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10章 隠
01
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「うわー負けた」
『キングスワーク』の一件で褒美として貰ったゲーム機でピコピコ遊ぶ真紀は、今日も暇していた。
真紀と山吹は、宇宙エレベーターの件で証人としてアメリカの長期滞在を余儀無くされているが、その際の生活費は国が支給された。この真紀達が泊まるホテルも同様にタダで泊まらしてもらっている。
コン コン
「はーい」
ノック音に反応した山吹は、ドアを開けた。
「よお!」
「あ、ブライアンさん」
「遊びに来たぞ」
「どうぞ」
「あぁ」
ブライアンはすすめられるがまま部屋に入った。
「ブライアン刑事は今日も仕事サボり?」
「なんだ、真紀。これは立派な仕事だぞ。君らが証人である以上、護衛は必要だろ」
「さっき、遊びに来たぞって言わなかった?」
「あぁ・・・・空耳だろ?それよりどうだ、そのゲームで対戦でもしてみるか?どうせ暇なんだろ」
「ブライアンさんが暇なんじゃないんですか」
「いや、俺は忙しいさ。ただ、ちょっと休憩さ」
「それ、昨日も言ってましたよ」
「そうか?」
そう言って、真紀とゲーム対戦しはじめた。それを見て、山吹はため息をつく。
「真紀ちゃんが二人になったみたい。しかも大きな大人バージョン……」
そう呆れた目で二人を見た後、山吹きは別の部屋(寝室)に行き、そこにある小さなテレビをつけた。
「アメリカの番組とかいまいち分からないんだよね・・・・そう思うと、早く日本に帰りたいかな」
そう言いながら、チャンネルをまわす。そして、とある番組になった時、山吹の手が止まった。
「ねぇ、真紀ちゃん!ブライアンさんも来て!」
「なに?」
「何だ?」
と、一度ゲームを中断させ、山吹の元へと急いだ。
「どうしたの?」
「何事だ?」
「いいからテレビ見て」
そう言われテレビを見ると、画面にはニュースキャスターと一緒に四足歩行のデカイ怪物?化け物?が映っていた。
『大変です!突然街中にあらわれた怪物は人を襲い暴れ回っています。今、アメリカ軍と警察が出動して対処していますが、見ての通り銃弾は怪物に通用しないようです』
「何あれ?どっからあらわれたの?」
「ニュースは突然あらわれたって言ってたけど」
「いや、まてよ・・・・」
ブライアンは少し考えた後、何か思い出したような顔をした。
「確か都市の真下には地下通路があったはずだ」
「地下通路?」
「だいぶ前に封鎖され今じゃ秘密の通路になっているが、おそらく奴はそこを通って来たんだ。でも何だ、あの化け物は」
すると真紀の腰に刀が突然あらわれた。それを見た真紀は確信した。
「多分、奴らだ」
+ + +
とあるビルの屋上ーー
そこに、メイド服を着た少女がいた。
「この爪で切り裂くものは何?何の為に今日も傷つけるの?」
メイド服の少女、ベルンは下で暴れる化け物を見て言った。
風がふくーー
「……アンジェ」
メイドはそう言うと、姿を消した。
+ + +
「本当について来るのか?」
「いいから早く行って!」
「分かった」
ブライアンは真紀に言われ、車を急発進させた。
その頃、山吹はホテルの窓から真紀が乗る車が急発進したのを見届けていた。
「何でいつも真紀ちゃんは危ない世界に踏み込むの?もう能力も失った世界になっても、何で真紀ちゃんだけはいつも戦いの中心にいなきゃいけないの?私は言ってあげたい。もう戦わなくてもいいよって。でもダメなんだよね。真紀ちゃんにしか救えない戦いだから、逃げちゃダメなんだよね。……本当、神様は一人に不幸を押しつけしすぎよ」
ドンドン!
「え?」
急にドアを激しく叩く音がした。
「誰?」
山吹は警戒しながらドアに近き、小さな穴を覗く。しかし、ドアの前には誰もいなかった。
「え?」
ドンドン
しかし、ドアに誰もいないはずなのに、ドアを叩く音はやまなかった。
山吹は、意を決してドアを開けた。
そこには、さくらと一緒にいた赤ずきんだった。
「お姉ちゃんが消えちゃった……助けて」
「!」
+ + +
「警察だ!」
ブライアンはバッチを見せ、ゲートに入った。真紀もブライアンに続いて入った。
ブライアンは一人の警官を見つけると、声をかけた。
「状況を説明しろ!」
「はい。怪物は、たった今地下通路に再び入り現在警官が捜索している最中であります。地下通路に繋がる地上の穴は全てふさいでいますが、正直破られてもおかしくありません。今、軍と協力していますが、化け物の体は思った以上に頑丈で、拳銃は通用しません」
すると、今の警官の説明を聞いていた刀はカタカタとなりだし、「当然だ」と言った。
「巫女に召喚された武将に人間の兵器は通用しない。強者よ、我を使い奴を斬らないことには、この事態を終わらせることは出来ない」
「分かってる」
そう言って、真紀は地下通路に向かって走り出した。
「おい、どこ行くんだ!戻って来い」
しかし、真紀はブライアンの言うことを無視してそのまま地下通路に突っ込んだ。
「あの野郎!」
ブライアンも真紀を追いかけようとした時、近くにいた警官にとめられた。
「ブライアン刑事、危険です。まだ、あの中に化け物がいるんですよ」
「そんなこと言ってる場合か!民間人が今、あの中に入って行ったんだぞ」
「今、地下通路で捜索にあたっている者に連絡を入れますので、刑事はここでお待ちください」
「くそっ」
その頃、地下通路に侵入した真紀は、真っ暗な通路を携帯のライトで照らしながら進んでいた。
「奴がどの辺にいるとか分からないの?」
「残念ながら、ここの地下通路がどのような構造か分からない以上、何とも言えないな。唯一言えるのは、奴が近くにいるかどうかだろう。気配ぐらいは感じられるからな」
「なら、近づいたら教えて」
「それは了解したが、この暗闇の中でどうやって奴と対決するつもりだ?奴はこの暗闇でも問題なく動けるぞ。それに、奴は六大武将の中では肉弾戦、近距離戦共に最強だぞ」
「そのことなんだけど、何で武将はどいつも普通の奴がいないの?」
「我らは巫女に召喚されたと話したと思うが、言わば我らは陰陽師によって作られた架空の存在なんだ。陰陽師にとっての最強と思われた想像によって生まれたからだ」
「陰陽師ってなんなの?」
「陰陽師は言わば術士だが、その家系はほぼ滅ぼされている。簡単に言うと、魔女狩りがあったように術士も政府によって滅ぼされた身だ。術士の誕生は魔女と同じく血筋に関係するが、その誕生の裏にあるのはかつての色ありの少女だ」
「色あり!?」
「我が主も構築の少女に色を貰った色ありの少女だったのだろ?ならば、色を失ってもその血が覚えている。色を失った色ありの少女の後遺症と言うべきか、呪われた血筋は術士として陰陽師を語ることができる。つまり、そなたもまた陰陽師の血筋となる。故に我を行使できる。我を行使出来るのは陰陽師の血筋のみだ。
それは、今騒ぎをお越しているのは色ありの少女の生き残りということだ」
「何で色を失っても能力が使えるわけ?」
「血が既にその色を取り込んだのだ。遺伝子と言っても言いが、色は主の体に染み込み」
「もう、いい。ワケわからなくなった。考えるより、敵を倒した方が楽。それより、アイツに名前とかないの?」
「冂獸。はるか遠いという意味を持つ奴は、次元が違うぐらい強いぞ。奴の武具は戦闘向きの肉体だ」
「武具って何でもアリなんだね」
「肉体も武器と言うらしいが?」
「そんなの知らないよ」
「……我が必死に説明しているのに」
「興味なくなった。多分、説明聞いても3分の1も理解出来ない自信がある。私、バカだからやめよう、やめよう。敵がいる。そいつを倒す。終わり。いいじゃん、それで」
「もし、そんな話が物語になったら誰も読まないだろうよ」
「私が読むよ」
「・・・・・・・・そっか」
+ + +
その頃、山吹達はさくらが行方不明になった場所へと向かっていた。
「さくらさんはところで日本に戻ったんじゃなかったの?」
「お姉ちゃんはキャプラの秘書だったから、首相が今別の人に変わったから、お姉ちゃんはそのまま残ることになったの」
「そう……なの」
首相変わったんだ・・・・。そう言えば、キャプラさんはハーフだって言ってたけど、日本の首相でハーフの人はキャプラさんが初めてだったんだよね……。
「あ、ここ」
赤ずきんちゃんは指さして言った。
「え!?」
そこは何もない空き地だった。
「ここ?」
「うん」
「でも、何もないよ」
「あったよ。でも消えた。建物ごと」
「あー・・・・それは大変ね」
「本当だよ」
「う、うん……でも建物ごと消えたってどういうこと?」
「ぐすっ・・・信じてない・・ほんどうなのに・・・・」
涙目になって鼻水をすする赤ずきんちゃん。
「あ、信じてるよ。本当だよ。ただ、どうやって消えたのか知れば、さくらさんの身元の手掛かりになると思って」
山吹は必死に赤ずきんちゃんをなぐさめる。
「ぐすっ・・・・本当?それで、お姉ちゃん見つかるの?」
「えぇ。手掛かりがあればすぐに見つかると思うよ」
赤ずきんちゃんはそれを聞くと涙を拭い、山吹にこれまでの出来事を話した。
+ + +
場所が変わり、ここは地下通路ーーー
暗闇の中、永遠に続く通路を真紀はまだ歩いていた。
「奴はどこに行ったのよ」
少し歩き疲れた真紀は既に集中力が切れていた。
「静かにしろ!我々よりあやつが先に気づかれたら終わりだぞ」
「分かってるよ」
喋る刀に叱られ膨れる真紀。すると、どこからか、悲鳴のようなものが聞こえた。
「ねぇ、今の!」
「あぁ、奴だ。確か警官は、地下通路には警官と兵隊が奴の捜索をしていると言っていたな。おそらく、冂獸に襲われているのだろう」
「行くよ!」
真紀は走りこみ、悲鳴する方へと向かった。
「きゃあああぁぁぁーーーーー!!」
兵士のライトに微かに照され見えるその巨体。
「我が主よ、携帯のライトを消すのだ。奴に見つかる」
「そしたら私が見えない!」
「気配を感じるのだ」
「気配とか分かんないよ」
「我は感じとることができる。我が奴の居場所を知らせるからその通りに動いてくれ」
「分かった」
真紀は携帯のライトを消し、奴に向かった。
「きゃあああぁぁぁーーーーー!!」
「そこだ!我が主よ、前方右寄り3メートル先だ」
「分かった。私も少しは暗闇に目が慣れてきたから少しなら分かる」
そう言って、真紀は刀を鞘から抜いた。
冂獸は、他の兵士を襲い食らっていた。その隙に真紀は素早く気づかれないように後方に回る。が!
グルルル
「ちっ、気づかれた」
冂獸は後の気配に感じ、体をそちらに向ける。真紀は奴の視界に入らないよう自分も動く。
「これは運しかないな」
そう言って、一か八か冂獸の真下にまわりこんだ。
冂獸は、気配を察知した次なる獲物を探し動きそう我がまわる。真紀も必死に踏み潰されないよう動く。
そして、隙を見てもう一度冂獸の真下から出てきて急いで後方にまわり、今度はすぐに攻撃にまわった。
「恩剣山振大蛇」
しかし、冂獸は尻尾で真紀の刃を受け止めた。
「また!?」
真紀は態勢を立て直すべく、その場を一端離脱した。
グオオオォォーーーーー!!
後方で奴の雄叫びが聞こえるなか、真紀は振り返るが奴は追っては来なかった。
ーーー
「はぁ…はぁ…はぁ」
「我が主よ、危機一髪であったな。だが、あのあと直ぐ離脱したのは良かったぞ」
「お褒めの言葉はいいからアイツの攻略を少しは考えて」
「うむ。まず冂獸だが、一瞬ではあったがあやつの目が潰れているのが分かった。おそらく、あの兵士どもが冂獸の目を弾丸の雨で潰したのだろう」
「成る程。それじゃあ、逃げてる最中に考えた携帯のライトを囮にする策は使えないってことね」
「囮・・・・いや、使えるかもしれんぞ」
「え!?」
「ライトではないが奴の気をまぎらわすんだ。奴は目が見えない。奴は特に自身後方にかなりの警戒をしているようだから、奴の後方に物を投げつけそちらに気をやっているところに、あえて奴の前から攻め込むのだ」
「結構危険だね。でも、やるしかないね」
「それと、あの時は携帯のライトを消せと言ったが」
「分かってるよ。見えないから、ライトは使うよ」
「ライトの熱まで感知はしないと思うがな」
「どっちだよ!」
+ + +
その頃地上では、山吹が赤ずきんちゃんの話を聞いていた。
その話によると、とあるガレージのような建物に用があるとさくらは言ったらしい。赤ずきんちゃんはそれに付き添い、その建物の前まで来た。そこでさくらは赤ずきんちゃんに手土産を用意するのを忘れたから買ってきてくれと言われたらしい。
すぐ近くのお店でいいからと言われ、赤ずきんちゃんはそこに行って戻って来ると、そこはさっきまであった建物はなく、更地になっていたらしい。その時、さくらも一緒に消えていなくなっていたとのこと。
それはつまり、建物ごと神隠しにあったことを意味していたーーー
『キングスワーク』の一件で褒美として貰ったゲーム機でピコピコ遊ぶ真紀は、今日も暇していた。
真紀と山吹は、宇宙エレベーターの件で証人としてアメリカの長期滞在を余儀無くされているが、その際の生活費は国が支給された。この真紀達が泊まるホテルも同様にタダで泊まらしてもらっている。
コン コン
「はーい」
ノック音に反応した山吹は、ドアを開けた。
「よお!」
「あ、ブライアンさん」
「遊びに来たぞ」
「どうぞ」
「あぁ」
ブライアンはすすめられるがまま部屋に入った。
「ブライアン刑事は今日も仕事サボり?」
「なんだ、真紀。これは立派な仕事だぞ。君らが証人である以上、護衛は必要だろ」
「さっき、遊びに来たぞって言わなかった?」
「あぁ・・・・空耳だろ?それよりどうだ、そのゲームで対戦でもしてみるか?どうせ暇なんだろ」
「ブライアンさんが暇なんじゃないんですか」
「いや、俺は忙しいさ。ただ、ちょっと休憩さ」
「それ、昨日も言ってましたよ」
「そうか?」
そう言って、真紀とゲーム対戦しはじめた。それを見て、山吹はため息をつく。
「真紀ちゃんが二人になったみたい。しかも大きな大人バージョン……」
そう呆れた目で二人を見た後、山吹きは別の部屋(寝室)に行き、そこにある小さなテレビをつけた。
「アメリカの番組とかいまいち分からないんだよね・・・・そう思うと、早く日本に帰りたいかな」
そう言いながら、チャンネルをまわす。そして、とある番組になった時、山吹の手が止まった。
「ねぇ、真紀ちゃん!ブライアンさんも来て!」
「なに?」
「何だ?」
と、一度ゲームを中断させ、山吹の元へと急いだ。
「どうしたの?」
「何事だ?」
「いいからテレビ見て」
そう言われテレビを見ると、画面にはニュースキャスターと一緒に四足歩行のデカイ怪物?化け物?が映っていた。
『大変です!突然街中にあらわれた怪物は人を襲い暴れ回っています。今、アメリカ軍と警察が出動して対処していますが、見ての通り銃弾は怪物に通用しないようです』
「何あれ?どっからあらわれたの?」
「ニュースは突然あらわれたって言ってたけど」
「いや、まてよ・・・・」
ブライアンは少し考えた後、何か思い出したような顔をした。
「確か都市の真下には地下通路があったはずだ」
「地下通路?」
「だいぶ前に封鎖され今じゃ秘密の通路になっているが、おそらく奴はそこを通って来たんだ。でも何だ、あの化け物は」
すると真紀の腰に刀が突然あらわれた。それを見た真紀は確信した。
「多分、奴らだ」
+ + +
とあるビルの屋上ーー
そこに、メイド服を着た少女がいた。
「この爪で切り裂くものは何?何の為に今日も傷つけるの?」
メイド服の少女、ベルンは下で暴れる化け物を見て言った。
風がふくーー
「……アンジェ」
メイドはそう言うと、姿を消した。
+ + +
「本当について来るのか?」
「いいから早く行って!」
「分かった」
ブライアンは真紀に言われ、車を急発進させた。
その頃、山吹はホテルの窓から真紀が乗る車が急発進したのを見届けていた。
「何でいつも真紀ちゃんは危ない世界に踏み込むの?もう能力も失った世界になっても、何で真紀ちゃんだけはいつも戦いの中心にいなきゃいけないの?私は言ってあげたい。もう戦わなくてもいいよって。でもダメなんだよね。真紀ちゃんにしか救えない戦いだから、逃げちゃダメなんだよね。……本当、神様は一人に不幸を押しつけしすぎよ」
ドンドン!
「え?」
急にドアを激しく叩く音がした。
「誰?」
山吹は警戒しながらドアに近き、小さな穴を覗く。しかし、ドアの前には誰もいなかった。
「え?」
ドンドン
しかし、ドアに誰もいないはずなのに、ドアを叩く音はやまなかった。
山吹は、意を決してドアを開けた。
そこには、さくらと一緒にいた赤ずきんだった。
「お姉ちゃんが消えちゃった……助けて」
「!」
+ + +
「警察だ!」
ブライアンはバッチを見せ、ゲートに入った。真紀もブライアンに続いて入った。
ブライアンは一人の警官を見つけると、声をかけた。
「状況を説明しろ!」
「はい。怪物は、たった今地下通路に再び入り現在警官が捜索している最中であります。地下通路に繋がる地上の穴は全てふさいでいますが、正直破られてもおかしくありません。今、軍と協力していますが、化け物の体は思った以上に頑丈で、拳銃は通用しません」
すると、今の警官の説明を聞いていた刀はカタカタとなりだし、「当然だ」と言った。
「巫女に召喚された武将に人間の兵器は通用しない。強者よ、我を使い奴を斬らないことには、この事態を終わらせることは出来ない」
「分かってる」
そう言って、真紀は地下通路に向かって走り出した。
「おい、どこ行くんだ!戻って来い」
しかし、真紀はブライアンの言うことを無視してそのまま地下通路に突っ込んだ。
「あの野郎!」
ブライアンも真紀を追いかけようとした時、近くにいた警官にとめられた。
「ブライアン刑事、危険です。まだ、あの中に化け物がいるんですよ」
「そんなこと言ってる場合か!民間人が今、あの中に入って行ったんだぞ」
「今、地下通路で捜索にあたっている者に連絡を入れますので、刑事はここでお待ちください」
「くそっ」
その頃、地下通路に侵入した真紀は、真っ暗な通路を携帯のライトで照らしながら進んでいた。
「奴がどの辺にいるとか分からないの?」
「残念ながら、ここの地下通路がどのような構造か分からない以上、何とも言えないな。唯一言えるのは、奴が近くにいるかどうかだろう。気配ぐらいは感じられるからな」
「なら、近づいたら教えて」
「それは了解したが、この暗闇の中でどうやって奴と対決するつもりだ?奴はこの暗闇でも問題なく動けるぞ。それに、奴は六大武将の中では肉弾戦、近距離戦共に最強だぞ」
「そのことなんだけど、何で武将はどいつも普通の奴がいないの?」
「我らは巫女に召喚されたと話したと思うが、言わば我らは陰陽師によって作られた架空の存在なんだ。陰陽師にとっての最強と思われた想像によって生まれたからだ」
「陰陽師ってなんなの?」
「陰陽師は言わば術士だが、その家系はほぼ滅ぼされている。簡単に言うと、魔女狩りがあったように術士も政府によって滅ぼされた身だ。術士の誕生は魔女と同じく血筋に関係するが、その誕生の裏にあるのはかつての色ありの少女だ」
「色あり!?」
「我が主も構築の少女に色を貰った色ありの少女だったのだろ?ならば、色を失ってもその血が覚えている。色を失った色ありの少女の後遺症と言うべきか、呪われた血筋は術士として陰陽師を語ることができる。つまり、そなたもまた陰陽師の血筋となる。故に我を行使できる。我を行使出来るのは陰陽師の血筋のみだ。
それは、今騒ぎをお越しているのは色ありの少女の生き残りということだ」
「何で色を失っても能力が使えるわけ?」
「血が既にその色を取り込んだのだ。遺伝子と言っても言いが、色は主の体に染み込み」
「もう、いい。ワケわからなくなった。考えるより、敵を倒した方が楽。それより、アイツに名前とかないの?」
「冂獸。はるか遠いという意味を持つ奴は、次元が違うぐらい強いぞ。奴の武具は戦闘向きの肉体だ」
「武具って何でもアリなんだね」
「肉体も武器と言うらしいが?」
「そんなの知らないよ」
「……我が必死に説明しているのに」
「興味なくなった。多分、説明聞いても3分の1も理解出来ない自信がある。私、バカだからやめよう、やめよう。敵がいる。そいつを倒す。終わり。いいじゃん、それで」
「もし、そんな話が物語になったら誰も読まないだろうよ」
「私が読むよ」
「・・・・・・・・そっか」
+ + +
その頃、山吹達はさくらが行方不明になった場所へと向かっていた。
「さくらさんはところで日本に戻ったんじゃなかったの?」
「お姉ちゃんはキャプラの秘書だったから、首相が今別の人に変わったから、お姉ちゃんはそのまま残ることになったの」
「そう……なの」
首相変わったんだ・・・・。そう言えば、キャプラさんはハーフだって言ってたけど、日本の首相でハーフの人はキャプラさんが初めてだったんだよね……。
「あ、ここ」
赤ずきんちゃんは指さして言った。
「え!?」
そこは何もない空き地だった。
「ここ?」
「うん」
「でも、何もないよ」
「あったよ。でも消えた。建物ごと」
「あー・・・・それは大変ね」
「本当だよ」
「う、うん……でも建物ごと消えたってどういうこと?」
「ぐすっ・・・信じてない・・ほんどうなのに・・・・」
涙目になって鼻水をすする赤ずきんちゃん。
「あ、信じてるよ。本当だよ。ただ、どうやって消えたのか知れば、さくらさんの身元の手掛かりになると思って」
山吹は必死に赤ずきんちゃんをなぐさめる。
「ぐすっ・・・・本当?それで、お姉ちゃん見つかるの?」
「えぇ。手掛かりがあればすぐに見つかると思うよ」
赤ずきんちゃんはそれを聞くと涙を拭い、山吹にこれまでの出来事を話した。
+ + +
場所が変わり、ここは地下通路ーーー
暗闇の中、永遠に続く通路を真紀はまだ歩いていた。
「奴はどこに行ったのよ」
少し歩き疲れた真紀は既に集中力が切れていた。
「静かにしろ!我々よりあやつが先に気づかれたら終わりだぞ」
「分かってるよ」
喋る刀に叱られ膨れる真紀。すると、どこからか、悲鳴のようなものが聞こえた。
「ねぇ、今の!」
「あぁ、奴だ。確か警官は、地下通路には警官と兵隊が奴の捜索をしていると言っていたな。おそらく、冂獸に襲われているのだろう」
「行くよ!」
真紀は走りこみ、悲鳴する方へと向かった。
「きゃあああぁぁぁーーーーー!!」
兵士のライトに微かに照され見えるその巨体。
「我が主よ、携帯のライトを消すのだ。奴に見つかる」
「そしたら私が見えない!」
「気配を感じるのだ」
「気配とか分かんないよ」
「我は感じとることができる。我が奴の居場所を知らせるからその通りに動いてくれ」
「分かった」
真紀は携帯のライトを消し、奴に向かった。
「きゃあああぁぁぁーーーーー!!」
「そこだ!我が主よ、前方右寄り3メートル先だ」
「分かった。私も少しは暗闇に目が慣れてきたから少しなら分かる」
そう言って、真紀は刀を鞘から抜いた。
冂獸は、他の兵士を襲い食らっていた。その隙に真紀は素早く気づかれないように後方に回る。が!
グルルル
「ちっ、気づかれた」
冂獸は後の気配に感じ、体をそちらに向ける。真紀は奴の視界に入らないよう自分も動く。
「これは運しかないな」
そう言って、一か八か冂獸の真下にまわりこんだ。
冂獸は、気配を察知した次なる獲物を探し動きそう我がまわる。真紀も必死に踏み潰されないよう動く。
そして、隙を見てもう一度冂獸の真下から出てきて急いで後方にまわり、今度はすぐに攻撃にまわった。
「恩剣山振大蛇」
しかし、冂獸は尻尾で真紀の刃を受け止めた。
「また!?」
真紀は態勢を立て直すべく、その場を一端離脱した。
グオオオォォーーーーー!!
後方で奴の雄叫びが聞こえるなか、真紀は振り返るが奴は追っては来なかった。
ーーー
「はぁ…はぁ…はぁ」
「我が主よ、危機一髪であったな。だが、あのあと直ぐ離脱したのは良かったぞ」
「お褒めの言葉はいいからアイツの攻略を少しは考えて」
「うむ。まず冂獸だが、一瞬ではあったがあやつの目が潰れているのが分かった。おそらく、あの兵士どもが冂獸の目を弾丸の雨で潰したのだろう」
「成る程。それじゃあ、逃げてる最中に考えた携帯のライトを囮にする策は使えないってことね」
「囮・・・・いや、使えるかもしれんぞ」
「え!?」
「ライトではないが奴の気をまぎらわすんだ。奴は目が見えない。奴は特に自身後方にかなりの警戒をしているようだから、奴の後方に物を投げつけそちらに気をやっているところに、あえて奴の前から攻め込むのだ」
「結構危険だね。でも、やるしかないね」
「それと、あの時は携帯のライトを消せと言ったが」
「分かってるよ。見えないから、ライトは使うよ」
「ライトの熱まで感知はしないと思うがな」
「どっちだよ!」
+ + +
その頃地上では、山吹が赤ずきんちゃんの話を聞いていた。
その話によると、とあるガレージのような建物に用があるとさくらは言ったらしい。赤ずきんちゃんはそれに付き添い、その建物の前まで来た。そこでさくらは赤ずきんちゃんに手土産を用意するのを忘れたから買ってきてくれと言われたらしい。
すぐ近くのお店でいいからと言われ、赤ずきんちゃんはそこに行って戻って来ると、そこはさっきまであった建物はなく、更地になっていたらしい。その時、さくらも一緒に消えていなくなっていたとのこと。
それはつまり、建物ごと神隠しにあったことを意味していたーーー
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