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仕事体験・終
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もらった仕事を全てやり終えて、僕らは現場を後にすることになった。
有栖がその日の仕事を完了して控え室に引っ込んだ後、僕は片付けまでちゃんとやらせてもらった。普通は撮影の所だけをやらせてもらうとかだと思うから、今回は本当に一日仕事体験をさせてもらったわけだ。
……なんか、有栖の知り合いだからってこんなに優遇してもらって良いのかな、と少し心配になってくる。とはいえ、言われたことは言われたとおりに出来たと自負しているから、邪魔にはなっていないと思うけれど。
とにかく有意義な時間を過ごさせてもらって、有栖の仕事も同時並行でやってもらったので、三人揃って頭を下げてきた。スタッフさんやカメラマンさん、偉い方達も暖かく見送ってくれた。
帰り道。
「晩飯は買っていくか」
「そうだね。さすがに遊沙くんに作らせるわけにはいかないから」
僕が何か言うより先に、二人がそう結論付けてコンビニに向かった。最近はコンビニの品揃えも充実していて、下手にスーパーに行くより良いことも多い。もちろん食材で考えたら断然スーパーが便利だけど、弁当系となるとコンビニで十分だ。
有栖は目立つし仕事で疲れていると思うから僕と冴木さんで行こうとしたら、彼は帽子を目深に被って付いてきた。
「希望を言ってくれたらそれを買っていくから、車で待っていても良かったのに」
「遊沙が行くなら俺も行く。冴木がいるからとはいえ危ないだろ」
「有栖の方が危ないような」
「俺は自分で対処出来るから大丈夫だ。お前はなんかよく妙なのに目を付けられるだろ」
別に車から遠くに行くわけじゃないのに。有栖は結構心配性だ。……でも、心配してくれるのは実はちょっと嬉しい。
「あ、これ美味しそう」
「ん? ああ、レンジで温められるうどんか。いいな。……俺は中華丼にするか」
僕の後ろを一歩離れて付いてくる有栖と、完全に別行動となった冴木さんでささっと好きなものを買って、家へ帰る。
着いた頃には夜の十一時頃になっていた。弁当を温めている間にお風呂を沸かして、全員のが温まったら食卓へ集まる。本当にお腹が空いているから、弁当が凄く美味しく感じた。高級なものじゃなくてもこれだけ美味しく感じられるなら、なんだかお得だ。
しみじみしながら無言で咀嚼して、そういえば有栖に聞きたいことがあったのを思い出した。つんつんと彼の腕をつつくと、こっちを向いた彼に聞いてみる。
「ねえ、有栖。有栖は僕のどこが好き?」
有栖はちょうど口に含んでいた水を噴き出しそうになって、慌てて飲んで激しくむせた。びっくりしながら咳き込む彼の背を撫でて、落ち着くのを待つ。
「なんかごめん」
「……げほ、いや、いい。ちょっと俺の脳があれだっただけだ」
「?」
「大丈夫だ。……ええと、お前の好きなところは――うん、まず見た目が可愛い。のに結構頑固だし、明るく振る舞ってるくせに素だと自己肯定感低かったり諦めが早かったり。なんかこう、ほっとけないところかな」
「ほっとけないところ?」
「そうだ。構いたくなるっていうか。あと俺を色眼鏡で見ないところ。これは喜んで良いのか分からないが、初めてちゃんと会ったときから俺にかなり無関心だったし、『職業とかどうでもいいや』って感じで虫ばっか追いかけてるのは相当新鮮だったな」
「それは褒められてる?」
「褒めてる。あのな、俺は会う奴ほぼ全員から”モデル”としか見られてなかったんだよ。”有栖”を見てくれた人は冴木くらいだった。俺がモデルじゃなきゃ寄ってこないだろって奴らばっかり寄ってきた。で、どいつもこいつも恋愛感情だの僻みだの重たい感情抱えて持ってきてぶつけてくるし。誰も信用出来なかった」
「…………」
「そんな中でお前は、俺を”ただの有栖”として見た上で構いもせずに自由にうろちょろしてた。こっちに意識を向けられたことしかなかったから、お前が向けてこないことが逆にむずむずしたって感じだな。変な奴だと思うと同時に、信頼出来るかもって思ったんだよ」
「そこから好きになってくれたの?」
「そうだ。最初は『もう一度会いたい、会って話をしたい』だった。けど、次第にそれじゃ物足りなくなって、『このままずっと一緒にいたい』って思うようになって、気付いたら好きに――」
そこまで言って、彼ははたと我に返って顔を赤くした。
「って、冴木の前で何言ってんだ俺は」
にこにこと良い笑顔の冴木さんから顔を逸らし、顔を手で覆っている。会話の流れで言い過ぎてしまったと後悔しているらしい。
恥ずかしがっているけど、今までそれほど言及して来なかったことを言ってくれたから真剣に聞いてしまった。僕の事を好きになってくれた理由は簡単に聞いていたが、ここまで詳しく話してくれることも少なかったから。
そっか、僕の無関心が逆に彼の関心を誘ったのか。そう考えるとなんだか興味深い。
一人で納得している間に彼は照れ隠しのようにこちらに質問してきた。
「ぎゃ、逆に俺のことはどうなんだ。好きになってくれたか?」
「え? うん、好きだよ」
そういえばちゃんと言ってなかったっけ。
普通に答えると、有栖は押し黙って口をぱくぱくさせた。
「…………」
「恋愛的に、ってわけじゃないと思うけど、有栖が嬉しそうだと僕も嬉しいし、一緒にいて苦じゃないし、出来れば一緒にいたいなって」
「えっ、そ、なんっ……えっ?」
「……バグった?」
口元を押さえて笑いを堪えていた冴木さんが噴き出す。
「あはは! ……有栖はね、遊紗くんに好きって言われて嬉しいんだよ、きっと」
「なるほど。有栖が嬉しいなら何回でも言うよ、僕」
「……頼むから俺を殺さないでくれ」
「嫌だった?」
「嬉しいです。とても。超。でもあの、脳の処理許容量が」
「そっか。じゃあ、また今度言うね」
「ありがとうございます……」
何故か敬語になった有栖は僕に抱き付いてきて、お風呂が沸くまでずっとそのままだった。
有栖がその日の仕事を完了して控え室に引っ込んだ後、僕は片付けまでちゃんとやらせてもらった。普通は撮影の所だけをやらせてもらうとかだと思うから、今回は本当に一日仕事体験をさせてもらったわけだ。
……なんか、有栖の知り合いだからってこんなに優遇してもらって良いのかな、と少し心配になってくる。とはいえ、言われたことは言われたとおりに出来たと自負しているから、邪魔にはなっていないと思うけれど。
とにかく有意義な時間を過ごさせてもらって、有栖の仕事も同時並行でやってもらったので、三人揃って頭を下げてきた。スタッフさんやカメラマンさん、偉い方達も暖かく見送ってくれた。
帰り道。
「晩飯は買っていくか」
「そうだね。さすがに遊沙くんに作らせるわけにはいかないから」
僕が何か言うより先に、二人がそう結論付けてコンビニに向かった。最近はコンビニの品揃えも充実していて、下手にスーパーに行くより良いことも多い。もちろん食材で考えたら断然スーパーが便利だけど、弁当系となるとコンビニで十分だ。
有栖は目立つし仕事で疲れていると思うから僕と冴木さんで行こうとしたら、彼は帽子を目深に被って付いてきた。
「希望を言ってくれたらそれを買っていくから、車で待っていても良かったのに」
「遊沙が行くなら俺も行く。冴木がいるからとはいえ危ないだろ」
「有栖の方が危ないような」
「俺は自分で対処出来るから大丈夫だ。お前はなんかよく妙なのに目を付けられるだろ」
別に車から遠くに行くわけじゃないのに。有栖は結構心配性だ。……でも、心配してくれるのは実はちょっと嬉しい。
「あ、これ美味しそう」
「ん? ああ、レンジで温められるうどんか。いいな。……俺は中華丼にするか」
僕の後ろを一歩離れて付いてくる有栖と、完全に別行動となった冴木さんでささっと好きなものを買って、家へ帰る。
着いた頃には夜の十一時頃になっていた。弁当を温めている間にお風呂を沸かして、全員のが温まったら食卓へ集まる。本当にお腹が空いているから、弁当が凄く美味しく感じた。高級なものじゃなくてもこれだけ美味しく感じられるなら、なんだかお得だ。
しみじみしながら無言で咀嚼して、そういえば有栖に聞きたいことがあったのを思い出した。つんつんと彼の腕をつつくと、こっちを向いた彼に聞いてみる。
「ねえ、有栖。有栖は僕のどこが好き?」
有栖はちょうど口に含んでいた水を噴き出しそうになって、慌てて飲んで激しくむせた。びっくりしながら咳き込む彼の背を撫でて、落ち着くのを待つ。
「なんかごめん」
「……げほ、いや、いい。ちょっと俺の脳があれだっただけだ」
「?」
「大丈夫だ。……ええと、お前の好きなところは――うん、まず見た目が可愛い。のに結構頑固だし、明るく振る舞ってるくせに素だと自己肯定感低かったり諦めが早かったり。なんかこう、ほっとけないところかな」
「ほっとけないところ?」
「そうだ。構いたくなるっていうか。あと俺を色眼鏡で見ないところ。これは喜んで良いのか分からないが、初めてちゃんと会ったときから俺にかなり無関心だったし、『職業とかどうでもいいや』って感じで虫ばっか追いかけてるのは相当新鮮だったな」
「それは褒められてる?」
「褒めてる。あのな、俺は会う奴ほぼ全員から”モデル”としか見られてなかったんだよ。”有栖”を見てくれた人は冴木くらいだった。俺がモデルじゃなきゃ寄ってこないだろって奴らばっかり寄ってきた。で、どいつもこいつも恋愛感情だの僻みだの重たい感情抱えて持ってきてぶつけてくるし。誰も信用出来なかった」
「…………」
「そんな中でお前は、俺を”ただの有栖”として見た上で構いもせずに自由にうろちょろしてた。こっちに意識を向けられたことしかなかったから、お前が向けてこないことが逆にむずむずしたって感じだな。変な奴だと思うと同時に、信頼出来るかもって思ったんだよ」
「そこから好きになってくれたの?」
「そうだ。最初は『もう一度会いたい、会って話をしたい』だった。けど、次第にそれじゃ物足りなくなって、『このままずっと一緒にいたい』って思うようになって、気付いたら好きに――」
そこまで言って、彼ははたと我に返って顔を赤くした。
「って、冴木の前で何言ってんだ俺は」
にこにこと良い笑顔の冴木さんから顔を逸らし、顔を手で覆っている。会話の流れで言い過ぎてしまったと後悔しているらしい。
恥ずかしがっているけど、今までそれほど言及して来なかったことを言ってくれたから真剣に聞いてしまった。僕の事を好きになってくれた理由は簡単に聞いていたが、ここまで詳しく話してくれることも少なかったから。
そっか、僕の無関心が逆に彼の関心を誘ったのか。そう考えるとなんだか興味深い。
一人で納得している間に彼は照れ隠しのようにこちらに質問してきた。
「ぎゃ、逆に俺のことはどうなんだ。好きになってくれたか?」
「え? うん、好きだよ」
そういえばちゃんと言ってなかったっけ。
普通に答えると、有栖は押し黙って口をぱくぱくさせた。
「…………」
「恋愛的に、ってわけじゃないと思うけど、有栖が嬉しそうだと僕も嬉しいし、一緒にいて苦じゃないし、出来れば一緒にいたいなって」
「えっ、そ、なんっ……えっ?」
「……バグった?」
口元を押さえて笑いを堪えていた冴木さんが噴き出す。
「あはは! ……有栖はね、遊紗くんに好きって言われて嬉しいんだよ、きっと」
「なるほど。有栖が嬉しいなら何回でも言うよ、僕」
「……頼むから俺を殺さないでくれ」
「嫌だった?」
「嬉しいです。とても。超。でもあの、脳の処理許容量が」
「そっか。じゃあ、また今度言うね」
「ありがとうございます……」
何故か敬語になった有栖は僕に抱き付いてきて、お風呂が沸くまでずっとそのままだった。
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