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記念・特別章 【大英雄の過去編】

第0話の22 乱入者

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===ユウキ?視点================================

「俺が求めるのはただ一つ。お前、"特異点"の身柄一つだ」

 男が俺を首根っこを掴んでいるのに、人差し指で指差している。
 全く、ご苦労な事だ。俺なんかのためにそこまで用意したとはな。

(ご主人様?ちょっと様子が違いますよ?)

 守姫の声が聞こえる。……忌々しい。何年も閉じ込めやがって……。

 ふっ、お前らは今は必要ねぇ。さっさと引っ込め。
(え?ちょっと何を言ってるんですか?)
(……まさか!)
(お前……、王じゃねえな)

 技姫と攻武をなおしながら、男の方へと歩く。
 そして、攻武と技姫は気づいたようだ。

 まあ、そうだと言えばそうだし、そうじゃないと言えばそうじゃない。
(……どのくらい融合したかは知りませんが、さっさと引っ込んでください。
(………っ!!??イエリアス!?)

 守姫は今更気づいたようだ。本当に鈍感だな。

 まあ、ここは任せてくれよ。しっかりと収めてやるからよ。
(…信じられません、さっさと引っ込んでーー)
 うるせぇな!回路、一時切断!

 俺と守姫たちを繋いでいる回路を一時的に断ち切って、声も干渉も届かないようにする。

 ……これで思う通りに出来るな。

「意外に素直なんだな」

 男は左手に持った女を地面に投げ捨て、左手をこっちに向けてきた。

「……何だその手は?斬って欲しいのか?」
「は?一体何言ってーー」

 俺は右手に自身を顕現させ、左腕を肘辺りまで縦に斬った。

「……あ、あぁぁぉぁぁあっ!!」

 男は左腕を地面に押さえつけ、何とか断面を合わせようとしている。
 俺はそれを冷ややかな目で見ながら、歩く。

「……ぐぅぅっ!こいつがどうなってもいいのかぁぁ!!」

 男は右手に持っためぐみだっけ?それを俺に見せてきた。そして、首に爪を立てて無理やり起こした。

「……ん、ん~ん?…あれ?ここは……?あっ、ユウキ!この男何!?」

 女は俺を見て、助けを求める事はしなかったが、目が助けてくれるのが当たり前だと言っている。

 ……そんな事、あるわけねぇだろ。助けたくても、もう手遅れな場合だってある。……俺には、後悔せずに暴れさせるしか思いつかない。それが俺の本質だからだ。だと言うのに、この女は……。

「あれ?その剣何?やけに光って刀身も見えないよ?」
「あ~、この剣か。これはなーー」

 俺は剣を振り上げる。

「命を奪う、武器だ」

 俺は一気に男ごと斬れるように振り下ろした。大量の血が、俺の全身に纏わり付く。

 ……この匂い。この人を斬った時の質感。長年自分でやってなかったから……たまらない。…結局、俺は変われない。

「はぁ~あ、やっぱりユウキに悪いな」

 俺は引っ込む事にした。きっとユウキはこの惨状を見て、自分を責めるだろう。
 だが、同時に魔神とやらにも、深い憎しみを向けるだろう。

 ……楽しみだ。だから、目から涙が出てしまっているのは、きっと気のせいだ………。


===ユウキ視点==================================

 俺は目を覚ました。気持ちの良く起きれた感じで、すっと起きた感じだ。

ーピチャッ

 立ち上がろうとして手を動かしたら、何かの液体に触れてしまったようだ。妙に温かい。
 それに、さっきから匂う鉄の匂いはどこからしてるんだろう?寝る前には匂わなかったようなーー

 あれ?そういえば俺、どうして寝てたんだ?

 取り敢えず起き上がろうと思い、立ち上がり、見てしまった。無惨なこの現場を。

「……は?一体誰がーー」
「テメェがやったんだろ!ユウキぃぃ!!」

 背後から急に聞こえた怒声に、振り向いた瞬間、俺は拓真に殴られる。
 大した痛みも無いが、それよりも心が追いつかなかった。

「え?何を言ってーー」
「うるせぇぇぇ!!」

 拓真は『ソウルウェポン』である甲冑を着て、再び殴って来た。俺はそれを躱す事も、防ぐ事もなく殴られる。
 『ソウルウェポン』で殴られたので、俺は派手に吹っ飛び、口が切れ、歯が折れる。

(ご主人様!?防いでも良いんですよ!?)
 いや、ちょっと今は……。

 俺はよろめきながらも、何とか立ち上がる。拓真の顔は見えないが、怒りに狂っているのは分かる。

「俺が何をやったのかは、俺は知らない。だから、教えてくれ。一体何があったんだ?」
「……っ!!黙れよぉっ!!」

 再び拳を振るって来たのをまた受けてしまう。
 また派手に吹っ飛ぶ。

「あんたが!めぐみを殺したんだろぉ!!」

 俺は馬乗りになられ、殴られる。ちょっと流石にマズイと思い、"転移"を使おうと思ったが、発動しない。

 殴られているから分かりにくかったが、肩につぼみの『ソウルウェポン』が刺さっていた。

 ……俺は、こいつらにとっての悪なんだろう。なら、俺はここで果てた方がーー

「きゃぁぁぁっ!」

 突如、梨沙の悲鳴が聞こえ、拓真も止まる。
 俺は、腫れた頰、砕けまくった歯を気にせず、悲鳴の聞こえた左側を見ると、そこには梨沙に剣を突き刺している男に掴まれていた女性が居た。

「あんたっ!一体何してーー」

 その女性のところへいった拓真だが、女性を止める事も出来ず、俺の頭上を吹き飛び通り過ぎた。

「ハハハッ!あやつが何故か執着している"特異点"とやらが気になって来たが、なるほど。確かにこれは面白い!」

 女性の剣は、魔素が集まり過ぎている。まるで、魔素のみで形成されたような。

「おっ?この剣に真っ先に目が行くとは。目の付け所は良いみたいーー」
ーゴポォッ!

 女性は、最後まで言えずに代わりに大量の血を吐き出した。

「「姫様!!」」

 どうやら、姫様らしい。あの戦っていた連中の誰かが叫んでいる。

「……チッ、全く人間の体は脆い。『魔素支配』を剣にしか使っていないと言うのにな」

 そんな事を軽く言いながら、つぼみの足を突き刺した。

「あぁぁ!痛い!痛いよぉぉ!!」

 つぼみの泣き声も、すぐに止んでしまった。
 何でだ?何で体が動かない?早く助けないと本当に死んでしまう!!

 動けっ!動けっ!動けっ!動けよっ!!
(残念ですが、先程までの殴打で、軽い脳震盪が起きて、体を動かすのはもう暫くかかります)
 知るかっ!動けっ!動けって言ってるだろっ!!

「畜生っ!!」

 そんな事をしている間にも、拓真が女性に挑んでいる。
 だが、聞こえてくるのは、一方的な斬撃の音と血の飛び散る音だけ。

「ハハハッ!勇者とやらは、とても非力だな!こんな弱っちい攻撃で、俺を討ち取れる訳無いだろう!この乗り移っている体で圧倒出来ているのが良い証拠だ!」

 ……こいつが魔神なのか。こいつが、狂わせたのか!

「くっ!ナイト!行って!!」

 勇者である彼女が何かの指示をしているが、きっと勝てない。
 勇者であるスナイパーが銃撃しているが、きっと勝てない。
 勇者である光線を撃っている男でも、きっと勝てない。

 ほら、もう戦闘の音が消えた。だから、俺がやるしか無いんだ。

「……なあ」

 俺は肩に効果の無くなった剣を抜き、"身体強化"を全身にかけながら、顔に"エクストラヒール"をかけながら、目の前の女性に聞く。

「お前が、魔神か?」

 俺は右手にあったつぼみの剣で、女性の首の動脈を深く斬った………。


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 最近残酷な描写ばかり続きますが、そろそろこの章も終わるかも?しれないです。
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