けに答えるのが友情だと思っています」
「マドセインさ、結局あんなに偉そうなの言ってだけど、貴方も逃げてるのと一緒だよ。ここで行かなきゃダメでしょう!」
「ケイティ・・・・」
ケイティの必死な訴えにマドセインは遂に、心がおれた。
「分かった。でも、無駄死には許さない。maximumは1時間弱で自動停止するんだ。無理した行動は認めない。危険だと判断したら絶対退避だ」
二人は頷く。と、そこへ
「その話、聞かせてもらったわよ。私も同行するわ」
「エリザベート!・・・・、分かった。なら、チーム全員集合ってことで、橙色の少女攻略前に、チームワークを高めた模擬戦といこうか」
マドセインはチーム全員の顔を見て、勝手に頷き、宣言する。
「では皆、行くぞ!」
「「おぉーー!!」」
チーム全員が拳をあげ、大声をあげた。
(字数オーバー02へ)
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