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御園の憂鬱(御園視点)
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「たまにはこういった食事も良いですね」
「ええ、美味しいです」
黒髪の男と茶髪の男が仲良さげにハンバーガーを食べているのを見ながら、オレは遊沙が何かされていないか気が気ではなかった。
あんなデカい男と小柄な遊沙が二人きりで上空の密室だなんて、何もない方がおかしい。それなのに、オレはこうして遊園地内にある限定バーガー屋でハンバーガーなんかを食っている。
イライラする気持ちとは裏腹に、この店のハンバーガーはムカつくくらい美味かった。
…………別に、あいつらの邪魔をしたいわけじゃない。ただただ許せないだけ。オレが叶えられなかったことを、あのモデルが叶えようとしているのだから。
だってそうだろ? 誰だって自分がやりたかったことを先にやられたら腹が立つものだ。”お前がグズグズしていたから”と言われれば言い返せないが、”今までの友情”というリスクを背負っていなかっただけあちらが有利だったのは事実のはずだ。
なのに、何だってオレがあいつのお膳立てをしてやらなきゃならないんだ。
オレは涼しい顔をしている可香谷を恨めしげに睨んだ。
そもそもこいつが『観覧車は二人で乗せてあげましょう』なんて言うからこうなったんだ。その後に『遊沙さんの為を思うなら』とかいう殺し文句まで付けて来なければ絶対従わなかったのに。というか、オレが遊沙のこと好きだって何故知っている?
睨まれた可香谷は顔を冴木に向けると、
「申し訳ありませんが水を取ってきていただけます?」
と言った。冴木は嫌な顔ひとつせずに頷いて、席を立って水を取りに行く。可香谷は彼が離れるのを待ってから、顔をこちらに向けた。
「さて、ご不満そうな顔ですが、言いたいことがあるようでしたらお伺いします」
オレは何故あいつらを二人だけで乗せたのかを聞いた。
「ああ、それは簡単なことで、ただあの方達を喜ばせたかっただけです。お付き合いされているのにぼくたちがいたら、お二人で楽しめないでしょう」
「……あなたはオレが遊沙のことを好きだって知っている様でしたが」
「はい。そんなもの、見ていれば誰だって分かります。有栖さんを邪魔したくって仕方ないって顔してましたから」
「それでオレを引き離したんですか?」
「そうです。もちろん貴方の気持ちも理解出来ましたし、同情しない訳でもありませんでしたが」
「…………どうしてあちらの味方をするんですか」
「冴木さんが喜ぶからです」
可香谷はさも当然というように言った。オレは思わず眉を顰める。
「もしかして好きなのか?」
つい敬語を忘れて独り言を呟くように言うと、
「いいえ?」
またも当然そうに否定の言葉が返ってきた。
「でも好きですよ。友人として、ですが。彼の笑顔は優しくて、ぼくの癒やしですから。彼が笑顔になるのなら、多少面倒でも有栖さんと遊沙さんの仲を取り持つくらいします」
「オレの恋路を邪魔しても、ですか」
「ええ。といっても、貴方はご自分の恋路を全うする気はないのでしょう? それこそ遊沙さんのために」
「…………」
涼しい顔をしておきながら何でもお見通しな可香谷に、もはや怒る気すら失せてしまった。
その後は冴木が三つのコップを器用に持ってきて、可香谷がそれを手伝って自然と会話はなくなった。
観覧車から帰ってきた遊沙にあからさまなキスマークを見つけたオレは、有栖のその綺麗な顔面をその場でボコボコにしてやりたい衝動に駆られたが、特に嫌そうではない遊沙の顔に免じて我慢してやった。
どこか清々しい顔をしたあいつとは逆に、汚い感情をため込むことになったオレは惨めで本当に嫌になる。
一生この立場は変わらないことが分かっているだけに、余計にそう思った。
「ええ、美味しいです」
黒髪の男と茶髪の男が仲良さげにハンバーガーを食べているのを見ながら、オレは遊沙が何かされていないか気が気ではなかった。
あんなデカい男と小柄な遊沙が二人きりで上空の密室だなんて、何もない方がおかしい。それなのに、オレはこうして遊園地内にある限定バーガー屋でハンバーガーなんかを食っている。
イライラする気持ちとは裏腹に、この店のハンバーガーはムカつくくらい美味かった。
…………別に、あいつらの邪魔をしたいわけじゃない。ただただ許せないだけ。オレが叶えられなかったことを、あのモデルが叶えようとしているのだから。
だってそうだろ? 誰だって自分がやりたかったことを先にやられたら腹が立つものだ。”お前がグズグズしていたから”と言われれば言い返せないが、”今までの友情”というリスクを背負っていなかっただけあちらが有利だったのは事実のはずだ。
なのに、何だってオレがあいつのお膳立てをしてやらなきゃならないんだ。
オレは涼しい顔をしている可香谷を恨めしげに睨んだ。
そもそもこいつが『観覧車は二人で乗せてあげましょう』なんて言うからこうなったんだ。その後に『遊沙さんの為を思うなら』とかいう殺し文句まで付けて来なければ絶対従わなかったのに。というか、オレが遊沙のこと好きだって何故知っている?
睨まれた可香谷は顔を冴木に向けると、
「申し訳ありませんが水を取ってきていただけます?」
と言った。冴木は嫌な顔ひとつせずに頷いて、席を立って水を取りに行く。可香谷は彼が離れるのを待ってから、顔をこちらに向けた。
「さて、ご不満そうな顔ですが、言いたいことがあるようでしたらお伺いします」
オレは何故あいつらを二人だけで乗せたのかを聞いた。
「ああ、それは簡単なことで、ただあの方達を喜ばせたかっただけです。お付き合いされているのにぼくたちがいたら、お二人で楽しめないでしょう」
「……あなたはオレが遊沙のことを好きだって知っている様でしたが」
「はい。そんなもの、見ていれば誰だって分かります。有栖さんを邪魔したくって仕方ないって顔してましたから」
「それでオレを引き離したんですか?」
「そうです。もちろん貴方の気持ちも理解出来ましたし、同情しない訳でもありませんでしたが」
「…………どうしてあちらの味方をするんですか」
「冴木さんが喜ぶからです」
可香谷はさも当然というように言った。オレは思わず眉を顰める。
「もしかして好きなのか?」
つい敬語を忘れて独り言を呟くように言うと、
「いいえ?」
またも当然そうに否定の言葉が返ってきた。
「でも好きですよ。友人として、ですが。彼の笑顔は優しくて、ぼくの癒やしですから。彼が笑顔になるのなら、多少面倒でも有栖さんと遊沙さんの仲を取り持つくらいします」
「オレの恋路を邪魔しても、ですか」
「ええ。といっても、貴方はご自分の恋路を全うする気はないのでしょう? それこそ遊沙さんのために」
「…………」
涼しい顔をしておきながら何でもお見通しな可香谷に、もはや怒る気すら失せてしまった。
その後は冴木が三つのコップを器用に持ってきて、可香谷がそれを手伝って自然と会話はなくなった。
観覧車から帰ってきた遊沙にあからさまなキスマークを見つけたオレは、有栖のその綺麗な顔面をその場でボコボコにしてやりたい衝動に駆られたが、特に嫌そうではない遊沙の顔に免じて我慢してやった。
どこか清々しい顔をしたあいつとは逆に、汚い感情をため込むことになったオレは惨めで本当に嫌になる。
一生この立場は変わらないことが分かっているだけに、余計にそう思った。
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