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第9章 全面対決

第82話 始まる戦い

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===リル視点========================

 現在、私は《魔神領》の荒地の上を走っている。どうやら《魔神領》は森の次に荒地、そして遠くからでも見えるあの砦と火山が奥地みたい。
 当然、私は砦なんかに用は無いし、橋は火山の方に架かっているから《デットラス》は火山地帯にあるのだろう。

『……………!まあ、このまま進ませてくれる訳が無いよね』

 私は走るスピードを弱めないが、橋の上に多種多様な魔物が乗ってきて、私を向かい討つ準備をしている。数は多いが、どれもAランク冒険者が瞬殺出来るくらいの低レベルの魔物のようなので、私は魔力を解放して魔物達を押しつぶす。

『…………これだけ?』

 なんか呆気無くてむしろ怖いけど、気にせず進む。さっきの魔物は『神の強欲ゴットグリード』の仕業なのか大魔王辺りの仕業なのかは分からないけど、今のを見てもうちょっかいを出して来なかったらいいけど、また出して来たら面倒だな~。

 結局、何も来ず、いよいよ火山地帯に入る。火山地帯はいつ噴火してもおかしくない山々が大小様々であり、地面は普通に流れている溶岩によって熱され、ドラゴンやゴーレムといった魔物以外は生息する事すら不可能という、まさに地獄のような地帯。

『もうすぐで火山地帯だからか、熱くなって来たし、心なしかドラゴンが多くなって来たような………』

 一応神気を纏って熱さを凌ぎ、飛んでいるドラゴンに気づかれないように魔力を極限まで抑えて静かに走る。別にドラゴンに見つかったからって大した障害にはならないと思うけど、時間を無駄にされるし、何より橋を壊されたくないから。

『…………ん?え!?ちょっ!!』
(ドゴォーーン!!)

 いきなり橋の向こう側、つまり《デットラス》方面から飛んで来た気配は三つ。その全てが私の前に降り立ち、橋はひび割れた。

『ちょっと!橋を壊さないでもらえませんか!?』

 マジで橋が壊れそうだったので、橋に手を付けて"グランド"で補強しながら、砂煙で見えない三人組に叫ぶ。

「ふふふふふ。私達を前にしてそんな余裕があるなんて……」
「グルルゥウっ!!」
「汝は今、ここで死すべき!!」

 返って来た声は一人はお姉さんと言えそうな女性の声。一人はもはや獣。一人は張りのあるおっさんの声。
 三人組から滲み出る神気から間違いなく『神の強欲ゴットグリード』の構成員だと分かる。あと、上から目線のような態度でも。

『はいはい、あなた達のような人達を相手にするのはしんどいので、早く終わらせましょうね』

 私は魔力も神気もかなり解放しながら砂煙の方へ歩く。

 そして、砂煙が晴れたところに居たのは、ドレス姿の化粧の濃いお姉さんに、全身が金色の毛で覆われた男。そして、高い襟を立てて、茶色いコートを着ているおっさん。どれも髪の毛は少し輝きが無い金色で、目も同じような色。間違いなく普通の神に現れる特徴と一致している。

「あなた………!本当に神じゃないんですか?」
「クゥゥゥン……」
「おやおや…………、まさかここまでとは……」

 もう既に戦意をほぼ失っている三人だけど、あの『神の強欲ゴットグリード』に所属しているなら、容赦はしない。

『………あなた達を倒す!』
「…………っ!行きますよ!!」
「ウルゥルゥルっ!ガアァァ!!」
「私が汝に与えるのは死のみ!!」


===オリナ視点=========================

「よしっ!それじゃあ通るわよ…」

 ご主人の守姫と喧嘩ばかりしておるエルフ族が初めに『移の門ゲート』やらを通る。体が黒い楕円に入りきったあと、ひょこっと頭だけを出してきおった。

「本当に行けたみたいだし、ここならユウキの魔力をほんのほんの少しだけど感じられるわ!!」

 本当に嬉しそうに話すエルフの言葉に無表情ドワーフもフェンリルから戻ったチビもアンデットドワーフも嬉しそうじゃ。勿論、妾も嬉しいが。

「通るなら早く通れ。多分、気づかれているからな」

 神のおっさんが周りを見渡しながら警告してくる。それを聞いた皆は我先にと『移の門ゲート』を通ろうとする。勿論、妾もじゃが。

「は~や~く行かないと~」
「……………邪魔」
「お姉ちゃん!ちょっと痛いよ!!」
「どかんか!お主ら!妾が通れんじゃろう!!」

 みんなが他の人を退けようとする中、急に門が広くなり、妾達はまとめて飛び出るように門をくぐった。

「「「うわっ!!!」」」
(ドカン!ジュッ!)
「「「熱っ!!」」」

 ちゃんと行けたのは良かったが、《デットラス》は火山地帯なので、顔面から落ちてしもうた妾達は早速顔面を火傷する。

「はぁ~、何やってんのよ」

 妾達はエルフに"ウォーター"をかけてもらい、やっと落ち着けた状態で目の前の大きな岩の隙間から周りを見渡して見ると、ざっと見ただけで竜が50体は居た。

「………ここはどうやら竜達からは見えないようじゃな」
「ええ、良いところに出れたみたい」

 あのおっさんに礼でも言おうかと後ろを振り返ってみたが、そこにはあの門は無かった。

「…………礼ぐらい言わせてくれてもーー」
「しっ!」

 頭から大きな耳を生やしたチビが口に人差し指を当てて、周りを警戒しておる。
 今、妾達は目の前には巨大な岩、左右には絶壁、背後には溶岩の海が広がっておる。妾達が見つけた竜はどれも目の前の岩の先にある山々に居て、お互いがお互いを牽制していて、いつ喧嘩が始まってもおかしくはなかった。

「………確かにここは隠れるのには良いけど、ここから《デットラス》の何処かにいるユウキを探すのは難しいね」

 チビは大きな耳をピクピクとさせ、冷や汗をかきながら苦しい表情になっておる。

「恐らくじゃが、ここは《デットラス》の端っこなんじゃろう」

 妾の歴代魔神の記憶では《デットラス》は溶岩の海に囲まれた地だったはず。多分、背後にある溶岩の海が《デットラス》の周りにある溶岩の海なんじゃろう。

「つまり、ここからは自分達で何とかしろって事ね」

 エルフの一言で、皆が頭を悩ませたが、妾は竜達に見つからない方法がある。

「…………それなら妾に任せい」



「……本当にあなたって使えたのね」
「……この情報も記憶します」
「いや~、流石は魔神だね♪」
「…………お姉ちゃんの方が凄いけどね…!」

 現在の妾達は妾の後ろに皆がピタリと張り付いて歩いている。勿論、妾達が竜の隣を歩いても、竜は何も無いかのように反応しない。それもそのはず、今、妾達は誰からも認識されないからの。

「まさか、《ネイト》でやった方法が通じるなんてね」
「………ここは魔素が濃いからより強く出来たのじゃ!」

 そう、妾達は《ネイト》で暗殺者達から隠れる時に使った魔素による認識阻害を使っておる。これも『魔素支配』によるもので、相手は妾達を視覚出来ず、聴覚による認識も出来ず、魔力の察知も出来ないようになっておる。魔素で光を屈折させ、音を吸収し、魔力を魔素で外に漏らさないようにする。

「完璧じゃろう!この…………、『魔素支配』の応用の仕方は!!」
「…………この技の名前が無いのね……」
「うう!うるさいわ!!」

 見事に思っておった事を当てられてエルフに怒っておると、目の前に急に青年が現れた。

「なら、私がつけましょうか?」

 明らかに妾達を認識しておる青年が……!


===============================

 いよいよ次回から激突します!(多分)


 

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