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ゴーフレット
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窓を開けると、心地よい風と森の匂いが部屋に入ってきて、清々しい気分になる。
僕も少し酔っていたけど、この風に当たっているととても気持ちが良かった。火照った体にちょうどいい。
畳だから足元もサラサラしているし、時折鳥の声や虫の声が聞こえてきてリラックス出来る。
畳に寝かされている冴木さんも、この環境ならそのうち酔いが醒めるだろう。
「良いところだね」
「そうだな」
僕がぽつりと呟くと、有栖も同意した。
「俺としては、虫が出ないかだけが心配だが」
「それはしょうがないよ。元々森は虫のものだし」
「……その発想はなかったな……」
「でも、虫が出たら僕が逃がすから大丈夫」
「それは頼もしい」
有栖はふっと笑った。
「抱き着いてもいいか?」
「いや、なんで?」
彼は時折脈絡がない。
「抱き着きたくなったからだ」
「……今の流れで抱き着きたくなる流れはよく分かんないけど、有栖がそうしたいならいいよ」
僕自身、抱き着かれるのは結構好きだ。なぜだかほっとするし、大事にされているなという感じがする。有栖が大きいから、抱き着かれていると安心感が凄いのかもしれない。
背中に有栖をくっつけたまま、座卓の上にサービスで置いてある薄くて丸いゴーフレットに手を伸ばすと、そっと口に運んでみる。
サクッと小気味良い音を立てて、ゴーフレットは歪な形に割れた。
「ん」
有栖が後ろから乗り出して口を開けてきたので、三角に割れた欠片を入れてあげた。
「……んまいな」
「ねー」
こういう旅館のサービスで置いてあるお菓子は、クッキー系とかが多い気がするけど、どれもちゃんと美味しいのが驚きだ。一応部屋代とかに含まれているんだろうけど、こういうところまで気配りされてるのは好感が持てる。
ゴーフレットを食べ終わって、僕は鳥の声と風の音を聞きながらボケっと窓の外を見ていた。有栖は僕の背中で寝てしまっている。
小一時間経って、冴木さんがモゾモゾと動き出した。
「あれ、すみません、私……」
まだぽやぽやした雰囲気で周囲を見回し、訝しげな顔をしている。半身を起こしてからしばし固まって、自分の記憶を辿るように目を泳がせる。
川から突然見知らぬ部屋にいるのでびっくりしたのだろう。
僕は冴木さんが寝てしまってからのことを軽く説明した。
彼は話を聞きながら少しずつ意識をハッキリさせて、話が終わる頃には申し訳なさそうな顔になっていた。
「ごめんね、迷惑かけてしまって。柄にもなく浮かれてたみたいで……ダメなの分かっているのに、缶一本飲み干してしまうなんて」
支えるべき相手である有栖に支えられたのが堪えたのか、彼は小さく縮こまってしまった。僕が言うのもおかしいけど、そんなのいつも頑張ってる冴木さんが気にすることじゃないのに。きっと有栖も気にしてない思う。
「いえ、偶にはいいと思います。有栖だって、冴木さんにも休んで欲しいって言ってましたし」
「……そう。そう言ってくれると気が楽だよ。ありがとう」
冴木さんは僕の背中で寝ている有栖を見て、苦笑を浮かべた。
部屋には西日が差し込んで、日が沈みかけていることを知らせてくれる。
バーベキューでたくさん食べたので、夕飯は7時くらいにして、それまでにお風呂に入ることになった。
それぞれの部屋に風呂が付いているという贅沢仕様ではないので、下の浴場に行かなければならないが、それもまた旅館の醍醐味だろう。
部屋に置いてあった控えめな館内案内を見たところ、普通のお湯ではなくてちゃんとした温泉みたいなので、実は結構楽しみだ。
―――――――†
(端書き)
土曜日にアレ(正式名称はこのサイトでは使えませんでした)のワクチン一回目を打ってきました。腕が痛くて寝返りが打てないので眠れないし、熱は出るし、吐き気がするし、ダルいしで何にも出来ませんでしたけど、二回目はもっとキツいのではと戦慄しています。
読んでくださっている皆様も、ワクチン接種の際にはご注意を……:( ;´꒳`;):
僕も少し酔っていたけど、この風に当たっているととても気持ちが良かった。火照った体にちょうどいい。
畳だから足元もサラサラしているし、時折鳥の声や虫の声が聞こえてきてリラックス出来る。
畳に寝かされている冴木さんも、この環境ならそのうち酔いが醒めるだろう。
「良いところだね」
「そうだな」
僕がぽつりと呟くと、有栖も同意した。
「俺としては、虫が出ないかだけが心配だが」
「それはしょうがないよ。元々森は虫のものだし」
「……その発想はなかったな……」
「でも、虫が出たら僕が逃がすから大丈夫」
「それは頼もしい」
有栖はふっと笑った。
「抱き着いてもいいか?」
「いや、なんで?」
彼は時折脈絡がない。
「抱き着きたくなったからだ」
「……今の流れで抱き着きたくなる流れはよく分かんないけど、有栖がそうしたいならいいよ」
僕自身、抱き着かれるのは結構好きだ。なぜだかほっとするし、大事にされているなという感じがする。有栖が大きいから、抱き着かれていると安心感が凄いのかもしれない。
背中に有栖をくっつけたまま、座卓の上にサービスで置いてある薄くて丸いゴーフレットに手を伸ばすと、そっと口に運んでみる。
サクッと小気味良い音を立てて、ゴーフレットは歪な形に割れた。
「ん」
有栖が後ろから乗り出して口を開けてきたので、三角に割れた欠片を入れてあげた。
「……んまいな」
「ねー」
こういう旅館のサービスで置いてあるお菓子は、クッキー系とかが多い気がするけど、どれもちゃんと美味しいのが驚きだ。一応部屋代とかに含まれているんだろうけど、こういうところまで気配りされてるのは好感が持てる。
ゴーフレットを食べ終わって、僕は鳥の声と風の音を聞きながらボケっと窓の外を見ていた。有栖は僕の背中で寝てしまっている。
小一時間経って、冴木さんがモゾモゾと動き出した。
「あれ、すみません、私……」
まだぽやぽやした雰囲気で周囲を見回し、訝しげな顔をしている。半身を起こしてからしばし固まって、自分の記憶を辿るように目を泳がせる。
川から突然見知らぬ部屋にいるのでびっくりしたのだろう。
僕は冴木さんが寝てしまってからのことを軽く説明した。
彼は話を聞きながら少しずつ意識をハッキリさせて、話が終わる頃には申し訳なさそうな顔になっていた。
「ごめんね、迷惑かけてしまって。柄にもなく浮かれてたみたいで……ダメなの分かっているのに、缶一本飲み干してしまうなんて」
支えるべき相手である有栖に支えられたのが堪えたのか、彼は小さく縮こまってしまった。僕が言うのもおかしいけど、そんなのいつも頑張ってる冴木さんが気にすることじゃないのに。きっと有栖も気にしてない思う。
「いえ、偶にはいいと思います。有栖だって、冴木さんにも休んで欲しいって言ってましたし」
「……そう。そう言ってくれると気が楽だよ。ありがとう」
冴木さんは僕の背中で寝ている有栖を見て、苦笑を浮かべた。
部屋には西日が差し込んで、日が沈みかけていることを知らせてくれる。
バーベキューでたくさん食べたので、夕飯は7時くらいにして、それまでにお風呂に入ることになった。
それぞれの部屋に風呂が付いているという贅沢仕様ではないので、下の浴場に行かなければならないが、それもまた旅館の醍醐味だろう。
部屋に置いてあった控えめな館内案内を見たところ、普通のお湯ではなくてちゃんとした温泉みたいなので、実は結構楽しみだ。
―――――――†
(端書き)
土曜日にアレ(正式名称はこのサイトでは使えませんでした)のワクチン一回目を打ってきました。腕が痛くて寝返りが打てないので眠れないし、熱は出るし、吐き気がするし、ダルいしで何にも出来ませんでしたけど、二回目はもっとキツいのではと戦慄しています。
読んでくださっている皆様も、ワクチン接種の際にはご注意を……:( ;´꒳`;):
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